食の社会課題を解決するフードテックとは?世界で注目される理由や企業事例まで解説

創業手帳

フードロスから人材不足まで解消!世界的な食糧問題に最先端テクノロジーで挑む

発展途上国を中心に、世界人口の増加や地球温暖化の気候変動を要因とした食糧不足が大きな問題となっています。一方、先進国ではフードロスの解消が喫緊の課題で、環境に配慮したサスティナブルな食事が注目されるようになりました。

こうした世界中の食に関連するさまざまな社会課題を解決に導くテクノロジーとして期待が寄せられているのがフードテックです。

では、フードテックとは具体的にどのようなものなのでしょうか。

フードテックの概要をはじめ、フードテックが注目される理由からフードテック導入で変化する領域を解説するとともに、代表的なフードテック関連企業を5社紹介します。

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フードテックとは

フードテックとは、食の「フード(FOOD)」と「テクノロジー(TECHNOLOGY)」を融合させた造語です。

最先端のテクノロジーを活用し、新たな形で食品を開発したり、従来とは異なる調理法を生み出すなど、食に関する社会課題の解決や、食の可能性を広げる技術および産業をさします。

世界的に深刻化する食糧問題を解決する方法として、世界中で期待されているフードテックですが、近年では日本でも注目度が上昇。日本政府はフードテックを成長産業に位置づけ、サポートしていくことを決定しており、産学官連携による「フードテック官民協議会」を発足させて品質を保証する基準作りをスタートさせています。

フードテックが注目される理由

フードテックが注目される理由は、主に以下の5つです。それぞれ詳しく解説します。

  • 市場規模の大きさ
  • 世界的な食糧不足の解消
  • SDGsとの繋がり
  • 食の安全性へのニーズの高まり
  • 深刻化する人材不足への対策

市場規模の大きさ

食市場は裾野が広く、規模が大きい分野です。そのため、必然的にフードテックも注目を集めています。

農林水産政策研究所の調査によると、2015年の飲食料の市場規模890兆円が、2030年には1360兆円とおよそ1.5倍に成長すると予測されています。特に高い経済成長が続くアジア市場の規模は、420兆円から800兆円と約1.9倍に拡大する見込みです。

こうした背景を踏まえ、投資家によるフードテックへの投資機会も増加しています。

世界的な食糧不足の解消

世界人口の増加に伴った食料需要の急拡大に対し、供給が追いつかなくなる「食糧不足・栄養不足」の危険性が指摘されています。

地球の総人口は、現在の75億5,000万人から、2031年には85億7000万人に達する見込みです。その影響を受け、世界中の人々が豊かな食生活を送るためには膨大な食糧が必要となります。

また、人口増加問題は地球温暖化を加速させ、さらなる気候変動を引き起こすリスクも伴っており、農業や酪農の分野では収穫量のばらつきや減少が懸念されています。

こうした観点から、食糧の需給バランスの大きな乱れへの対策として、フードテックが生産量増加や生産性向上に寄与すると注目されています。

SDGsとの繋がり

フードテックの活用は、国連で決定した17の国際共通の目標「SDGs」とも直結しています。

SDGsが掲げる目標のひとつが、フードロス対策です。2030年までに世界全体の一人あたりの食料廃棄を半減させ、収穫後の損失をはじめとした食品ロス減少を目指しています。

日本でも、フードロスへの啓蒙やフードバンク活動の推進、サプライチェーンの商習慣の見直しなどの取り組みとして「SDGsアクションプラン2018」がスタートし、話題となりました。

また、環境に配慮した取り組みを実施する企業は、投資家や消費者にとって魅力があり、フードテック関連企業への出資や共同開発などによるブランド力向上を狙う企業が増えていることも要因のひとつです。

こうした側面から、SDGsを達成するためのテクノロジーとしてもフードテックへの注目度上昇とともに、フードテック産業も急成長をとげています。

食の安全性へのニーズの高まり

近年、食の安全性に対するニーズが急速に高まっています。その背景にあるのは、主に以下の4つの問題です。

  • 悪意による意図的な異物混入
  • 細菌などによる食中毒
  • 幼児や高齢者の誤飲や窒息事故
  • 外国産農産物の残留農薬や産地偽装

上記の問題を抱える市場において、フードテックの活用により、生産から食品の供給まで消費者が安心できる環境整備への期待が寄せられています。

具体的には、製造工程のオートメーション化や異物判定による安全な製造ラインの確保、食品の成分分析や傷み具合を診断するツールの導入、傷みにくい食材や長期保存可能なパッケージの開発などがフードテックで実現可能です。

