【2026年最新】中小企業省力化投資補助金とは?仕組みやメリット、申請フローなどを徹底解説!
中小企業省力化投資補助金は中小企業の売上拡大や生産性向上を後押ししてくれる制度

中小企業省力化投資補助金は、人手不足の解消や生産性向上を目的として、省力化設備や業務効率化システムの導入を支援する制度です。
2026年8月18日、中小企業省力化投資補助金(一般型)の第8回公募が開始されました。申請受付は2026年9月中旬、公募締切は10月中旬、採択発表は2027年2月上旬を予定しています。
第8回では補助上限額や補助率に変更はありませんが、労働生産性や1人当たり給与支給総額を算定する際の「基準年度」が変更されました。また、補助事業の完了を待たずに行う「足下の賃上げ」が審査項目として明記されています。
この記事の目次
- 中小企業省力化投資補助金は中小企業の売上拡大や生産性向上を後押ししてくれる制度
- 中小企業省力化投資補助金の概要
- 2026年3月19日より「カタログ注文型」の制度が大幅拡充
- 中小企業省力化投資補助金の申請スケジュール
- 第8回中小企業省力化投資補助金(一般型)の重要ポイント・変更
- 中小企業省力化投資補助金(一般型)における賃上げ要件の考え方と注意点
- 中小企業省力化投資補助金(一般型)の採択率
- 中小企業省力化投資補助金を活用するメリット
- 中小企業省力化投資補助金(一般型)の活用事例
- 中小企業省力化投資補助金(一般型)の申請フロー
- 中小企業省力化投資補助金のよくある質問
- まとめ:中小企業省力化投資補助金を活用して人手不足の解消と賃上げを図ろう
中小企業省力化投資補助金の概要

中小企業省力化投資補助金は、経済産業省の令和5年度補正予算により創設された補助事業で、人手不足に悩む中小企業等が省力化投資に取り組むことを支援する制度です。
本補助金には、あらかじめ登録された製品を導入する「カタログ注文型」と、事業内容に応じた設備・システムを導入する「一般型」の2つの類型があります。
いずれも、省力化投資を通じて生産性向上や付加価値の向上を図り、最終的には賃上げにつなげることを目的としています。
目的
中小企業省力化投資補助金の目的は、人手不足や低い生産性といった課題を抱える中小企業が、省力化・自動化につながる設備やITシステムを導入しやすくすることです。
省力化投資を後押しすることで、中小企業の売上拡大や生産性向上を支援し、結果として賃上げや持続的な事業成長につなげることが狙いとされています。
日本の企業の多くを占める中小企業では、少子高齢化による労働力人口の減少や原材料価格の高騰などを背景に、人手不足が深刻化しています。
実際に、日本商工会議所の調査でも、中小企業の約6割以上が人手不足を感じているとされています。
本補助金は、こうした構造的な課題に対し、省人化・省力化投資を通じて対応するための有効な支援策の一つといえるでしょう。
対象事業主
中小企業省力化投資補助金の対象となるのは、人手不足の状態にある中小企業・小規模事業者等です。
人手不足については、申請時に客観的に示す資料の提出が求められます。
単に「人手が足りない」と申告するだけでは足りず、残業時間の超過や従業員の減少など、客観的な根拠に基づく説明が必要となる点に注意が必要です。
なお、申請する類型や従業員数によって以下の制限が設けられています。事前に要件を確認しておきましょう。
- 従業員0名の事業者:「一般型」では、応募申請時点で従業員数(賃上げ要件の対象となる従業員)が0名の事業者は申請できません。一方、「カタログ注文型」では、事業実態の詳細を確認する追加審査を受けることで1回目の申請は可能ですが、2回目以降の申請は不可となります。
- 従業員21名以上の事業者:従業員21名以上の事業者は「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画」を策定し、両立支援のひろば等で公表することが基本要件として義務付けられています。
対象となる事業内容
カタログ注文型
カタログ注文型では、事務局があらかじめ登録した省力化製品を導入する事業が補助対象となります。
導入にあたっては、省力化製品を活用し、労働生産性の年平均成長率3.0%以上の向上を目指す事業計画を策定する必要があります。
また、一定の賃上げ要件を満たすことで、補助上限額が引き上げられる「大幅賃上げ特例」が設けられています。
