民泊を始めるには何が必要?3つの手続きをわかりやすく解説

創業手帳

民泊経営に必要な手続きを正しく理解しよう

(2019/02/26更新)

近年増加している「民泊」。大きな企業ではなく個人でも運営ができるということで、民泊ビジネスへの挑戦を考えている方も多いのではないでしょうか?

とはいえ、お客様にはお金を払って泊まっていただくわけですから、営業を始めるにはそれなりの手続きが必要です。たった一つの手続きミスが数百万円の損失や刑事罰につながってしまうこともあるのです。

ここでは、民泊経営を始めるために必要な行政手続きについての概要や注意点を、行政書士の松山 則貴さんに解説いただきました。

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そもそも民泊とは?

特に法律上の定義はありませんが、民泊とは一般的に「自宅(戸建やマンション)の一部や全部を、他人に有償で宿泊させること」を指します。

私達が民泊を行おうと思った場合、原則として行政の許可を取ったり、所定の届出を行うことになっており(以下、「許可等」といいます)、許可等を取らずに勝手に営業を行うと、違法民泊として刑事罰の対象となります。

民泊経営を始めるための3つのルート

民泊経営を始めるには、次の3つの手続きのうち、いずれかを行う必要があります。

  • 住宅宿泊事業法の届出(新法民泊)
  • 旅館業法の許可
  • 特区民泊の認定

それぞれ、根拠となる法律や自治体の条例ごとに求められる要件が大きく異なりますので、これから民泊経営を行いたい物件に応じて、適切に選択する必要があります。

1.住宅宿泊事業法の届出(新法民泊)

平成30年6月にスタートした、いわゆる「新法民泊」と呼ばれる制度です(以下:「新法民泊」)。後述する2つの手続に比べてハードルが低いので、「民泊をとりあえず始めたい」という方にはおすすめです。

ただし、メリットだけでなく、様々なデメリットがありますので、果たして実際に運営が可能なのか、ビジネスとして収益構造が確保できるのかを慎重に見極める必要があります。

メリット
形式的な審査で営業スタートが可能

他の手続きが「許可」や「認定」といって実質的な審査があるのに対し、新法民泊では「届出」により形式的な審査を経て受理をされれば良いので、比較的早期に営業がスタートできます。ただし、自治体によっては実質的審査に近い厳しいチェックを行う場合もあるので、注意が必要です。

設備は4点セットがあればOK

キッチン・トイレ・お風呂・洗面台のいわゆる「4点セット」が揃っていれば、設備の追加工事などは原則として不要です。「住宅」として普通に使われている部屋であれば問題ないかと思いますが、事務所や倉庫として使われている場合は注意が必要です。そもそも法律の名称が「住宅」宿泊事業法であるように、「住宅」として使用されている部屋でしか民泊は認められませんのでご注意ください。

用途変更の手続や工事が不要

住宅を宿泊施設に変更する場合、建築基準法上の用途が「一戸建て住宅(または共同住宅)」から「ホテルまたは旅館」に変更になります。前者と後者では、建築基準法で求められる構造の要件が異なるため、用途変更の確認申請という手続や大規模な工事が必要になる場合があります。新法民泊は、用途を変更せずに「一戸建て住宅(または共同住宅)」のまま営業ができるため、こうした手続や工事の必要がないのが大きなメリットです。

デメリット
年間営業可能日数に制限あり

一番のネックは、年間の営業可能日数が最大でも180日であることです。年間の約半分しか営業できないので、本格的な民泊ビジネスをお考えの場合は注意が必要です。さらに、自治体によっては条例で個別の制限(例:住居専用地域では土日しか営業できない、など)をかけている場合があります。物件の所在する自治体の条例(及び関連法令)を確認し、その物件では年間何日まで営業できるのかを必ず確認してください。

住宅宿泊管理業者への委託が必要

家主が同居(常駐)しない、いわゆる家主不在型民泊の場合、国土交通省に登録をした住宅宿泊管理業者(運営代行業者)に管理業務を委託する必要があります。民泊の場合、ICT機器などを使って鍵の受け渡しを遠隔で行う場合が多いかと思います。ですが、自治体によっては対面での鍵の受渡しや本人確認を求める場合があります。そうした対応が管理業者で可能かどうか、必ず確認してください。

また、自治体が事業ゴミの収集(いわゆる事業ゴミシールを貼って収集に出すスタイル)を行っていない場合、民間の廃棄物処理業者と個別契約を結んで、ゴミ収集を依頼する必要があります。管理代行業者と契約する場合には、民間廃棄物処理業者との取引があるかどうかも確認すると良いでしょう。

2.旅館業法の許可

365日フルで宿泊施設を営業するための制度です。もともと大規模なホテルや旅館などを想定した法律のため、要件がとても厳しく、小規模な民泊施設をこれに適合させるのは非常にハードルが高かったのですが、平成30年6月の法改正で緩和され、民泊でも多少は使いやすくなりました。

旅館業法上、宿泊施設は営業形態により「旅館・ホテル営業」と「簡易宿所営業」に分けられます。

  • 旅行・ホテル営業
    1部屋を家族や友人のグループ単位で宿泊させる形態
    (例:ビジネスホテルや旅館)
  • 簡易宿所営業
    1部屋を他人同士の複数グループで宿泊させる形態
    (例:カプセルホテルやゲストハウス)

