BEENOS 直井 聖太|海外向け購入サポート事業「Buyee」で日本と世界を繋いでEC事業者の可能性を広げる

創業手帳

BEENOSグループの舵を取る際に意識していることは「未来に対して誠実であること」

日本のECサイトの訪問者の約3%は海外からアクセスされているにも関わらず、海外販売に対応していないEC事業者が多い。この課題を解決するために、ECサイトに無料で組み込めて、海外販売に対応できる仕組みを作っているのがBEENOSの直井さんです

BEENOSグループの社長になるまでの経緯や、グループ経営をする際に意識している「未来に対して誠実であること」という考え方について、創業手帳の大久保が聞きました。

直井 聖太(なおい しょうた)
BEENOS株式会社 代表取締役執行役員社長 兼 グループCEO

1980年生まれ、愛知県出身。2008年BEENOS株式会社に入社。輸出Eコマース関連の新規事業を担当し、tenso株式会社(当時、株式会社転送コム)の立ち上げに参画。2012年、tenso株式会社の代表取締役社長に就任。2014年よりBEENOS株式会社代表取締役社長兼グループCEOに就任。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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かばん持ちから子会社の社長になり最終的にはグループ全体の社長へ

大久保:BEENOSの社長になるまでの背景を教えてください。

直井:小さい頃、祖父が会社を経営していて、父もそこで働いているところを見ていたため、その時から経営者になることを決めていました。

バブル崩壊の影響を受けて祖父の会社は倒産してしまいましたが、その後、父が別の会社を立ち上げ、自分を育ててくれたという背景があります。

経営者をやるのに必要な営業力や経営力を育む経験が積めそうだと思い、大学卒業後はベンチャーリンクというコンサル会社に入社しました。

その当時の時流としては、日本ではこれから人口が減っていく、というのがホットな話題でした。

しかし、人口が減ることを悲観するだけでなく、海外マーケットに目を向けるチャンスだと私は捉えていたため、日本から海外への輸出事業に関心を抱きました。

大久保:具体的にどの国のマーケットがチャンスかと思われましたか。

直井:当時は海外マーケットの中でも特に中国経済が伸びてくるタイミングでした。私は中国には旅行で行ったことがあり、実際に中国の活気に触れたことがあったため、中国の勢いを実感していましたね。

そしてその頃BEENOSの前任社長だった佐藤と知り合い、その思いについて伝えたところ、インターネットを使ってやってみることを勧められました。

勧めていただいたものの、インターネットについて詳しく知らなかったため、佐藤のかばん持ちからスタートし、勉強させてもらうこととなりました。

興味のある会議には参加していいと許可もいただいたので、佐藤が出席する全ての会議に出席しました。

1、2ヶ月ほど色々な会議に出席して話を聞いていると、ビジネスの根幹は何も変わらないと肌感覚で感じましたし、テクノロジー自体も、そこまで難しいものではありませんでした。

この経験を元に、海外転送事業「tenso」の立ち上げに参画しました。

当時の日本のEコマースサイトは海外への発送は対応していないことが多く、私書箱サービスの仕組みを使えば、海外からの依頼も受けられるのではと考えました。

ZOZOTOWNと提携したことがtensoの大きな転機

大久保:反響や反応はいかがでしたか?

直井:最初からある程度の反応はありました。

サイト自体は日本語・英語・簡体字・繁体字の4言語で運営し、日本語でプロモーションを打ち始めると、最初の方は中国にいる日本人の駐在員の方にご利用いただきました。

そして、一番大きく動いたのがECサイト企業、特にZOZOTOWNさんと提携です。

ZOZOTOWNさんに提携していただいたことによって、他の企業さんとの提携も広がりやすくなりました。

大久保:当時のECサイトの多くは海外発送に対応していませんでしたか?

