スタートアップとJR東日本が力を合わせて新サービスを創る場所「JR東日本スタートアッププログラム」

創業手帳

「シナジー」と「課題解決」から始まるイノベーション

(2018/04/19更新)

鉄道や運輸事業など、幅広い事業を手掛ける東日本旅客鉄道株式会社は、2017年4月より、「JR東日本スタートアッププログラム」を進めてきました。

スタートアップや様々なアイディアを有する方から、駅や鉄道、グループ事業などを活用したビジネス・サービスを募集し、ブラッシュアップして実現していく本プログラムですが、どのような経緯で開始することになったのでしょうか?

今回は、「JR東日本スタートアッププログラム」を担当しているJR東日本スタートアップ株式会社の阿久津 智紀氏と会田 均氏、さらに審査員特別賞を受賞したecbo株式会社 代表取締役CEOの工藤 慎一氏に、お話を伺いました。

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目的は「シナジー」と「課題解決」

ーまず、審査員特別賞を受賞したecbo株式会社の事業について、どのような感想を持ちましたか?

阿久津:今回開催された「JR東日本スタートアッププログラム」は、私たちの事業とのシナジー(相乗効果)を感じられるものを見つける、一緒に課題を解決していく、という目的がありました。その中でも、駅に設置しているロッカーについては、以前から課題を感じていました。

例えば、東京駅では朝9時になるとロッカーはいっぱいです。駅構内には手荷物預かり所もありますが、ものすごい長蛇の列になっていることも珍しくありません。近年増加している海外旅行者の方も、大きくて重いキャリーバッグを預けられずに困っている、という姿が散見していました。
このような点に関しては、私たちもイノベーションを起こしていかなければ、と感じていました。

ecboさんが行なっている「手荷物預かりサービス」は非常に手軽で、問題解決のためにすぐ実行できたので、私たちのニーズと非常にマッチしている、と思いましたね。

会田:阿久津も言っていましたが、私たちの事業とのシナジー(相乗効果)を感じられるものを基準に選出させていただきました。
なので、まずは「こういう事業だったら、この会社と協力してできる」といった概要を描けたところを採用していった形です。

阿久津:スタートアップからすると、JRが何の事業をやっていて、どんなことに困っているのか把握しづらいと思うんです。
今回は237社の応募がありましたが、237社全ての事業を紐解いて、「この分野と合わせることができたら、こういうことができるのでは?」という事業計画をひたすら考えていきました。

ecboさんに関してもそうで、「私たちはこんなことをやりたいと考えているんですが、できますか?」という感じで打ち合わせを重ねて事業の形を作っていきました。

すると、JR東日本で困っていることは、JR西日本やJR北海道などでも困っていることがわかりまして。さらには、バスの分野でも同じ課題があることがわかりました。ecboさんにとっても、様々な場所で事業を行うきっかけになったのではないかと思います。

ー今回のようなオープンイノベーションの際には、相手先の企業とのシナジーとその先の展開を考えることが重要だということですね。

阿久津:そうですね。ポイントは「相手が何に困っているか?」です。
私たちのような事業会社のCVCでは、「事業シナジー」と「困っていることを協力して解決できる」というところがメインになってくると思います。

ーちなみに、選考した際のテーマはあったのでしょうか?

阿久津:今回、テーマは7つに設定しました。

①人・モノ・情報をタイムリーにマッチングするサービスの創出
②出発地から目的地までをスムーズにつなぐ快適な移動の創造
③新たな技術・アイディアを活用した未来に資する新ビジネスの創出
④過ごしやすく、働きやすい社会・生活の実現
⑤国内外の多様な人々が集い楽しむ場としての駅づくり
⑥地域の雇用・移住・観光の促進
⑦環境負荷の少ないエネルギーや安全で安定した食糧の供給

このテーマに沿って、選考しました。
先ほどもお話ししましたが、応募してくださったサービス内容は、私たちの中で紐解いていきました。
そして、企業とお客様どちらにとってもメリットになってくれるようなサービスを考えていった、という感じですね。

もっと事業領域が広がると、可能性も広がってくる

ー237社の応募があったと伺いましたが、ecbo株式会社の他にも印象に残った事業はありますか?

