会社設立のメリット・デメリットとは?節税効果の高さに注目
会社設立のメリットは消費税免税!個人事業主が節税効果を求めて会社設立するタイミングと方法とは
個人で事業をしていると、気になるのが会社設立のメリットです。会社設立にはメリットが多くあるため、良いタイミングで会社設立を考える方は多いのではないでしょうか。
事業が順調な場合、節税などの面から個人事業主として働くよりも、会社設立したほうが状況が良くなることがあります。
会社設立を検討している方は、節税メリットを生かせるタイミングを検討してみましょう。
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この記事の目次
会社設立と個人事業主の特徴
会社設立は、個人として独立して働くのとは異なることが多いものです。
開業の仕方から定められたルールまで、会社と個人事業主の特徴の違いを理解しましょう。
設立のしかた
会社設立をするためには、定款の作成や認証(会社の形態によって異なる)、資本金の設定や登記など、いくつもの準備や手続きが必要です。
複雑で専門的な内容も多いため、場合によっては専門家の力を借りなければいけない場合もあるかもしれません。
一方、個人事業主の始め方はとても簡単です。開業届と青色申告承認申請書(申告方法によって必要がない場合も)を提出するだけで済みます。
また、開業届や青色申告承認申請書は、それほど専門性を求められる内容ではないため、初めて開業する人にとっても難易度はそれほど高くありません。
事業年度
会社と個人では、事業年度の決め方が違います。会社の場合には、事業年度をいつからいつまでにするか、任意で決められます。
しかし、個人の場合には1月1日から年末までと決まっており、自由に変更できません。
社会保険への加入
会社組織になると、社会保険への加入が義務となります。社会保険は社長を含む従業員が加入するもので、個人事業主が入るのは国民健康保険と国民年金です。
会社を設立したら自分ひとりだけであっても社会保険に加入しなければいけません。
従業員はその会社の加入している保険に入ることが定められ、法人の代表者も含まれます。ただし、役員報酬をもらっていない場合は例外です。
課せられる税金の種類
税金の種類も、会社と個人では異なります。会社に課せられる税金は法人税、個人に課せられる税金は所得税です。
この税金の種類の違いによって、以下で述べる節税面に差が出ます。また、課税に関するルールも、法人税と所得税では異なります。
個人事業主は、売上から必要経費を引いた金額が所得です。基本的にはその所得をすべて自分が受け取ることになり、それに対して所得税がかかります。
ところが、会社では売上金額から必要経費を引いたものは会社の利益となります。もちろん、その利益が法人税の対象です。
ただし、経営者である自分もその売上から役員報酬をもらう形となり、その役員報酬も(条件を満たした場合)必要経費となります。
所得税も法人税も、それ自体の仕組みや課税の流れに大きな差はありません。基本は売上から経費を引いて税額を掛けるだけです。
しかし、会社の経営者か個人事業主かによって、課税対象や税率に違いが出ます。
会社設立のメリット・デメリット
会社設立にはメリットとデメリットがあります。
会社設立には良いことばかりではないため、メリットもデメリットも理解した上で、どのような形で起業するか検討してください。
いずれも利益や課税される税金の額に深く関わっているため、正しく判断することが必要です。
会社設立のメリット
会社設立のメリットとして注目したいのは、その節税効果です。法人税はもちろんのこと、消費税にも注目して効果を知っておくと良いでしょう。
また、節税以外の面でも個人事業主にはないメリットは多いものです。
節税効果が高い
個人事業主が会社設立で法人化すると、所得税から法人税へ課税される種類が変わり、より長期間、消費税が免除されやすくなります。
そのため、個人で開業してから一定期間を経て会社設立するのは節税の面で非常に有効です。
法人には、個人の事業共用割合の観念もなく、経費の範囲も広がります。
給与所得控除や退職金の扱いの違いも、会社のほうが個人事業主よりも節税効果が高くなります。
法人税による節税ができる
