BusiNest「アクセラレーターコース」で創業手帳賞を受賞! リハビリ機器で起業を目指す大友高行氏インタビュー

創業手帳
※このインタビュー内容は2020年03月に行われた取材時点のものです。

アクセラレーターコースに参加した理由や、今後の展望について聞きました

(2020/03/25更新)

大友高行氏は、東海大学で非常勤講師を務める傍ら、小型の多機能リハビリ機器「らっくん」を開発しています。2019年に、中小機構が展開している創業支援プログラム「ビジネスト アクセラレーターコース」に参加し、法人を見据えた事業化を進めてきました。

アクセラレーターコースのスポンサーである創業手帳は、2020年2月に開催された最終デモで、大友氏に創業手帳賞を授賞。今回、大友氏に、プロダクトの開発秘話やアクセラレーターコースへの参加で得られたメリット、今後の事業展望などについて、改めて話を伺いました。

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大友 高行(おおとも たかゆき)
大学卒業後、丸文株式会社に入社。DSP(Digital Signal Processor)を中心としたシステムの提案を担当する。2007年に同社を退社。東海大学で博士課程(後期)に入学し2010年に修了。2011年から非常勤講師として勤務。2013年から株式会社イープルでソフトウェア開発担当も兼務しつつ、リハビリ機器「らっくん」開発に着手。2019年に「第6期ビジネスト アクセラレーターコース」に参加し、創業手帳賞を受賞。

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きっかけは、世話になっている電子機器メーカー代表の脳梗塞

ー事業の概要を教えて下さい

大友:小型の多機能リハビリ機器「らっくん」を開発しています。モーターを使って、人の体を動かすことがベースの機能となります。そこに、アタッチメントの交換で様々なリハビリに対応できるようにしています。

さらに、ユーザーの身体に過剰な負荷がかからないようにセンサーなどを追加したり、IoTの技術も取り入れて、使用履歴のデータから身体機能の変化を記録して再確認したり、らっくんを通じて他のユーザーとコミュニケーションを取りながらリハビリに取り組めるような設計にしたいと考えています。

ーこの事業を立ち上げたきっかけを教えて下さい

大友:現在、東海大学で非常勤講師をしています。それと並行して、大学や企業の研究所向けに特注の電子機器の設計・開発・提供をしている企業と共同で研究開発を行っていました。しかし、2013年に、この会社の代表が脳梗塞で入院するというアクシデントが起こりました。一命はとりとめましたが、後遺症が残ってしまいました。

代表はバイタリティのある方で、退院後も仕事のやり方を工夫して、今もリハビリと仕事を両立しています。代表はさらに、自分専用のリハビリ機器までも自作していました。その代表と私との間で、「これを製品化すれば、リハビリを必要とする人の助けになるのでは」という話になり、より実用的なリハビリ機器のアイデアを出し合いました。

そのうちに、代表から「自身の勉強も兼ねて、本格的に開発に取り組んでみてはどうか」と提案を受け、私が中心となって機器開発を始めることになりました。このとき起業はまだ考えていませんでしたが、ひとつの大きなきっかけになりました。

リハビリを必要としている人の機会を増やしたい

ー初めてのプロダクト作りで、どのようなプロセスを踏んだのでしょうか

大友:筐体内に組み込むコンピュータや部品の選定、プログラム作成、CAD※を使った筐体の設計などを、代表にも相談しつつ、自分が中心になって進めました。ほとんど初めて取り組むことだったので、2年ほどかかってしまいましたが、何とか試作機を完成させました。

※コンピュータを使った設計支援ツールのこと

その後、完成した試作機で、実際に臨床試験も行いデータも取りました。試作機の完成度はまだ十分ではないですが、機能面では、試験が行えるレベルまでは作り上げたと思っています。

らっくんの試作機

ー起業でプロダクトを作るにあたり、重要な要素はなんだと思いますか?

