【2026年最新】中小企業省力化投資補助金とは?仕組みやメリット、申請フローなどを徹底解説!

中小企業省力化投資補助金は中小企業の売上拡大や生産性向上を後押ししてくれる制度

青空を飛行する白いドローン。省力化や自動化に活用される機器のイメージ
中小企業省力化投資補助金は、人手不足の解消や生産性向上を目的として、省力化設備や業務効率化システムの導入を支援する制度です。対象は人手不足の状態にある中小企業・小規模事業者等で、個人事業主も含まれます。類型は2つあり、カタログ注文型は2027年3月末頃まで随時受付中です。

2026年8月18日、中小企業省力化投資補助金(一般型)の第8回公募が開始されました。申請受付は2026年9月18日(金)10:00から、公募締切は10月16日(金)17:00までです。採択発表は2027年2月上旬を予定しています。

第8回では補助上限額や補助率に変更はありませんが、労働生産性や1人当たり給与支給総額を算定する際の「基準年度」が変更されました。また、補助事業の完了を待たずに行う「足下の賃上げ」が審査項目として明記されています。

この記事の目次

中小企業省力化投資補助金の概要

日本円の紙幣と売上高を示す円グラフ、その上に置かれた自動車の模型。設備投資と資金活用を表すイメージ

中小企業省力化投資補助金は、経済産業省の令和5年度補正予算により創設された補助事業で、人手不足に悩む中小企業等が省力化投資に取り組むことを支援する制度です。

本補助金には、あらかじめ登録された製品を導入する「カタログ注文型」と、事業内容に応じた設備・システムを導入する「一般型」の2つの類型があります。

いずれも、省力化投資を通じて生産性向上や付加価値の向上を図り、最終的には賃上げにつなげることを目的としています。

目的

中小企業省力化投資補助金の目的は、人手不足や低い生産性といった課題を抱える中小企業が、省力化・自動化につながる設備やITシステムを導入しやすくすることです。

省力化投資を後押しすることで、中小企業の売上拡大や生産性向上を支援し、結果として賃上げや持続的な事業成長につなげることが狙いとされています。

日本の企業の多くを占める中小企業では、少子高齢化による労働力人口の減少や原材料価格の高騰などを背景に、人手不足が深刻化しています。 実際に、日本商工会議所の調査でも、中小企業の約6割以上が人手不足を感じているとされています。

本補助金は、こうした構造的な課題に対し、省人化・省力化投資を通じて対応するための有効な支援策の一つといえるでしょう。

対象事業者・申請要件のチェックリスト

中小企業省力化投資補助金の対象は、人手不足の状態にある中小企業・小規模事業者等です。要件には両類型に共通するものと一般型だけのものがあるため、以下のチェックリストで自社が申請できるかを確認してください。

両類型に共通する要件

要件 内容・補足
中小企業・小規模事業者等に該当する(個人事業主を含む) 主な中小企業者の基準は以下のとおりです。なお、一般型では一定の特定事業者やNPO法人、社会福祉法人等も対象となる場合があります。製造業・建設業・運輸業は資本金3億円以下または従業員300人以下、小売業は5,000万円以下または50人以下。要件を満たすNPO法人・社会福祉法人も申請可
人手不足の状態を説明できる 類型により示し方が異なる(下表参照)
労働生産性の向上目標を立てられる カタログ注文型:年平均3.0%以上/一般型:年平均4.0%以上
GビズIDプライムアカウントを取得している 電子申請が前提。未取得なら早めに手続きを

人手不足の確認方法は類型によって異なります。カタログ注文型では残業時間や従業員数、求人状況などから人手不足を示し、一般型では事業計画書で人手不足の状況や省力化効果を具体的に説明します。

また、申請にはGビズIDプライムアカウントが必要なため、未取得の場合は早めに手続きを進めましょう。

一般型だけの要件

要件 内容・補足
1人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上増加させる計画を立て、従業員に表明する 未達の場合は達成率に応じて返還
事業場内最低賃金を毎年、地域別最低賃金+30円以上にする
従業員21人以上の場合、一般事業主行動計画を公表する 公表先は「両立支援のひろば」
オーダーメイド設備等を導入する 汎用設備の単体導入は対象外
応募時点で従業員が1人以上いる 従業員0人の場合の扱いは下表参照

1人当たり給与支給総額の増加目標は、事業計画期間(3~5年)の年平均成長率で判定されます。一般型は従業員0人の場合は申請できませんが、カタログ注文型は一定の条件を満たせば初回申請が可能です。