大幅賃上げ特例の適用要件は、「事業場内最低賃金を3.0%(日本銀行が定める「物価安定の目標」+1.0%)以上増加させること」及び「給与支給総額を6.0%以上増加させること」の双方を満たすことです。これまでの金額ベース(45円)から、物価動向に連動した「率」による基準へと見直されました。
自己の責によらない正当な理由なく目標を達成できなかった場合には、補助額の減額が行われるため、無理のない計画策定が重要です。
一般型
一般型では、オーダーメイド設備(事業者の個々の業務に応じて専用で設計された機械装置やシステム、ロボットシステム等)の導入が補助対象となります。
業務プロセスの省力化・自動化・高度化につながり、労働生産性の年平均成長率4.0%以上の向上が見込まれる事業計画であることが求められます。
一般型では生産性向上に加え、「1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上の増加」も必須要件となっています。カタログ型よりも基準が高いため、計画策定時には注意が必要です。
単なる設備更新ではなく、省力化の効果が具体的に説明できることが重要です。
補助額・補助率
カタログ注文型の補助額・補助率
カタログ注文型の補助額・補助率は、従業員数に応じて以下のとおりです。
2026年3月19日の制度改定以降、従業員20人以下の事業者の上限額が大幅に引き上げられました。
▼カタログ注文型の補助額・補助率
| 従業員数 | 補助上限額 ※カッコ内は大幅賃上げを行う場合 | 補助率 |
| 5人以下 | 500万円(750万円)※ | 1/2 |
| 6~20人 | 750万円(1,000万円)※ | |
| 21人以上 | 1,000万円(1,500万円)※ |
一般型の補助額・補助率(第8回公募)
最新の第8回公募(一般型)では、補助率の考え方は以下のとおりです。
▼一般型の補助上限額(第8回公募)
| 従業員数 | 補助上限額 | 大幅賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
| 6~20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 21~50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 51~100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
※大幅賃上げ特例の要件を満たした場合、従業員数に応じて補助上限額が引き上げられます。
- 中小企業:補助率 1/2(最低賃金引き上げ特例適用時は2/3)
- 小規模企業者・小規模事業者・再生事業者:補助率 2/3
なお、本補助金では賃上げの実現も重視されており、大幅な賃上げを伴う事業計画を立てて特例を適用することで、従業員規模に応じて最大1億円まで補助上限額が引き上げられます。
詳しくは、公式サイトを参照してください。
2026年3月19日より「カタログ注文型」の制度が大幅拡充
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)は、2026年3月19日から制度内容が大幅にアップデートされました。
今回の改定では、少人数の事業者への支援が手厚くなるほか、返還ルール(収益納付)の撤廃など、より使いやすい制度へと変更されています。主な変更点は以下の通りです。
1. 補助上限額の大幅引き上げ(従業員20人以下)
小規模な事業者ほどメリットが大きくなるよう、補助上限額が引き上げられました。
| 従業員数 | 改定前の上限額 | 3/19以降の上限額 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 200万円(300万円) | 500万円(750万円) |
| 6〜20人以下 | 500万円(750万円) | 750万円(1,000万円) |
| 21人以上 | 1,000万円(1,500万円) | 1,000万円(1,500万円)※据え置き |
※( )内は大幅な賃上げを行う場合の特例上限額
2. 収益納付の撤廃
これまで、補助事業によって顕著な利益が出た場合に求められていた「補助金の返納(収益納付)」が、今回の改定で完全に撤廃されました。これにより、利益をそのまま次なる投資や賃上げに充てることが可能になります。
3. 公募期間が2027年3月末まで延長
カタログ注文型の設置期間が、従来の「2026年9月末」から半年延長され、「2027年3月末頃」までとなりました。これにより、中長期的な設備投資計画が立てやすくなります。
4. 賃上げ要件・リピート申請のルール変更
