パンダビジョン 佐野 篤|NFTならではの需要をどう開拓するか?

創業手帳

コンテンツビジネスにおいて革命的な技術であるNFTで、クリエイターの価値向上や海外進出が容易になる!

巨大な市場である中国では、最近エンタメ業界が盛り上がっています。エンタメ×NFT×海外に興味のある起業家も多いでしょう。その鍵となるのがNFTです。

NFT(ノン・ファンジブル・トークン=非代替性トークン)とは、ブロックチェーン上で発行され、アートやイラスト、写真、アニメ、ゲームなどのコンテンツを保有していることを証明できる仕組みのことです。

今回は吉本興業を経て起業し、中国のエンタメ業界や動画・NFTに詳しいパンダビジョン佐野さんにお話を聞きました。

佐野 篤(さの あつし)
株式会社パンダビジョン代表取締役
1977年8月11日、岡山県倉敷市出身。早稲田大学政治経済学部卒業。 新卒で出版社に入社し、漫画編集を経験。その後、医学誌やマネー誌の編集ライティングを経験後、2007年に吉本興業株式会社に中途入社。漫画雑誌編集部に配属の後、出版事業を4年、広報・PR部門を3年、テレビ番組のプロデューサー職を2年、デジタルコンテンツ部門のプロデューサー職を2年経験。2018年12月に同社を退職し、2019年に独立。趣味は座禅と読書。

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NFTとは複製ができず、偽造もできない唯一無二の資産

ー本日はよろしくお願いします。まず、NFTとはなんですか?

佐野NFTとは”non-fungible token”の略で、非代替性トークンのことです。ですが、そう言われてもピンとこないですよね。今はとにかくNFTについての情報量が多くなっていて、何かよくわからないけど「次に儲かるビジネス」という位置付けにされているところもあります。

簡単にいうと、「固有の価値を持つデジタル資産」ということなのですが、それでもわかりづらいですよね…。

本来、「価値」というものには、デザインやイラストの技術やアイデア、素晴らしい発想などが含まれます。でも、そういったクリエイティブな価値ある作品も、デジタル上では簡単に複製されていしまい、結果としてクリエイターに正当な報酬が支払われない原因となります。NFTという仕組みを使うことによって、クリエイターが直接正当な報酬を受け取ることができる、と期待されています。

ーなぜ今NFTが注目されているのでしょう?

佐野:一つは最先端のテクノロジー=イノベーションとしての意味があります。
もう一つは、「なんかよくわからないけど儲かるビジネス」として、注目されています。

テクノロジーはあくまでもプラットフォームや手段であり、それによって扱われる「クリエイティブなもの」に価値があると僕は思っています。今まで不当に買い叩かれていたクリエイターの努力や才能に対して、正当な報酬が支払われることはとても意味のあることだと思っています。

ーNFTが活用された事例があれば教えて下さい。

佐野:個人的に面白いと思うのは、フィリピンで人気を集めている「Axie Infinity」です。ゲームを通じて獲得したNFTによって収益を上げることが可能で、フィリピンではこのゲームによって貧困から救われている人もいると聞きます。そして、オリジナルのデザインをされたスニーカーなど、ファッションアイテムとしてのNFTがメタバース(オンライン上に構築された仮想空間)内で高価に取引されているような事例です。

具体的なことについては、「NFT Media」さんのような専門メディアで毎日のように面白い事例が取り上げられているので興味がある方はそちらもぜひ見ていただきたいです。

もちろん例外もありますが、イラスト作品をNFTで販売したり、アイドルがコレクターカードとしてグラビア写真を売るような展開については、すでに飽きられつつあるような気もしています。NFTならではの需要をどう開拓するかが重要です。

ドラッカーが言うように、顧客創造に必要なのは「マーケティング」と「イノベーション」です。イノベーションとしてNFTやメタバースが進化しているのであれば、それに応じたマーケティング、つまり需要がどこにあるのか、何を求めているのかを考える必要があります。

ーNFTって怪しかったり、危なかったりしませんか?

佐野:NFT自体は怪しいものではないですが、スタートアップの業界に身を置いていると、情報商材だったり、それほど大した企画でもないのに大風呂敷広げてお金を集めようとしている人もいるように思えます…。それは仮想通貨のバブルの時と同じですね。「○億円儲かった」とか、「今始めなきゃ間に合わない!」などのように煽ってくるような人のいうことは聞かないほうがいいと思います。

ーどういう分野の起業家にとって影響がありますか?

