大手がスタートアップ買収で25%減税!創業手帳が背景を解説

tips

大企業によるスタートアップ(新興企業)買収の際の法人税が軽減される方向で検討されている。既に、オープンイノベーション税制と言って買収ではなく、出資(増資)の際に25%減税される仕組みがある。今回は買収でも25%控除される減税の仕組みだ。
また大企業による買収というのも一つのポイントだ。スタートアップ支援策の経産省の取材などを繰り返している創業手帳が、この制度の背景を解説した。

政府は大企業のお金を循環させようとしている

日本は景気が良くない印象とは裏腹に、日本の上場企業は過去最高益の会社が実は3分の1に達し日本全体で500兆円もの内部留保が積み上がっている。
今の日本の大企業で、利益や内部留保が積み上がっているのは、一見良いことだが、投資を積極的にしていた上での利益ではなく、本業での投資を控えて利益を出すというパターンも多い。
例えばamazonや日本ではAbemaに莫大な投資をしたサイバーエージェントが典型的だが長期的な利益のために成長投資を優先すると足元の利益は減る。
現在の日本の大手企業の利益は、このような長期的な投資や賃金上昇に必ずしも向かっていないのが現実だ。
スタートアップは基本的に目先の利益より長期的な利益に投資をする。
スタートアップに大企業が投資をすると国全体で見ると、大企業が投資をしている構造になる。
企業が内部留保でお金を取っておいても消費や雇用に回らないが、スタートアップが活発にお金を使うと人を雇用したり物を消費することが経済が活性化される。

政府からすると大企業が投資を活発化させると税金を使わずに経済を活性化させることができる。
25%の減税分は「呼び水」で大企業の投資の促進、資金の循環を狙っている。

新しい資本主義の一つの背景がこの「大企業の内部留保を吐き出させて経済を回す」という考え方だ。
国の財源は少子化や医療費の上昇で、財源が逼迫し予算の余裕が無い一方で、大企業の内部留保やキャッシュは積み上がっており、かつ大企業にとっても利益を吐き出して投資した方が将来の成長に取って良い。政府は日本経済を回す「財源」の一つとして企業の莫大な内部留保を考えていることが読み取れる。

M&Aが増えることについて

スタートアップは他人の資本を借りて大きい成長を目指すことに特徴がある。上場が一つのゴールだが、海外では大企業によるM&Aの方が選択肢として大きい。
スタートアップが大手企業に買収されてしまうことの懸念をする人もいるが、創業経営者の場合、買収されてそのまま会社に残るケースもあるが、莫大な売却益を得て次の事業を興すシリアルアントレプレナー(連続起業家)やエンジェル投資家となって大きな資金を得て次のステージに行くケースも多い。現実問題として毎年100社しかない新規上場(IPO)エグジットに対して、M&Aエグジットの方が間口が広い。昔は敬遠されていたM&Aエグジットも今では普通に語られるようになっている。リスクを取った起業家のゴールが増え報われる確率が上がることで起業にチャレンジする人が増えると日本の経済も活性化していくと思われる。この政策自体は内部留保の大きい大企業を狙った政策だが、スタートアップ間のM&Aや、非上場で元気の良い中堅企業を買い手にするような制度もあると尚良い。

関連記事
経産省の政策担当者に取材:オープンイノベーション促進税制

解説者紹介

大久保幸世 創業手帳 株式会社 ファウンダー

大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

創業手帳 ファウンダー 大久保幸世のプロフィールはこちら
カテゴリ トレンド
関連タグ CVC M&A スタートアップ
創業手帳
この記事を読んだ方が興味をもっている記事
一般社団法人設立サムネイル
一般社団法人の設立方法を徹底解説|手続きの流れ・必要書類・費用・メリットなど
【2025年最新】東京都の創業・起業者支援「創業助成金(創業助成事業)」について解説
小規模企業共済サムネイル
小規模企業共済とは?危ない?潰れる?加入手続きから解約方法、メリット・デメリットまで徹底解説!
起業するには何から始める?ゼロからできる起業のやり方【5ステップ解説】
持続化給付金の申請開始!最大200万円給付で事業を下支えー概要やポイントは?
起業の仕方サムネイル
起業の6ステップ。素人でも失敗しない起業の仕方を大解剖。起業の専門家が体験とデータで解説。

トレンドの創業手帳ニュース

関連するタグのニュース

【9月2日】起業家むけ「気になるニュース」まとめ
9月2日のニュースの中から、起業家がチェックしておきたいニュースをまとめました。 外国人留学生の経営管理ビザ切り替え容易に 国家戦略特区で起業促す 政府は、国家戦略特区内に限って、外国人留学生が保有す…
インドのホテル・スタートアップ「OYO」がコワーキング事業に進出
インドのグルガオンを拠点とするOYOは、「OYO Workplaces」を発表しました。 Wi-Fi接続、施設内キッチン、ハウスキーピング、倉庫、駐車場などのサービスを提供するコワーキング・スペースで…
米国を拠点とする植物工場スタートアップ「Oishii Farm」が55億円調達
2021年3月12日、Oishii Farmは、総額約55億円の資金調達を実施したことを発表しました。 日本人CEOが経営し米国を拠点とする植物工場スタートアップです。 独自開発の自動気象管理システム…
「スタートアップワールドカップ2024」世界決勝を現地速報!優勝はEarthgrid(米代表・プラズマでトンネル掘削)
2024年10月4日、世界最大級のビジネスピッチコンテスト「スタートアップワールドカップ(SWC)2024」の世界決勝戦が、米国・シリコンバレーで開催されました。 優勝はEarthgrid(米代表・プ…
【11/20開催】「DMM.make AKIBA 9周年イベント – MAKE THE FUTURE -」
合同会社DMM.comは、「DMM.make AKIBA 9周年イベント - MAKE THE FUTURE -」の開催を発表しました。 DMM.comは、ものづくりができるコワーキングスペース「DM…

大久保の視点

明治大学ビジコンで優勝&100万円獲得はゼファーさん明治大学2年「NEUROGICA」メンタルIoT
2025年3月14日(金)に明治大学・御茶ノ水キャンパスで第3回明治ビジネスチャレンジ(明治ビジチャレ)が明治大学経営学部主催で行われました。 明治大学の各…
(2025/3/14)
日本サブスク大賞2024グランプリはAI英会話スピークバディが受賞!
日本国内で唯一のサブスクリプション特化型イベント「日本サブスクリプションビジネス大賞2024」が、2024年12月4日(水)にベルサール六本木で開催されまし…
(2024/12/4)
国際団体エンデバージャパン「EndeavorJapanSummit 2024」を現地レポート!
パネルセッション例:中村幸一郎(Sozo Ventures ファウンダー・著名な投資家)、ヴァシリエフ・ソフィア市副市長(ブルガリアの首都) 「Endeav…
(2024/10/9)
創業手帳 ファウンダー 大久保幸世のプロフィールはこちら

注目のニュース

最新の創業手帳ニュース

創業時に役立つサービス特集