アート思考はビジネスに必須!起業にも活かせる理由と注意点を解説
アート思考で新たなビジネスチャンスを開拓!ゼロイチを突破する“今話題”の技
新規事業を立ち上げようと思ったときに、なかなか案が出ずに困ったという経験はないでしょうか。新しいものを生み出すのが得意な人、既存のスキルを伸ばすのが得意な人など、さまざまだと思います。
「芸術的なセンスがないから、何かを作り出すのは苦手。」
「いつも同じ事ばかりしていて、変わり映えがないのが嫌だ。」
「会議で新しい案が欲しいと言われても、何も思い浮かばない。」
このような悩みを抱えた人におすすめしたいのが、アート思考という考え方です。
時代の変化に対応するために、斬新なアイデアを出す手法として注目を集めています。
そこでこの記事では、アート思考の概要や身に付け方を解説します。ビジネスや起業を検討している方にも活かせる内容なので、ビジネスマンの基礎知識として覚えておきましょう。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
アート思考とは
アート思考とは、自分の感情や考え方を何らかの形にすることを意味します。芸術の分野のように、作曲家や画家が表現したいものを楽曲や絵画として生み出すのと同様です。
一般的に作品を鑑賞する立場の人は、あらゆる見方をすることができます。顧客が欲しい答えを導き出すことも、何かの問題を解決することもありません。
ですが、ビジネスにおけるアート思考で注目すべきは「ゼロからイチを生み出す能力」です。多少他の作品と似通った部分があっても、自分だけのオリジナル要素を付与するときには欠かせない思考方法となっています。
デザイン思考との違いは?
デザイン思考とは、誰かの悩みを解決するための方法を探り出すことを意味します。具体例としては、広告をイメージするとわかりやすいでしょう。
広告は自社の商品やサービスを購入してもらうために作成しますが、そこで取り入れるデザインは「情報を視覚的にわかりやすくするもの」です。
ひと目見たときにどのような商品なのか、企業の雰囲気やターゲット層が読者に伝わりやすいかを最優先に考えます。
このように、自分の意思を全面に出すのではなく、常に読者側の視点を考慮して物事を解決する能力がデザイン思考です。
ロジカルシンキングとは異なる
アート思考に関する話題では、よくロジカルシンキングと比較することがあります。
簡潔に言えば、アート思考やデザイン思考はアイデアを見つけ出すときに使用し、そこで生まれた問題を解決・実行に導く道筋をロジカルシンキングで構築します。
芸術的な考え方は抽象的な表現が多くなりがちですが、言葉で共通認識を持つときにビジネスでの効果を発揮します。ビジネスは組織で動いていくからこそ、アイデアを出した後の共有にも意識を向けましょう。
ビジネスでのアート思考とデザイン思考の違い
上記でご紹介したアート思考とデザイン思考の区別をもとに、両者がビジネスでどのように作用するかをご紹介していきます。
アート思考:新しいアイデアを生み出す
アート思考の最大の特徴は、これまでになかった発想や新しい視点を生み出せることです。
日本は情報や商品で溢れているからこそ、競合との差異が明確でないと埋もれてしまいます。そのため微々たることであっても、ユニークな発想を盛り込みたい場面が多いでしょう。
また、長年同じ業務に向き合っていると既成概念にとらわれてしまうため、斬新なアイデアを生み出すにはアート思考が欠かせません。新規事業の立ち上げにおいては特に効力を発揮し、これまで見逃していたビジネスチャンスを掴むことが期待されています。
デザイン思考:顧客の悩みを解消に導く
他者の視点に立って問題の解決を図るデザイン思考は、ビジネスの本質といえます。
「顧客が求めるサービスは何か?」「顧客はどんなな悩みを抱えているか?」を考えていれば、解決すべき課題が明確になるでしょう。
デザイン思考で問題を浮き彫りにして、ロジカルシンキングで解決までの道筋を立てれば、あらゆる問題に立ち向かえます。
起業にアート思考が重要な理由とは?
