パーソナルベンチャーキャピタル チカイケ 秀夫|原体験を掘り起こしてスタートアップのブランディングを支援

創業手帳

成功した多くの起業家が実践!原体験を原動力に変えて生きる「原体験ドリブン」という方法

立ち上げ間もないスタートアップにブランディングはまだ必要ないと思われがちですが、実はスタートアップにこそ「原体験」を掘り起こしたブランディングが必要だと語るのが、パーソナルベンチャーキャピタルのチカイケさんです。

そこで今回は、原体験を原動力に変えて生きるという意味の『原体験ドリブン(光文社)』という著書も出されているチカイケさんに、原体験の掘り起こし方やブランディングの必要性について、創業手帳の大久保が聞きました。

チカイケ 秀夫
PERSONAL VENTURE CAPITAL.LLC CEO
日本初のブランディングを通してスタートアップ支援するベンチャーキャピタル。

現在、社外CBO(最高ブランディング責任者)と複数のスタートアップ企業へジョイン。

20代WEB系デザイナーにはじまり、ディレクターから、一部上場IT企業グループ、複数のcベンチャー立ち上げに携わる。上場企業の理念策定や、代表直下プロジェクトマネージメントとブランディングを経験し、スタートアップに特化したブランディング起業。

現在は、スタートアップに特化した企業のブランディング・パートナー/社外CBO(最高ブランディング責任者)として10社〜15社との関係性を持つ。累計100社ブランンディングに関わる。スタートアップから200億規模ブランディングを担当。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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GMOグループを経てパーソナルベンチャーキャピタルを創業

大久保:起業までの流れをお話しいただけますか?

チカイケ最初はホームページ制作会社のデザイナーをしておりました。

その後、2011年にGMOに入社したのですが、当初、GMOクラウドの子会社で、スピード翻訳とホームページを自動的に作るツールと、電子書籍周りをやっているところがあり、ちょうど電子書籍に興味があったので、そこに入らせてもらいました。

ですが、その会社がなくなってしまい、最終的にはGMOクラウドへと転籍になりました。

大久保:なぜ起業しようと思いましたか?

チカイケGMOはトップダウンに近い世界観を持つ会社で、代表の熊谷さんが言ったことに対して、グループ全体としてベクトルを揃えて進んでいくのがGMOの動き方の特徴なんです。

それはそれでグループとしては良いんですけれど、下が育っていかないんじゃないかと危惧していました。今もGMO出身の起業家が少ないんですよね。

私もGMOを辞めずに、あと10年いたら昇進したかもしれませんが、そんなに待ってられないなと思いました。外で起業して実績を作ることで、むしろ外からGMOに影響を与えたいと思い、37歳の時に起業しました。

起業家がサービスを形にするには「ブレない軸」が必要不可欠

大久保:起業のためにどのような準備をされましたか?

チカイケスタートアップのイベントに参加したり、自分がやるべきスタートアップを立ち上げるために色々なサービスを考えていました

例えば、関連のあるニュースをどんどんつなげることで、ニュースを単体ではなく立体的に読むことができる「ニュースブレイン」や個人が社会にプレスリリースを発信できる「ソーシャルリリース」などを考えました。

「ニュースブレイン」はKDDI株式会社が主催するビジネスピッチに出場して、優勝まで勝ち取りました。

大久保:色々試した中で、今やられている「ブランディング」に辿り着いたのでしょうか?

チカイケ:ブランディング事業の前にも色々なことを試しましたが、形にはなっても続きませんでした。

その理由はサービスを立ち上げる根拠が私の中になかったからです。

アイディアは浮かんでも、サービスを形にするには、周囲の環境や批判に左右されないブレない軸が必要なのです。

そこで、自分に何ができるのかを改めて考えたところ「ブランディング」でした。

どの企業もまずはプロダクトを作るのが大事という考え方があると思います。

しかし、スタートアップの支援をしていく中で、事業立ち上げ初期の『ヒト・モノ・カネ・時間』がない中で、思いが形にならずに潰れていくスタートアップを何社も目の当たりにしました。

このような企業は、最初の段階で明確な「ビジョン・ミッション」を決めることで、少なくとも自分たちがブレずに進めるようになり、生存確率が確実に上がると思いました。

なので、私はスタートアップでもブランディングに力を入れることを当たり前にしたいと思っています。

企業のブランディングをするには創業者の「原体験」を知る必要がある

大久保:ブランディングの中でもどの領域に力を入れていますか?

