大手企業のサラリーマンから独立起業したスタートアップ創設者に聞くーパラレルワーク経験を活かした起業ー
大手企業サラリーマン時代のパラレルワーク経験を活かして独立起業!大手企業とスタートアップの違いとは?
(2020/10/15更新)
ひとつのことに固執しない新たな形の働き方「パラレルワーク」。
パラレルワークの経験で得たものや学んだことを活かして、大手企業から独立起業した神谷さんにインタビューを行いました。
大手企業サラリーマンと起業家という異なる経験を通じて感じたことや、起業前後に必要となるプロセスなどを紹介していきます。
神戸大学経済学部卒。
NTTGroupで年間2桁億円規模のSaas事業の立上・統括を複数経験。ジモティー社への出資など多数のアライアンスや出資案件をリード。
自ら立ち上げた教育事業で経産省「始動」2017SV選抜、2018優秀賞。TimeLeap Academy創業メンバー
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この記事の目次
パラレルワークが人脈を広げ新たな発想のヒントとなる
NTT DATAでサラリーマンとして活躍されてきた神谷さん。
サービス型、アカウント営業型といったNTT DATAでの営業の型を一通り経験し、ビジネスプロセス整理と、それに伴うITとBPOの整備、さらには営業と開発のマネージャー、DX推進のためのコンサルテーションやソリューション開発、人材育成など、幅広い分野に着手されてきました。
サラリーマン時代にベンチャー企業と接点を持つことで、ベンチャー経営者へのリスペクトが生まれ、コミュニケーションが深まっていったと語る神谷さん。サラリーマン時代のバイサイドとしての動き、自分で事業を立ち上げて展開していくセルサイドとしての動きの両方経験して、ようやく全体のパイプラインや構造が分かってきたと言います。
さらに、ステージの違いをちゃんと意識して、お互いが何を欲しがって自分がどの立ち位置にいるかを明確にしてコミュニケーションをとることが大切だといいます。
そんな神谷さんが起業されたきっかけは「息子さんや子供たちを笑顔にしたい」という思いからで、「社会全体を学校にする」という信念のもと教育事業への取り組みを始められました。この事業はオンラインコミュニケーションにおける新たなサービスとして注目を集めています。
ここからは、パラレルワークを経験しながら、大手企業から独立起業した神谷さんのインタビューをお伝えします。
サラリーマンから起業家へ
神谷:良くも悪くも自分の意思決定がすべてですので、重力の違いを感じます(笑)。
大企業では今回の事業に必要なスピード感が出せない、と考えて起業したのですが、事業立ち上げのスピードは思った以上に出ています。
重力は重くなったのに進むスピードは格段に速くなった感じで、時間の密度が上がったように思います。
神谷:起業直前は、起業準備を一生懸命していました(笑)。
事業プランのブラッシュアップ、ユーザーヒアリング、仲間探し、プロトタイプ作成、いろんなことを会社の仕事と並行して進めていたので、頭がぐちゃぐちゃになりそうでしたが、スピード勝負の事業でもあるので、はやく着手して進めていてよかったと思います。早く取り組んで悪いことは何一つありませんでした。
起業直後は、正直あまり変わらず走り続けているといった感じなのですが、法人口座の開設がリードタイムもかかるので法人登記後真っ先に着手しました。
法人口座がないと創業融資も取り付けられないので早めに準備することをお勧めします。
あとは、共同創業メンバーとの投資契約書の締結です。これは最初にきちんとやっておくべきことだ、と先輩起業家の方々から言われていたので、お話を参考にしつつ、手続きをきちんと行いました。
ベンチャーと大手企業の付き合い方やパラレルワークについて
神谷:大手企業、と一括りに捉えずに、誰と付き合うのか、という観点で考えるのがよいと思います。
スタートアップに対して理解が深く、適切な対応をしてくれる大企業の担当者は絶対数は多くありませんが、存在するので、どの会社と付き合うかという観点以上に誰と付き合うのかということに意識をおいて、自分たちが割けるリソース量と期待できるリターンを冷静に判断してアプローチをかけるとよいのかな、と思います。
神谷:サラリーがもらえる大企業などでの仕事と、自分たちだけで責任を持って進めていくベンチャーでの仕事、一長一短でどちらにもメリットとデメリットがあると思います。
このメリットとデメリットを理解して、自分のワークスタイルにあわせてポートフォリオを組み替えていくような意識で働ける人は、パラレルワークに向いているのではないかと思います。
パラレルワーカーの条件として、どちらのワークスタイルもリスペクトできることが大切だと考えます。
起業後のサービス展開と課題や展望
神谷:I’mbesideyouはZoomなどのオンラインコミュニケーションのBlackboxをAI解析で解消するサービスです。
ビデオ会議の動画データ内に映っている表情・音声・顔の向き・視線などを統合判断して、相手の様子を理解し、オンラインコミュニケーションの質を高めていくことができます。国際特許を12件出願済で、世界で私たちにしかできないサービスです。
神谷:オンライン教育では、実際に先生と生徒がどういうコミュニケーションをしているかはBlackbox化していてわかりません。子どもを預けている保護者の方々や講師を送り出している経営者からすれば不安要因となります。
しかし、教育現場は人手での作業も多く常に忙しいので、動画をいちいちチェックして教育の質を保証する、などといったアクションはほぼできませんでした。リフレクションといって、自身が学んだ授業を振り返ることはものすごく学びの効果を高めるのですが、これもほとんどの先生や生徒は現状では行っていません。忙しくて時間が取れないために大切な作業に手が回っていないのが現状です。
神谷:私たちのサービスは、毎日行われている家庭教師や個別指導塾などの授業の動画をすべてAIで解析して、Zoomなどで行われているオンライン教育の授業の内容をチェックします。
授業中の講師の発言内容や、生徒の表情や会話量などを計測し、よい授業が行われていればベストプラクティスとして先生間で共有する、問題となるような場面があればマネジメントから注意喚起を行って再発を防ぐ、という日々のPDCAにご利用いただけます。
実際の授業の様子はダイジェスト動画の形で保護者の方へレポートが送られますので、保護者の方も先生と生徒のやりとりを垣間みることができご安心いただけます。
先生や生徒も、自分たちの授業での様子をダイジェスト動画や解析レポートで振り返ることができます。
1時間半の授業動画を見直すことは忙しいのでしませんが、1分のダイジェスト動画なら振り返る習慣ができる。リフレクションが習慣化することで、現場現場のセルフラーニングが促進され、学びが深まっていきます。
新しい教育の基幹システムになっていく仕組みだとお客様からは口を揃えていっていただいており、実際にそうなっていくだろうと感じています。
自身の抱負と読者へのメッセージ
神谷:コロナ前後で、世界は大きく変わります。
私たちは、グローバルに展開される新しい社会インフラを創ろうとしています。キーボードによる入力はゼロになり、人と人のコミュニケーションがAIの力で客観的にみえる化され、より個人の喜びや幸せにフォーカスされていく。
”みんな違ってみんないい”という世界観を、テクノロジーの力で現実のものにします。
神谷:私自身は、自分の息子が幸せに生きられる社会を創りたいという一心で、自ら起業しここまでやってきました。
私たちの子どもたちが、自分らしく、幸せに生きられる社会を創っていきたい。そう思っていただける方には、ぜひ私たちの取り組みを応援いただければうれしいです。
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(取材協力:
株式会社I'mbesideyou 代表取締役社長 / 神谷 渉三)
(編集: 創業手帳編集部)