アディッシュ 江戸浩樹|グロース支援・アダプション支援を軸に展開!カスタマーサクセス視点で社会課題を解決する
スタートアップの成長支援とインターネットリスク対策で躍進!事業と組織を拡大させた秘訣を紐解く
近年ますます注目を集めているカスタマーサクセスに加え、ソーシャルメディアを中心に誹謗中傷や炎上、ネットいじめなどのリスク対策は、現代の企業が取り組むべき課題として重視されています。
この領域における支援サービスを提供し、多くの企業の成長をバックアップしながら成功を続けているのがアディッシュです。
同社はミッション「つながりを常によろこびに」、ビジョン「情報社会をあなたの居場所に」を掲げ、デジタルエコノミーに特化したカスタマーサクセスソリューション・プロバイダーとして事業を運営。
スタートアップの成長支援や、スタートアップが生み出したサービスやテクノロジーによって新たに発生する課題を、カスタマーサクセスという視点に立ちながら解決する「グロース支援サービス」「アダプション支援サービス」を展開しています。
今回は代表取締役を務める江戸さんの起業までの経緯や、アディッシュを成功に導いた秘訣について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。
アディッシュ株式会社 代表取締役
2004年に株式会社ガイアックス入社後、インターネットモニタリング事業、学校非公式サイト対策事業、ソーシャルアプリサポート事業の立ち上げを経て、2014年にアディッシュ株式会社を設立、代表取締役に就任。アディッシュプラス株式会社取締役、adish International Corporation取締役会長、一般財団法人全国SNSカウンセリング協議会理事(以上、現任)。東京大学農学部生命化学・工学専修卒。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
ガイアックスでの多彩な経験を糧に。成長した事業をカーブアウトして会社設立
大久保:まずはご経歴についてお聞かせ願えますか。
江戸:東京大学を卒業後、2004年にガイアックスに入社し、Webサイトの企画開発業務に従事しました。
もともと学生時代から事業責任者・ビジネス責任者になることを目指していましたので、就活時には「起業家精神を養えて、ノウハウが得られる環境で働きたい」と考えていたんですね。その過程で出会ったのがガイアックスです。自ら事業を立ち上げて独立することを支援してくれる会社でした。
大久保:当時立ち上げた事業を切り出し、カーブアウトの形で会社を設立されたそうですね。起業までの経緯についてお聞かせください。
江戸:2007年にインターネットやソーシャルメディアにおけるコミュニケーション上の課題を解決するためのインターネットモニタリング事業を起こし、その後、ネットいじめ対策事業、さらにソーシャルアプリ向けカスタマーサポート事業を立ち上げました。
当初から「会社化しよう」と想定していたわけではなかったのですが、「この事業はもっと広げていけるはずだ」という手応えがあったんです。
社会的なニーズにもクライアントの悩みにもマッチしていましたし、事業を運営しながら「今後さらに企業も個人もソーシャルメディアの活用機会が増える」との未来が明確に見えていました。比例して誹謗中傷やネットいじめの問題も増加してしまうからこそ、社会課題として今以上の対策が必要だなと。
大久保:自然な流れで会社化されたんですね。
江戸:はい。立ち上げた3事業を承継し、2014年にアディッシュを設立しました。解像度が高い状態で始めることができて有り難かったです。
アディッシュを支える2つの事業「アダプション支援サービス」と「グロース支援サービス」
大久保:江戸さんは独立後、事業も組織も大きく拡大されました。素晴らしい成功を続けていらっしゃいますが、現在の事業についてお聞かせいただけますか。
江戸:弊社はミッション「つながりを常によろこびに」のもと、アダプション支援サービスとグロース支援サービスの2つを事業の柱に、多彩なプロダクトを展開しています。
アダプション支援サービスはテクノロジーの発展に伴い発生する課題を解決する事業で、会社設立時から伸ばしてきました。
自社内で炎上対策を行ったり、炎上メカニズムやSNSリテラシーを学ぶことができるSaaSプロダクト「Pazu」や、学校や自治体向けにインターネット上での生徒の個人情報流出のモニタリングからネットいじめ対策、ソーシャルメディアの活用といったリテラシー教育まで提供する「スクールガーディアン」など、企業・団体の規模を問わず現代社会で必須とされているインターネット上のリスク対策を支援するサービスを提供しています。