これから起業をして新しくビジネスを始めようと考えている方は、アート思考が特に大切です。ここでは具体的な理由を3つご紹介していきます。
既存のサービスに勝つには独自の工夫が必要
起業や新規事業の立ち上げをするときは、必ず競合を意識しなければなりません。世間によく知られている既存のサービスよりも注目度を上げるには、主に以下のような方法があります。
- 地域密着型の企業として対象となる顧客を絞る
- 高品質な商品やサービスを提供し富裕層向けのビジネスを行う
- より限定的なサービスを提供して個性を出す
まず大前提として、大手の企業よりも安さを売りにしてサービスを提供するのは困難です。人員や商品の量産技術ではどうしても劣ってしまうため、価格競争は控えることになります。
したがってサービスそのもので何らかの個性を出す必要があり、そのためにはアート思考が欠かせないのです。
副業ブーム到来で“隙間産業”を見つけることが大切に
起業においては、自身が持っているスキルがどんな顧客の役に立つかを検討するのが最優先です。ただし今後は、誰も挑戦していない領域を探し出すこと、特徴的な付加価値を付けていくことが重視されます。
実際に現代はフリーランスの増加や副業の推奨により、働き方が大きく変化してきました。この流れによってニッチな需要に目を向け、専門的な肩書きを持つ方が多くなっています。
斬新なアイデアを生み出したり、これまでになかったサービスの組み合わせを考えたりしていけば、徐々に業界内でも存在感を出せるでしょう。
目標達成へ突き進む力にもアート思考が活かせる
アート思考で大切なのは、ゼロイチの壁を突破することだけではありません。湧き上がってくる感情やイメージを形にして、使命を全うするためのエンジンでもあるのです。
有名なアーティストは、活動する意味や目的をしっかり抱えています。その信念こそが、辛いときに自分を支えてくれる力になるものです。
「ビジネスは失敗が9割」と言われている以上、起業をしてもうまくいかないことがあるかもしれません。だからこそアート思考を取り入れて、目標へ突き進むエネルギーを奮い立たせることが大切です。
ビジネスにおけるアート思考のメリット
実際にアート思考を現場で取り入れるメリットは、これまでの固定概念に縛られなくなることです。
つい仕事に慣れてしまうと従来の手法ばかり選んでしまいますが、時代の変化の速さに取り残されないために、一歩踏み込んだ挑戦が必要な場面もあります。
このような革新的なアイデアやサービスが求められる状況でこそ、アート思考が重要です。
また、考えた案が実行できなくても構いません。これまでにない視点が増えるだけで、他のタイミングで新規事業が誕生するチャンスは大いにあります。常に目新しさが求められる昨今では、積極的に挑戦してみることが大事でしょう。
ビジネスにおけるアート思考のデメリット
アート思考の欠点は、言語化の難しさです。「アート」と名がついてもビジネスでは絵画や音楽に残すわけではないので、思考を言葉で表現する必要があります。したがって共通認識を持つことが難しく、組織内でうまく情報がまとまらないことが多いです。
この時にロジカルシンキングを活用できれば問題ありませんが、情報を分割して整理しなければ実行に移せません。独りよがりになってしまうと、チームとして動けなくなってしまいます。アート思考を発揮する場所やタイミングはよく検討してください。
アート思考を身につけるための2つの方法
「アート思考は芸術的なセンスがない人には身につかないのでは?」と感じるかもしれませんが、誰でもトレーニングをしていけば生かせるようになってきます。
ここでは具体的に確立されている、2つの方法をご紹介します。
ビジョンスケッチ
ビジョンスケッチとは、実際にアーティストが作品を生み出す時に使用する思考回路を真似するものです。
具体的には問題提起力・想像力・実現力・対話力の4つに焦点を当てて、アーティストの思考を自分なりに言語化する力を鍛えます。
詳しくは以下の流れで行います。
追求:特に心が動いたアートを取り上げて、その理由を追求する
言語化:ア―ティストの思考回路を想像し、自分なりに言語化する
内在化:アートに触れたときに自分なりの解釈ができる
このようにアートに触れた経験を思い返し、自分はどんな作品が好きなのか、なぜピンと感じたのかを深堀することから始まります。
多くの作品に触れなければ言語化は難しいですが、好みだと感じる要素に気づいてきたら習得のチャンスです。
感情が動いた理由を論理的に説明できれば、人を惹きつける魅力に気づいたことになります。
一連の流れを他者に話せるようになれば、実現力や対話力が身に付き、アーティストの思考回路に近づいたといえるでしょう。
アートイノベーションフレームワーク(TM)
アートイノベーションフレームワークもビジョンスケッチと同様に、アーティストの思考を身につける方法です。京都大学と凸版印刷株式会社が考案しました。内容は5つに分かれており、以下のステップで取り組んでいきます。
調査:発見した対象の特徴や独自性を調査して、類似するものや思考を探り出す
開発:発見した対象のオリジナル性を出すための表現方法を考える
創出:過去の歴史上で誰も表現したことのない方法を生み出す
意味づけ:生み出した商品が誕生した理由や背景を言語化して伝え、評価をもらう
ビジョンスケッチと異なるのは、オリジナル要素の見つけ方に特化していることです。特に類似した商品やサービスとの比較を重視することから、実際にビジネスの場で取り入れやすくなっています。