大友どんなものでも構わないので、とにかく一回でもいいから、「プロダクトを作ったことがある」経験を持つことが大事だと思います。仮に、作ったもののクオリティが高くなくても、一度経験すれば次の挑戦へのハードルが下がります。この経験が、何にもましてアドバンテージになると考えています。

さらに、プロダクトは、作れば作った分だけ血肉になり、次のアクションへの原動力になっていきます。ちょっとしたものでも、まず作ってみることが大事ですね。

ーらっくんで解決したい社会課題について教えて下さい

大友リハビリを必要とする方へ、リハビリを行う時間を増やしたいと考えています。回復期リハビリテーション病棟で療法士が患者さんに行えるリハビリには上限があり、3時間までとなっています。それ以上は自主的にやって下さい、というのが現状ですが、自主的に取り組んでいる患者さんは少ないようです。「もっとリハビリの時間を増やせば良くなるのに」という声も聞きました。

らっくんを使えば、自主的にリハビリに取り組むことができる

また、退院後も自主的なリハビリが必要ですが、続けるのが難しいという話も聞いています。特にモチベーションの維持が難しく、80代以上の高齢者になると意欲が明らかに落ちるといった声もありました。らっくんを使うことで、患者さんが一人でもリハビリに取り組める機会を増やし、身体機能の維持などに貢献したいと考えています。

他にも、機器を使って事前に患者さんの身体をほぐしておけば、療法士が行うリハビリの効果も上げることができると思っています。

アクセラレーターコースで得た成果と、今後の展望

ー「BusiNestアクセラレーターコース」にエントリーした理由を教えて下さい

大友:東海大学の先生方が中心になって立ち上げたNPO法人「広域連携医療福祉システム支援機構」の理事長に、らっくん開発の話をした所、研究開発のサポートを受けられることになりました。これを期に、このNPO法人が主宰する研究会に参加させてもらえるようになりました。

そして、昨年6月の研究会で報告をしていた際に、アクセラレータコースでスポンサーを務めている方のひとりが参加されていて、その方からコースの紹介を受けました。

ちょうど、「開発を進めるためには起業も視野に入れる必要がある」と考え始めていた時期だったので、思い切って参加することにしたのです。

アクセラレーターコースのファイナルデモでプレゼンする大友氏

ーBusiNestアクセラレーターコースを受けた感想・良かった点を教えて下さい

大友メンターや経営のプロなど、大学内では出会うことができなかった方々から、事業のアドバイスや指摘を貰えたのが非常に大きいですね。

機器の開発を進めていくための道筋やヒントを、いくつも出してもらい、「次何をすべきなのか」を整理整頓しながら進むことができました。また、コースのメンターの方を通じた紹介がきっかけで、リハビリテーションの専門学校と一緒に開発をする話も頂けました。

正直、アクセラレーターコースを受けていなければ、ここまで早く事業を進めることはできなかったと思います。アクセラレーターのスポンサーの方は、私が大学に閉じこもっているだけではうまく進めないことを、見抜いていたのかもしれません。

ー今後の事業の展望を教えて下さい

大友:2020年の4月から、リハビリテーションの専門学校で、リハビリ機器の開発ワークショップを行います。療法士を目指す学生と一緒に、現場で実際に使う人のリアルな声を取り入れながら開発を進めていく予定です。

プロダクトが完成したら、臨床試験として現場で使ってもらい、データを集めます。その後、医療機器として許可を受けるための申請を行い、許可が下りれば販売に進むという流れです。これを、3年以内に実現したいと考えています。

アクセラレーターコースは、本当に必要な出会いを提供してくれる場

ーこれからアクセラレーターコースへの参加を考えている人に向けて、メッセージをお願いします

大友:今は、不確定な時代です。社会情勢やビジネス環境も、1年後どころか、1か月後すらどうなっているかわかりません。こんな状況だからこそ、起業家には自分の事業にとって本当に必要な出会いや、つながりを見つける力が求められると思います。

1から自力で、出会いやつながりを見つけようと思うと、なかなかに難しいものです。私は、アクセラレーターコースに参加したことで、事業を進める上で必要な出会いに恵まれ、今後の具体的な道筋を見つけることができました。

事業に必要な、価値ある出会いをたくさん提供してくれる点で、アクセラコースはとても意義のあるプログラムだと思います。事業をぐんと加速させたいと考えている方は、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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