直井:ZOZOTOWNさんを含めて多くのECサイトの訪問者のうち3%は海外からのアクセスでしたが、ほとんどのECサイトが海外発送に対応しておらず、この3%のユーザーに不便をかけていました。

当時の状況を考えると、日本が国内のシェア争いをするべき状況ではなく、とにかく一緒に海外市場に挑戦すべきだと私は考えていました。そこで、tensoをECサイトに導入する費用を無料にして、ECサイトを運営する多くの企業の方々にtensoの思いを伝えました。

当時提携していただいた企業の役員の方々には、このミッションに共感していただいたからこそ、提携に繋がった部分が大きいと考えています。

ココ重要!サービスをスケールした工夫
  • サービスを無料化してユーザー数を増やした
  • フラッグシップとなる大手企業と提携して他企業との提携も狙った
  • ベンチャーだからこそ熱くミッションを訴えかけた

子会社の社長から親会社の社長に抜擢される形でBEENOSの社長に就任

大久保:tensoはBEENOSの100%子会社として設立しましたか?

直井:tensoはBEENOSの100%子会社で始めたわけではなく、BEENOSの前身である「ネットプライス」を含む3社の出資で設立し、最終的には上場を目指す会社としてスタートしました。

tensoの過半数以上の株はネットプライスが持っている状況でしたが、オフィスもtenso独自で構えましたし、全て独立した経営をしていました。

しかし、インターネットバブルが弾けたこともあり、ネットプライスの業績が悪くなってしまい、私にBEENOSの代表もやってほしい、という話を持ちかけられました。

そこで話を断り、分社化を目指すこともできましたが、「日本のマーケットを世界に広げていく」というミッションの近道になると考え、BEENOSの代表になることを決めました。

大久保:BEENOSの社長に任命された時はどのような心境でしたか?

直井:かなり複雑な思いでした。

親会社は業績が思わしくない一方で、tensoは資金調達もできそうで、IPOも見えてきたというタイミングだったため、かなり悩みました。

ですが、私は父や祖父が経営者だったこともあるので、経営者サイドの気持ちがとても理解できました。tensoの幹部や社員は時間を投資してきましたが、tensoを立ち上げる際の最初のリスクマネーを投下したのはBEENOSなので、最終的にはBEENOSの社長になることを決めました。

大久保:どのような思いでBEENOSの経営に着手しましたか?

直井:この話を受ける時の最後の口説き文句として、前任の佐藤からは全部変えていいと言われてました。

社名も変えて良いし、自分自身残るつもりもない、と。そのため、引き継ぐこともなく、スムーズに舵取りを交代することができました。

大久保:具体的にはどのような所から着手しましたか?

直井:BEENOS本体の事業が伸びていなかったので、BEENOS本体の不採算事業を削り、勢いがあるtensoを伸ばすことに注力しました。

不採算事業の中にはtensoよりも社員数が多い関連会社もあったため、後から社長に就任した私には難しい役割でしたが、苦渋の選択で関連会社を売却しました。

大久保:それは難しい意思決定ですね。

直井:今この瞬間は嫌だと感じることでも、未来に向かって良いことをやろうと、当時の役員たちに話をしていました。

このまま成長しない事業をやり続けても、会社としても良くない上に、担当している若い社員が成長性のない事業に時間を使っていることも、未来に対して不誠実だと考えていました。

関連会社を売却することで、短期的には恨まれても、将来感謝される意思決定をすることを意識しました。

そうすると未来のために変化するという考えが当たり前になってきます。

このような思い切った意思決定をするからには、主軸事業に据えたtensoの業績を伸ばさないと社員から信頼は得られないという焦りもありましたね。

社員は所属する子会社とグループ全体のどちらを優先すべきか?

大久保:すぐに理解してもらえましたか?