それぞれ設備の要件が異なりますので、物件の構造や現状の設備、周辺地域のニーズなどに合わせて選ぶことになります。

メリット
365日のフル営業が可能

年間を通して常時営業できるのが最大のメリットです。

デメリット
そもそも営業ができない場所がある

都市計画法上の用途地域や建築基準法、自治体の条例の問題で、そもそも旅館業法の許可が一切取れない場所があるので注意が必要です。内装工事や消防設備など大規模な工事に着手した後に「実は旅館業ができない場所でした」ということになれば、莫大な損害が発生することになります。事前に慎重に調査しましょう。

フロント(または代替設備)やスタッフ常駐が必要

建物内にフロント(玄関帳場)を設置するか、近隣にフロント機能を持つ管理事務所を設置する義務があります。フロント(または管理事務所)にはスタッフを24時間常駐させる必要があり、人件費や家賃も予算にしっかり計上してください。管理事務所の場所については、徒歩10分圏内に置かなければならないという自治体もありますので、近隣にそうした場所を確保できるかどうかを十分に検討する必要があります。

用途変更が必要

前述のとおり、旅館業の場合、建築基準法上の建物の用途が「ホテルまたは旅館」に変わります。住宅とは構造設備の要件が異なるため、大規模な改修工事が必要になる場合があります。特に、「建築当時は合法だったが、現在の法律では違法」という状態の建物(いわゆる既存不適格)については用途変更が不可能で、単なる改装ではなく全面建替えが必要になる場合もあります。

また、旅館業を行う部分の延べ面積が100㎡超である場合、用途変更の確認申請という手続が必要になります(建築基準法の改正により、今後200㎡に引き上げられる予定)。

よく「100㎡以下なら用途変更は必要ないですよね?」という問い合わせを受けますが、20㎡であっても1,000㎡であっても、住宅などで旅館業を行う場合は「用途変更」になります。

誤解されている方も多いややこしいポイントですので、整理しておきます。

用途変更 確認申請
100㎡以下 必要 不要
100㎡超 必要 必要

100㎡以下では確認申請という手続が不要なだけで、用途変更自体は必要ということですね。

住宅と旅館では、当然、建築基準法上求められる構造設備の要件は異なります。その建物が旅館としての要件を充たしていなければ、違法建築物ということになってしまいます。

その他、近隣の教育機関への意見照会や、近隣住民を対象とした説明会の開催義務など(自治体による)、様々な手続が必要になります。営業開始まで数ヶ月~半年程度かかる場合もありますので、余裕を持って計画しましょう。

3.特区民泊の認定

最後に特区民泊ですが、正式には「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」といい、外国人旅行客を対象にした民泊サービスであれば旅館業法の適用が除外されるという制度(平成28年1月スタート)です。東京都大田区、大阪府大阪市など国家戦略特区に指定された地域での民泊のみが対象です。

地域ごとにルールが異なりますので、ここでは東京都大田区を例に、簡単にご説明いたします。

メリット
フロント(または代替措置)が不要

旅館業法の適用がないため、フロントや管理人の常駐義務がありません。

用途変更が不要

建築基準法上の用途も「住宅」のまま営業できるので、広さや構造に関わらず、大きな工事や確認申請などの手続が不要です。前述の通り、建築基準法の問題は大変ハードルが高いので、このメリットは非常に大きいといえます。

デメリット
特区指定された地域の民泊のみが対象

原稿執筆時点では、例えば東京都だと大田区でしか使うことができません。特区は少しずつ全国に広がっているので、今後に期待されます。

最低滞在日数に縛りがある

1グループあたり、最低(2泊)3日は滞在させなければなりません。

民泊営業の際の注意点

最後に、以上の3つのルートのどれを選ぶかに関わらず、共通して気をつけたいポイントをご紹介します。

消防設備に注意

民泊を行う場合、消防法上はすべて特定防火対象物(旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの)として扱われます。戸建住宅の1部屋を貸し出すだけであっても、消防法上は特定防火対象物になるため、一般住宅とは異なり、より高性能の消防設備の設置が求められます。

特に、自動火災報知設備(火災による煙や熱を感知して、警報ベルを鳴らすシステム)は、建物によっては大規模な工事が必要になる場合があり、思わぬ大きな費用がかかる(または工事そのものが不可能)ことがありますので注意してください。

近隣住民対策

今まで住宅だったところを宿泊施設として使用するわけですから、騒音やゴミの出し方などで近隣住民の方に迷惑をかけてしまうことも大いに想定されます。宿泊施設の事業者として、近隣住民の方と末永くお付き合いをしていくためにも、迷惑をかけないよう十分な配慮が必要です。

上で挙げた3つの手続すべてにおいて、近隣住民の方に対して事前に営業内容をご説明し、十分にご理解をいただくための周知ルールが定められています。具体的な周知方法(書面の配布、標識の掲示、説明会の開催など)は自治体により異なりますので、条例その他施行規則等をご確認ください。

まとめ

民泊を行うための許可等の手続は、当該法律以外に、条例や政令(施行規則、施行細則、ガイドラインなど含む)、消防法、建築基準法など多岐に渡る法令知識が必要になります。

たった1つでもルールを見落としてしまったら、何百万円もかかる工事のやり直しが必要になったり、気づかず営業してしまったら違法営業(=刑事罰あり)になってしまうことも。事前にしっかりと確認をし、くれぐれも慎重に進めてくださいね。

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(監修:マツヤマ行政書士事務所 行政書士 松山 則貴
(編集:創業手帳編集部)

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