個人事業主の所得税から会社の法人税に変わると、所得が増えた際に節税効果が高くなります。
個人事業主の所得税は超過累進課税であり、所得が増えるとその分、税率が高くなる仕組みです。
ところが、法人税はある程度税率が一定になっており、利益が一定のラインを超えると法人税のほうが税率を抑えられるようになります。
特に、年間の所得が500万円を超える場合、法人税のほうが節税効果が高くなる可能性があります。
消費税が免除されやすくなる
消費税は、2年前の課税売上が1,000万円を超えた事業者に対してのみ課税されます。そのため、個人事業主として開業した2年間は基本的に消費税はかかりません。
このルールは法人にも同じく適用されます。また、個人事業主が会社設立して法人化した場合には、個人とは別の人格として扱われるようになります。
つまり、個人事業主として2年間事業を営んだ結果、課税事業者になりそうになった際、課税事業者になる直前で会社設立して法人になれば、さらに消費税の免除期間を伸ばせます。
個人事業主として初年度に大きな売り上げが出た場合に、このメリットを享受できるでしょう。
ただし、前年の1月1日から6月30日の課税売上高が1,000万円を超えた場合は、課税対象となります。
給与所得控除や退職金の損金計上が可能になる
個人事業主から法人になると、経営者自身が受け取る収入(所得)の扱いが事業所得から給与所得になります。会社から支払った給与や役員報酬は、給与所得控除対象です。
事業所得では所得税だったものが法人税になることも節税効果が期待できますが、それだけでなく控除によっても経営者の税負担を軽減できるようになります。
個人でも青色申告を選択すれば、青色申告特別控除を受けられます。
しかし、受け取った給与額によっては給与所得控除のほうが多くなり、より節税効果を生むこともあります。
また、配偶者や親族を役員にし、役員報酬を自分と配偶者に分けると、より効果的な節税が可能です。
ちなみに、会社を設立すると、個人事業よりも手続きの面で従業員として家族を雇用しやすくなります。
さらに、会社は、役員報酬や給与を支払った時にそれらを経費とすることが可能です。
会社の利益は売上から経費を引いたものなので、こちらでは会社の法人税の負担を抑えることにつながります。
また、会社を設立すると、退職金を経費として計上することも可能です。支払った退職金は損金として会社の節税に生かせて、受け取った退職金では退職所得控除が使えます。
経営者自身だけでなく、役員や従業員として働いていた家族などへの退職金も支払えます。
生命保険料が経費になる
個人事業主では、生命保険料は経費になりません。
しかし、会社設立した場合には、社長に対して掛けた保険は(契約者と受取人を会社としていた場合に限り)保険の種類によっては全額保険料を経費にできる場合があります。
ただし、保険料を経費にした場合には、解約返戻金や保険金は会社の収入としなければいけません。また、それらの収入に対しても法人税は課税されます。
とはいえ、死亡保険金が支払われるケースでは、経営者の死亡により一般的には保険金は死亡退職金として遺族に支払われます。
つまり、残された遺族にそのまま保険金は渡され、会社も控除によって法人税の負担はなくなる計算です。
欠損金の繰越控除の期間が長くなる
個人事業主と法人では、欠損金の繰越控除が可能な期間が違います。個人事業主では翌年以降3年間なのに対して、法人では最大10年間です。
大きな損失が出た場合には、翌年度以降長い期間をかけて相殺でき、控除を最大限に生かせます。
旅費規程による節税も可能に
出張が多い場合には、旅費規程の活用による節税も可能です。旅費規程を作成して、出張日当を支給する規定を定めれば、出張日当を経費にできます。
出張日当は個人の所得扱いにはならず、所得税がかかりません。また、消費税の課税対象となるため、会社の消費税が抑えられます。
ズルはいけませんが、実際に出張の多い仕事の場合には、きちんと旅費規程を定め、報酬の一部を出張日当として受け取ったほうが良いです。
会社設立にはその他のメリットも
会社設立して法人化することには、節税以外のメリットも多いものです。個人事業主から法人になった際に考えられるメリットは以下のようなものがあります。
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- 取引先や仕入先からの信頼度が上がる
