IT経営ワークス 本間 卓哉|IT顧問サービスで企業のDXを実現
企業が弁護士・税理士と顧問契約をするように「IT顧問」の存在も重要になる
「DX化」に着手しつつも、単なる「デジタル化」に留まり、業務効率化や売上UPに繋げられない企業が多くあります。さらに、変化の激しいIT分野に強い人材が不足しており、企業をリスクから守る体制づくりが必要な時代です。
このような企業のITにまつわる業務を支えるために「IT顧問サービス」を始めとして、様々なIT関連事業を行っているのが、IT経営ワークスの本間さんです。
そこで今回は、本間さんに企業が抱えるITの課題と解決策、社員0人で組織化を成功させるコツについて、創業手帳の大久保が聞きました。
株式会社IT経営ワークス 代表取締役
1981年生まれ。適切なITツールの選定から導入・サポート、ウェブマーケティング支援までを担うITの総合専門機関として、「IT顧問サービス」を主軸に、数多くの企業で業務効率化と売り上げアップを実現。主な著書に『全社員生産性10倍計画』、『売上が上がるバックオフィス最適化マップ』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
営業やIT企業を経て「IT経営ワークス」を創業
大久保:これまでの経歴から教えてください。
本間:社会人として最初に入社した会社は、ホームページ制作パッケージをリースで売るゴリゴリの営業会社でした。
そこでは、営業マンとしてではなく、カスタマーサポートとしてクレーム処理対応をしていました。
ただお客様の怒りを抑える仕事だけでは楽しくないので、時代の流れに合わせた「売れる仕組み」を勉強しました。その知識を実践することで、Webマーケティング全般の経験が積めました。
4年ほど仕事をしたのち、次のステップとして、SEO対策ツールやセキュリティソフトの販売をメインで行っている、IT企業に転職しました。
当時のビジネスモデルとしては、無料で体験してもらい、気に入ってもらえれば有償化していただくというフリーミアムモデルが流行りでした。これらをインターネットで完結させているだけでなく、徹底的に作業を効率化している体制を整えていました。
そのおかげで、時間にもゆとりができますし、給与も良かったです。
従業員もイキイキしていて、営業会社から来た私としては、まるで別世界でした。
社内ベンチャーとして「IT顧問サービス」を開始
大久保:その2社の経験が起業に繋がったのですか?
本間:はい。そこで働く中で、起業につながる疑問を持つことになります。
IT技術は進歩する一方で、それを多くのビジネスパーソンが使いこなせていない。
このギャップを埋めるための仕事をしたいと考え、企業のIT技術活用を支援する事業を立ち上げることにしました。イメージとしては、弁護士や税理士のITバージョンの顧問という位置付けです。
そこで勤めている企業の社長に起業の相談をしたところ、ここで挑戦してみなさいと言っていただき、社内ベンチャーとして半年間やってみると、ある程度の利益も確保できる様になったため、独立に至りました。
大久保:元々人に教えたり、支援することが得意でしたか?
本間:コンサル領域は、私自身とても好きなものです。
そこから事業拡大をしていこうと考えると、組織化して人に教えていかなければなりません。
ですが、コンサル業は特に人を育てても巣立たれます。これは私のやりたいことではありません。
それならば、同じ志を持った人をネットワーク化させて、顧客の課題条件に合わせて人を当てがいながら、企業のDX推進をしていきたいと思いました。
大久保:クラウドソーシングとの主な違いは何ですか?
本間:スポットではなく、継続で仕事をしていくスタイル、という点で違いがあります。
正社員で雇用するわけではないため、やめられるリスクを回避できます。
プロジェクトや案件ベースでアサインして、それに対しての対価がもらえるシステムです。
大久保:形になるまでにかかった時間はどのくらいですか?
本間:2〜3年ほどかかりました。
大久保:働き方改革などもありますが、時代に合ってそうですね。
本間:おっしゃる通りです。
特に感じたこととしては、時間に拘束されず、やるべきことをやって、それに対して報酬をもらえればよいと思っている人が一定数いるということです。
大久保:特にコンサルは、時給で成果を換算することはできませんよね。
単価をあげることについて
大久保:お1人で事業を多角化されたとお聞きしましたが、それは大変ではありませんでしたか?