阿久津:音波のビーコンを使って、物流や人の行き来の動線を改善する、というサービスを提案していただいた企業がいらっしゃいました。カメラだと個人情報の関係で調べきれなかったりするそうなので、映像に残らない音波で効率化を図りましょう、というサービスだったのですが、着眼点が面白くて印象に残っています。

あとは、腰痛改善のプログラムを提供している企業もいらっしゃいました。
テーマ内では社会的課題の解決に関わると思うのですが、切り口が面白いな、と感じました。

会田:今回は、既に自社の製品・サービスまたはプロトタイプを有する、概ね起業10年以内の企業を対象とした「アクセラレーションコース」と、これから起業または起業後間もない方を対象とし、当社の協力・支援のもと事業構想の具現化を目指す「インキュベーションコース」がありましたが、「インキュベーションコース」の方でも面白いアイディアを出してきてくれた方がいらっしゃいましたね。

例えば、「祭りの力で、東日本の活性化に繋げたい!」という方がいました。思想としてすごくよかったので、このアイディアをどうやったらマネタイズできるか、をものすごく考えましたね。
また、ある方からは、駅に湧いている地下水を使ってわさびを育てる、というアイディアもありました。こちらも社内で評判が高かったです。

ーさまざまな事業の応募があった「JR東日本スタートアッププログラム」ですが、今後はどのように展開していきたいと考えていらっしゃいますか?

阿久津:もっと事業領域を広げていきたい、と思います。また、弊社のメイン事業である鉄道事業や運輸事業についての実証実験をもっと実施したいな、とも考えています。

また、地方と世界をつなげていく活動もやっていきたいですね。海外のスタートアップの方々に日本で実証実験してもらう、日本のスタートアップが海外で実証実験できるような環境作りを行なっていきたいです。

会田行政とも関わりをもっと増やしていきたいとも思っています。
行政との関わりが増えてくると、駅構内だけでなく駅周辺の商店街や地域の名所まで、実証実験の範囲が広がります。そういう動きができたら、面白いですよね。

阿久津:「JR東日本スタートアッププログラム2018」の応募も4月19日から始まりました。私たちと一緒に事業を行なってみたいスタートアップの方はぜひご応募ください。お待ちしています。

ecbo株式会社CEO 工藤氏からのコメント


今回、審査員特別賞を受賞したecbo株式会社の代表取締役CEOである工藤慎一氏に、コメントをいただきました!

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荷物預かりサービス「ecbo cloak」は、ある旅行者との出来事から始まった。工藤社長独占インタビュー
ー改めて、「ecbo cloak」の概要を教えてください。

工藤:「ecbo cloak(エクボクローク)」とは、コインロッカー代わりにスーツケースを街中のカフェや美容室などに荷物の一時預かりできるシェアリングサービスです。スマートフォンで、事前予約し簡単に荷物預かりができます。

ー起業までの経緯はどのようなものでしたか?

工藤:世の中にインパクトを残すために起業しました。前職のUberでは、短期間でシンプルなサービスがグローバルに拡大したのを経験し、自分でもそういう会社を日本発で起こそうと思いました。

ー今回、「JR東日本スタートアッププログラム」に参加した理由はなんでしたか?

工藤:「JR東日本スタートアッププログラム」は、他のアクセラレータプログラムと違い、全社一体となり協業を考えながら参加できるプログラムです。

いちベンチャー企業から考えたら、JR東日本のような大きな企業と公式で協業できるチャンスがあるということは、かなり魅力的でした。実際採択をされ、今東京駅でやっている実証実験も素晴らしい成果が出ていまして嬉しい限りです。

ープログラムに参加してよかったことはなんでしたか?

工藤:先ほどにも繋がるのですが、やはり大企業とベンチャーが一体となって協業できる点がよかったと思います。

協業と聞きますと、遅いスピードでやっていくと思われますが、JR東日本さんとの協業はベンチャー以上のスピード感でやれたことも我々としてもかなり大きかったです。

ー最後に、今後の展開を教えてください!

工藤:今後は東京駅でやっている実証実験を他の駅にも展開し、2019年3月末までにコインロッカー以上の供給数を目指しています。また預けた荷物をボタン一つで運べる「ecbo delivery」を構想しています。

(取材協力:JR東日本スタートアップ株式会社/ecbo株式会社
(編集:創業手帳編集部)

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