- 融資や資金調達が有利になる
- 優秀な人材を集めやすい
- 事業承継しやすい
主に会社設立がもたらす良い効果は、対外的な信用度、信頼度が上がることです。それによって、取引しやすくなり、融資や求人もしやすくなります。
また、個人事業主の場合には事業を継ぐ際に後継者も開業届を出し、許認可が必要な場合には新たにその人が許認可を取得しなければいけません。
しかし、会社の場合にはそのまま後継者が社長になるだけで事業を継承できます。
会社設立のデメリット
会社設立には多くのメリットがあり、節税によってより多くの利益を守れます。しかし、それ以外の点でかかる費用が大きくなる、負担が増えることもあります。
ランニングコストが高くなる
会社設立でデメリットとなるのは、ランニングコストの増加です。個人より法人のほうが税金が安くなると前述しましたが、法人の場合には赤字でも住民税がかかります。
また、設立後も登記事項の変更などの際に登記費用が必要です。
社会保険加入義務
個人事業主が法人になると、健康保険や厚生年金保険への加入が義務付けられます。
従業員の社会保険料は、会社と折半になるため、保険料支払いも従業員の数によっては大きな負担となるでしょう。
事務が煩雑に
個人事業主と比べると、会社での事務は難しく、税金関係や総務など量も増えます。
税金の申告も難しくなり、社会保険や労働保険の手続き、株式会社の場合には株主総会の準備なども必要です。
こうした事務の負担が大きくなり、自分で行えなくなったり人手が足りなかったりした場合には、専門家へ依頼するため、その外注費用もかさみます。
事業をやめる時もコストがかかる
個人事業主が廃業する際の手続きは簡単で、届出などにはコストもかかりません。しかし、会社を設立してしまうと、会社をたたむ時にもコストがかかります。
会社を解散する場合、法務局で解散登記が必要となり、その処理に費用が発生します。
会社設立のタイミングとは
会社設立にちょうど良いタイミングは、税金負担が法人より個人のほうが大きくなる時、また、法人のほうが事業を進めるのに都合が良くなった時などがあります。
会社設立はメリットもありますが、コスト面などでデメリットもあるため、慎重に判断してください。
利益金額でみる会社設立のタイミング
個人で事業を営んでいた人が会社設立をするなら、大きな利益が出たタイミングがおすすめです。
利益が大きくなると、法人税のほうが税率が低く抑えられる可能性が出てくるためです。
個人事業主の累進課税率は5~45%となっています。一方で、法人税は所得800万円以下で15%、それ以上で23.20%です。
個人事業主の税率は利益金額によって変化し、一般的には740万円あたりで法人税のほうが低くなると考えられています。
個々の状況によって条件は異なる場合もあるため、事業所得が700万円を超えてきたら一度シミュレーションを行うと良いです。
売上高でみる会社設立のタイミング
2年前の課税売上もしくは、1年前の前期の売上が1,000万円を超えた場合、消費税が課税されます。
そこで、消費税の課税が始まる前のタイミングで会社を設立すると、消費税課税をさらに先送りにすることが可能です。
それ以外の会社設立のタイミング
売上(利益)の予測ができている、許認可が必要な事業であるなどの特別な事情がある場合には、開業時に会社設立をしたほうがいいこともあります。
開業前の営業で大きな契約が取れた場合などは、初年度から法人税のほうが有利になるかもしれません。
また、許認可が必要な事業は、個人事業主では事業承継の際に手間がかかり、面倒です。
会社設立は手続きも煩雑で、一度設立したらたたむにもお金がかかります。
そのため、安易に決められませんが、法人のほうが事業を進めやすい場合には、最初から会社設立することも選択肢のひとつといえます。
まとめ
会社設立にはメリットも多くありますが、デメリットもあります。特に、個人事業主が会社設立するメリットとして大きいのは節税効果です。
ただし、場合によっては会社設立によって負担増になることもあるため、デメリットにも着目し、慎重に判断してください。
利益額や売上などの変化に応じて、会社設立に適したタイミングを選ぶことも大切です。
(編集:創業手帳編集部)