本間:1人で全てをやっていると、当然疲れます。
そのため、私以外でもできるタスクを徹底的に辞めて、考える領域に専念できる環境を作っていきました。
また、自分自身がトップに立たなくても動く仕組み作りのための人材を揃えて、事業を広げていきました。
大久保:コンサルだと特に、稼働の単価をあげていくことを意識しなければいけないと思いますが、その点いかがですか?
本間:大変重要なポイントです。
大前提として、安い金額でスタートしてしまうと、あとで金額を上げることはできません。
ITコンサルティングと言っても、1人のサービスではなく、チームで入ることとなります。
また、企業の中にITに強い人はなかなかいません。社員を1人雇うと考えたら、安いと思います。
正社員0人でも組織化づくりは可能
大久保:チームがなく1人でやっているところと、正社員0人でやっているところ、似ている様で全く体制が違うんですね。
本間:チームを作るためにも「一般社団法人IT顧問化協会」を立ち上げました。
知識のある人たちを集め、ネットワークで繋げることで、仕事を形にするサイクルを作りました。
IT顧問というサービス自体は、まだ世に浸透していませんが、私としては、1社に1人、IT顧問がつくべきだと思っています。
単なるコンサル契約ではなく、顧問契約を結ばせていただければ、IT関連のリスクから企業をお守りできることが強みでもあります。
大久保:IT導入にも段階があると思います。
最初必要だったIT人材だけでなく、別領域のIT人材も後から必要にもなるため、新卒で人を雇うよりスムーズですよね。
日本では法人が約200万社あると言われているため、絶対的に人材が足りてないです。
本間:中堅企業には常駐型の情報システム部門があったりしますが、今の時代はリモートで保守やサポートといったこともできてしまいます。
人を配置すればよいのではなく、遠隔や外部リソースでも十分対応できてしまいます。
これはあらゆる仕事でもいえることだと思います。
外注フリーランスのモチベーションを維持する工夫
大久保:社員とフリーランスのマネジメントにおいての違いは何ですか?
本間:フリーランスには、心理的安全性を感じられていないと思います。
次の仕事どうしよう、次のプロジェクトはあるのか、というところを安心させてあげると、長期的に一緒に歩いていけます。
大久保:どのように安心感を与えているのでしょうか?
本間:次の仕事まで期間が少し空いた場合でも、定額でお金を払うようにしています。
これは、人材が離れた後に、またゼロから人を探す手間を省くためでもあります。
大久保:創業手帳としても、フリーの方と仕事をすることもありますが、下請けなどではなくフラットな関係で働きやすさを意識した関係構築を築くことで、長期で関係が続いています。
本間:究極的には雇用していないのに、営業してくれる関係性になれると一番ありがたいです。
大久保:発注する側が社長だった場合、それは本当にありがたいですね。
マネジメントと言っても、新卒の社員教育だけでなく、フリーランスのマネジメント、AIのマネジメントなど多岐に渡っている時代です。
そこで本間さんが前に出なくても動く事業の仕組みを作って、足りない領域をフリーランスを使い、そして社員がいる、というバランスをうまくとっており、さらに顧問という立ち位置が重要になってくるということでしょうか?
本間:おっしゃる通りです。とはいえ、企業によってニーズが異なるため、完全にパッケージ化はできません。
アドバイスだけお願いしたいというところから、しっかりと入り込んで一緒にやってほしいというところもあります。
さらに、本音を言わない企業もいるため、課題を言語化するということもやっています。
DXには時代に合わせて「変わり続けられる体制」が重要
大久保:課題の整理は、とても難しい領域だと思いますが、どのように行われているのでしょうか?
本間:よくあるケースとして、DXというとデジタルツールを入れれば良いと思っている企業が多いです。しかし、その手前で、前提を整えることが重要です。
どこの業務に課題があるのか、というところを明確にして、その解決手段としてツールを使う検討をしなければいけません。
大久保:ベンダーとしては、ツールを入れてもらうことが目的になってしまいますよね。
本間:そこを我々が業務整理して、何が必要なのかを考えます。
DXの領域で最も重要なことは「変わり続けられる体制」です。
今までの業務システムでは、何千万とするシステムを導入して、長く使っていくスタイルだったと思いますが、今は時代の流れが凄まじく進歩して変化していきます。
その時その時の会社の規模や時流に合わせて、適切なデジタルツールを使い分ける必要があります。
「1事業=1企業」と分社化するメリット
大久保:IT経営ワークスさんがやられている事業は、どのような分け方になっているのでしょうか?
