個人事業主でも事業計画書は必要?事業計画書作成のメリットや作り方

資金調達手帳

個人事業主が現状を把握してビジネスプランを構築するなら事業計画書を使おう


事業計画書は、事業を推し進めるための指針となるツールです。
事業計画書を作成することによって、事業のコンセプトや強みを見つめ直すきっかけになります。

また、売上や経費を予測して収支計画を立てるため、資金繰りをシミュレーションするにも事業計画書が有効です。
事業計画書を作ったことがない人も、わかる範囲からテンプレートを埋めてみましょう。

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個人事業主は事業計画書はいらない?


個人事業主とは、法人を設立することなく個人で事業を営む人をいいます。
資格やスキルを武器に個人事業主として生計を立てたい、会社から独立して個人事業主になりたいと考える人は少なくありません。

事業をスタートする時には、多くの人がどのような事業なのかや戦略や収益の見込み、将来の展望といった内容を盛り込んだ事業計画書を作成します。
事業計画書は資金調達の時にも必要な書類です。
さらに、自分が立ち上げた事業を客観的に見つめ直すための資料でもあります。

しかし、個人事業主になるために事業計画書を作る必要はあるのでしょうか。
個人事業主の概要や事業計画書について紹介しています。

個人事業主は事業計画書がなくてもスタートできる

個人事業主となるために、事業計画書を作成する必要はありません
個人事業主は開業届があれば始められるため、事業計画書を作ったことがなくても個人事業主になることは可能です。

実際に、やりたいことをひとりで行うだけだからと事業計画書を作成していない個人事業主もたくさんいるはずです。
しかし、不要だからとはいえ、個人事業主になる前に事業計画書を作成することは無駄ではありません。
個人事業主であっても、事業計画書を作成することには多くのメリットがあります。

個人事業主が事業計画書を作成するメリット

資金調達の予定もなく、個人事業主としてお金を稼ぐだけなら事業計画書も必要ないと考える人も少なくはありません。
しかし、事業計画書を作成すること自体に大きな意味があります。
個人事業主が事業計画書を作成する意義、メリットについてまとめました。

収益のためへの行動を明確化できる

事業計画書には、事業についての多面的な情報を記載します。
例えば、商品やサービスの強み、売上や利益の計画もそのひとつです。
事業を漠然と立ち上げてしまうと、どれだけの利益が必要でそのために売上はいくらを目指せばいいのかといった視点が欠けてしまうことがあります。
そのため、経営が行き当たりばったりになってしまい資金繰りや収益計画にも影響を与えてしまうかもしれません。

事業計画書は売上予測を立てることになるので、収益を上げるためにやるべきこと、求められる行動を明確化するツールとして役立ちます

特に、自分だけで事業を立ち上げると、「やりたいこと」が先立って「やるべきこと」の観点が抜けてしまうことがあります。
事業計画書として文章にまとめることは、収益のための行動指針となるのです。

ブランディングや差別化できる

事業計画書を作成した後は、必ず自分で読み返してみてください。
事業計画書は、事業を客観視するためのツールです。

その中でチェックしてほしいのが、その商品やサービスが既存のものと競合しないかどうかです。
競合するのであれば、自分の商品がどこで差別化、ブランディングできるのかを考えます。

事業計画書を使うことで、自分の強みを知るとともに、逆に弱い点やリスクを明らかにできます。
自分を知るためのツールとして事業計画書を活用してください。

新規事業や販路開拓のきっかけとなる

事業計画書を作成することで、事業内容を整理して具体化できます。
その過程の中で、「こんなこともできる」、「こんな活用法もある」と新しい発見も生まれるかもしれません。
事業計画書を使って頭を整理して新規事業や販路拡大のきっかけをつかむことができます。

取引先を増やしやすくなる

事業計画は、頭の中にあるだけでは、誰もその内容を知ることができません。
事業計画書として、アウトプットすることによって事業の魅力や将来性を伝えられれば、取引先や協力者を探すために役立ちます。

事業管理をして利益低下を防げる

斬新なアイデアを実現しようとする事業にありがちなのが、利益を度外視しているケースです。
利益低下や赤字になってしまえば、事業の継続も危ぶまれます。
事業計画書では、事業の収支計画も立てるため、利益が出るかどうか、利益を出すにはどうすればいいのかを考えるきっかけになります。

