資金調達を可能にするビジネスプランの作成ポイント7箇条【木嶋氏連載その4】

創業手帳

エンジェル投資家、木嶋豊氏に聞く「スタートアップのステップ別成長テクニック」

『企業の成長戦略が10時間でわかる本』の著者でエンジェル投資家の木嶋豊氏は、これまで20社以上のベンチャー企業を上場させてきました。成長する企業の特徴は、創業時からビジョンが大きく、柔軟性を持ち合わせていることだと言います。そして何より重要なのは、起業の時点でスケールする考えを持っているかどうかということ。それにはビジネスチャンスを逃さないための起業アイディアのまとめ方や、資金調達を可能にするビジネスプランの作成などが欠かせません。そこで本連載では、創業手帳代表の大久保との対談を通して、全5回にわたって成長する企業の作り方を紹介します。

木嶋豊

木嶋 豊(きじま ゆたか)
株式会社アイピーアライアンス代表取締役社長。亜細亜大学都市創造学部・亜細亜大学大学院MBA教授。1986年東京大学法学部卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。ハーバード大学に留学。テクノロジー系VCの取締役、投資総括常務執行役員を務め、現在、ベンチャー投資、成長戦略支援、IPO支援を行う。20社以上を上場させたベンチャーキャピタリスト。20社のエンジェル投資家、4社の会社オーナー、15社以上の成長企業の社外役員・アドバイザー。サンフランシスコ州立大学客員教授を兼職。行政府や企業などでの講演多数。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計150万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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ビジネスプランは根拠ある収支計画と先に結論を述べることがポイント

大久保ビジネスプランは考えるより先にとりあえず作るということが大事でしょうか。

木嶋:要点だけ書くようにすれば、1、2時間で作れると思います。それをまずは作ってみるというのは重要だと思います。作ってみると自分に何が足りなくて何が必要か、ベンチャーのフローチャートを視覚化できるというのは大きいと思います。

それほど時間をかけなくてもいいので、基本的なことだけをササッと作るというのは非常に重要です。私の著書『企業の成長戦略が10時間でわかる本』にも書きましたが、一番最初に完璧なものを作るより、常にアップデートしていく。そちらの方が重要だと思います。

大久保:最初はA4の紙1枚でもいいから書いてみて、それを直していこうということですね。

木嶋:こういったことにすごく時間をかけるのが好きで、計画ばかりで実行に踏み出せない人もいれば、「自分の取り柄は情熱だけです」と言って何も準備せずに起業する人もいたりして、両極に分かれている印象です。

10時間ぐらいかけてビジネスの基本的なキーワードと事業計画を作り、すぐに実行に移してみて、その中で寄せられた不満や声を改善に生かしてていく。それが成功する近道だと思います。

大久保:著書にもビジネスプランの作り方が書かれていますが、結論を先に述べた方がいいということですね。

木嶋:ええ。私もベンチャーキャピタルにいる時は、キャピタリストが投資したいという会社をこちらで整理して、投資委員会にかけるかどうかをチェックしていましたが、やりたいことがダラダラと書かれた事業計画は、結局最後まで読まないと何をやりたいのかが分からない。そんなビジネスプランはダメだろうなと常に思っていました。

アメリカではエレベーターピッチと言いますが、エレベーターが1階から30階ぐらいまで上がる約30秒の間に自分のやりたいことをアピールできることが重要です。エグゼクティブサマリーを1枚目に持ってきて、うちはこれだというのを瞬時に分かってもらう。それは人に説明する際にも重要ですし、自分自身も強みをハッキリ言えるので、二重の意味で重要ではないでしょうか。

大久保:伝わらないようなプレゼンは、それだけで実行能力が疑問視されますからね。あとは各論ですが、製品サービスや分析が入っているとより良いですね。

木嶋:私がVCの立場の時によく見たのが、まったく根拠がない収支計画です。最終的に売上げが年率20%ぐらい伸びると書いてあるものがすごく多いのですが、根拠が一切書かれていないのです。

「こういう戦略を実行すると、この競合相手からお客さんを何人取れそう」で、「そのお客さんにいくらで売るか。さらにその人が何回買ってくれるから1年目はこれだけの売上げになる」というように、具体的な論理がまったく書かれていない。これは成功するための行動基準にもなるので、本来は非常に重要なことですよね。