- 大幅賃上げ特例の算定基準:事業場内最低賃金の引き上げ目標が、一律「45円以上」という基準から、物価安定目標を考慮した「3.0%以上」といった率による基準へ見直されました。(※これに加え、従来通り「給与支給総額増加」の要件も併せて満たす必要があります)
- 2回目以降の申請(リピート):1事業者あたりの「累計補助上限額(各申請時の補助上限額の2倍)」が設定され、複数回の活用がしやすくなります。ただし、過去の導入製品で省力化効果が得られていることの報告に加え、「前回の申請時から事業場内最低賃金を3.5%以上上昇させていること(※経過年数により上昇率は変動)」といった要件が追加されています。
詳しくは、公式サイトの制度改定案内をご確認ください。
中小企業省力化投資補助金の申請スケジュール
こちらでは、カタログ注文型、一般型、それぞれの最新スケジュールをご紹介します。
▼カタログ注文型のスケジュール
応募・交付申請は随時受付となっており、採択・交付決定も随時行われます。
▼一般型のスケジュール
▼一般型のスケジュール
| 公募回 | 公募開始日 | 申請受付開始 | 公募締切 | 採択発表 |
|---|---|---|---|---|
| 第7回 | 2026年6月5日(金) | 2026年7月1日(水) | 2026年7月31日(金)17:00 | 2026年11月中旬(予定) |
| 第8回 | 2026年8月18日(火) | 2026年9月中旬(予定) | 2026年10月中旬(予定) | 2027年2月上旬(予定) |
※第8回公募は開始されていますが、2026年8月18日時点では申請受付前です。具体的な申請受付開始日および公募締切日時は、確定後に公式サイトで公表されます。
一般型の公募回は年3~4回を予定しています。
なお、本事業へ応募申請・交付申請中の事業者、および交付決定を受け事務局からの補助金支払が完了していない事業者は申請できませんのでご注意ください。
また、申請には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。ID取得には時間がかかりますので、新たに取得する場合は、早めにGビズIDプライムアカウント取得手続きをしましょう。
※参考:中小企業省力化投資補助金
第8回中小企業省力化投資補助金(一般型)の重要ポイント・変更
中小企業省力化投資補助金(一般型)の第8回公募が、2026年8月18日に開始されました。第8回では、補助上限額や補助率に変更はありませんが、労働生産性や1人当たり給与支給総額を算定する際の「基準年度」が変更されています。
また、補助事業の完了を待たずに行う「足下の賃上げ」が審査項目として明記されたほか、補助事業実施期間や最低賃金引き上げに関する加点条件なども見直されました。
▼第8回公募の主な変更点
| 第8回のポイント | 変更・追加された内容 |
|---|---|
| 基準年度の変更 | 「応募申請時の直近決算期」から「補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期」に変更されました。 |
| 「足下の賃上げ」の評価 | 応募申請時の直近決算期から基準年度までに行う賃上げも、審査対象として明記されました。 |
| 補助事業実施期間の短縮 | 交付決定日から18か月以内から17か月以内に短縮されました。あわせて、採択発表日からの期限も20か月以内から19か月以内に変更されています。 |
| 事業場内最低賃金引き上げ加点 | 2026年6月と応募申請直近月の事業場内最低賃金を比較し、55円以上引き上げた事業者が加点対象となります。 |
| 補助対象外となる事業者の追加 | 過去1年間に、労働関係法令違反により送検処分を受けた事業者は補助対象外となります。 |
| 口頭審査の注意事項 | 口頭審査の対象となった事業者と連絡がつかず、審査日程を調整できない場合は、申請を辞退したものとみなされ、不採択となる可能性があります。 |
労働生産性・賃上げの「基準年度」が変更
第8回公募では、事業計画を策定する際の基準年度が、従来の「応募申請時の直近決算期」から、「補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期」に変更されました。
労働生産性の年平均成長率4.0%以上、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上、付加価値額の増加については、この基準年度と比較して目標達成の状況が確認されます。