チカイケ:会社のアイデンティティとは、「創業者のブレない思い」が根底にあって初めて成り立ちます。

経営者自身も、目先の現状や課題に翻弄されてしまった時は、なぜその事業をやっているのかを忘れてしまうんです。

そこで、あらかじめ「ブレない思い=原体験」を元に設定した「ビジョン・ミッション」に立ち戻ることで、再び強い思いを持って再スタートを切ることができるんです。

ビジョン・ミッションは社員を縛るものではなくて、一番の役割は「経営者が立ち戻れる場所」になることだと思ってます。

なので、私がやっているブランディングは、「経営者のブレない原体験から、全ての企業活動を一貫性のあるものにする」ということをしています。
変化のスピードが早いスタートアップだからこそこうしたブランディングが必要なのです。

大久保:企業のブランディングを手がけた事例を1つ教えていただけますか?

チカイケ:最近でいうとある上場企業のブランディングをさせていただきました。

サービスが次々と立ち上がり、会社の中でも何をやっているのか説明しづらくなってしまっていました。

そこで、経営者の方の原体験や思いを聞いて、なぜその事業をやりたいのか?なぜその会社なのか?と1つずつ原点を辿っていきました。

その結果、その経営者の方は「目の前で困っている人を助けたい」という思いが強く、その思いを元に色々なサービスを立ち上げているので、一貫性がないようにも見えますが、実はやっていることは全くブレていないんです。

企業というのは成長して、ステージが変わる瞬間があります。

上場というのも、ただお金が入るんじゃなくて、パブリックなものになるということでもあるので、なぜ上場する必要があるのかなど問われる部分でもあります。

そう言った部分を可視化させながら、経営者の思いが社員やステークホルダーに伝わるようにするお手伝いしております。

著書『原体験ドリブン(光文社)』に込めた思い

大久保:チイカケさんの著書『原体験ドリブン(光文社)』を書いたきっかけは何ですか?

チカイケ:経営者は意識せずとも、原体験を持っているはずなんです。

スタートアップを支援しようと思った時に、その経営者は何がしたいのか?なぜしたいのか?と、なぜ?をひたすら聞いていった時に、原体験だけはブレなかったんです。

そこで、ブレない原体験を元に、ビジョン・ミッションを作っていけば、企業としても絶対にブレないということがわかったので、そこから原体験を大事にするようになりました。

これをより多くの方々に伝えたいと思い、書籍を出版することになりました。

大久保:著書『原体験ドリブン(光文社)』にある「原体験ジャーニー」について教えてください。

チカイケ原体験ジャーニーとは、自分の過去を振り返ることで、今の自分の原点となる体験を探す作業です。

自分に「なぜ?」と何度も問いかけることで、無意識を深掘りして過去の体験を深掘りしていきます。

大久保:原体験を形にしていくコツは何でしょうか?

チカイケ:あなたの会社は何をしているの?と初めて会った人に聞かれて、説明する時の言葉がその会社のアイデンティティになるんです。

例えば、水道屋さんが「下水道を作ってます」と一言で返すと、「そうなんですね」で会話が終わってしまいます。これでは最低限の情報しか伝わりません。

しかし、「こういう想いで、こういうことのために、インフラ整備をやっています」と話すと、思いの伝わり方が全然違ってくるんです。

大久保:What、Whyの部分が大事なんですかね。

チカイケ:なぜやっているのか、というところはしっかり深掘っていきますね。

大久保:チカイケさん自身の原体験は何になるのですか?

チカイケ小さい頃から、なぜ?なぜ?と何にでも疑問を抱く人間でした。

例えば、ラジカセではなぜ音が出るのか?と気になったら止まらなくて、分解して、コイルと磁石がついているところまで知るなど、物事になぜ?と気になる子どもではありました。

これと同じく、今でも気になったことはなぜ?と問い続けている部分ではありますね。

チカイケ:大久保さんの「原体験」をお聞きしても良いですか?