申請できない事業・事業者

要件を満たしていても、次のいずれかに当てはまる場合は申請できません。申請準備を始める前に確認しておきましょう。

  • ・大企業が株式の2分の1以上を保有しているなどの「みなし大企業」
  • ・過去1年間に労働関係法令違反で送検処分を受けた事業者
  • ・親会社と子会社など同一法人とみなされる企業の2社目以降(1社しか申請できない)
  • ・他の国の補助金と補助対象経費が重複する事業
  • ・新規創業や新事業展開、不動産賃貸や1次産業(カタログ注文型)
  • ・一般型に応募・交付申請中、または補助金の支払いが完了していない事業者(一般型)

このほか、ものづくり補助金の交付決定から10か月未満の事業者はカタログ注文型に申請できません。一般型は、ものづくり補助金・事業再構築補助金・新事業進出補助金の交付決定を過去3年間に合計2回以上受けた事業者が対象外です。

出典:中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募)」中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(カタログ注文型)公募要領」デジタル庁「GビズID」

補助額・補助率

カタログ注文型の補助額・補助率

カタログ注文型の補助額・補助率は、従業員数に応じて以下のとおりです。2026年3月19日の制度改定以降、従業員20人以下の事業者の上限額が大幅に引き上げられました。

▼カタログ注文型の補助額・補助率

従業員数 補助上限額 ※カッコ内は大幅賃上げを行う場合 補助率
5人以下 500万円(750万円)※ 1/2
6~20人 750万円(1,000万円)※
21人以上 1,000万円(1,500万円)※

一般型の補助額・補助率(第8回公募)

最新の第8回公募(一般型)では、補助率の考え方は以下のとおりです。

▼一般型の補助上限額(第8回公募)

従業員数 補助上限額 大幅賃上げ特例適用時
5人以下 750万円 1,000万円
6~20人 1,500万円 2,000万円
21~50人 3,000万円 4,000万円
51~100人 5,000万円 6,500万円
101人以上 8,000万円 1億円

※大幅賃上げ特例の要件を満たした場合、従業員数に応じて補助上限額が引き上げられます。

  • 中小企業:補助率 1/2(最低賃金引き上げ特例適用時は2/3)
  • 小規模企業者・小規模事業者・再生事業者:補助率 2/3

なお、本補助金では賃上げの実現も重視されており、大幅な賃上げを伴う事業計画を立てて特例を適用することで、従業員規模に応じて最大1億円まで補助上限額が引き上げられます。

詳しくは、公式サイトを参照してください。

カタログ注文型と一般型の違いと選び方

2つの類型は、導入できる設備や申請時期、賃上げ要件が大きく異なります。まず以下の比較表で違いを押さえましょう。

項目 カタログ注文型 一般型
対象となる設備・事業 カタログに登録された汎用製品(IoT・ロボット等)。新規事業は対象外 個別の現場に合わせたオーダーメイド設備・システム構築。汎用設備の単体導入は対象外
補助上限額・補助率 500万〜1,000万円(大幅賃上げで最大1,500万円)。補助率1/2以下 750万〜8,000万円(大幅賃上げで最大1億円)。補助率1/2(小規模事業者等は2/3)
申請時期 随時受付(2027年3月末頃まで)。交付決定は申請から概ね1〜2か月 公募回制(年3〜4回)。第8回は2026年10月中旬締切(予定)
主な申請要件 労働生産性を年平均3.0%以上向上させる計画。初回は賃上げ任意(補助上限額を引き上げる場合と2回目以降は要件あり) 労働生産性を年平均4.0%以上、1人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上増加させる計画(未達は返還)
向いている事業者 カタログの製品で課題を解決でき、早く導入したい事業者 自社専用の設備や機器連携が必要で、3〜5年の賃上げ計画を実行できる事業者

出典:中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募)」中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(カタログ注文型)公募要領」中小企業基盤整備機構「よくあるご質問」

2026年3月19日より「カタログ注文型」の制度が大幅拡充

2026年3月19日の制度改定では、従業員20人以下の事業者の補助上限額が引き上げられたほか、収益納付が撤廃されました。また、申請受付期間が2027年3月末頃まで延長され、大幅賃上げ特例では事業場内最低賃金の引き上げ基準が「45円以上」から「3.0%以上」に変更されています。

