オドレート 石田 翔太|体臭の悩みを解消するユニークなサービスを展開する起業家

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年07月に行われた取材時点のものです。

自分の臭いが気になる方必見!体臭の悩みはきちんと検査すれば適切な解決策がわかる!


誰しも一度は気にしたことがある体臭。自分で自分の体臭は分からないので、不安になる経験をされたことがある方も少なくないのではないでしょうか。

「体臭の悩みを解消する」というユニークなミッションを掲げたスタートアップがあります。オドレート代表の石田 翔太氏は、自らが大学時代に体臭について悩んでいた経験をきっかけにビジネスアイデアを思いつき、後にそれを事業化してオドレートを創業されました。

体臭の悩みにどうアプローチしているのか、そのユニークなビジネスモデルの内容や今後の展開などについて、創業手帳の大久保が聞きました。

石田 翔太(いしだ しょうた)
オドレート株式会社 代表取締役
累計1,500人以上の体臭を評価している臭気判定士。人に会わずに専門家の評価を受けられる「郵送体臭評価キットodorate」を提供するオドレート株式会社代表取締役。自身が体臭に悩んだ経験から「体臭の悩みを解消する」を企業理念に、正しい情報発信、現在も月100人以上の体臭を評価し、アドバイスを行う。Twitterでも“体臭”に関する知識を広めている。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

体臭の悩みを解消するオドレートの事業概要

大久保:石田さんは体臭という非常にユニークな領域で事業を展開されています。事業概要を教えてください。

石田:端的に言いますと、体臭について不安を抱いている方に対して、体臭の客観的な評価をお伝えする検査のサービスをメインに展開しています。それが、自宅でできる体臭評価キット「odorate」シリーズです。

自宅でTシャツを24時間連続でご着用いただき、そのTシャツを弊社の研究室まで送付してもらいます。送付してもらったTシャツを機械と、臭気判定士と呼ばれる臭いに関する国家資格を持つ人の鼻の両方で検査し、その結果をお伝えするものです。
現在は、「体臭測定キットodorate」と「ワキガ検査キットodorateAP」の2種類のキットを提供しています。「体臭測定キットodorate」は1万5,000円、「ワキガ検査キットodorateAP」が1万円です。

大久保:自分の体臭を気にし始める中高生の方などにも人気が出そうなサービスですね。

石田:実際に中高生の方にも検査いただいています。他にも多くの方にサービスを使っていただいていますが、一見すると体臭で悩んでいるようには見えない方も多いんです。
普通に学生や会社員としての日常生活を送っているけれど、実は誰にも言えない悩みを抱えておられる方が多いような気がしています。

大久保:人と触れ合う職業の方などは、特に気になるかもしれませんね。逆に香水をつけすぎてしまったりもしますし。

石田:そうなんですよ。香水をつけることで対処されている方も多いですが、それは根本的な対策ではなかったり、かえって悪い印象を与えかねない場合もあるんですよね。
ワキガ体質の方の場合など、本当に臭いをなくすためには手術が必要なこともあります。だから本当に体臭で悩んでいる方にはまず、オドレートの検査キットで体臭を検査し、体臭の原因を把握することで自分の体臭に効果的な対策を知って頂きたいと思っています。
ワキガであると判明した場合は治療できる病院を紹介することもできます。

大久保:他にもご展開されている事業はありますか。

石田:体臭についての正しい情報を発信するためのWebメディア「体臭ラボ」と、実際に弊社の研究室までお越しいただいて対面で体臭を評価する対面評価事業の3つの事業を展開しています。

体臭の原因は?

大久保:素朴な疑問なのですが、体臭の原因は何なのでしょうか。

石田:よく「肉を食べたら臭くなる」などと言われたりもしますが、「こうしたら臭くなる」という科学的な実証実験のデータはまだ非常に少なくわかっていないことも多いです。

人の身体から発せられる化学物質は400程度確認されているのですが、その中で不快な臭いと感じられる物質は限られています。現在はそのうち特に不快な印象と感じられる26物質を定量的に分析することで、体臭の検査を行っています。
ただし、実際に人間がどう感じるかは機械では判定できないので、人間の鼻でも検査しています。

大久保:日本人はもともと体臭がそこまでない民族ですよね。

石田:諸外国と比較しても、日本人は比較的体臭がきつくない民族だというのはその通りです。
日本人の場合、ワキガになる人は遺伝的に10%程度だと言われていますが、海外ですとほぼ100%の民族もあるようですから。
日本人は臭いのない清潔な環境に慣れすぎているため、逆に諸外国よりも臭いを気にする気質があるのかもしれません。

