日本政策金融公庫の新創業融資制度とは?特徴から注意点までまとめてご紹介

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資金調達に便利な新創業融資制度には注意点も!


起業を検討中の方や創業したばかりの方の中には、融資制度を利用したいと考える方も多いのではないでしょうか。
日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、創業時の資金調達に役立つ融資制度であり、無担保・無保証人でも利用できます。
今回は、日本政策金融公庫が提供する新創業融資制度の特徴から、利用する際に気をつけたい点をまとめました。
創業時の資金調達に新創業融資制度を活用しようと検討中の場合は、参考にしてみてください。

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日本政策金融公庫が提供する「新創業融資制度」とは?


「新創業融資制度」は、日本政策金融公庫が新たに事業を立ち上げる方や、スタートアップしたばかりの方に対して融資を提供している制度です。
日本政策金融公庫はこれまでに年間26,000件にも上る創業企業への融資を実施しており、創業のサポートを実施しています。

新創業融資制度で得た資金は使い道がある程度決まっており、新事業の開始や開始後に必要な設備資金・運転資金になります。
また、融資限度額は3,000万円ですが、そのうち運転資金に使える融資の上限は1,500万円です。使い道や返済期間により利率が異なることも覚えておきたいポイントです。

新創業融資制度の特徴


ここからは、新創業融資制度の特徴をより詳しくご紹介します。特に注目すべき特徴は以下の2点です。

ほかの融資制度との併用が必要

新創業融資制度は、原則単体での活用はできません。融資を利用したい場合は日本政策金融公庫が提供するほかの融資制度を利用した上で申し込む必要があります。

新創業融資制度の対象者は、これから事業を立ち上げる方、または事業を開始してから税務申告が2期まで終わっていない方なので、併用できる融資制度は限られています。
以下は併用できる融資制度の例です。

・新規開業資金
「新規開業資金」は新事業の立ち上げや事業開始からおおむね7年以内の方を対象に、設備資金や運転資金を融資する制度です。
融資限度額は7,200万円が上限で、そのうち運転資金は4,800万円までとなります。

・女性、若者/シニア起業家支援関連
「女性、若者/シニア起業家支援関連」は新規開業資金に分類されますが、その中でも対象者によって特別利率が適用される融資制度です。
融資限度額は、「新規開業資金」と同様に7,200万円が上限で、そのうち運転資金は4,800万円です。

・新事業活動促進資金
上記2つとは異なり、新事業活動促進資金は中小企業事業に分類される融資制度です。
新事業活動に必要な設備資金や長期運転資金に活用でき、融資限度額は直接貸付だと70億2,000万円まで、代理貸付だと1億2,000万円までとなっています。

基本的に無担保・無保証人で利用できる

新創業融資制度は無担保・無保証人でも利用することが可能です。
金融機関は貸倒れのリスクを減らすために、融資をする際には通常、担保・保証人を必要とする場合も少なくありません。
日本政策金融公庫は創業者を支援する目的で融資を実施しており、創業者・代表者が抱えるリスクや負担を少しでも軽減するために無担保・無保証人で融資制度を提供しています。

日本政策金融公庫側にとっては滞納などで融資したお金が戻ってこなくなるのは大きなリスクです。そのため、無担保・無保証人に設定できる融資制度は限られています。

なお、法人で融資を受けたい場合、希望すれば代表者が連帯保証人となることが可能です。連帯保証人になると利率が0.1%低減し、総返済額が変わってきます。

新創業融資制度と新規開業資金の違い


前述した「新規開業資金」は、「新創業融資制度」と名称も似ているため違いがわかりにくいかもしれません。
大きな違いとしては、新創業融資制度はほかの融資と併用して使う必要があり、新規開業資金は単体でも利用できる点が挙げられます。

また、融資限度額も新創業融資制度が3,000万円、新規開業資金だと7,200万円と大きな差があります。
対象者も新規開業資金のほうが事業開始からおおむね7年以内であれば利用できるため、対象の幅が広いといえるでしょう。

