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2023年10月25日fabula株式会社 町田 紘太|100%食品廃棄物から作る新素材開発事業で注目の企業
100%食品廃棄物から作る新素材開発事業で注目なのが、町田紘太さんが2021年10月に創業したfabula株式会社です。
例えばコーヒーやお茶の出がらし、野菜の皮、お米のもみがら、卵の殻など、食料として口に入れるのが困難で捨てざるを得ないものは身の回りに数多くあります。
それらはたいてい焼却処分されているのが現状です。
その処分過程で排出されるCO2が地球温暖化や環境汚染に影響したりするのが問題視されています。
どう頑張っても出てしまう廃棄食糧を、社会の役にたつ価値あるものに変換し、永続的に再利用することができれば、環境問題解決の糸口にも繋がるはずです。
かたや現在、建築現場で課題となっているのがコンクリートの製造についてです。
コンクリートの原材料であるセメントを作る際に必要な砂利の不足、コンクリートを粉砕処理する際に出る大量のがれきの処理など、こちらもやはり環境問題と大きく関わる課題として取り上げられています。
この二つを結び付け、課題解決を図ることができれば一石二鳥です。
また、コンクリート以外の素材に関しても、サスティナブルなものを求める声が高まる今、廃棄食糧を原材料とした新素材の開発に期待が高まっています。
こうした中、100%廃棄食糧を原材料とした新素材の開発にいそしむある起業家の取り組みに大きな注目が集まっています。
fabula株式会社の町田紘太さんに、事業の特徴や今後の展望や課題についてお話をお聞きしました。
・このプロダクトの特徴は何ですか?
バインダーを一切、使用せずに原材料だけを使って作られた素材です。
食材と呼ばれるものであれば、基本的に製造することができます。
現在、約70~80種類の原材料を試作しています。
どの原材料で製作した素材も無筋のコンクリートより強い曲げ強度を保有し、
中でも白菜で作った素材は、無筋のコンクリートの約4倍の曲げ強度になります。
原材料由来の色や香りが残すことができ、感性を活かした空間づくりやプロダクトを作ることができます。
また、もし、不要になった場合や不具合があった場合に、回収し、同様の工程を経ることで、非常にシンプルに作り直すことが可能です。本当に不要な場合にはそのまま土に還すこともでき、真にサーキュラー・エコノミーを体現できる素材です。
・どういう方にこのサービスを使ってほしいですか?
素材に使用されている原材料などのストーリー性(どこで生産されたものなのかなど)に共感していただける方、
食品廃棄物の課題やコンクリートの課題、CO2排出による環境問題などの社会課題に意識の高い方、
自分の好きな色や自分の好きな原料の香りの製品が欲しい方、
天然がゆえに、1点1点異なった風合いがあり、そこに共感していただける方にお使いいただきたいと考えています。
・このサービスの解決する社会課題は何ですか?
① 食品廃棄物の処理の課題
食品廃棄物の処理方法は、現状、約8割が「焼却」「肥料化」「飼料化」です。
「焼却」はCO2排出の課題があり、「肥料化」「飼料化」は、品質の基準があり、その上、その先が動物や植物であり、価値を見出すのが難しい課題があります。
より、消費者にとって価値のあるものとして食品廃棄物を有効活用する必要があります。
② コンクリートの課題
コンクリートは、コンクリートの原料の1つであるセメントを製造する際に世界の約8%のCO2を排出しています。
また、コンクリートを使用した際のコンクリートがれきの処理も課題です。
たとえば先に開催されたオリンピックのように、一時的なイベントのための建造物に使用したコンクリートも、約1ヶ月程度使用した後に壊され、コンクリートがれきの処理をします。ですので使用後に処理しやすい素材の需要も存在します。
そして、コンクリートの原料の1つであるセメントを製造する際の砂も不足しており、新たな素材の需要は高まっています。
・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?
会社を経営する知識や経験が全くなく、全てが初めてであったことです。
そして、会社を経営していくための社内の環境・システムが整っていなかったことです。
どちらとも、現在も苦労していますが、運よく弊社をサポートしてくださる素敵な方々と出会い、そのサポートのお陰で乗り越えてきました。
家族やこの素材が生まれた研究室の酒井先生を含め、サポートしてくださった方々に恩返しをすることが、1つ会社の目標となっています。
また、小学校からの幼馴染3人で起業したということもあり、お互いを熟知した3人だからこそ、お互いをサポートしあえる関係であり、それも困難を乗り越えてきている要因の1つかもしれません。
・今後、どういう会社、サービスにしていきたいですか?
弊社の素材をコンクリートやプラスティックに並ぶ素材にしていきたいと思っています。
素材を選ぶ際に、その選択肢の1つとして、この素材が当たり前になるよう今後とも尽力していきたいと思っています。
会社としては、素材とともに成長しながら、会社名の”fabula”(ラテン語で物語)を常に意識したものづくりを行い、全ての人にとってウェルビーイングな社会に貢献できるよう努めていきたいと考えています。
・今の課題はなんですか?
弊社の素材を作る環境づくりです。
既に存在する技術を活用することでこの素材を作ることが可能です。弊社としてはファブレスにこの素材を製造するのに必要な技術を持っている方々のお力をお借りしていきたいと思っています。ですが、食品廃棄物を取り扱う環境ではないため、その調整が課題となっています。
また、各地域にこの素材を使って製品を製造できる環境を整え、輸送時のコストやCO2排出を抑えていくことが必要であると考えています。
・読者にメッセージをお願いします。
読者の皆様には弊社の素材の普及にお力添えをいただけたらとても嬉しく思います。
弊社の素材を通じて、食品廃棄物の処理の課題やコンクリートの課題などの社会問題を解決しながら、原料由来の色や香りを楽しむことができ、ストーリー性も意識した面白いプロダクトが次々に生み出せるよう応援いただけますと幸いです。
会社名 | fabula株式会社 |
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代表者名 | 町田 紘太(まちだ こうた) |
創業年 | 2021年10月 |
所在地 | 144-0045 東京都大田区南六郷3-10-16 六郷BASE 226 |
サービス名 | 100%食品廃棄物から作る新素材 |
事業内容 | 100%食品廃棄物から作る新素材に関する以下の事業を行う ・商品の企画開発・製造・販売及び回収 ・素材の研究開発 ・ワークショップ ・その他本技術に関する一切の事業 |
代表者プロフィール | 1992年生まれ。2021年10月に小学校からの幼馴染3人で、fabula(ファーブラ)株式会社を設立。幼少期をオランダで過ごし、環境問題に興味を持つ。世界約60ヵ国以上を旅行。東京大学生産技術研究所酒井(雄)研究室にて、卒業研究として新素材を開発。現在も新素材に関する研究を進め、fabula株式会社の代表取締役を務める。 |
カテゴリ | 有望企業 |
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関連タグ | fabula サーキュラーエコノミー サスティナブル 建築材料 新素材 町田紘太 食品廃棄物 |
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