大久保:周りと比較する文化が強いですからね。

石田:おそらくこれは、日本固有の問題なんですよね。
諸外国では、そこまで体臭を気にすることはありませんから。聞いた話ですが、日本も昔はそこまで体臭を気にすることはなかったようです。

仮説ですが、国としてある程度発展していって清潔にも気を遣うことができるようになってはじめて、体臭を気にするようになるのかな、とも思います。
欧米も、香水をつけて対策をしている方が多いですが、それとはまたちょっと気にする温度感が違うかな、と感じますね。
野球部で汗をかいている人同士は臭いを気にしない、とかそういった類の話です。

大久保:科学的な研究は進んでいる分野なのでしょうか。

石田:それが、体臭の分野は人間の生死に関わる分野ではないので、現状そこまで研究が進んでいません。
願わくば、弊社がそこを推進していきたいと考えてはいます。

大久保:そうすると、さまざまな分野の知見が必要になりそうですね。

石田:まさにそうで、いろいろな分野の科学者と連携しながら研究を進めているところです。
最近、飲食物や生活習慣が体臭に与える影響について、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社からの受託分析を実施しました。
体臭が強くなる原因さえわかれば、それに気をつけて生活できたり、似非科学的な生活習慣に縛られることもなくなりますからね。地道に研究を進めていく予定です。

個人で悩んでいる人が多い to C向け市場

大久保:体臭については悩んでいる方も多そうですね。

石田悩んでいても人には言えないじゃないですか。だから実際には体臭で悩んでいる方ってものすごく多いんじゃないかと思うんですよ。実際、ご相談いただくと「こんな人が体臭に悩んでいるんだ」と驚くことも多いです。

大久保:逆に悩んでいない人もいますけどね。

石田:悩んでいる人に対しては、検査をして解決のアプローチまでご提案できますが、悩んでいない場合はリーチできませんね。
実際、体臭に悩んでいても検査したら「気にするほどの体臭ではない」とわかった人も少なくありません。ただ、一度検査してみることで客観的な評価が得られて安心できるので、検査をすることで日常のご不安を解消して頂けているのではないでしょうか。

大久保:SNSなどの口コミで広まることはなさそうですね。

石田体臭の問題は悩んでいたことも言いづらいですからね。
口コミで広がりにくい上、to Cのサービスということもあり、当社のマーケティングは全てコンテンツSEOを中心としたWebマーケティングだけです。営業をすることもありません。

大久保:それでも事業が成り立っているわけですから、やっぱり体臭に悩んでいる方は一定数いるということですよね。to Cだけではなく、to Bへの展開も考えていらっしゃるのでしょうか。

石田:もちろん、弊社としてもto B向けの市場を開拓していきたいという思いはあります。企業さまからご相談いただくこともあるんですよね。
ただ、実際に企業で検査をすることになったら、後で「体臭がある」とわかった人が「もしかして、自分のために検査を導入したのかな」と企業サイドを疑ってしまいますよね。そうすると、ハラスメントの問題などにもつながりかねず、展開が難しいところです。

現在はいいアプローチがないか、さまざまな専門家と話し合っているところです。

大久保:デリケートな問題ですよね。でも実際、体臭の問題で悩んでいるのであれば、解決できるに越したことはないでしょうね。

石田:先ほどお話にもあったように、思春期など、体臭を気にし始める方が多い年代で、学校の授業などで体臭について知識を得てもらう取り組みができたらいいな、と夢想しているところです。

大久保:人生で一度、早い段階で検査してみたら、自分の臭いの原因と対策をわかった上で生きていけますからね。ちなみに、逆に体臭が全くない人というのはいるのでしょうか。

石田:体臭が全くない人はいません。だから程度の問題なんですよね。それぞれの人間にある程度の体臭があるのは当然です。
だからそこまで強い臭いがなければ、気にする必要はないんです。

自身の体臭の悩みを解決した経験から創業

大久保:そもそも、石田さんはなぜ「体臭」という領域で起業されたのでしょうか。非常にユニークですよね。

石田:大学院生のときに、自分自身の体臭が気になっていました。「体臭あるのかな」みたいな感じで。
そこで思い立って学内にいる知らない人を捕まえて、手当たり次第に私に体臭があるのかどうか聞いていったんです(笑)。20人くらいですかね。
そうしたら、「何でお前がそんなこと悩んでいる必要があるの」「臭くないじゃん」と言われ、徐々に不安が和らいで安心できたという体験がありました。