本間:ITの軸で事業を進めてきた中で、少しずつ枝分かれしたものがあります。
1つ目は、先ほどお話しした一般社団法人IT顧問化協会です。
2つ目は、システム開発事業です。DX化の話を進めていく中で、オリジナルのシステムを開発することも多いため、ベトナムとジョイントベンチャー(※1)で株式会社JVXを立ち上げました。
3つ目は、クライアント企業を支援する中で、助成金や補助金の活用に関する相談が多いので、申請をサポートする事業と、根本的に、リソースが足りないという相談もあるので、BPO(※2)ソリューションを提供する株式会社ウィズレイワがあります。
4つ目は、クリエイティブ系の会社です。Webサイトを見直したい、名刺を作り直したいといった、表現や訴求に悩まれているニーズがあるため、その企業の業績に貢献する寄り添い型のクリエイティブサービスとして、Protea Catalyst株式会社を設立しました。
5つ目は、バケーションレンタル(民泊)を経営しており、全国で40箇所展開していたりもします。
大久保:それらは会社として分ける意味があるのでしょうか?
本間:会社を分けることで、そこにコミットする人を充てられます。
会社の中の1事業とすると、注力すべき箇所が散漫してしまいます。
さらに、1事業に対して1つ会社を立てる考えで、収益化できなければ、最悪閉じれば良いと思っています。
そして、やはり分社化した方が、働く人のモチベーションが上がります。
※1:ジョイントベンチャー・・・複数の企業や組織がお互いに出資して、新しい会社を立ち上げて事業を行うこと
※2:BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)・・・企業運営上の業務やビジネスプロセスを専門企業に外部委託すること
新しいことを始めるためには
大久保:新しいことを始めるのは大変だと思いますが、その点はいかがですか?
本間:私は最初、いきなり起業するのではなく、社内起業から始めたため、同じ様に二足のわらじからスタートするのが良いと思っています。
新しいことを始められない、続かないという人は、どこまでにどうなりたいかを、具体的に考えられていない人が多いです。
大久保:社員数や売り上げではなく、利益や企業価値を指標におくことが大事ですよね。
本間:そのため、「どこまでにどうなりたいか」のマインドを持っている人がいたら、一緒に成長していけるような関係性を築くようにしています。
大久保:その方が人を雇いたいと言った時はどのようにしていますか?
本間:必要であれば、人を入れています。
例でいうと、株式会社請負ワークスという会社を立ち上げました。これは、デスクワークの請負ではなく、工場の請負工程において生産性を高めるコンサルティングをしたり、請負業務を担う会社です。
実際に請負現場で働いていた人が、自分だったら「もっと生産性上げられる」「働く人のマネジメントをすればもっとイキイキ働ける環境にできる」という課題を感じていました。
現場のノウハウはわかるのに、経営の知識や取り組み方がわからない、という方と一緒に会社を立ち上げ、仕事をすることになりました。
今では、数十名規模の雇用をして、離職率の低さとデジタル活用を強みに事業を展開しています。
自分が行動したくなるまで「念じる」ことが成功の鍵
大久保:起業家に向けてのメッセージをお願いします。
本間:「具体的にどうなりたいか」これを念じていると、自ずと形になると思っています。
念じていると、自然と行動に移せるようになります。
大久保:ひとりで考えることは難しいと思いますが、どのような時に念じているのでしょうか?
本間:ずっと考えていますね(笑
ひとり起業だとモチベーションが続かないこともありますが、その方の場合は念じるものがないんだと思います。
行動にならないのであれば、念じ方が足りないのです。
また、組織を作るのではなく、チームを作る意識をしてください。
(取材協力:
株式会社IT経営ワークス 代表取締役 本間 卓哉)
(編集: 創業手帳編集部)