大久保:大手から中小、ベンチャー企業まで、幅広い顧客層に支持されていらっしゃいますね。続いてグロース支援サービスについてもお聞かせください。
江戸:グロース支援サービスは、カスタマーに関わる課題を解決してスタートアップの急成長を支援するサービスです。
近年重視されているカスタマーサクセスやカスタマーサポートをバックアップする事業で、長年培ってきた弊社独自のノウハウや体制をフル活用しながらカスタマーサクセスのコンサルティングから常駐・派遣サービス、人材紹介まで、スタートアップ企業に特化したサービスで急成長する企業を総合支援しています。
事業拡大を成功させた秘訣は「事業内容がミッションに沿っているかどうか?」
大久保:現在ではグロース支援サービスを主軸として運営されているそうですね。SmartHRやakippaなど、急拡大したスタートアップをご支援されてきた実績も素晴らしいです。
江戸:ありがとうございます。スタートアップはその成長とともに「より良い社会変革を起こそう」という志を持って事業運営されていますので、日本社会の発展のためにも大切な存在です。
弊社ではこうしたスタートアップの皆さんと「一緒に成長したい」という強い想いで支援を続けています。
大久保:御社はアダプション支援サービスから始めて、グロース支援サービスを次の主力として軌道に乗せました。事業拡大は「言うは易し行うは難し」で、うまくいかず悩んでいらっしゃる起業家も少なくありません。江戸さんの成功の秘訣についてお教えいただいてもよろしいでしょうか。
江戸:まだまだ成功だと思っているわけではありませんが、その前提で、私が大事にしているのは「事業内容がミッション・ビジョンに沿っているかどうか?」ということです。
弊社では創業以来、アダプション支援サービスを「インターネットを居心地のいい場所にしたい」という想いで運営を続けています。弊社のミッションである「つながりを常によろこびに」を実現する事業なんですね。
一方、グロース支援サービスはカスタマーに関する課題を解決するための事業です。
カスタマーサクセスは、能動的に顧客にはたらきかけながら顧客の成功体験の実現を支援します。この各企業のカスタマーサクセスをバックアップするグロース支援サービスは「企業と顧客の関係性をより良く発展させていく」ことを目的としていますので、こちらもミッションに合致します。
インターネットという場をより良くしていくためのサービスと、企業と顧客の関係性をより良くしていくためのサービス。目的は異なりますが、「つながりを常によろこびに」の実現に対する矛盾が一切ないんですね。
大久保:自社のテーマに合っているかどうか?というポイントが事業拡大において非常に重要なんですね。
江戸:はい。きちんとミッション・ビジョンに沿っていれば、相乗効果で自然と拡大させていくことができます。
組織拡大を実現する、「採用マーケティング」の概念で戦略を立て実行する独自手法
大久保:事業拡大とともに、非常に難しい組織の拡大にも成功されていらっしゃるのが御社の強みのひとつではないかと感じています。採用面で工夫されたポイントについてもお聞かせいただけますか。
江戸:弊社では「採用マーケティング」というチームで戦略を立て、経営陣主導のもと採用活動を進めてきました。
個人的な見解なのですが、現代の採用活動はWEBマーケティングによく似ていると思っています。
WEBマーケティングでは「流入アクセスの増加」を目的とし、ペルソナを設定してその心理や行動を分析しながら適切な施策を実施していきますよね。
この基本的な考え方は、採用に応用することができます。
採用における目的は「自社の理念や目標に合った人材の確保」です。そのためには採用ターゲットを設定し、その属性を紐解きながら心理や行動などを分析する作業が欠かせません。
次に人材紹介会社やリファラル採用、自社HPの採用ページを活用したり、就活・転職サイトやWantedlyなどに掲載するなど、WEBマーケティングにおける施策を実施します。
つまりWEBマーケティングも採用も「ペルソナを解析して流入を増加させながらクロージングをかける」という流れが一致しているんです。
昔から「すごく似ているな」と思っていましたので、弊社では「採用マーケティング」で組織拡大を実現してきました。
大久保:言われてみると、確かにその通りで驚きました。御社のようにWEBマーケティング事業を展開する企業ではなくても「採用におけるマーケティング発想」は活用できますか?