補助事業完了前の「足下の賃上げ」も審査対象
第8回公募では、補助事業完了後の賃上げ目標だけでなく、設備導入などの完了を待たずに行う「足下の賃上げ」も審査対象となりました。
具体的には、応募申請時の直近決算期から基準年度までの1人当たり給与支給総額について、少なくとも物価上昇率を上回る程度の賃上げが見込まれない事業計画は、審査上大幅に不利になるとされています。
「足下の賃上げ」は、1人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上増加させる基本要件とは別の審査上の評価項目です。ただし、採択後から交付決定までの間に従業員等へ賃上げ計画を表明する必要があり、補助事業期間中の賃上げ実績も確認されます。
なお、補助上限額・補助率、労働生産性の年平均成長率4.0%以上、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高い水準にする要件などは、第7回から変更されていません。
詳細は、公式サイトから最新の第8回公募要領をご確認ください。
中小企業省力化投資補助金(一般型)における賃上げ要件の考え方と注意点
一般型の申請において最大のハードルとなるのが、「1人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させること」という必須要件です。
この数値基準を満たせない場合、そもそも申請ができない、あるいは採択後に補助金の返還を求められるリスクがあるため、正確な理解が必要です。
賃上げ要件の具体的な内容
一般型では、事業計画期間中において、対象となる従業員1人当たりの給与支給総額を、年平均3.5%(日本銀行が定める「物価安定の目標」+1.5%)以上増加させる計画を立てる必要があります。
この「1人当たり給与支給総額」には、給料、賃金、各種手当(残業手当、住宅手当等)、賞与など、給与所得として課税対象となる経費が含まれます(福利厚生費、法定福利費や退職金は除きます)。また、単年度のスポット的な増加ではなく、事業計画期間全体(3〜5年)を通じた「平均成長率」で判定される点が非常に重要です。
第8回公募では、1人当たり給与支給総額の増加率を算定する際の「基準年度」が、補助事業を完了した日を含む事業年度に変更されました。事業計画最終年度には、この基準年度と比較して年平均成長率3.5%以上の増加を目指す必要があります。
また、第8回では、設備導入の完了を待たずに行う「足下の賃上げ」も審査対象となりました。応募申請時の直近決算期から基準年度までの1人当たり給与支給総額について、少なくとも物価上昇率を上回る程度の賃上げが見込まれない計画は、審査上大幅に不利になるとされています。足下の賃上げは、採択後から交付決定までに従業員等へ表明し、補助事業期間中も実績が確認されます。
申請前に必ず押さえておきたい注意点
- 従業員要件:応募申請時に従業員数が0名の場合、または基準年度及び算出対象となる各事業年度において全月分の給与等の支給を受けた「対象となる従業員」が0名の場合は申請できません。
- 未達成時のリスク:付加価値額が増加しておらず企業全体として赤字の場合や天災など、自己の責によらない正当な理由がなく賃上げ目標を達成できなかった場合、補助金の返還や減額を求められる規定があります。
- 審査のポイント:単に「3.5%上げる」と書くだけでは不十分です。「省力化投資によって労働生産性が向上し、その収益を原資として賃上げができる」という論理的な裏付けが審査されます。また、部分的な省力化にとどまらず、浮いた時間や労働力を高付加価値業務に振り向けるなど、会社全体における柔軟なリソース最適化の観点も重要視されます。
どのような事業者に向いている要件か
年平均3.5%の賃上げは、経営にとって決して小さな負担ではありません。しかし、以下のような事業者にとっては、補助金を活用して生産性を高める絶好の機会となります。
- 人手不足を解消するために、給与水準を上げて人材を確保・定着させたい
- 手作業の自動化により、残業代を減らしつつ基本給を底上げする余力を生み出したい
- 経営課題として「高付加価値化」を掲げ、賃上げと収益向上をセットで実現したい
自社の事業計画や資金繰りと照らし合わせ、無理なく継続できる賃上げ計画であるかを慎重に検討したうえで、申請へと進みましょう。
中小企業省力化投資補助金(一般型)の採択率
中小企業省力化投資補助金(一般型)のこれまでの採択結果は以下です。
▼一般型 採択結果
| 公募回 | 申請数 | 採択数 | 採択率 |
|---|---|---|---|