佐野NFTはコンテンツビジネスでは大きな革命的な技術となります。エンタメ業界でも最近はデジタル化が進み、日本を超えてグローバルにビジネスをすることが求められています。それがNFTの普及により、さらに加速していくと思います。

リアルのエンタメは残りつつも、アニメ・漫画(コミック)・ゲームのいわゆる「ACGビジネス」においては、サブスクリプションを超えるような収益手段となると考えています。

今は「とりあえず」NFTに参入してみると言うエンタメ企業も多いです。だからこそ弊社でも勝ち筋は見つかる気がしています。

ーNFTに詳しくなる、もしくは事業に活かすにはどういうところからスタートしたら良いですか?

佐野:NFTについては、最近出た『NFTの教科書』という本が専門家によって網羅的にまとめられていておすすめです。書籍の良さは、編集者によって読みやすくわかりやすく作られていることにあります。本当に教科書のように大事なところにマーカーを引いたり、わかりづらいところを何度も読み直すと理解は深まると思います。

初見では感覚的に掴みづらいところもありますし、執筆者が自社のNFTサービスを中心に紹介していたりもするので、必ずしもこの本の言うことが全て正しい訳ではないですが、現在知る限りこの本以外でNFTについて詳しくまとまった本はないです。知り合いのNFT起業家も社内で回し読みしていると言っています。

ー今後NFTがどう社会に影響を与えるのでしょう?

佐野:NFTについては、まだ一部の情報感度の高い人たちの中で盛り上がっている段階だと思います。「難しそう」「わかりづらい」「怪しい」などのイメージはまだ残っています。本当はNFTと言う技術が表に出ず、サービスとして誰にでも使いやすいようなものに落とし込んでいく必要があります。

その前提で言うならば、僕自身はずっとエンタメの仕事をしてきた中で、たくさんの才能はあるけど「食えない」クリエイターやタレントを見てきました。NFTによって、尖った才能を持つ人の作品や活動が評価され正当な報酬を支払われるようになってほしいと考えています。

僕は今後の人生をかけてでも、日本から生まれた天才的なクリエイターの発掘と育成・サポートをしてきたいです。日本はこの数十年で少しずつ国際的な影響力や優位性が低くなっています。その影響もあり、日本のクリエイターは相対的に貧しいと言えます。それでも、今はくすぶっていたり、夢を諦めようとしている若い世代のクリエイターにもっとチャレンジしてほしいし、才能を磨いてほしいです。その一助となるように弊社も頑張りたいです。

充実していたサラリーマン時代からコンテンツビジネスへ

ー起業するまでは吉本興業に在籍されていたのですよね。

佐野:はい。ちょっと話が長くなりますが(笑)、20代はまず小さな出版社で漫画の編集者として働き始めました。ちょうど20年ぐらい前で当時は「超就職氷河期」と呼ばれていました。
それでも、周りは手堅く銀行や商社などに潜り込んでいました。僕はエンタメの仕事に興味があり、大手出版社を中心に受けましたが、就活は全然うまくいかなくて、1年就職浪人させてもらってようやく小さな出版社に内定が出ました。

その出版社で上司だった人は、あの手塚治虫先生の担当編集者だった方です。本当に漫画が大好きで、手塚先生のことも心から尊敬されていました。その影響もあり、僕は天才的なクリエイターの持つ社会への影響力や偉大さについて考えるようになりました。

その後、印刷会社で働いたり、ライターをやりましたが、どうしても漫画の編集をもう一度やりたいと思っていました。
偶然ネット掲示板で吉本興業がコミック雑誌を創刊するということで編集者の募集があることを知りました。あの吉本興業に入れるとは思わず、半分冷やかしで応募してみたところ、採用していただけました。

「コミックヨシモト」という、新創刊のコミック雑誌では漫画編集として数ヶ月働きました。2007年ごろは、「ホームレス中学生」「都市伝説」が大ヒットし、芸人本ブームが起こっておりました。その流れもあり、吉本興業の本体の出版部門で働くことになりました。

吉本興業には結局11年半在籍しました。出版部門の他に広報PRや新劇場の立ち上げ、大阪でテレビ番組のプロデューサー、YouTubeなどデジタルコンテンツのプロデューサーなど本当にたくさんのエンタメの仕事を経験させてもらいました。

いつもテレビで見ていた「オールザッツ漫才」のプロデューサーを経験させてもらったり、EXILEのAKIRAさんや綾野剛さんが出演する映画のプロデューサーも担当し、映画祭のレッドカーペットも歩きました。なぜか、海の家の店長もやりました(笑)。

本当に毎日が刺激的で、記憶がなくなるくらいまでとにかく働きまくるのが好きでした。

ーそんなに充実していた毎日から、なぜ起業に至ったのですか?