深刻化する人材不足への対策

食品の生産過程において、人口減少に伴った人材不足問題が深刻化しています。

特に農業・酪農・漁業などの分野では、生産者の高齢化が加速しており、食材加工工場や流通、外食産業では、慢性的な人員不足で経営が厳しい事業も少なくありません。

この問題の解決策として推奨されているのが、生産加工現場へのロボットやIoTの導入です。現在、少人数での生産や事業運営が可能になるよう、技術開発が進められています。

AIなどを活用し、最適な人材配置や食材調達ができるようになれば、人材の負担軽減や食品廃棄ロス削減にも役立てることができます。

フードテック導入で変化する領域

フードテック導入で変化する領域は、主に以下の6つです。それぞれ詳しく解説します。

  • 代替肉の製造
  • 新たな食材の開発
  • 効率のよい生産
  • フードロボットの普及
  • ニーズに合わせた流通
  • モバイルオーダーの浸透

代替肉の製造

フードテックが食品そのものに与える変化として大きいのが、「代替肉」と呼ばれる人工肉の製造です。

代替肉とは、植物性タンパク質などを原料とし、肉の味や食感を再現して作られた、肉の代わりになる食品をさします。日本で普及している代表的な代替肉は大豆ミートです。

代替肉の開発により、牛・豚・鶏などを食べなくても栄養摂取が可能になったこともメリットとしてあげられます。

新たな食材の開発

代替肉だけでなく、新たな食材の開発や生産を行うフードテックも登場しています。代表例は以下の3つです。

  • 必要な栄養素がすべて含まれ、手軽に摂取できるグミ
  • 粉末状のミドリムシで作られたクッキーやドリンク
  • 全原材料が野菜のシートを用いた天ぷらや生春巻き

上記以外でも、栄養価が高かったり環境に優しい食品やレシピの開発に参入する企業が増えていますが、今後さらに新たな食材の開発が増え、画期的な食材も増加すると予測されています。

効率のよい生産

食品の生産現場では、AIなどの導入による生産の効率化が急速に拡大しつつあります。代表例は以下の3つです。

  • ビニールハウスの温湿度確認や異常検知を実現した、クラウドの一元監視
  • 労働者の負担軽減や効率のよい生産を目的とした、農機の自動運転
  • 限られた労働力や日照時間での管理を可能にした、ドローンでの水やりや農薬物散布

フードテックは農業や酪農の分野でも労働力不足を補うことができ、効率のよい生産に貢献しています。今後の積極的な活用により、不安定な天候や気候でも安定した生産が可能になることが予想されています。

フードロボットの普及

食のあらゆる領域におけるフードロボットの普及も予測されています。

フードロボットとは、ロボットアームを用いて調理・皿洗い・配膳などを行う機械のことです。すでに外食産業の一部では、実用化に成功しています。フードロボットが注文受付から商品提供まで、ほぼ一貫して行う飲食店も登場しました。

今後、さらにあらゆる事業においてフードロボットの採用が見込まれています。

ニーズに合わせた流通

食材や食品を求める一人ひとりのニーズに合わせた流通も、フードテックの活用により可能になります。

これまで小規模の飲食店などの小口注文は、多くの費用や手間がかかっていました。この領域にICTを導入すれば、生産者と飲食店を直接結ぶことができ、市場や卸店の仲介が不要に。その結果、タイムリーかつニーズに合った受発注と配送が実現できます。

生産者から必要な食材を必要な量だけ仕入れることができるようになるだけでなく、リアルタイムでの配送状況の確認も可能です。市場に足を運ぶ必要がなくなれば、大量仕入れが難しい飲食店や個人でも、質の良い食材を手軽に入手できるようになります。

モバイルオーダーの浸透

コロナ禍の影響で、日本だけでなく世界中で外食から中食への需要が高まっている背景を受け、フードテックを活用したモバイルオーダーが急速に浸透しました。

モバイルオーダーなら、自宅にいながら注文から決済まで完了し、商品の配送依頼や受け取りまで行うことができます。

結果として、飲食店はフードロスの大幅削減、ユーザーは配送時間の確認やスムーズな受け渡しなどのメリットを享受できるのがポイントです。

フードテック関連企業5選

フードテック関連事業を展開し、注目されている代表的な企業は以下の5社です。それぞれ詳しく解説します。

ユーグレナ

ミドリムシを使った製品開発で注目されているのがユーグレナです。

ミドリムシとは、植物性と動物性の2つの栄養素を併せ持つ唯一無二の食材のことです。世界の食糧不足問題の解決策のひとつとして、世界的に期待が寄せられています。

ユーグレナが手掛ける製品は、クッキーなどの食料から飲料まで多岐にわたります。ミドリムシに抵抗があり敬遠している人でも口にしやすい味やテクスチャーにこだわり、さまざまな工夫が凝らされていることが特徴です。