さらに、カタログ注文型では一定の要件を満たすことで複数回の申請も可能となっています。詳細な要件は最新の公募要領をご確認ください。

詳しくは、公式サイトの制度改定案内をご確認ください。

2027年度は「省力化・デジタル化・AI投資補助金」を概算要求

2027年度(令和9年度)の概算要求では、中小企業の省力化設備の導入やデジタル技術の活用を一体的に支援する「省力化・デジタル化・AI投資補助金」が盛り込まれています。概算要求額は3,746億円です。

現時点では概算要求の段階であり、具体的な補助上限額や補助率、申請要件、公募時期などは確定していません。今後の予算編成や中小企業庁からの発表を確認する必要があります。

なお、現行の中小企業省力化投資補助金のうち、カタログ注文型は2027年3月末頃まで申請を受け付ける予定です。

※出典:中小企業庁「令和9年度 中小企業・小規模事業者関係 概算要求等ポイント」

中小企業省力化投資補助金の申請スケジュール

公募回 公募開始日 申請受付開始 公募締切 採択発表
第7回 2026年6月5日(金) 2026年7月1日(水) 2026年7月31日(金)17:00 2026年11月中旬(予定)
第8回 2026年8月18日(火) 2026年9月18日(金)10:00 2026年10月16日(金)17:00 2027年2月上旬(予定)

※第8回公募の申請受付は2026年9月18日(金)10:00から開始されます。なお、第9回公募のスケジュールは詳細が確定次第、公表される予定です。

一般型の公募回は年3~4回を予定しています。

なお、本事業へ応募申請・交付申請中の事業者、および交付決定を受け事務局からの補助金支払が完了していない事業者は申請できませんのでご注意ください。

また、申請には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。ID取得には時間がかかりますので、新たに取得する場合は、早めにGビズIDプライムアカウント取得手続きをしましょう。

※出典:中小企業基盤整備機構「スケジュール(カタログ注文型)」/中小企業基盤整備機構「スケジュール(一般型)」

第8回中小企業省力化投資補助金(一般型)の重要ポイント・変更

中小企業省力化投資補助金(一般型)の第8回公募が、2026年8月18日に開始されました。第8回では、補助上限額や補助率に変更はありませんが、労働生産性や1人当たり給与支給総額を算定する際の「基準年度」が変更されています。

また、補助事業の完了を待たずに行う「足下の賃上げ」が審査項目として明記されたほか、補助事業実施期間や最低賃金引き上げに関する加点条件なども見直されました。

▼第8回公募の主な変更点

第8回のポイント 変更・追加された内容
基準年度の変更 「応募申請時の直近決算期」から「補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期」に変更されました。
「足下の賃上げ」の評価 応募申請時の直近決算期から基準年度までに行う賃上げも、審査対象として明記されました。
補助事業実施期間の短縮 交付決定日から18か月以内から17か月以内に短縮されました。あわせて、採択発表日からの期限も20か月以内から19か月以内に変更されています。
事業場内最低賃金引き上げ加点 2026年6月と応募申請直近月の事業場内最低賃金を比較し、55円以上引き上げた事業者が加点対象となります。
補助対象外となる事業者の追加 過去1年間に、労働関係法令違反により送検処分を受けた事業者は補助対象外となります。
口頭審査の注意事項 口頭審査の対象となった事業者と連絡がつかず、審査日程を調整できない場合は、申請を辞退したものとみなされ、不採択となる可能性があります。

労働生産性・賃上げの「基準年度」が変更

第8回公募では、事業計画を策定する際の基準年度が、従来の「応募申請時の直近決算期」から、「補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期」に変更されました。

労働生産性の年平均成長率4.0%以上、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上、付加価値額の増加については、この基準年度と比較して目標達成の状況が確認されます。

補助事業完了前の「足下の賃上げ」も審査対象

第8回公募では、補助事業完了後の賃上げ目標だけでなく、設備導入などの完了を待たずに行う「足下の賃上げ」も審査対象となりました。

具体的には、応募申請時の直近決算期から基準年度までの1人当たり給与支給総額について、少なくとも物価上昇率を上回る程度の賃上げが見込まれない事業計画は、審査上大幅に不利になるとされています。

「足下の賃上げ」は、1人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上増加させる基本要件とは別の審査上の評価項目です。ただし、採択後から交付決定までの間に従業員等へ賃上げ計画を表明する必要があり、補助事業期間中の賃上げ実績も確認されます。

詳細は、公式サイトから最新の第8回公募要領をご確認ください。

中小企業省力化投資補助金(一般型)における賃上げ要件の考え方と注意点

一般型の申請において最大のハードルとなるのが、「1人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させること」という必須要件です。