| 第1回 | 1,809 | 1,240 | 68.5% |
| 第2回 | 1,160 | 707 | 60.9% |
| 第3回 | 2,775 | 1,854 | 66.8% |
| 第4回 | 2,100 | 1,456 | 69.3% |
| 第5回 | 2,035 | 1,251 | 61.5% |
最新の第5回公募では、採択率が約61.5%となりました。過去最高であった第4回(69.3%)からはやや低下したものの、全体を通して申請数の約6〜7割が採択されている傾向に変わりはありません。他の主要な補助金(採択率3〜5割前後が多い)と比較すると、依然として採択されやすい状況にあるといえるでしょう。引き続き、次回の採択結果が発表されましたら、更新予定です。
中小企業省力化投資補助金を活用するメリット

中小企業省力化投資補助金を活用することで、経済的な援助を受けながら省力化機器の導入を推進できます。
ほかにも多くのメリットが見込まれるため、以下で詳しく解説します。
補助金返還(収益納付)の完全廃止により、利益をそのまま成長に回せる
これまでは、補助事業によって大きな利益が出た場合に補助金を返納する「収益納付」のルールがありましたが、現在は完全に撤廃されています。これにより、省力化で得た利益を返還の心配なく、さらなる賃上げや設備投資に活用できるようになります。
生産性が高まり人手不足を解消できる可能性がある
中小企業省力化投資補助金を活用し、省力化機器を導入することで業務生産性が高まります。マンパワーで行っていた作業の全部ないし一部を機械に任せることで、人間はより高い付加価値を生み出せる業務に時間を割けるためです。
例えば、人間が3人がかりで行っていた業務を機械が担当できるようになれば、3人分の人出に余裕が生まれます。限られた人材で業務をやりくりしている事業主にとって、生産性を高め、人手不足を解消できるメリットは大きいでしょう。
従業員の労働時間を削減できる
省力化機材を導入すれば、人間が行う作業が減るため労働時間を削減できます。労働時間の削減により、従業員がワークライフバランスを実現しやすくなるでしょう。
長時間労働が常態化していると、従業員の心身の負担が重くなるだけでなく、満足度も下がってしまいます。特に、建設業界や物流業界では2024年4月から残業時間の規制が強化されているため、より労働時間をシビアに管理しなければなりません(いわゆる「2024年問題」)。
労働時間を削減できれば、人件費を抑制できるメリットも期待できます。長時間労働や人件費の負担を軽減したいと考えている事業主は、中小企業省力化投資補助金の活用を検討する余地があります。
賃上げを通じて従業員満足度の向上・人材確保を図れる
中小企業省力化投資補助金の目的の一つに「賃上げ」があります。賃上げを実現すれば、従業員の満足度が向上し、人材離れを防げる効果が見込めるでしょう。
働きやすい職場環境を整備できれば人手を集めやすくなり、人材定着と人材確保を図れるメリットが期待できます。特に、転職が当たり前になりつつある昨今においては、正社員やパートなどの雇用形態に関係なく、魅力的な職場環境を整備する重要性が高まっています。
外部専門家やシステムインテグレータ(SIer)等と連携して導入を進められる(一般型の場合)
一般型の申請においては、「カタログ注文型」のような登録販売事業者による決まったサポートの枠組みはありませんが、必要に応じて外部の認定経営革新等支援機関や専門家から計画策定の支援を受けることが可能です(ただし、事業計画は申請者自身が内容を理解して作成することが大前提となります)。
また、省力化機器(オーダーメイド設備)を導入するにあたっては、外部のシステムインテグレータ(SIer)等と連携して、自社の業務に合わせた専用設計やシステムの構築を進めることになります。
せっかくの設備も使いこなせなければ意味がありませんが、一般型では専門家の技術指導や助言を受けるための「専門家経費」を補助対象に含めることも可能です。専門家と連携しながら、自社の課題解決と生産性向上に直結するシステムを構築・運用できる点は、大きなメリットの一つです。
中小企業省力化投資補助金(一般型)の活用事例

一般型では、単なる既製品の購入ではなく、外部のシステムインテグレータ(SIer)等と連携し、自社の業務プロセスに合わせて専用設計された機械装置やシステム(オーダーメイド設備)を導入することが求められます。実際にどのような活用事例が考えられるか解説します。
飲食業界で自社の注文システムと連動した自動調理・配膳ロボットシステムを構築する