また、最初の「発見」の段階から主観で物事を考えるので、比較時に顧客目線になってはいけません。アート思考では常に「自分がどう思うか?」が軸であることから、過去の経験を振り返り想像力をふくらませることが大切です。
アートイノベーションフレームワーク(TM)は手順が具体的に決まっています。初めてアート思考に触れる方は「面白い・価値がある」と感じた経験を対象に、挑戦してみてください。
大手企業も実践しているアート思考の事例紹介
実際にアート思考は大手企業も使用しています。ここではどのような場面で使用されているのかが分かりやすいように、具体的な事例をいくつか紹介します。
日本マイクロソフト
日本マイクロソフトが取り入れているのは、「Art Thinking Workshop」というアート思考プログラムです。この事例ではDXの分野をさらに拡大させるために行われました。
デジタル化はまさに時代に合ったテーマで、革新的なアイデアが求められるものです。時代の最先端を行く領域では、アート思考は欠かせない方法といえます。
NTTデータ
NTTデータは東京大学と共同で、「アート思考によるイノベーション創出手法に関する研究プロジェクト」と題したアート思考を考案しました。
実際にビジネスでは公共社会基盤分野と金融分野を対象としており、すでに十分な成果が発売されています。アート思考をビジネスに取り入れた、先駆けとなるプロジェクトです。
Apple
上記2つの視点とは異なりますが、iPhoneが登場した歴史にもアート思考が関わっています。iPhoneが登場するまではガラパゴスケータイが主流でしたが、画期的なデザインと機能性が認知されると、瞬く間に広がっていきました。
スティーブジョブズ氏が発表した当初は「奇想天外なものだ」と多くの批判があったものの、信念を突き通したことで大成功をおさめたのです。
アート思考を学ぶ方法とは?
アート思考を身につけるには日頃から意識が必要ですが、具体的におすすめの方法をいくつか紹介していきます。
専門書籍からヒントを得る
最も手頃な方法としては、アート思考に関する書籍から情報を得ることです。実際に文章としてまとまっているので、具体的に説明されている点がおすすめです。
「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考
アート思考に関する書籍で非常に人気が高いのが「『自分だけの答え』が見つかる 13歳からのアート思考」です。この書籍は中高生向けの美術の授業をテーマに、自分なりの答えを出すためのプロセスを解説しています。
日常の中からヒントを得るコツも掲載されているので、すぐに実行しやすいと好評です。広い視野を持ち、自身の可能性を広げたい人はぜひ一度読んでみてください。
アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法
「アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法」は、東京藝術大学大学美術館や練馬美術館の館長として活動する秋元雄史氏が著者の書籍です。
既存の仕組みに縛られない考え方や、時代の最先端を進む業界におけるアート思考の重要性を綴っています。 実際にアーティストとして活動している著者だからこそ、よりリアルな技術を習得したい方におすすめです。
アートシンキング 未知の領域が生まれるビジネス思考術
「アートシンキング 未知の領域が生まれるビジネス思考術」は、アート思考とは何かという基本的な部分からビジネスへの落とし込み方まで、幅広く網羅した書籍です。
特にアート思考をビジネスに生かすまでの道筋にこだわってまとめており、より実戦向きな書籍だと高い評価を獲得しています。アウトプットを意識して学びたい方におすすめです。
ワークショップで徐々に慣れていく
何か新しいことを学ぶときは、できるだけ実践の場で試してみることをおすすめします。ワークショップのような形式で意見を出しあえる場を設ければ、より感覚を掴めるでしょう。
実際に頭の中で考えるよりも、言葉にして表現した方が思考が整理され、思わぬアイデアが生まれることもあります。誰かの意見を批判することはせず、可能性を広げる時間として意識するようにしてください。
生活に余白を持って視野を広げておく
毎日の生活で時間や心に余裕がないときに、思わぬミスをしてしまったという経験はあるでしょうか。このような状態だと、新しいことに目を向ける余裕はなく、アート思考からは遠ざかってしまいます。
つまり些細な発見からヒントを得たいのであれば、普段からゆとりのある生活を送ることが大切です。街を歩いた時に見かけた看板や、季節ののちょっとした移り変わりに気付けるようになれば、新しいアイディアを出す余白が生まれてくるでしょう。
アート思考を駆使してビジネスに新たな発展を
起業や独立など新たなビジネスに挑戦するときは、少なからず独自性が求められます。そのときに思うような案が出なければ、アート思考に挑戦してみましょう。
しかし、画期的なアイデアを生み出すことは簡単ではありません。アート思考に焦りは禁物なので、常日頃から意識してヒントを得ておくことが大切です。
固定概念に縛られていると感じたときは、普段と違うことに挑戦してみるのもいいでしょう。ビジネスに新たな風を取り込みたいときは、さまざまな視点を持つことを意識してみてください。
(編集:創業手帳編集部)
創業手帳は、起業の成功率を上げる経営ガイドブックとして、毎月アップデートをし、今知っておいてほしい情報を起業家・経営者の方々にお届けしています。無料でお取り寄せ可能です。