食品以外の取り組みとして注力しているのが、ミドリムシから燃料をつくるバイオ燃料事業です。食糧だけでなく燃料問題の課題解決にも取り組む同社は、今後の動向にも関心を集めています。

森永乳業

森永乳業では、美味しさを長持ちさせるロングライフ製法により、食品の廃棄量を削減させる事業を行っています。

ロングライフ製法とは、無菌環境下で充填や包装を行い、保存料や防腐剤を使わずに常温で1ヶ月以上の長期保存を可能にした製法のことです。

レジャーなど屋外へ持って行くのにも便利なだけでなく、災害発生時には貴重な非常食としても活用することができます。

シャープ

シャープは、自社製品のオーブンや調理鍋と組み合わせたヘルシオデリというサービスを展開しています。

ヘルシオデリは、下処理した食材や調味料などのセットが自宅に届くサービスです。このセットをシャープ製のウォーターオーブン「ヘルシオ」に入れ、ボタンを押すだけで美味しい料理ができあがります。

また、水なし自動調理鍋「ヘルシオホットクック」に食材と調味料を入れるだけで調理可能な食材キットも販売。いずれも手軽に調理できるため、家庭におけるフードロス削減にも貢献しています。

上記のほか、手軽さと味へのこだわりの両方を求める人向けに、有名シェフ監修の食材キットも用意しています。レストランのメニューを自宅で簡単に味わえるように工夫を凝らしているのが魅力です。

パンフォーユー

フードロスの解消に貢献するベンチャー企業のパンフォーユーでは、地域のパン屋が抱えるあらゆる課題を、独自の冷凍技術とITを組み合わせて解決するサービスを提供しています。

主なサービスは、日本各地のパン屋の焼きたてのパンを冷凍し、毎月ランダムに届ける「パンスク」、オフィス向けに厳選したパン屋のパンを冷凍して届ける「オフィス・パンスク」、パン販売を手掛ける企業・個人とパン屋をつなぐプラットフォーム「パンフォーユーBiz」などです。

同社が保有する、焼きたてパンの美味しさをそのままに冷凍する技術は、焼成後、1日常温で保管したパンより品質が高いことが一般社団法人日本食品分析センターの検査で実証されています。

パンフォーユー代表取締役 矢野氏からのコメントはこちら
地域のパン屋さんと消費者をつなぐ「パンフォーユー」が資金調達

ネクストミーツ

ネクストミーツは、代替肉の研究開発や代替肉製品の企画・製造、EC事業およびウェブメディアの運営を行うベンチャー企業です。飲食店「焼肉ライク」にて焼肉用代替肉「NEXTカルビ」「NEXTハラミ」、自社ECにて鶏肉タイプの代替肉「NEXTチキン1.0」をはじめとした代替肉製品を販売しています。

今後、さらにあらゆる企業と連携しながら代替肉の研究を推進し、代替肉の原料・製品のクオリティ向上や、生産効率・サプライチェーンの質の向上を目標として掲げています。

また、世界展開を視野に入れ、アメリカ証券市場のOTCBBに上場し、時価総額が最高値で40億ドル(約4,400億円)超えを果たしたことや、現在10カ国において生産体制を整備していることも同社の魅力です。フードテック分野を牽引するベンチャー企業のひとつとして、大きな注目を集めています。

ネクストミーツ代表取締役 佐々木氏からのコメントはこちら
代替肉開発・製造の「ネクストミーツ」が10億円調達 世界展開の加速へ

まとめ

代替肉の製造や生産ラインの効率化、コロナ禍で需要が伸びたモバイルオーダーの普及など、日本でもフードテックを導入した生産現場やサービスが徐々に増えてきました。

食の分野は市場規模が大きいため、政府が力を入れるだけでなく投資家からも注目されており、さらなる成長が見込まれています。

森永乳業といった大手企業も参入するなど、フードテック産業は世界的にシェアを拡大しています。食に関連する世界的な社会課題の解決のためにも、今後の動向に注目したいところです。

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(編集:創業手帳編集部)

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