どうやって人から売上げを上げるかという戦略を立ててそれを実行していくと、それが積み上げになっていきます。どういう人に興味を持ってもらって、その人がいくら払ってくれて、何回消費してくれるからこの売上げになる、という積み上げ計算であるとともに、会社の売上げをどう上げていくかという成功のルールになるわけです。

一番ダメなのが、ターゲットとするマーケットが100億円あって、そこから1%のシェアを取れば1億の売上げを上げられて、さらにそのシェアは1年ごとに拡大していくということを根拠もなく言っているケースですね。

大久保:最初に10万、100万円の売上げを上げるのがどれだけ大変かということが分かっているとは思えないですね。

木嶋:100億円もマーケットがあるから1%=1億ぐらい簡単ですと述べていますけど、なぜ1%取れるのかという根拠を述べられないということは、まったくお客さんを見ていないということですから。そういう説明を受けると、売上げを上げるということに戦略も執念もないんじゃないかと思われますよね。

あとは、1年目以降にどう売上げを上げていくのかについて収支計画を見てみると、年率20%ずつ上がっているんです。理由を聞くと「ベンチャーなんだから2割ぐらい売上げを上げないと困るので上げている」と。そもそも事業をどう拡大するかという戦略がなくて、単に年率20%ずつ上げる収支計画を作っただけなのです。

そういった説明を受けるだけで、この人は売上げを計上したり、事業を拡大するということに対して真剣じゃないんだなと思います。信じられないことですが、意外に多いですね。

売上げは販売数量と単価に分解して積み上げ計算で出す

大久保:売上げについて根拠のある数字を出すにはどうすればいいですか?

木嶋:著書にも書きましたが、まず販売する予定の商品やサービスを製品群に分けて、その製品群をさらに市場別に分けていきます。アパレル業を例に挙げると、シャツ、ジーンズ、インナー、スポーツウェア、というように、扱っているすべての商品を製品の種類ごとに分けます。それらをさらに、若者向けマーケットと高齢者向けマーケットなど、市場ごとに分類していきます。

この時点で若者向けマーケット向けのシャツ、高齢者向けマーケット向けのシャツ、若者向けマーケット向けのジーンズと……いうように、4×2=合計8種類の商品群ができますよね?その商品群に対してそれぞれの単価を決めていくのです。その上で8種類の商品群ごとに顧客を想定し、販売数量、単価の年度別推移、販売数量の年度別推移を決めていきます

売上げは、その市場にどのぐらいの人数の潜在顧客がいるか、その中でどのぐらいの人がその値段だったら買ってくれそうかということを類推し、それぞれの市場における数量と価格を掛け合わせて決定していきます。売上げについて根拠のある数字を出すためには、このような積み上げが非常に重要になってきます。

大久保:そこまで事細かに分析しないと、きちんとした数字は出ないのですね。

木嶋:そうですね。数字を出す作業ではありますが、同時にそのベンチャーがどうやって顧客を獲得していくかというストーリーでもあります。事前のヒアリングやローンチした時の状況を鑑みて、ある程度数字を作っていきます。そうすると売上げの道筋が立ち、“絵に描いた餅”のように漠然とした数字は出ません。どういうシナリオで売上げを上げていくかということを示しながら作っていくと、それがそのまま営業戦略になっていきます。

ビジネスプランの作成ポイント7箇条

大久保:木嶋さんが考える説得力のあるビジネスプランの作り方を教えていただけますか?

木嶋:何より重要なのは、誰が見ても分かりやすく明確な内容であること。曖昧な書き方をすると、伝わるものも伝わりづらくなってしまいます。文章だけでなく、見た目も分かりやすく、目を引くものにしておくと良いでしょう。

また、事業に関係しそうな事項はすべて網羅することも忘れずに。かつ文章は端的に、簡潔に書くことを心がけてください。良く見せようとして事業に関するマイナス面を隠したりすることなく、考えうるリスクもあらかじめ挙げておくと良いでしょう。

これらを踏まえた上で、20〜30ページ程度のものにまとめるのがベストです。

    〜ビジネスプランの作成ポイント7箇条〜

  • 明確:曖昧な記述をしない
  • 完全:関連事項はすべて網羅する
  • 簡潔:ダラダラと書かずにコンパクトにまとめる
  • 素直:事業に関するマイナス面は隠さない
  • 控えめ:理想論を掲げて大風呂敷を広げない
  • 体裁:分かりやすい見た目を心がけて
  • リスク情報:想定できるリスクはあらかじめ羅列しておく