資金繰りの状況を把握できる

事業計画書では、事業におけるキャッシュフローも確認します。
事業によって違いはありますが、仕入れなどの支出に対して売上や収益が手元に入るまで時間がかかるケースは少なくありません。

そのため、売上が軌道に乗るまでは支払いに備えるための現金準備が困難です。
事業計画書では、資金繰りの計画も立てるため、本当に事業計画の内容で資金不足にならないのかを精査できます。

資金難で倒産する企業もたくさんあります。
リスクマネジメントのためにも事業計画書の段階で資金繰りについて考えておくことが大切です。

資金調達で有利になる

金融機関から融資を受ける際には、事業計画書を作成して審査を受けます。
審査で重要視されるのは、事業の成長性や損益計画、資金計画が現実的で返済能力があるかどうかです。

また出資を受ける際や、補助金などの申請にも事業計画書の提出が求められることがあります。
スムーズに資金調達を行うためにも、事業の魅力や将来性が伝わるような事業計画書が必要です。



個人事業主が事業計画書を作成する方法


事業計画書を今まで書いたことがない個人事業主の場合、作成方法自体がわからないことがあります。
事業計画書は、順序だてて情報をまとめていけば決して難しくありません。
事業計画書を作成する方法についてステップで紹介しています。

STEP1.事業内容を書き出して具体化する

事業計画書を作成するためには、初めに事業内容を思いつくままに書き出してみてください。
考えをアウトプットするためには、6W2Hで考えると効率的です。

6W2Hは、Why(なぜ)、What(何を)、Where(どこで)、Whom(誰に)、When(いつ)、Who(誰が)、How to(どのように)そしてHow much(いくら)をまとめて表したものです。
6W2Hを使うことによってビジネスプランが具体化されて、今まで気がつかなかったような点にも注意が向きます
それぞれの項目を紹介するので、自社のビジネスプランに当てはめて考えてみましょう。

Why(なぜやるのか)

Why(なぜ)は、事業の起点となる部分です。
どうして起業をするのか、何を目的としているのかが事業のコンセプトや理念につながります。

What(何を売るか)

What(何を)は、商品やサービスに直接つながる部分です。
ターゲットに提供する商品やサービスに加えて、自分の強みについても考えてみてください。
例えば、ほかにはない商品やサービスや、特定のターゲットに絞った商品、差別化できるような付加価値を考案することがこれにあたります。

Whom(誰に売るか)

Whom(誰に売るか)は、ターゲットとする顧客に焦点を当てることです。
年齢層だけでなく、会社員や学生といった形でターゲットの属性を考えます。
どういった生活パターンなのか、消費行動にどのような特徴があるかを考えることで、販売戦略にもつながります。

Where(どこで売るか)

Where(どこで売るか)は、その商品を売る場所です。
立地やエリアだけでなく、その市場で売るのか、規模はどのくらいかを考えてください。
全国をターゲットにするのか、特定の地域に絞って広げるのか考えてみましょう。

How to(どうやって売るか)

How to(どうやって売るか)は、販売戦略につながる項目です。
同じカフェの開業であっても、駅近くのテナント店から郊外の店舗、キッチンカーと様々な販売形態があります。
お客様にどうやって商品を届けるのか、どのような人をターゲットにするかによっても販売戦略は変わります。

When(いつ売るか)

When(いつ売るか)は、起業や開店のタイミング、期限を考えます
事業は、スタートするタイミングも重要です。

資金調達の要否や、店舗や物件、工事の有無によっても事業開始の時期は変わります。
社会の変化に対応できるかどうか、季節がマッチしているかどうか、その事業ごとにベストなタイミングを考えてください。 

Who(誰が売るか)

Who(誰が売るか)は、商品やサービスを提供する人材についての項目です。
どのような人材が必要なのか、協力してくれそうな人はいるかを考えてください。
従業員を雇う場合には、資格などの条件や人材募集についても検討します。
また、アウトソースする場合には、外注先も考えておきましょう。

How Much(いくらで)

How Much(いくらで)は、事業で得られる利益とともに開業に必要な資金や運転資金も考えます。
初期費用と運転資金を計算し、売上予想を立ててみてください。
いくら費用がかかるのか、いくら利益が見込めるかをできるだけ具体的に記載します。