江戸:もちろんです。現在ではどの企業でも自社製品やサービスを開発する際に、必ずなんらかのマーケティング活動を行っています。でなければ企業活動が成り立たないはずですので、マーケティング会社以外でも十分応用できる概念です。
どんな企業でも必ず「ニッチな強み」を持っています。その強みをさらに活かすための採用活動を実現できるのが「採用マーケティング」なんですね。採用面でお悩みの起業家の方々の参考になればうれしいです。
成功するスタートアップの共通点は「圧倒的に顧客に支持されている」こと
大久保:長きにわたり多くの企業を支援されてきた江戸さんの視点で見て、「こういう会社は伸びる」という成功するスタートアップの共通点についてお教えいただけますか。
江戸:やはり「圧倒的に顧客に支持されている」ことではないでしょうか。それがすべてと言ってもいいかもしれません。
加えて「組織が優れている」という要素も共通しています。
スタートアップでは「スタートダッシュの馬力で伸ばす」や「実現するまでハッタリだとしても進める」といったケースもありますよね。
この「ハッタリ」は「未来にはそうなるから信じてほしい」という意味であり、それはそれで非常に大事な要素です。
ただしそればかりだと、顧客のための本質的な経営からは遠くなってしまう側面もあります。
最終的に「自社のプロダクトやサービスが顧客から厚い支持を受けているかどうか?」「顧客や市場に対して驚きや感動を与えることができているかどうか?」をひたすら追求しながら実現している企業が勝つというのは本質だと実感しているんです。
そして突き詰めていくと、やっぱりこうした本質を重視している企業が最も強いなと。
とはいえ、弊社もできていないことがたくさんありますので、スタートアップの成功についても、まさに「言うは易し行うは難し」ですね。
大久保:「顧客に支持されているから成功している」というのは、当たり前の話のようですが、だからこそ絶対に忘れてはならない大切な要素なんですよね。
江戸:おっしゃる通りです。やたらと難しい攻め手を考えながら実行しようとしなくても「顧客に支持されていれば、いずれ必ず成功する」んですね。
スタートアップが重視すべき本質は「顧客に対してより良い価値を提供する」ことではないでしょうか。まずは繰り返しその基本に立ち返ることが大事だと思います。
ミッション「つながりを常によろこびに」のもと、さらなる成長と社会貢献を目指す
大久保:今後の展望についてお聞かせください。
江戸:現在弊社では「スタートアップのカスタマーサクセスにおけるトップパートナーになりたい」という想いで、理想像を描きながら実現を目指しています。
そのうえで、今後多岐にわたる展開ができると考えているんです。
これから大手企業でもカスタマーサクセスが大きな課題となりますので、スタートアップでの実績やノウハウを活かしながらエンタープライズ領域でのシェア拡大も視野に入れています。
また、誹謗中傷やリスク対策などのアダプション系であるSaaSサービスのラインナップ拡充も戦略のひとつとして検討しているところです。
いずれにしても、弊社のミッション「つながりを常によろこびに」のもと、使命感を持って高い成果をあげていきたいと考えています。
大久保:最後に、起業家に向けてメッセージをいただけますか。
江戸:先ほどお話ししましたが、スタートアップは「より良い社会変革を起こそう」という志を持って成長を目指しながら事業運営していますので、特にこれからの日本においてスタートアップの力が重要だと捉えています。
私自身もスタートアップから始めましたし、今でもスタートアップの一員という意識で会社運営を続けていますので「一緒に伸びていきたい」という想いが強いです。