競合の有無はビジネスを左右するか

大久保:新たにビジネスを始めようとする時、競合がいるパターンといないパターンではどちらが良いでしょうか。

木嶋:プレゼンを受ける時に、「マーケットがないから競合がいないです」と言われることが意外とありますが、実は競合がないというのは調査力不足、かつ想像力の欠如だったりするんですね。競合になり得る先は必ずあるんですよ。もしなかったら、それはちょっと注意が必要かもしれません。

世界には75億人以上も人がいて、誰もやったことがないビジネスというのは不毛の荒野という可能性もあります。うまくやっているかやっていないかは別にして、ビジネスチャンスがあるということは似たようなことにトライした軌跡が必ずあります。ちょっとずらして工夫したところにブルーオーシャンがあるかもしれない。そうやって主張する人は、市場がないものを追求していることがありますね。

大久保:同業者だけでなく、業態が違っても競合というのは多々ありますよね。

木嶋:そうですね。業態が違ってもお客さんが競合するとかね。仮想敵のようなものがちゃんと想像できなかったり調査できていないというのは、むしろ調査不足、想像力不足というかね。そもそも競合はまったくないと胸を張るのであれば、市場がないのかもしれません。

大久保:あとはやたらと競合を気にするケースがあるじゃないですか。そういうのもあまり良くないかなと思います。

木嶋:そうですね。2つ3つ分析してみて、自分はどこを変えるのかというね。それは競合分析を4Pでやるという話につながりますが、自分はどこを差別化するかというのをしっかり考えてもらえばいいんじゃないかなと。

大久保:運送会社もヤマトもあれば佐川もあって、人材もリクルートもあればマイナビもあって、競合があるからなくなってしまうわけではないわけですよね。

木嶋:意外と半歩先ぐらいがいいんですよね。競合もいるけどまだ成長市場で、それほどメインになる企業が決まっていないとか。そういうところであれば成功する確率はありますが、意外にまったくない市場を自分が発見しましたというのは、失敗しているのも多いですね。潜在的にニーズがあって、ちょっと足掛かりができているみたいな。戦略のちょっとした違いやセールスフォースのかけ方、マーケティングの仕方でベストワンになり得ますからね。

大久保:メルカリやスペースマーケットなどはありそうだけど今までなくて、テクノロジーや社会が変わってきてうまくハマりましたよね。スペースマーケットのように場所をただ流通させるというビジネスはありそうでなくて、うまくいった例だと思います。

木嶋:何かに特化するなど競合先に比べてうまく立ち回って成功したケースもありますし、競合がいるからダメというわけではないですよね。

消費者の要望を考え同業者を観察してから事業計画書を作成

大久保:事業計画書を作る際に欠かせないポイントを教えていただけますか?

木嶋消費者が何を本当に欲しているのかというのは最低限必要ですよね。マーケティングの本は何百ページもあるものがほとんどですが、結局は商品の構成や流通経路、宣伝方法をどうするかということに集約されるので、まずそこだけはハッキリさせる。

また、同じような商売をしている人は必ずいるので、最低限同業者を詳しく観察することです。その人たちとどう変化をつけて自分のビジネスをユニークにするか。それが一番重要なのではないでしょうか。

大久保:木嶋さんはこれまで20社以上のベンチャー企業を上場させてきましたが、起業の時点で上場の可能性は見えるものですか?

木嶋:予言はできませんが、成長していった企業はどこもビジョンが大きかったですね。ビジョンが大きければ必ず上場できるというわけではありませんが、最終的に大きくなった会社は起業時から大きいビジョンを掲げていました。最終的にこういう企業になるんだというビジョンを持って、起業の時点でしっかりスケールする考えを持っているかということはすごく重要だと思います。

それからもうひとつ重要なのは柔軟性です。仮説でいいので、まずは製品やサービスを投入してみて、そこからニーズをつかみ取る。そのニーズに対して柔軟に自分のサービス、製品を変えていくんですよね。ダメだったらピボットしてまったく違う方向で攻めるとか、そういう柔軟性を持った企業が大きく伸びていると思います。

大久保:創業時からビジョンを大きく、同時に柔軟性も持ち合わせて、ですね。今回も色々とありがとうございました。次回は事業計画の作成方法についてアドバイスをいただきたいと思います。

(次回へ続きます)

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(取材協力: 株式会社アイピーアライアンス代表取締役社長 木嶋 豊
(編集: 創業手帳編集部)

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