ただし、新規開業資金を受けるためには担保や保証人が原則必要です。万が一廃業してしまった場合に、融資を受けた方の負担が大きくなる点には注意してください。

新創業融資制度を利用するための要件


新創業融資制度を受けたい場合、対象者と自己資金の要件すべてに該当していなくてはなりません。
融資を受けるために、具体的にどのような要件を満たせばいいのでしょうか。

対象者

対象者となるのは、以下2つのうちどちらかに該当している方です。

  • これから事業を新たにスタートさせる方
  • 事業を開始してから税務申告が2期まで終わっていない方

ただし、新事業をスタートさせる方がすべて新創業融資制度を受けられるわけではありません。
適正な内容で事業計画が策定されていて、なおかつ計画を遂行できる力を持っていると認められた方が対象です。
そのため、融資を受ける際には創業計画書を提出しなくてはなりません。

また、事業開始後でも税務申告が2期まで終わっていない方が対象であり、「2年以内」ではない点に注意が必要です。
法人だと事業年度を自由に設定できるものの、個人事業主は1月1日~12月31日と決まっています。
例えば10月に事業をスタートさせた場合、その年の12月31日で1期が終わることになります。
このように、融資に申し込める期間が短い場合もあるため、個人事業主は早めに申し込むことが大切です。

自己資金

新創業融資制度を利用する場合、ある程度自己資金を準備しておく必要があります。
これから事業を新たにスタートさせる方、または事業開始から税務申告を1期まで終わっていない方の場合、自己資金は創業資金総額の10分の1以上が必要です。

創業資金総額は、事業計画の中で実際に使用する予定の経費が対象です。
例えば、事業計画で1,500万円の経費が出ると予測していた場合、150万円の自己資金を用意する必要があります。

ただし、自己資金がなかったとしても以下の条件をクリアしていれば、要件を満たしていると判断されます。

  • これまで勤務した経験のある企業と同業種の事業を開始する方
  • 創業に関する塾やセミナーなどを受けてから事業を開始する方

新創業融資制度を利用するために必要な書類


新創業融資制度を受けるためには、いくつか書類を準備しておく必要があります。必要書類は申し込む時と面接時で異なるため、事前に把握しておくことをおすすめします。

申込み時の必要書類

申込み時に必要な書類は以下のとおりです。

  • 創業計画書
  • 借入申込書
  • 履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人の場合)
  • 設備資金の見積書
  • 不動産の登記簿謄本・登記事項証明書(不動産担保を希望する場合)
  • 都道府県知事からの推せん書または生活衛生同業組合の振興事業に係る資金証明書(生活衛生関連事業の場合)
  • 運転免許証またはパスポートのコピー
  • 許認可証のコピー(許可・届け出などが必要な事業を営んでいる場合)

すべての事業で必要となるのは、創業計画書・借入申込書・設備資金の見積書・運転免許証またはパスポートのコピーです。
そのほかの書類は該当する事業を手掛けている方や、担保を希望する方が準備します。
また、生活衛生関係の事業を営む方であっても、借入申込額が500万円以下の場合は、都道府県知事の推せん書は不要です。

借入申込書は日本政策金融公庫から書類をダウンロードが可能で、インターネットで申し込む場合には提出が不要です。

創業計画書に関しても日本政策金融公庫のホームページからフォーマットをダウンロードできます。
書ききれなかった場合は別紙を用意して記載することもできますが、フォーマットにある項目が抜け漏れないように注意してください。

面接時の必要書類

面接時に必要な書類は以下のとおりです。

  • 創業計画書や収支計画書
  • 預金通帳
  • 預金通帳以外の自己資金額や蓄積状況がわかる書類
  • ローンの支払明細や償還予定表
  • 固定資産課税明細書や固定資産税の領収書
  • 賃貸借契約書のコピー(テナントを借りた場合)
  • 源泉徴収票(直近まで会社に勤めていた場合)
  • 公的に認められている本人確認書類(運転免許証やパスポート)

創業計画書は申し込む時に提出していれば、面接時に用意しておかなくても問題ありません。
ただし、事業活動において収支の流れを把握するための収支計画書は必要となるため、準備しておく必要があります。
なるべく1カ月ごとの収支が把握できるものを用意してください。

また、預金通帳の提出も必要です。
預金通帳は事業活動に使用する自己資金などが入ったものだけでなく、家賃や公共料金の引き落としなどで使用する通帳などもすべて提出しなくてはなりません。

