商工会議所に入会するメリットは?入会方法や注意点も併せて解説
商工会議所に入会すると様々なサービスが利用できる
商工会議所は任意加入の地域経済団体です。管轄内の商工業者であれば、法人や団体、個人事業主といった属性を問わずに加入できます。
会員には中小企業のほか弁護士や税理士といった士業や医者、NPO法人といった多くの業種が集います。
商工会議所に加入することによって金融支援や事業の相談といったサービスを利用できる上、人脈を広げてビジネスチャンスにつながるケースもあるかもしれません。
事業の課題に対して自分だけで解決できないと悩むよりも、お近くの商工会議所で相談してみてください。
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この記事の目次
商工会議所とは?
商工会議所は、名前は聞いたことがあっても何をしている場所かを理解している人は少ないかもしれません。
商工会議所は、商工業者によって構成された地域総合経済団体です。商工会議所法に基づいて運営されている特別認可法人で、全国にある商工会議所は500以上です。
商工会議所は、地域経済の発展や中小企業の活力強化を達成するために様々な活動を行っています。
商工会議所の始まり
日本の商工会議所のはじまりは、1878年に渋沢栄一が設立した東京商法会議所(後の東京商工会議所)です。同年に大阪と神戸に設立され全国にひろがりました。
海外では、中世より近世に西欧諸都市で商工業者が結成したギルドが誕生していました。
フランスのマルセイユ商業会議所が世界初の商工会議所であり、その後ヨーロッパで広がっています。
日本では1922年に日本経済全体を見据えた活動を行う組織として日本商工会議所が生まれ、全国の商工会議所と連携して多様な活動を実施しています。
政府会議での発言や議員への働きかけといった政策提言活動と、各地での中小企業や地域を支えるサポート、海外展開支援などが活動の中心です。
商工会との違い
商工会議所と商工会は、名前は似ているものの別の組織になります。両方とも地域に根差し、事業発展や地域経済活性化を目的とした公共性が高い活動を行う組織です。
しかし、商工会議所は商工会議所法に基づいた組織で、商工会は商工会法に基づいて規定運営されています。
さらに商工会議所が管轄するエリアは、原則として市区単位ですが、商工会は主に町村区域を管轄しています。
商工会と商工会議所の主だった違いを以下でまとめました。
商工会 | 商工会議所 | |
根拠法 | 商工会法 | 商工会議所法 |
管轄する省庁 | 経済産業省 中小企業庁 | 経済産業省 経済産業政策局 |
事業内容 | 中小企業施策、特に小規模事業施策がメイン | 地域の総合経済団体であり中小企業支援のほか、国際的な活動を含める |
商工会議所の主な役割
商工会議所の役割は主に6つに分けられます。それぞれが重要な活動であり、経済や政治において不可欠な存在といえます。
政治提言活動
商工会議所の事業活動のひとつが、政策提言活動です。これは、地域経済社会の代表として意見を述べ、政策提言や要望を展開する活動のことです。
少子高齢化や税制、金融などその地域の現場に近いからこそ見える課題はたくさんあります。商工会議所ではこうした課題について調査や研究をおこなっています。
商工会議所の独自調査であるLOBO調査は、各地の商工会議所のネットワークを活用して足元の景況感や消費マインドを集計した資料としてエコノミストや専門家にも活用されている資料です。
商工会議所は中長期的な視点での調査や分析を活用し、政府や政党に対して提言、地域の意見が政策に反映されるように働きかけを行っています。
中小企業の経営支援
商工会議所では、経営に関する相談や支援を受け付けています。これから事業を立ち上げたい人から、資金難に悩む事業者まで提供する支援は多岐にわたります。
補助金や助成金情報を提供するほか、独自の融資制度がある点も特徴です。商工会議所が経営指導を行うとその事実を証明する書類が発行されます。
この証明書は融資や補助金の申請でも活用可能です。
商工会議所には、経営に関するアドバイザーも在籍しているので、専門的な知識を求めている人にも商工会議所が強い味方になるでしょう。
産業・観光振興の推進
商工会議所は、地域に密着した組織でありまちづくりや産業、観光の振興にも貢献しています。
具体的には、農商工連携や地域資源を使ったブランド育成と強化のほか、観光支援を通じて地域を活性化しているのです。
地域に存在する優れた文化や技術、固有の食料を発掘し、新商品開発から販路開拓、技術の伝承や後継者育成に取り組むことも商工会議所の仕事です。
会員同士の交流支援