直井:時には、真逆のことを言わなければいけない時がありました。

当時、BEENOSの子会社間の部署移動は当たり前ではなかったため、伸びる事業に人を動かすことができませんでした。逆に言うと、伸びない事業に人が張り付いてしまっている状態でした。

ただし、それぞれの事業に人が張り付いていることで良かったことは、業績が良かったtensoは自分たちの事業にコミットしているという意識が強くあり、親会社にぶら下がっているという意識はありませんでした。あくまでも独立した事業体としての意識があったんです。

伸びている事業に関しては、1つの事業へのこだわりが強い社員が多いことは良いことですが、伸びていない事業に人が張り付いている問題はグループ経営をする経営者としては改善しなければなりませんでした。

このような状況の中で、子会社間の人員移動を可能にしたのですが、今度はどの子会社の社員も所属する会社で結果を出すことを最優先しつつ、BEENOSグループ全体のことも考えてもらう必要がありました。

ここで重要になってくるのが「給与制度・賞与制度」です。

BEENOSグループの特徴として、グループ全体の業績と所属する子会社の業績を考慮して、2種類の賞与を出しています。

そこで、所属する子会社の賞与の方を多めに出すことで、グループ全体を考えつつ、優先するのは子会社の成長という風に考えてくれるようになります。

BEENOSグループ全体の経営層としても、子会社に所属する社員にはユーザーやマーケットのことを考えてほしいので、グループ全体ではなく子会社を優先してもらって良いと考えてます。

一方でBEENOSグループ全体で業績が上がれば、その分の賞与も割増される仕組みにしたため、他のグループ企業に対しても関心を持ち、口出しをし合う状況を作りました。

会社が分かれていなくても、事業が複数に分かれた場合、どこに対して何を貢献すれば自分たちにどういう風に返ってくるのか、を組織として示していく必要があります。

つまり、BEENOSとしての意識を持たせるためにグループ賞与を出し、さらに自己責任として子会社の業績賞与を割合多く出す制度にしました。

苦しい決断を迫られた際には「未来に対して誠実であること」を意識するべき

大久保:tensoの現状を教えてください。

直井:tensoのサービスリリース後、アライアンスを組む企業も増え、業績もある程度伸びてきたタイミングで法改正が入り、サービスの利用には本人確認が必要になりました。

日本のユーザーでさえ正確に本人確認をするハードルが高いにも関わらず、海外のユーザーに本人確認するとなるとさらに困難です。

そこで、クレジットカードの不正利用を防ぎつつ、物流から決済、言語の領域まで対応できる購入サポート事業「Buyee」を作りました。

Buyeeによって、日本企業が決済を直接受けることがなくなり、結果的に海外ユーザーも好きな決済や通貨での支払いが可能になり、事業としてプラスになっていきました。

大久保:tensoユーザーは日本人の割合が多いですか?

直井:現在のtensoユーザーは99%外国の方です。結果的に日本が外貨を稼ぐことに貢献できています。

tensoをさらに伸ばすことができれば、日本の国としての外貨獲得のための一つの産業になると思っています。そのために、物流を解決してもっと安く効率的に日本から海外に物を送れるようにする必要があります。

大久保:日本は今円安になっていますが、円安がプラスになる側面もありますね。

直井:はい。円安は海外のユーザーが日本の商品を買いやすくなるので、プラスになります。

長い目で見ると、どの国も強い時代と弱い時代があると思ってます。国力が下がると、通貨安になり、海外に物が売りやすくなるタイミングだと考えられます。

大久保:最後に読者へのメッセージをお願いします。

直井:創業期は様々な苦しいことや、難しい決断を下さなければいけない時があると思います。その時は「未来に対して誠実であること」を意識してほしいと思います。

個人的な感情を忘れないと、正しい経営判断ができない時もあると思います。ただし、感情をなくしてやれば良いというわけでもありません。

決断に迷う時もあると思いますので、迷った時には「未来に対して誠実であること」を意識して、考えていただければと思います。

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(取材協力: BEENOS株式会社 代表取締役執行役員社長 兼 グループCEO 直井 聖太
(編集: 創業手帳編集部)

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