2024年11月スタートのフリーランス法とは何か?わかりやすく解説!下請法との違いも

創業手帳

2024年11月1日よりフリーランス法がスタート!発注者がしなければならないこと・禁止されていることは?


2024年11月1日よりフリーランス法が施行されます。フリーランス自身はもちろんのこと、フリーランスに発注している取引先の事業者も関係がある法律です。内容を理解して対応しなければ、勧告・命令がされたり、罰金が科されることもあります。

本記事では、フリーランス法の概要やポイントなどについて、『60分でわかる!フリーランス法 超入門』(技術評論社)の著者であり、弁護士でもある野田学さん、白石紘一さんのお二方に伺いました。全事業者必見の内容ですので、ぜひお目通しください。

野田 学(のだ まなぶ)
東京八丁堀法律事務所 パートナー弁護士
2009年弁護士登録。公正取引委員会事務総局審査局,経済産業省競争環境整備室に勤務し,独占禁止法違反事件の審査・審判・訴訟,国内競争政策の調査・検討等を含む競争法関連業務を担当。現在は,弁護士として独占禁止法・下請法・フリーランス法等を中心に取り扱う。グリーン社会の実現に向けた競争政策研究会委員(2022年)。
白石 紘一(しらいし こういち)
東京八丁堀法律事務所 パートナー弁護士
2012年弁護士登録。2016~2018年,経済産業省産業人材政策室(現:産業人材課)にて任期付公務員として勤務し,「働き方改革」等に関する政策立案に従事。労働法関連政策に加え,フリーランス関連政策,HRテクノロジーや兼業・副業の普及促進等を担う。現在は労働法務・人材サービス法務,個人情報保護法務,スタートアップ支援等を手掛ける。

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フリーランス法とは?いつからスタート?

ーフリーランス法の概要をお聞かせください。

野田2024年11月にスタートした新しい法律です。フリーランス法というのは略称で、正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といいます。

業務を請け負う側であるフリーランスは、どうしても、発注者との間で交渉力などの格差が生まれがちです。

このため、「報酬が期日に支払われない」「一方的に発注を取り消された」「ハラスメントを受けた」などのトラブルが多いという実態があります。これらの是正を目指した法律です。

白石大まかなルールとしては、フリーランスへの業務委託について、「取引の適正化」と、「就業環境の整備」に関するルールが導入されています。

「取引の適正化」としては、契約条件を書面などで明確にしたり、報酬の支払期日に関するルール、発注者がしてはいけない禁止行為などのルールが取り入れられています。基本的には、下請法を参考にしたルールです。

「就業環境の整備」では、募集情報の的確表示義務や、妊娠・出産・育児・介護と業務の両立に対する配慮義務、ハラスメント対策についての体制整備義務、中途解除等の事前予告・理由の開示義務などのルールが導入されました。元々ある労働法上の規律が参考にされています。

フリーランス法の対象は?

ーフリーランス法が適用されるのは誰でしょうか。

白石まず、保護の対象となるのはフリーランスです。「特定受託事業者」といいます。

ただし、「フリーランス」といっても、一般にイメージされるものとは少し異なるかもしれません。

例えば、個人でも従業員を雇っていれば「フリーランス」には当たりません。一方で、法人であっても一人会社(代表取締役以外に役員や従業員がいない)であれば「フリーランス」に当たります。

また、義務などを課されるのは、フリーランスに業務を委託する発注者です。「業務委託事業者」又は「特定業務委託事業者」といいます。

フリーランス法と下請法の違いは何?

ーフリーランス法と下請法の違いは何でしょうか。

野田:いくつか異なる点がありますが、大きく異なっているのは、①義務などを課される対象と②保護対象だと思います。

① 義務などを課される対象については、フリーランス法では、発注者の側に下請法のような資本金の要件がないため、会社の規模にかかわらずルールが適用されます。

② 保護対象については、フリーランス法の適用対象の取引は業種業界を問いませんので、下請法の対象とならない建設業法上の建設工事なども含まれます。また、フリーランス法では、下請構造にある取引(誰かから請け負ってきた業務の再委託)だけでなく、自社内の業務の委託なども対象となります。

これらの結果、下請法よりもフリーランス法の方が適用範囲が非常に広いことが特徴です。

フリーランス法について、フリーランス側が対応しなければならないこと

ー新しい法律によって、新たにフリーランス側がやるべきこと、対策すべきことについてお聞かせください。

野田まずは法律の概要を把握した上で、自分の取引で守られるべきルールが守られているか、しっかりと注意を払うことが重要です。

取引条件について発注者ときちんと協議・交渉を行うことはもちろん、契約書や発注書も、発注者任せにせずに、よく確認することが大事です。

白石:妊娠・出産や育児・介護等のために業務を調整したくなったときに、発注者に申出ができることや、ハラスメント被害を受けたときには発注者が設置すべき専用の窓口に相談できることなども重要ですので、申出先や窓口は確認しておきましょう。


