サブスクリプションの解約防止方法は?企業ができる対策をまとめました。

創業手帳

サブスクリプションの解約防止を通じて顧客と長く付き合える関係を構築しよう


サブスクリプションは、インターネットの発達や消費者ニーズの変化に対応して普及が進みました。
それにともなって、サブスクリプションの商品やサービスを提供する企業も増えています。

競合他社が多い中で消費者から選ばれるサブスクリプションであり続けるには、いかに顧客の流出を防ぐかがビジネス成功のカギを握っています。
サブスクリプションの解約防止だけにとどまらず、顧客との関係を構築するための対策を考えましょう。

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時代とともに普及したサブスクリプション


この数年でサブスクリプションは、多くの人に浸透した存在になりました。
サブスクリプションが市民権を得ることで、企業も様々なサブスクリプションサービスを提供しています。

サブスクリプションが普及した背景には、ITやインターネットの発達があります。
以前はソフトウェアやコンテンツはパッケージで販売されていましたが、内容の変更や修正した製品を発売するために長期間がかかってしまう点が課題でした。

しかし、インターネットの発達によって大きなデータがやり取りできるようになり、インターネットで修正したものをアップロードしたり、自由にダウンロードしたりすることも今では当たり前に行えます。
消費者に製品を提供するためにかかる時間やコストが大幅に減り、サブスクリプションで提供しやすくなりました。

テクノロジーだけではなく、消費者の意識も変化しています。
少子高齢化や若者の消費意欲の減退によって、物を購入するよりも体験を求める消費者が増加しました。
その結果、所有欲を満たすのではなく、自分が希望する期間だけ商品やサービスを利用するサブスクリプションが選ばれるようになったと考えられています。

サブスクリプションとは


もともとサブスクリプションは、定期購読を意味する言葉です。
サブスクリプションは、今ではサービスの形態やビジネスモデルとして広く利用されるようになりました。
サービスや商品ごとにお金を支払うのではなく、一定期間利用できる権利に対してお金を支払う契約がサブスクリプションです。

例えば、アメリカの大手ソフトウェア企業は、画像編集やデザインツールのソフトウェアも以前はパッケージで販売する買い切り型でした。
しかし、現在はサブスクリプション型で消費者に利用権を付与する形になっています。
ほか、音楽配信サービスの大手企業もサブスクリプションを採用しています。

サブスクリプションにはどのようなメリットがある?

サブスクリプションは、商品やサービスを提供する企業にも消費者にも利益があるビジネスモデルです。
消費者のメリットとして挙げられるのが、物を保有しなくて良い点です。

今までは、映画やドラマなど動画視聴のためにDVDなどを購入していましたが、保有すれば場所を取り、廃棄する時にも手間がかかります。
サブスクリプションであれば、保有せずに利用できるので物の管理や廃棄の負担はありません。

また、サブスクリプションの中には、期間中であれば利用し放題の商品やサービスもあります。
使えば使うほど、1回当たりの金額が割安になるため、消費者にとってもお得に感じやすいシステムです。
都合によって解約できるので、ライフスタイルやスケジュールの変化に合わせて利用することもできます。

サブスクリプションを提供する企業にも、様々なメリットがあります。
サブスクリプションは、コストが少なくスタートできるものが多く、新規の参入障壁が少ないため、利用者の増加が期待できるでしょう。
さらに、継続することが前提のため、安定した売上げとして利用しやすい点もメリットです。
今まで利用した顧客のリストや、実際にどのような活用がされているのかもビジネスにとって有益なデータです。
サブスクリプションは、デジタル・アナログに関係なく、幅広い業界や業種で導入が進んでいます。

サブスクリプションの今後の課題

インターネットを使って簡単に入会したり契約できたりすることは、消費者にとって大きなメリットです。
一方で、入会のしやすさは退会のしやすさにつながってしまう点には注意しなければいけません。

サブスクリプションは、短期間の中に多様化して広く普及するにつれ、消費者にも変化が表れています。
消費者がサブスクリプションを選ぶことに楽しみを見い出し、複数サービスをかけもつようになっています。

かつては、一度サブスクリプションサービスに申し込んだ後に、そのままにする人も珍しくありませんでした。
そのため、企業側もどれだけの人が契約しているかには注意しても、どれだけアクティブにサービスを活用しているかまでは、それほど気にかけていなかったかもしれません。
つまり、料金だけ支払っている顧客に対しては、アプローチしなくても問題ありませんでした。