飲食業界で自動調理ロボットや自動配膳ロボットを導入する際、自社独自のモバイルオーダーシステムや厨房のPOSレジとシームレスに連携するシステムを構築することで、キッチンやホールの人手不足を根本から解消できます。
単なるロボットの単体導入にとどまらず、注文から調理、配膳、下膳までのデータ連携を自動化することで、ホールの業務を大幅に削減できます。浮いた人員を接客サービスの向上や新メニュー開発などの高付加価値業務に振り向けることで、生産性と顧客満足度の両立が可能になります。
介護業界でIoTセンサーと連動した介護記録・見守りシステムを導入する
介護業界も、人手不足が顕著な業界です。介護事業者が、各利用者のベッドや居室に設置した各種センサー(見守り、バイタル測定など)と自社の介護記録システムを統合した独自のネットワークを構築することで、人手不足の解消と、従業員の労働時間を抑制するメリットが期待できるでしょう。
夜間巡視の負担軽減や、異常の早期発見が可能になるだけでなく、取得したデータを自動で記録システムに反映させることで、事務作業の工数も大幅に削減できます。結果として、介護士が利用者一人ひとりに対してきめ細かいケアを行えるようになり、質の高い対人サービスを提供できます。
建設業界で自社の工程管理システムと連携した点検ドローン・自律運搬ロボットシステムを構築する
建設業界で点検ドローンや運搬ロボットを導入する際、自社の施工管理データ(BIMデータ等)や工程管理システムと連携させて自律飛行・自律走行を行うシステムを構築することで、建設作業員の負担と労災事故が発生するリスクを軽減できます。
高所や危険な場所の点検を遠隔・自動で行えるほか、現場の進捗状況に応じた資材の自動運搬が可能になります。安全な作業環境を整備できるだけでなく、時間効率を飛躍的に向上させ、いわゆる「2024年問題」に対応するための労働時間短縮効果も見込めます。
物流業界で自社の倉庫管理システム(WMS)に最適化された自動搬送・積み下ろしロボットを導入する
物流業界において、自社の倉庫レイアウトや既存の倉庫管理システム(WMS)に完全に最適化された自動搬送ロボットや積み下ろしロボットのシステムを設計・導入することにより、商品の移動や整理を迅速かつ正確に行えます。従業員の身体的負担の軽減と労働時間の短縮はもちろん、物流センターや倉庫の運用効率が向上するメリットが期待できます。
人間が行うとヒューマンエラーが起こってしまうリスクがありますが、データと連動したロボットシステムを構築することで、誤出荷や損傷のリスクを最小限に抑えられます。さらに、24時間体制での運用が可能となり、ECサイトの普及に伴う多様な出荷ニーズにも年中無休で対応できる強力な物流基盤が完成します。
中小企業省力化投資補助金(一般型)の申請フロー
一般型の申請から補助金受領、その後の報告までの基本的なフローは以下の通りです。特に、採択後に行う「交付申請」と「交付決定」のプロセスは非常に重要であり、交付決定前に契約や発注(事前着手)を行った経費は一切補助対象外となるため注意が必要です。
- 申請フロー
-
- 事前準備:「GビズIDプライムアカウント」の取得、システムインテグレータ(SIer)等との連携によるオーダーメイド設備等の検討、事業計画の策定
- 応募申請:電子申請システムを通じた申請
- 審査・採択(補助金交付候補者の決定):外部有識者等による書面審査および口頭審査
- 交付申請・交付決定:採択後、詳細な経費の見積書等を提出し、事務局の審査を経て交付決定を受けます。(※交付決定日以降に発注・契約等の事業着手が可能になります)
- 補助事業の実施:交付決定日から17か月以内(かつ採択発表日から19か月以内の日)に、契約・発注、納品、検収、支払い、実績報告書の提出までを完了させます。
- 事業実績報告・確定検査:事業完了後、期限内に実績報告書を提出し、事務局等による検査(現地調査等)を受けます。
- 補助金の請求・支払い:確定した補助金額を請求し、精算払いを受けます。
- 事業実施効果報告:事業計画1年目終了後の最初の4月から5年間、毎年所定の期限内に効果報告を行います。
一般型の公募は年3~4回程度予定されています。申請には時間のかかる「GビズIDプライムアカウント」の取得や、詳細な事業計画の策定が必要となるため、公式サイトで最新情報をこまめに確認し、余裕を持った準備を進めておくことをお勧めします。
中小企業省力化投資補助金のよくある質問
製品の選び方や他補助金との併用など、申請前に多い疑問をまとめて解説します。
Q:機材は自由に選べますか?