佐野:エンタメのトップの会社で色々な経験をしている一方で、サラリーマン的な働き方に限界も感じていました。隣の芝生が青く見えるというか、ベンチャー企業やスタートアップ企業で夢を追う人が羨ましく感じていました。だんだんと自分が起業したらどうなるだろうという妄想に取り憑かれて、2018年末に退社し2019年に会社を作りました。

これまで大手のテレビ局や広告代理店、大手芸能事務所を中心に回っていたエンタメ業界もデジタル化やグローバル化によって少しずつ変化をしていくのを感じていました。どうせなら、その変化の中に飛び込んでみたいと思ったのです。


自社コンテンツ「東京ゲーム少女」

漫画動画「東京ゲーム少女」

ーどういう事業をしていますか?

佐野:独立後は、吉本興業で経験した動画制作やキャスティングなどの受託の仕事から始めました。コツコツ営業はしていたものの、2020年から始まったコロナ禍の影響で受託の仕事は苦戦しました。競合他社も多く、なかなかうまくいかないなと思いました。それでも、吉本興業のOBや吉本時代のお取引先の方からお仕事をもらえたのは本当に嬉しかったです。そういった人の繋がりを作ってくれた吉本興業には本当に感謝しています。

2021年から自社コンテンツ(漫画動画「東京ゲーム少女」)を作り始めました。JAPANブランド育成支援等事業費補助金という中小企業庁の補助金に採択されてその資金をもとにしています。

動画制作やキャスティングの会社は世の中に溢れていて、その中で個性を出すのはなかなか時間もかかるし、難しいことでもあります。

「東京ゲーム少女」はPR TIMESでも反応が良く、発表の際にはYahoo!ニュースにも乗りました。今まで見向きもしてくれなかった大手企業や大手メディアが当社にも少しずつ興味を持ってくれるようになり、ホームページのアクセス数も2〜3倍になっています。

さらに、ジェトロさんを通じて中国上海のアニメとゲームの祭典「CCG EXPO 2021」やアジアを代表するコンテンツマーケット「TIFFCOM」へも出展することができました。海外バイヤーともオンライン商談を実施できるなど、受託だけやっていた時代にはなかったポジティブな展開も増えました。

そして何より、動画を見て応援していただけるファンの方からの反応は前向きな刺激になります。やはり自社でコンテンツを作って人を喜ばせるのは楽しいですね。11年半も吉本興業でコンテンツやライブを作ってきたので、自分で企画したコンテンツを作るほうが楽しいし、向いているのだと改めて思いました。

現在は、アニメ・漫画・ゲームといったコンテンツ事業で本気で海外進出を考えています。投資家からも先輩起業家からも「無謀」ということを言われます(笑)。

日本の若いクリエイターが海外で活躍するために

ー今後の展望を教えてください。

佐野:当社では、「萌え」と「エモ」を掛け合わせた「MOEMO」と言うプロジェクトを始めました。MOEMOはクリエイターユニットであり、クリエイターエコノミーでもあります。日本の若いクリエイターが海外で活躍する仕組みを作っています。

日本のエンタメ業界では長年「やりがい搾取」と言われるような、低い報酬で長時間労働を強いるような労働環境が続いています。特に漫画家やイラストレーター、アニメーターなどはその環境下にあると思います。また、アーティストやタレント、芸人でも売れるまでアルバイトをしなければなかなか生活できない人が多いです。

日本に留まってエンタメをやる必要はなく、積極的に海外のプラットフォームやライブ配信、NFTなど新しいマネタイズへのチャレンジを行うべきです。「MOEMO」は夢を持つクリエイターをサポートしていきます。

ご興味のあるクリエイターの方は、お気軽に当社までご連絡ください。

資金調達についても、国内外から出資を集めていきたいと思っています。

現在、X-HUB TOKYOという東京都主催のアクセラレータープログラムの深センコースに参加しています。中国の投資家に向けたピッチイベントや中国のVC、事業会社との業務提携など、ありがたいお話を多数いただいています。中国のスタートアップを巡る環境はとてもスピーディーでチャレンジを促すような環境があり、驚いています。

まずは日本でしっかりと足場を固めたいとも思っております。日本の投資家の皆様からのお問い合わせも心よりお待ちしております。

撮影:大槻志穂(佐野さんの写真)

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(取材協力: 株式会社パンダビジョン 佐野 篤
(編集: 創業手帳編集部)

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