大久保:私が幼い頃は、父親が不動産業を営んでいまして、母親は大学の職員をしていまいした。このような環境で育ったので、起業家とサラリーマンの対比を幼いから見ていたことが私の原体験かもしれません。

また、起業家としての原体験としては、ラクスルの最初のECサイトの立ち上げに関わったりやライブドア事件を渦中で経験したことが、強い原体験になっていると思います。

「同調圧力をぶっ壊せ!」をミッションに原体験ジャーニーを広める

大久保:今後目指している目標を教えてください。

チカイケ:いつかは世界に挑戦したいと思っています。

私は戦後から復興した日本のパワーが大好きなんです。

一度は戦争で負けたけど、経済力でナンバーワンに登り詰めた高度経済成長の時の雰囲気がすごく好きです。

今の日本は、縮小していく時期ですけど、もう一回でも何回でもやれると思っているので、日本の素晴らしさを世界に証明してみたいですね。

大久保:敗戦と戦後の復興という歴史は、日本人全体に共通する原体験でもありそうですね。

チカイケ:おっしゃる通りです。

大久保:原体験をちゃんと言語化できる人をどれくらい増やしたいという目標はありますか?

チカイケ:『原体験ドリブン(光文社)』の裏には、同調圧力をぶっ壊すって書いてるんですけど、日本の総人口の約8%である1,000万人が変わったら、残りの92%も引っ張られて、日本全体が変わるかなと思っています。

つまり、課題意識を持ちながらも、どう行動に移したら良いのかがわからない人たちに向けて、日本全国で原体験ジャーニーを体験できる機会を作りたいんです。

そのためには私1人では足りないので、認定ファシリテーター制度をやっていまして、今は60名くらいのファシリテーターがいます。色々なファシリテーターが体験の機会を繰り返し行うことで、何度参加しても自分をさらに深掘ることができます。

1,000万人に原体験ジャーニーを体験してもらうという目標達成のために、認定ファシリテーターを増やしていくような形で、「原体験ドリブン」で生きる人を増やしたいと思っています。

原体験を1人で深掘るには限界がある

大久保:原体験ファシリテーターの役割が重要なんですね。

チカイケ:書籍にも原体験ワークの項目を入れていますが、1人で原体験を深掘るのには限界があるんです。

大企業でも原体験ワークショップをやらせていただいていますが、大企業でやる時は、その企業の創業者のことをなぜ?と深堀りし続けて、みんなに共有してもらっています。

初めてあった人同士でも、15分原体験ワークするだけで、結構仲良くなれるので、コミュニケーションツールとしても使ってます。

大久保:ワークショップってリアルだとすごく盛り上がると思うんですけど、オンラインの時はどのような工夫をしていますか?

チカイケ:確かにリアルの方がより良いですが、オンラインで行う場合は、ブレイクアウトルームでペアで壁打ちしてもらったり、私がたまにペアのルームに顔を出したりして、原体験を深堀りできる工夫をしています。

大久保:このファシリテーションのスキルは、義務教育でやってもいいかもしれませんね。

チカイケ義務教育でも「探求学習」が盛り上がっていますが、結局その子の興味関心がないと本人も動けないんですよね。

ただ単に手段としてのプログラムを教えたとしても、意味がないといえば意味がないんです。

子どもの頃にワクワクしたこととか、好きだったこととかの原体験を深掘って、自分の興味関心にたどり着けると人は変われるんです。これを目的としたワークショップを、中学校で実施したことはあります。

日本は同調圧力が強いので、「国が」「学校が」「親が」「上司が」と他人のせいにするのではなく、「私が」と自分で決められる人が増えてほしいと思ってます。

経営者が迷った時には自分の「原体験」を振り返り初心を思い出してほしい

大久保:最後に読者へメッセージをお願いします。

チカイケ経営者が迷った時に自分の原体験や初心に戻ってほしいと思ってます。そうすれば、何回でも復活できると思います。

大久保:厳しい局面とかで、原体験がしっかりしていると乗り越えられそうですよね。

チカイケ:経営者の心が折れた瞬間に会社はなくなってしまいます。

自分以外のところに答えを探し求めてしまい、結局ダメになる経営者も多いです。答えは自分の中にしかないんです。

自分の中にしかないオリジナリティを信じて、迷った時には自分の原点に戻って、起業家の方々には頑張ってほしいです。

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(取材協力: PERSONAL VENTURE CAPITAL.LLC CEO チカイケ 秀夫
(編集: 創業手帳編集部)

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