行政機関に違反の申出ができること、弁護士に無料で相談できる「フリーランス・トラブル110番」なども、知っておくべきと思います。

フリーランス法について、事業者側が対応しなければならないこと

ー新法によって、フリーランスに発注する事業者側がやるべきこと、対策すべきことについてお聞かせください。

白石:相手が個人ではなく会社であっても、代表者以外に役員も従業員もいない場合にはフリーランス法が適用されることになります。逆に、個人であっても従業員を雇っているのであれば適用対象になりません。

したがって、発注者側においては、どの取引先との取引にフリーランス法が適用されるかの洗い出しが重要です。

取引開始時や更新時などに、取引先に対して、代表取締役以外の役員や従業員がいないかなどを確認するステップを入れることが必要になってきます。

野田取引適正化のルールとの関係では、フリーランスと業務委託の合意をしたら直ちに取引条件等を明示することが必要になっています。

この明示は「3条通知」と呼ばれ、何を明示するかは法律や規則で決められていますので、それに沿ったひな形を用意しておくとよいでしょう。

また、支払期日や禁止行為のルールに対応した業務マニュアル等を準備しておくことも必要です。

白石:就業環境整備のルールとの関係では、これまで従業員向けに設けていたハラスメント相談窓口をフリーランスにも開放することのほか、従業員に対するのと同様に、フリーランスへのハラスメントがなされないようにする体制構築が必要です。

妊娠・出産・育児・介護と業務を両立できるよう、業務調整などの配慮をフリーランスが申し出られるような窓口を設ける必要もあります。

6か月以上委託していたフリーランスとの関係では、解除や更新拒絶の際には原則として30日前の予告が必要になることも注意が必要です。

フリーランス法で禁止されていること

ーフリーランス法で禁止されていることは何でしょうか。

野田1か月以上継続する業務委託について、以下の7つの禁止行為が定められています。いずれも下請法でも禁じられているものです。

・フリーランスに原因がないのに成果物を“受領拒否”すること
・発注時に一度決めた報酬を後から“減額”すること
・フリーランスに原因がないのに受け取った成果物を“返品” すること
・著しく低い報酬を一方的に決めてしまう“買いたたき”
・業務と関係のない“商品購入やサービス利用の強制”
・メリットのない金銭や作業を要求する“不当な経済上の利益の提供要請”
・フリーランスに原因がない発注内容の“不当な変更・やり直し”

フリーランス法に違反するとどうなる?

ーフリーランス法に委託事業者側が違反するとどうなるのでしょうか。

野田フリーランスからの申出を受けて、公正取引委員会・厚生労働省などの行政機関が、発注者に立入検査や、是正のため必要な措置をとるよう勧告・命令をすることがあります。

勧告・命令は公表されますので、企業のレピュテーションにも影響します。また、命令に違反した場合には罰金が科されることもあります。

フリーランス法のビジネス上の影響

ーフリーランス法のビジネス上の影響についてお聞かせください。

白石フリーランス法の適用範囲は非常に広く、フリーランス法の影響を全く受けない企業は少ないように思います。

これを守らない場合、フリーランスからは、「フリーランスを粗雑に扱う企業」と見られてしまいかねません。

対等な当事者として健全に取引を続けていくためにも、フリーランス法を遵守することが重要です。

ー創業手帳の読者に向けてのメッセージをお願いします。

野田:創業直後は、特に自分自身がフリーランスに該当するため保護が必要になったり、逆に発注者としての立場でフリーランスの方に発注する機会も出てくると思います。

フリーランス法を上手に使って、自社のビジネスの発展に活かしていただければと思います。

白石労働法を遵守しない企業は、労働者側から選ばれないようになりつつあります。同様に、フリーランス法を遵守しない企業は、フリーランス側から選ばれないようになっていくでしょう。

規模が小さいうちは、特にフリーランス(業務委託先)なくしては事業を前に進められないことも多いと思います。

遵守する側でも、保護される側でも、いずれでもフリーランス法を意識していきましょう。


『60分でわかる! フリーランス法 超入門』 野田 学(著)、白石 紘一(著) 技術評論社 

フリーランス,発注者双方が知っておくべき新法の知識が60分でわかる!

「フリーランス法」の対象は誰なのか(フリーランス…私も当てはまる?),既存の法律との違いは(下請法とは何がちがうの?),業務を委託する事業者の禁止事項や義務といった,受発注者双方が理解し取引の現場で役立つ情報を1冊で提供します。

条文のガイドではなく,違反行為を受けた場合の申し出の手順や発注者の対応など実務的な内容が盛り込まれています。フリーランスへ業務を発注する人,(フリーのITエンジニア,映像クリエイター,カメラマン,デザイナー,司会者,ライター,パーソナルトレーナー,インスタグラマー,ライバー…など)企業から案件を受ける人,それぞれの必読書です。

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(取材協力: 東京八丁堀法律事務所 パートナー弁護士 野田 学、白石 紘一
(編集: 創業手帳編集部)

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