商工会議所には、その地域の様々な業種、規模の事業者が入会しています。商工会議所ではそれらの事業者が交流する支援も提供しています。
商工会議所が主催するセミナーや交流会は事業者同士が交流する場所です。人材交流によって、情報を収集しやすくなり、協業すれば地域活性化につながります。
開業したてで地域の情報が少ない人にとっても交流支援はビジネスにつながるチャンスです。
国際化支援
インターネットや配達技術の発展によって、多くの個人や法人が海外展開を視野に入れるようになりました。
商工会議所では、海外への販路拡大や生産拠点の移転、海外企業との業務連携といった事業の国際化支援を実施しています。
海外展開と聞くと、言語や商慣習の違いもあり、ハードルが高いと感じる人も多いかもしれません。
商工会議所では、専門家も在籍していて海外でのビジネスの知見もあるので安心してサポートを受けられます。
共済制度の提供
個人事業主や中小企業は、福利厚生が整備されていないことがあります。そこで商工会議所では共済制度を用意しています。
生命共済や小規模企業共済、所得補償共済など種類も多様で賠償や海外事業のリスクといったビジネスリスクに対応可能です。
日本商工会議所が団体加入者となっていて会員は団体割引が適用されます。
共済制度によって中小企業出も福利厚生を充実させやすくなるため、従業員の満足度向上、採用活動の強化にもつながります。
商工会議所に入会するメリット
商工会議所は様々な役割を担う組織です。商工会議所に入会した会員にはどういったメリットがあるのかまとめました。
これから入会するか迷っている人も参考にしてください。
経営に関して専門家からアドバイスをもらえる
商工会議所に入会すると、幅広い分野の専門家に無料で相談ができます。財務や税務、海外展開といった相談は専門性が高く、相談先を探すにも手間がかかります。
商工会議所であれば、中小企業診断士や公認会計士、弁護士といった専門家にも相談可能です。
求めるスキルに応じた専門家とマッチングして経営や技術の問題にアドバイスをするエキスパートバンクもあります。
エキスパートバンクは無料で利用できる上、ITの導入や店舗改装、生産性向上といった広い分野で活用できるサポートです。
確定申告の相談ができる
創業して間もない事業者にとって確定申告は難しく感じるかもしれません。
必要な書類の準備から利用できる制度と記入方法、青色申告の方法など確定申告にかかる作業を事業に従事しながら取り組むことになります。
商工会議所では、確定申告や税務の相談会を無料で実施しています。確定申告の方法によって、納税額も変わります。適切に節税するためにも積極的に利用してください。
人脈を形成しやすい
起業したり、事業をはじめること自体はインターネットなどを使ってひとりでも可能です。
しかし、ビジネスに関する人脈を作ろうとするとインターネットだけでなく対面での出会いが有効な場合があります。
商工会議所に加入するとセミナーやイベント、交流会を通じて多くの事業者とつながりを持つ機会が生まれます。
新しい事業のヒント探しやビジネスパートナー探しに商工会議所が活用されているのです。
販路の拡大につながる
ビジネスは、人との出会いやアイデア、連携によって成長していきます。
商工会議所は、多くの業種の事業者や専門家が在籍しているため、他社とのシナジーが生まれやすい場所です。
事業内容を共有して販路拡大したり、自社商品の活用の場を広げたりとチャンスは多くあります。
商工会議所によっては、商品やサービスをホームページでアピールできるので認知度を高める効果も期待できるでしょう。
資金調達の手段が増える
商工会議所に加入することによって、資金調達手段として利用できる補助金や融資制度の選択肢が増えます。
例えばマル経融資(小規模事業者経営改善資金)は、商工会議所などの経営指導を受けている小規模事業者が利用できる融資制度です。無担保、無保証人で利用できます。
さらに小規模事業者持続化補助金も商工会議所の支援を受けながら取り組む制度です。
商工会議所では申請書類や事業計画の作成サポートが受けられるので、まずはどういった資金調達が適しているか相談してみてください。
会員向けのサービスを活用できる
商工会では、セミナーやイベント以外にも福利厚生などの会員向けサービスが充実しています。
組織に属していない事業主は、病気やケガ、災害といったリスクに自分で備えなければいけません。
商工会議所によって利用できるサービスの内容は違いますが、共済や保険、健康診断や退職金、経営セーフティ共済などの制度が設けられています。
どのようなサービスがあるのか加入する前にチェックしておいてください。
商工会議所に入会すべき人とは?