大久保:悩んでいても、他人に聞くことはできないですよね(笑)。なかなか勇気がおありだと思います。

石田:まさしくその通りで、悩んでいても、他人に「体臭はどうですかね」なんて聞けないじゃないですか。でも実際に当時の私のように悩んでいる人はいる。
ちょうどそのころ、「ビジネスを創る」という授業を取っていました。授業の中で「人の悩みにビジネスニーズが潜んでいる」と言われ、「そうか」と思ったところ、ビジネスアイデアのブレストをすることになったんです。

さすがに私も「自分が体臭で悩んでいた」とは言いづらいので、「友達が悩んでいたんですけど……」と切り出して体臭の検査をするビジネスアイデアを披露しました。すると、その授業で講師をしていたベンチャーキャピタルの人に「面白いからやってみなさい」と言われ、早速調査を始めました。

大久保:学生起業だったんですか。

石田:いえ、起業したのは就職して2年後でした。
まずその段階では、「体臭の検査」というビジネスが成り立つのかどうか、ニーズを調査しました。SNSなども使いながら何百人もの人たちに聞いてまわり、そこでようやく「イケる」と実感したんです。「大きなビジネスにはならなくとも、最悪自分一人食っていくには大丈夫そうだぞ」と。
就職してからも本業の時間以外は起業のための調査や準備に費やし、2年ほどして「そろそろだな」と思い、起業した次第です。

大久保:石田さんが就職されたベーシックはWebマーケティング事業を展開する事業会社ですよね。なぜベーシックに就職されようと思ったのでしょうか。

石田:実はベーシックへの就職が決まった後で起業のアイデアが出てきたので、起業のためにベーシックに就職した、というわけではないんですよね。
大学院時代に計量経済学を専攻していたので、そこで学んだデータ分析的な考え方が使えそうなWebマーケティングに強いベーシックに就職しました。

大久保:Webマーケティング的思考は今の事業にも役立つのではないでしょうか。

石田:集客がWebマーケティング一本なので、おっしゃる通りですね。
今後、体臭の傾向を分析して可視化していく際にも、大学院やベーシックで培った分析的思考は役に立ちそうです。

大久保:臭いについての百科辞典みたいなイメージですかね。

石田:そうですね。臭いのWikipediaとでも言えばいいのでしょうか。そういった体系的なデータを作れるよう、研究を進めていきたいです。

臭いの検査とソリューション

大久保:今は主に体臭の検査という領域で事業を展開されていますが、今後臭いを改善するソリューション開発をしていくご予定はありますか。

石田:今の時点では、検査にこだわってやっていきたいと考えています。検査とソリューションを両方やっていたら、客観性がなくなってしまうじゃないですか。
ソリューションを売るために「体臭がありますよ」と言っていると思われてしまいかねないですよね。だから今は検査に絞ってやっていきたいです。

大久保:香水についてはどうですか。

石田:今の段階ではまだ考えていないですね。ただ、「デオドラント製品を使ったら体臭が消えるかどうか」ということを気にされているユーザーさんもいらっしゃるので、今使っているデオドラント製品の効果が確認できる検査キットは現在開発中です。

しかし今後、より体系的かつ客観的に体臭についての研究と理解が進んだら、そのときはじめて香水の開発は考えるかもしれません。それぞれの体臭の傾向を分析した上で、それぞれの体臭の傾向を分析した上で、それぞれの悩みに合った香水、あるいはそれぞれをより魅力的に感じされる香水。そんな香水を開発してみたいです。まだ夢ですけどね。

大久保:最後に、起業家へのメッセージをお願いします。

石田:最初は思い通りにいかないことがほとんどだと思います。毎月お金も減り、精神的にもキツいことがほとんどです。
でも創業者が諦めなければ、事業は死にません。だから最後まで諦めず、やり抜いてほしいです。

関連記事

学生起業家におすすめの資金調達の方法と問題点

起業の勝敗を左右する。創業直後に実施すべきマーケティングとは?

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳は、起業の成功率を上げる経営ガイドブックとして、毎月アップデートをし、今知っておいてほしい情報を起業家・経営者の方々にお届けしています。無料でお取り寄せ可能です。

(取材協力: オドレート株式会社 代表取締役 石田 翔太
(編集: 創業手帳編集部)



創業手帳
この記事に関連するタグ
創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す