STEP2.事業計画書のテンプレートに沿って内容を記載する

事業内容を書き出したら、いよいよ事業計画書の作成に進みます。事業計画書の書式は、自分で作成することもできます。
創業を積極的にサポートしている日本政策金融公庫ではもExcel版とPDF版の創業計画書のテンプレートを公開しています。
美容業や飲食店、介護や学習塾といった業種ごとのテンプレートも公開しているので参考にしてください。

具体的には以下の項目を記載します。

創業理念や動機

起業に際しての情熱や想いを記載します。
ビジネスの経験が乏しくても、創業理念や想いが共感される、相手に伝わるものであれば取引や資金調達も円滑に進みます。

代表者の経歴

代表者の学歴や職歴を記載してください。
保有している資格や、今まで携わってきた業務について細かく記載します。
事業を成功に導くような人物像をイメージしやすいような内容がおすすめです。

商品・サービスの内容・アピールポイント

どのような商品を、どの市場、ターゲットに対して提供するのか、事業の全体像を記載します。
その商品やサービスにどういった魅力があるのか、強みや特徴も記載しておきます。
金融機関や取引先が将来性を判断するためにも重要な部分なので、可能な限り詳細に記載してください。

ターゲット・取引先

素晴らしい商品やサービスでも、需要を掘り起こして顧客を獲得しなければ事業として成立しません。
どうやってターゲットに商品を届けるのか、マーケティングについてもどれだけ人員や予算を確保するかを記載してください。

資金計画

事業の中でも課題となりやすいのが資金計画です。
どれだけの資金が必要になるのか、どこから資金調達をするのかを考えます。
また、融資を受けた場合には返済計画も必要です。

利益が出ていたとしても資金が潤沢にあるとは、限りません。
手元に入ってくるお金と、支払いが必要なお金を資金繰り表にまとめて必要な資金調達額を計算してみましょう。

収支計画

商売の基本は安く仕入れて高く売ることです。
商品やサービスを提供するためにどれだけの費用がかかるのか、それによってどれだけ売上が期待できるのかを計算する必要があります。

売上から売上原価や人件費のほか、減価償却費や販管費、法人税などを支払って残るのが利益です。
材料費のように直接かかる費用だけでなく、間接的に発生する家賃や光熱費などの費用も計算します。
一般的には、1年単位で計算してから、事業計画書には数年分を記載するようにします。

STEP3.内容を精査する

事業計画書を作成するには、多くの要素を埋めていかなければいけません。
すぐにすべての項目を埋めるのが難しい場合には、埋めやすい項目から記入していけば大丈夫です。

事業計画書は、一度作成して終わりではありません。内容は自分で見直して、精査できる部分はないかチェックします。
具体性が欠ける部分は、調査や再検討をおこなってください。

事業計画書は、事業内容が専門的であっても、読み手にわかりやすい言い方、説明を心がけます。
可能であれば第三者にわかりにくい部分がないかチェックしてもらうこともおすすめです。

STEP4.ブラッシュアップして仕上げる

事業計画書が形になってきたら、商品やサービス、市場に詳しい専門家にアドバイスをもらいます。
商品やサービスの弱点や見落とし、気付いていないリスクがある場合には、修正してください。

まとめ

事業計画書を書かなくても、個人事業主として事業を始めることは可能です。
しかし、事業計画書を作成することにより、ビジョンが明確化したり、収支や資金調達計画を精査できたりと多くのメリットがあります。

これから事業を始めたいが、何からスタートすればいいのかわからない人は事業計画書を作成してみてください。

創業手帳では、会員登録いただくことでお使いいただける「事業計画シート&資金シミュレーター」をリリース!途中で保存もできるので、出先で思いついたときのメモがわりにもご利用いただけます。会員登録もサービスの利用も全て無料でお使いいただけますので、是非ご活用いただき、事業を成功へと導いてください。



大久保写真創業手帳・代表 大久保のポイント

創業手帳・代表の大久保です。
多数の事業計画の支援をしてきた経験から実際の事業計画づくりのポイントを補足しますね。

1.事業計画通りにはいかない。だから「見える化」が大事
起業家の支援を多数して来ましたが「全て当初の計画通りいった起業はない」です。
しかし、計画を立てるのが無意味かというと全く逆で、事業計画は絶対に必要なものです。
なぜかというと起業とはそれだけ先が読みにくいということです。
計画を作ることで実際のズレがわかることが重要です。
また、計画を作ることで「見える化」し、可視化されます。