しかし、消費者も多くのサブスクリプションを使うようになり、一つひとつのサブスクリプションサービスに経済的合理性があるかどうかを考えるようになってきています。
サブスクリプションの利用が一般的になり、利用頻度が少なく、楽しめなくなったようなサブスクリプションは継続しないと考える消費者も多いでしょう。

サブスクリプションは、解約や乗り換えにもコストがかからないため、消費者も気軽に解約できます。
つまり、サブスクリプションが乱立している中では、サービスを活用できていない顧客に対して、積極的に活用してもらえるような対策が求められます。

企業がサブスクリプションを導入しようと考える場合、コンテンツの内容など商品やサービスの開発に目が行きがちです。
しかし、サブスクリプションのビジネスモデルで重要なのは、いかに解約をさせないか、思いとどまらせるかです。
サブスクリプション自体が、サービスを継続利用してもらうことで商品やサービスの開発費を回収するビジネスモデルを採用しています。

すぐに解約されるとそれだけ回収は困難です。
どれだけ新規の利用者が増えても、解約が多ければ利益が出なくなってしまいます。
サブスクリプションを導入する際には、安定して利益を上げ続けるためにどうやって解約防止するかを考えておく必要があります。

サブスクリプションについて、詳しくはこちらの記事を>>
サブスクリプションサービスの始め方やメリット・デメリットを紹介

解約防止のリテンションマーケティングとは


解約防止の対策として使われているのが、リテンションマーケティングです。
リテンションは「維持」を意味していて、リテンションマーケティングを日本語で表すと「顧客維持のためのマーケティング活用」です。

顧客と良い関係を築き、安定した商品やサービスを提供するためにも、リテンションマーケティングの重要性は高まっています。
リテンションマーケティングの考え方やメリットを紹介します。

「1:5の法則」・「5:25の法則」とは

リテンションマーケティングで覚えておきたいのが、「1:5の法則」と「5:25の法則」です。
「1:5の法則」は、顧客に販売するコストを表しています。
既存顧客を維持するのに対して、新規顧客を獲得するためにかかるコストは5倍になる法則です。

「5:25の法則」は、顧客離れを5%改善することで利益が最低25%向上する法則です。
「1:5の法則」と「5:25の法則」は、マーケティングではよく知られています。
マーケティングの目的は新規顧客の獲得と既存顧客の維持で、どちらも欠けてはならないものです。
安定した利益を出し続けるためには、既存顧客を維持するリテンションマーケティングが要といえます。

サブスクリプションの解約防止をするメリット

企業がリテンションマーケティングで解約防止をすることは、事業の継続や利益以外にもメリットがあります。
どのようなメリットがあるのかをまとめました。

①利益率の向上

解約防止は、利益率を向上させるには欠かせません。
前述した「1:5の法則」でも、新規顧客の獲得にはそれだけコストがかかることが示されていました。

競合他社もある中で、新しい顧客を見つけ出し、獲得することは簡単ではありません。
解約防止の対策は、効率良く売上げを増やし、利益を上げるためにも有効な手段です。

②休眠顧客の活性化

サブスクリプションを契約しても、使っていない顧客も少なからずいるでしょう。
現在アクティブユーザーでなくても、入会時は商品やサービスに興味をもって契約しているはずです。
休眠顧客にもう一度アプローチすることで、アクティブユーザーとなる可能性もあります。

休眠顧客をそのままにしておけば、解約されたり乗り換えられたりするかもしれません。
商品やサービスを利用しない原因を特定して解決策を提示できれば、再度楽しんで利用してくれるユーザーに戻ることも期待できます。

③サービスや商品のファンを増やす

サブスクリプションの解約防止は、解約しそうな顧客だけに有効な対策ではありません。
解約防止対策によって、顧客体験や付加価値が向上すれば、既存顧客にとっても利益があります。

より魅力的になった商品やサービスによって、顧客を熱心なファンにすれば解約防止になるとともに、SNSで拡散したり口コミをしてくれたりする可能性もあります。
既存顧客へのサービス向上が、新規顧客の導入にもつながるかもしれません。

サブスクリプションの解約防止のためにできること


サブスクリプションを契約したものの、あまり使わない、または、飽きてしまったなどの理由で解約を考えた経験を持つ人も多いはずです。
サブスクリプションの解約を防止するために、企業はどのようなことができるのでしょうか。

①使っていないメリットや機能を伝える

サブスクリプションを契約していても、顧客はすべての機能を使いこなしているわけではありません。
便利な機能やサービスを使うことがないまま解約されないように、知られていないサービスや勘違いがあるような部分は、顧客に正しい情報を伝えるようにします。
具体的には、解約しようとしている顧客に対して便利なサービスを紹介する方法が有効です。