日本社会が発展を遂げるためにも、「一緒に事業を伸ばしていこう」と思ってくださる方々が増えていくとうれしいなと思っています。ぜひ共に手を携え、力を出し合いながら前進していきたいです。
大久保の感想
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(取材協力:
アディッシュ株式会社 代表取締役 江戸 浩樹)
(編集: 創業手帳編集部)
風評被害対策の次の柱にしているサポート・カスタマーサクセスはスタートアップの要とも言える要素だ。しかしノウハウだけでなく、ツールの使いこなしや、今の時代は採用が難しい面もある。
そうしたカスタマーサクセスをまるごと請け負っているのがアディッシュだ。支援実績顧客にはSmartHRやペイトナー、akippaなど創業手帳が注目して取材した急成長企業が名前を連ねる。
アディッシュ江戸さんの成功から自分自身も勉強になり、他の起業家・経営者にも参考になりそうな5つのポイントは下記だ。
アディッシュ江戸さん成功の5つのポイント
1.起業時に前の会社のアセットを上手く使ったこと
起業時にはゼロから挑戦するのは大変だ。親和性からも前の会社の支援を得られればベストだが、そうもいかないケースがほとんどだろう。江戸さんは会社選び、前の会社との円滑な関係での独立など、前の会社に上手く協力してもらったのは学ぶべき点だ。
2.始めやすい事業から始めて新しい柱を追加したこと
最初の風評被害対策はノウハウ勝負の面がある業態で、一人でもはじめられた。そこから拡大し、さらに人員が必要なカスタマーサクセスなど体力が必要な業態に参入した。カスタマーサクセスは当然、カスタマーサポートのスタッフを雇用する必要があり、請負的な業務なのでマネタイズは早い一方、採用が大量に必要な業態だが最初からそこに行かなかった。いきなり資本や人員が必要な業態ではなくスモールスタートで、そこから業容を拡大したのも学ぶべき点だ。
3.ソリューションを統合したこと
アディッシュのカスタマーサクセスは、①ノウハウ(コンサル)+②ツール+③スタッフの3つがセットになっている。例えば、コンサル会社、ツールの会社、コールセンター・もしくは人材会社のようにバラバラで提供されるものをセットで提供したことで、カスタマーサクセスという一つの目的に沿った統合的なサービスを提供した。個々にはすでに市場にあるサービスでも、まとめて統合することで、利便性や習熟度を高め、新しい価値やポジションを生み出したと言える。
4.ターゲットを絞ったこと
スタートアップ×カスタマーサクセスのようにやることを絞ったのも学ぶべき点だ。特に成長スタートアップはカスタマーサクセスの人員も会社の成長に伴って必要になる。成長している顧客とともに成長したといえる。最近ではスタートアップから大企業向けにも広がっているようだが、立ち上げ期にスタートアップ市場を狙ったのは正解だったと言える。あれもこれもでぼやけるより将来性のある市場に絞った、というのも成功の要因だったと言える。ターゲットを絞るということも他の起業家の参考になるポイントだ。
5.本質的に重要なテーマを扱っていること
カスタマーサクセスや信頼・評判醸成は軽視されがちだが、非常に重要で、事業成功の本質、要と言っても過言ではない。こうした非常に重要だけれども、なかなか手間がかかりできない、あるいは軽視されがちで未着手になりやすい領域は価値を生み出しやすい。こうした本質的に重要な価値を生み出すテーマを扱っているということも、見えにくく地味だが事業成功の背景にある。
最後に、江戸さんは的確ながら、ニコニコと丁寧に取材に答えていた。こうした人当たりの良さや話しやすさも意外に重要だ。起業家は想いが強いのでハードな言い方になりがちだが、若い江戸さんの柔らかで真摯な対応の素晴らしさは、自分も含めて見習いたい。