起業は悩みがちですが、一人で頭の中で考えて悩んでいるだけでは、モヤモヤが晴れなくて当然です。
いったん頭の中から出して、文字や数字で書いて見える化することで、客観的に自分の計画を見直すことができます。

2.一枚ペラから始めよう
さらに具体的に細分化して整理することでやるべきことが見えてくるのも、事業計画を作る良い面です。
この際におすすめなのが分厚い資料をつくるより、まずは簡単に1枚ペラを作ることです。
簡単に書くことに抵抗を感じるかもしれませんが、逆に1枚にまとめる作業の方が難しいものです。
そして、1枚にすることで事業を俯瞰的に見ることができます。
踏み出せない方は、まずは一行、一枚でも良いので計画を資料に落とすことをおすすめします。

3.事業計画を人に伝える意味とアドバイスのもらい方のコツ
そして、書くことで人に説明し、伝わりやすくなります。
専門家や支援者、仲間、取引先、金融機関・投資家など様々な方に見ていただくことで、事業の形ができてきます。
自分の意見や見方と違ったとしても、外部の意見をもらい叩くことで、より事業や計画が強固になっていきます。
「壁打ち」も事業を育てるコツの一つです。
その時に事業計画があることでより楽に伝わりやすくなります。
場合によると、思いやビジョンを伝えて「相談」から「協力者」に巻き込んでしまう、というのも起業ではよくあります。

さらに、この時にアドバイスや意見を他人からもらう時の実戦的なコツですが、どんなに優れた先輩や専門家でも、起業家自身とは違うことを理解しましょう。
成功するかどうかは、起業家が本当に何をやりたくてどれだけの真剣度なのか、によってかわります。
例えば「日本の全ての起業家に無料で自動配布される創業手帳」という事業を始めたときも大方の反応は「無理」というもので、実績のある経営者も含めて非常に多かったです。
一方で熱烈に支持してくれる方は少数ですがいました。その少数の支持者とは、実際に自分が起業して困った経験のある方、つまりユーザーでした。大多数の意見に流されていたら判断を誤っていたかも知れません。
外部の意見も吸収しながら、一方で自分の揺るぎない事業の核の部分を育てていくことが大事です。

4.大きなビジョン、細かく実行 事業計画で資金調達
起業の場合、事業計画を作れば勝手に会社という組織がやってくれるわけではなく、自ら実行し、あるいは実行する人を採用していかねばなりません。
計画書倒れにならないように、行動が必ずセットになってきますが、その時のポイントは組織があるわけではないので、コンパクトに一人か少人数でもすぐできて、トライした結果を計画にフィードバックできるようにしておくことが大切です。
細かくトライして柔軟に変えていくことも起業の時期の事業計画には必要です。

そして計画ができたら資金調達にもトライしてみましょう。
出資でも融資でも良いですが「人を採用するお金がかかる」ことで事業計画がさらに真剣度が上がり、強化されます。

5.組織化フェーズではこう使う
最後に、事業を長期で運営するには組織が必要になります。
今は、アウトソーシングなどが発達してきているので、1人から少人数でも事業を立ち上げることができますが、長期で拡大していく場合、仮に一人でやる場合ですら、事業を仕組み化して安定的に稼働していくには計画が必要になります。

この時に事業計画、チーム・社員向けに共有する経営計画書という呼び方でも良いですが、羅針盤になる資料を作ることをおすすめします。それにより事業の全体像が見えやすくなるので、組織運営がぐっと楽になります。
組織化の段階では、意外に起業家、社長のイメージ、ビジョン、重要なポイントは伝わっていないものです。
組織化、拡大のタイミングでは、組織上の様々な成長痛やトラブルが起こりやすい時期です。
会社の行くべき方向と、それを具体的に落とした計画を共有する、事業・経営計画で方針を元にした採用、人材育成がこのステージを突破する鍵になります。

以上、自身の経験と多数の取材、起業家・経営者の相談による経験のシェアでした。
創業手帳では、巻末に、1枚ペラの事業計画シートや、創業手帳アプリでは融資の5年分の計画書を自動で出せる事業計画作成機能や、起業家のよくある質問をセットしてAIで壁打ちしてくれるAIチャット、補助金AI(アイ)では条件にあった補助金を自動でマッチングしてお知らせする機能、専門家無料紹介の仕組みなどもあります。全て無料で提供しているので、うまく活用して事業計画の作成や資金調達、起業を成功させましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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