申請する類型によって異なります。
「カタログ注文型」の場合は、自由に選べるわけではなく、あらかじめ登録された「省力化製品カタログ」の中から選定する必要があります。
「一般型」の場合は、事業主の個々の業務に応じて専用で設計された「オーダーメイド設備」やシステム(ロボットシステム等)を導入することが可能です。
Q:最低利用期間はありますか?
導入方法(購入か賃貸借か)によってルールが異なります。
購入して機器を導入した場合、いずれの類型でも法定耐用年数(処分制限期間)が経過するまでは、目的外使用や転売などの財産処分が制限されます。制限期間内に処分を行う場合は事前の承認が必要となり、補助金の返納が必要となります。
一方、「カタログ注文型」において賃貸借契約(借用)により導入する場合は、1年未満で解約すると交付決定の取消(補助金返還)の対象となるため注意してください。
Q:製品の追加申請(リピート申請)は可能ですか?
「カタログ注文型」の場合、条件を満たせば可能です。
2026年3月の制度改定より、累計補助上限額の範囲内であれば複数回申請できるようになりました。ただし、前回導入した製品の省力化効果を報告・承認を受けることに加え、所定の「事業場内最低賃金の引き上げ」要件を満たす必要があります。
※「一般型」においては、応募申請時点で事務局からの補助金支払が完了していない事業者は申請できません。
Q:他の補助金と併用できますか?
同一事業での併用は不可、別事業など条件を満たせば可能な場合があります。
- IT導入補助金: テーマや事業内容が同一又は類似した内容の事業(同じ業務プロセスに省力化製品を導入するもの)は併用不可。
- ものづくり補助金: いずれの類型でも、過去3年間に2回以上交付決定を受けた事業者は対象外です。また、「カタログ注文型」は直近10カ月以内の交付決定者が対象外、「一般型」は応募申請時点で補助金の支払が完了していない事業者が対象外となります。それ以外は併用可。
- 事業再構築補助金: 当該補助金の対象事業に用いるための機器を導入する場合(同一事業)は併用不可。対象事業を明確に切り分ける必要があります。なお、「一般型」の場合はものづくり補助金と同様に、補助金支払が完了していない事業者や過去3年間に2回以上交付決定を受けた事業者は対象外となります。
Q:省力化補助金は、アルバイトなどの人件費削減(省人化)を目的とした設備導入でも活用できますか?
はい、活用できます。
セルフレジや自動受付機などの導入により、業務効率化や省人化につながる設備であれば対象になります。
ただし、本補助金は「深刻な人手不足の解消」が目的です。申請の際は、単なるコスト削減ではなく「限られた人員でいかに生産性を向上させるか」という視点で必要性を説明することが重要です。
まとめ:中小企業省力化投資補助金を活用して人手不足の解消と賃上げを図ろう
中小企業省力化投資補助金は、省力化投資を促進して中小企業の付加価値額や生産性向上を図る制度です。活用すれば、生産性向上だけでなく従業員の労働時間の短縮や賃上げも実現できるでしょう。
人材確保や低い生産性に悩んでいる事業主の方は、活用を検討してみてください。
(編集:創業手帳編集部)
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