新創業融資制度を利用する際の注意点


新創業融資制度は創業者にとって魅力的な融資制度ではありますが、実際に利用する際には気をつけるべき点がいくつかあります。どのような注意点があるのかを解説します。

自己資金がないと利用は難しい

新創業融資制度に限らず、日本政策金融公庫の融資制度を受けたい場合、自己資金の用意がないと受けられないことがあります。
前述しましたが、新創業融資制度には対象者だけでなく自己資金の要件も設けられています。
申込み自体は自己資金がない状態でも行えますが、その後の審査で融資できないと判断されてしまうかもしれないので注意してください。

なお、自己資金として認められるものと、認められないものがあります。認められるものには、現金預金・退職金・資本金・第三者割当増資などが挙げられます。
一方、自己資金として認められない確率が高いのは、タンス預金や親から贈与されたお金、返済しなくてはいけないお金です。
例えばカードローンを利用して自己資金を用意したとしても、このお金には返済義務が発生しているので、融資を受けられないことがあります。

融資限度額は新創業融資制度の条件が適用される

新創業融資制度の融資限度額は3,000万円(そのうち運転資金は1,500万円)に設定されています。
しかし、ほかの融資と併用して新創業融資制度を利用する場合、3,000万円のほうが適用されます。

例えば、新規開業資金の融資限度額は7,200万円(そのうち運転資金は4,800万円)となっていますが、新創業融資制度を併用させた場合、融資限度額は3,000万円までです。
無担保・無保証人で利用できる反面、融資限度額は下がってしまうので高額の融資を受けたい方は気をつけてください。

返済期間は各融資制度で変わる

融資限度額は新創業融資制度の3,000万円が適用されるものの、返済期間に関しては併用する各制度の返済期間が適用されます。
例えば、新規開業資金の返済期間は、設備資金が20年以内で運転資金が7年以内(いずれも据置期間2年以内)です。
返済期間を確認したい場合は、新創業融資制度と併用させたい融資制度のページを確認してください。

利率は利用状況に応じて異なる

融資を受ける際、利率が気になるポイントのひとつです。新創業融資制度の場合、利用状況によって利率が変動します。
利率は2023年7月3日現在、基準利率(年利)が2.22~3.10%です。
一方、特別利率Aが適用された場合は1.82~2.70%、特別利率Bが適用されると1.57~2.45%で融資を受けられます。

また、日本政策金融公庫では情勢にともなって利率が変動する場合もあります。
利率が変動しているかは日本政策金融公庫ホームページの「金利情報」で確認するか、「事業資金相談ダイヤル」に問い合わせてみてください。

返済できないと最終的には財産を差し押さえられる

融資を受けたにもかかわらず期限までに返済が間に合わなかった場合、日本政策金融公庫から支払うよう督促の連絡が来ます。
この督促も無視していると保証会社などによって代位弁済が行われ、滞納者は日本政策金融公庫ではなく代位弁済を行った保証会社などへ返済していくことになります。

今度は保証会社から督促が来るようになりますが、これも無視していると裁判所から強制執行を受けてしまい、財産を差し押さえられる確率が高くなるでしょう。
会社の資産も差し押さえられてしまいますが、せっかく立ち上げた会社も倒産に追い込まれてしまっては元も子もありません。
返済が厳しいと感じたら、返済できなくなる前に日本政策金融公庫へ相談するのがおすすめです。
相談することによって返済期間の猶予をもらえたり、分割払いにしてもらえたりするなどの対策を講じてもらえる場合があります。

まとめ

新創業融資制度は、ほかの融資制度と併用させて初めて利用できるものであり、融資限度額は3,000万円までです。
無担保・無保証人でも融資を受けられるという点は大きな魅力です。創業前後で融資を受けたいと考えている方は、ぜひ新創業融資制度の活用も検討してみてください。

創業手帳(冊子版)」では、新創業融資制度をはじめ、創業前後に役立つ融資制度もご紹介しています。そのほかにも、ビジネスに関する様々な最新情報を掲載しているので、創業や経営のサポートにぜひお役立てください。


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(編集:創業手帳編集部)

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