②解約理由に対して解決策を提示する

解約理由を尋ねてから解約理由に対して解決策になるようなサービスを案内することも、リテンションマーケティングのひとつです。
例えば、購入した商品が余るなどの意見に対して、配送タイミングを調整できることや購入量を調整できることを伝えて解約を防止します。
顧客に解約以外の選択肢を与えることで、解約を防ぐ方法です。

③家族やカップルで使えるようにする

サブスクリプションのサービスは、ひとりで使っているとは限りません。
ひとつの契約で複数のアカウントが登録できるサービスもたくさんあります。
カップルや家族、親子で使っている場合、ひとりが解約を希望したとしても、ほかの人が継続を希望していれば解約を抑止できます
プランの中に、「カップルプラン」や「ファミリープラン」を用意することも、サブスクリプションの解約防止策です。

④特典の失効を伝える

解約する時には、会員であるお得感を提示することも有効です。
例えば、ポイントを付与するタイプのサービスでは、解約するとポイントが使えなくなることを説明したり、反対に使い続ければ特典を受け取れることを伝えたりします。
次回まで解約を延ばしたり、退会ではなく休会にしたりするように誘導する時にも、この方法が使われることがあります。

⑤少し先のサービスを予告する

サブスクリプションで将来提供するサービスや商品を案内する方法も、解約防止に有効です。
「来週からはこのようなコンテンツが配信されます」、「来月に配送される商品は○○です」などと情報を伝えることで、顧客にもう少し続けようと思わせることができます。

また、長期的な配信予定や配送予定の商品を伝えることで長期的なビジョンを共有して、解約しようとする意思を弱める効果もあります。

⑥ユーザーの声に敏感に反応する

人は誰しも面倒くさい作業や手間を嫌がります。
サブスクリプションで、支払い方法の変更や事務的な手続きが発生することでも、顧客は面倒くさいからと解約してしまう場合があるでしょう。

使いにくさや面倒が原因で解約されないようにするためには、顧客の声に敏感になる必要があります。
わかりにくい部分の回答がヘルプページにあったとしても、顧客が読むとは限りません。
企業側が動線や情報の探しやすさを改善するようにしてください。
操作方法や細かい説明は読まない人も多いので、直感的に操作できる、見やすさや使いやすさを第一優先にするように工夫しましょう。

⑦商品やサービスの価値を伝え続ける

商品やサービスの利便性は、契約したての時には感動したかもしれませんが、人は快適だったり便利だったりする状態にすぐに慣れてしまいます。

企業も、新規顧客には商品やサービスの魅力は伝えるものの、既存顧客に伝える機会は新規顧客に比べると多くないかもしれません。
既存顧客に対しても、商品やサービスの魅力を伝えるとともに活用方法を提案し続けるようにしてください。

⑧解約する人のペルソナを明らかにする

解約する人について知ることも、リテンションマーケティングも一環です。
どのような人がどのような理由で解約しているのかを理解して対策していくと、商品やサービスの品質も向上します。
どのような人が購入してくれるか調べることも重要ですが、解約しやすい人を知ることは、商品やサービスが抱えている課題を知るために大切な情報です。

⑨ライフイベントに柔軟に対応する

サブスクリプションの解約理由の中には、ライフイベントに関わるものも多くあります。
例えば、結婚・引越し・入院などの理由で、やむなく解約する場合です。

顧客のライフイベントは企業側で対処できる問題ではないと思うかもしれません。
しかし、解約を受け付けた後も情報を伝えてもいいかと尋ね、長期的な関係を築けるように努力しましょう。
企業との関係が続いていれば、ライフイベントに合わせて再度契約することもあり得ます。
また、どのようなライフイベントで解約されているのかを知ることで、サービスの課題も見えてくるかもしれません。

⑩アプローチの結果を検証する

解約防止には様々なアプローチがあります。
次に活かしていくためには、解約防止効果がどれだけあったかの検証も欠かせません。
数値的に成否を調べるとともに、解約防止にならなかったデータから次の課題を特定してください。
顧客の反応や意見・要望を参考に、適切なアプローチを探し出します。

まとめ

サブスクリプションは、安定した利益を出したい、顧客と長期的な関係を築きあげたいと感じる企業にとって、魅力的なビジネスモデルです。
しかし、どれだけサブスクリプションで新規顧客が流入していても、流出が多ければ利益を伸ばしていくのは困難です。
サブスクリプションを導入する時には、解約防止の方法も事前に検討しておきましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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