商工会議所に加入すると、経営相談や会員向けサービスを利用できるといったメリットがあります。
今まで個人で事業をしていて、販路拡大や会計などで困っている場合や、人脈を増やしたい、海外展開したいといった明確な課題がある場合には、商工会議所に入会を検討してみてください。
一方で、事業をしていても商工会議所に入らない人もいます。
商工会議所によって違いはありますが、研修会や交流会に興味を持てない、活動が負担といった人もいるかもしれません。
商工会議所に加入すると、入会金や会費もかかります。漠然と入会するのではなく、自分が商工会議所に加入すべき明確な目的があるかどうかよく考えるようおすすめします。
商工会議所に入会する方法
商工会議所に入会するのは、決して難しくありません。ここでは、東京商工会議所を例に入会する方法をまとめています。
実際に入会する時には、管轄の商工会議所の入会方法を確認してください。
入会資格を確認する
商工会議所に入会する時には、まず入会資格があるかどうか確認します。
東京商工会議所では、東京23区内で営業している商工業者であれば、法人や団体、個人事業主問わずに入会できます。
さらに、上記の条件を満たさなくても、東京商工会議所の趣旨に賛同する人は特別会員として入会可能です。
入会方法
商工会議所に入会するには、所定の手続きを行います。
東京商工会議所の場合は、Web入会申込フォームに必要事項を入力し、その後、加入承認されてから加入承認通知と会員証が郵送されます。
会費の支払いは、郵送されてくる預金口座振替依頼書を使ってください。東京商工会議所の勧誘金は一律3千円で初年度のみです。
年会費は、法人や団体は1口(15,000円)以上、個人は、1口(10,000円)以上です。
商工会議所に入会する際の注意点
商工会議所に入会すると様々なサポートが受けられるものの、万人に適しているとはいい切れません。
ここでは、商工会議所に入会する前に押さえておきたい注意点をまとめました。
入会金に加えて各種費用が必要になる
商工会議所は、入会する時に入会金が発生し、年会費を毎年支払う必要があります。
商工会議所のサポートを利用する予定があってコスト以上の価値があると感じるのであれば問題ありません。
しかし、何のサポートを使うか考えずに入会すると、費用はかけているのにサポートを使いきれない可能性もあります。
特に年会費は資本金や団体の職員数によって規定されているため、基本的に規模が大きくなれば年会費も大きくなります。
金額によっては経営の負担になるリスクも考えておいてください。
イベントへの参加が本業の負担になる場合がある
商工会議所のメリットに、交流会や勉強会といったイベントに参加できることがあります。イベントに参加して人脈づくりや新しい知見を獲得する人も多いでしょう。
しかし、これらのイベントが負担になってしまうリスクも考えなければいけません。事業主は、そもそも忙しいためイベントへの参加が困難な場合もあります。
本業の負担にならないか、バランスがとれるかどうかも考えて入会してください。
商工会議所に入会して経営基盤の強化につなげよう!
商工会議所は、事業者をサポートするアドバイザーであり地域経済を支える立場でもあります。
商工会議所に入会することで、経営や資金調達の相談が可能であり、事業拡大にも役立つでしょう。
事業主は多くの悩みを抱えています。販路拡大や人材活用、福利厚生などの課題はひとりで解決するよりも、商工会議所の力を借りることも検討してください。
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(編集:創業手帳編集部)