この数値基準を満たせない場合、そもそも申請ができない、あるいは採択後に補助金の返還を求められるリスクがあるため、正確な理解が必要です。

賃上げ要件の具体的な内容

一般型では、事業計画期間中において、対象となる従業員1人当たりの給与支給総額を、年平均3.5%(日本銀行が定める「物価安定の目標」+1.5%)以上増加させる計画を立てる必要があります。

この「1人当たり給与支給総額」には、給料、賃金、各種手当(残業手当、住宅手当等)、賞与など、給与所得として課税対象となる経費が含まれます(福利厚生費、法定福利費や退職金は除きます)。また、単年度のスポット的な増加ではなく、事業計画期間全体(3〜5年)を通じた「平均成長率」で判定される点が非常に重要です。

第8回公募では、1人当たり給与支給総額の増加率を算定する際の「基準年度」が、補助事業を完了した日を含む事業年度に変更されました。事業計画最終年度には、この基準年度と比較して年平均成長率3.5%以上の増加を目指す必要があります。

また、第8回では、設備導入の完了を待たずに行う「足下の賃上げ」も審査対象となりました。応募申請時の直近決算期から基準年度までの1人当たり給与支給総額について、少なくとも物価上昇率を上回る程度の賃上げが見込まれない計画は、審査上大幅に不利になるとされています。足下の賃上げは、採択後から交付決定までに従業員等へ表明し、補助事業期間中も実績が確認されます。

申請前に必ず押さえておきたい注意点

  • 従業員要件:応募申請時に従業員数が0名の場合、または基準年度及び算出対象となる各事業年度において全月分の給与等の支給を受けた「対象となる従業員」が0名の場合は申請できません。
  • 未達成時のリスク:付加価値額が増加しておらず企業全体として赤字の場合や天災など、自己の責によらない正当な理由がなく賃上げ目標を達成できなかった場合、補助金の返還や減額を求められる規定があります。
  • 審査のポイント:単に「3.5%上げる」と書くだけでは不十分です。「省力化投資によって労働生産性が向上し、その収益を原資として賃上げができる」という論理的な裏付けが審査されます。また、部分的な省力化にとどまらず、浮いた時間や労働力を高付加価値業務に振り向けるなど、会社全体における柔軟なリソース最適化の観点も重要視されます。

どのような事業者に向いている要件か

年平均3.5%の賃上げは、経営にとって決して小さな負担ではありません。しかし、以下のような事業者にとっては、補助金を活用して生産性を高める絶好の機会となります。

  • 人手不足を解消するために、給与水準を上げて人材を確保・定着させたい
  • 手作業の自動化により、残業代を減らしつつ基本給を底上げする余力を生み出したい
  • 経営課題として「高付加価値化」を掲げ、賃上げと収益向上をセットで実現したい

自社の事業計画や資金繰りと照らし合わせ、無理なく継続できる賃上げ計画であるかを慎重に検討したうえで、申請へと進みましょう。

中小企業省力化投資補助金(一般型)の採択率

中小企業省力化投資補助金(一般型)のこれまでの採択結果は以下です。

▼一般型 採択結果

公募回 申請数 採択数 採択率
第1回 1,809 1,240 68.5%
第2回 1,160 707 60.9%
第3回 2,775 1,854 66.8%
第4回 2,100 1,456 69.3%
第5回 2,035 1,251 61.5%
第6回 1,841 1,176 63.9%

最新の第6回公募(2026年8月28日発表)では、1,841件の申請に対して1,176件が採択され、採択率は約63.9%でした。第1回~6回の採択率は、約61~69%で推移しています。

中小企業省力化投資補助金を活用するメリット

同じ作業着を着て並ぶ5人の従業員。省力化投資による働きやすい職場づくりや人材確保を表すイメージ
中小企業省力化投資補助金を活用することで、経済的な援助を受けながら省力化機器の導入を推進できます。
ほかにも多くのメリットが見込まれるため、以下で詳しく解説します。

補助金返還(収益納付)の完全廃止により、利益をそのまま成長に回せる

これまでは、補助事業によって大きな利益が出た場合に補助金を返納する「収益納付」のルールがありましたが、現在は完全に撤廃されています。これにより、省力化で得た利益を返還の心配なく、さらなる賃上げや設備投資に活用できるようになります。

生産性が高まり人手不足を解消できる可能性がある

中小企業省力化投資補助金を活用し、省力化機器を導入することで業務生産性が高まります。マンパワーで行っていた作業の全部ないし一部を機械に任せることで、人間はより高い付加価値を生み出せる業務に時間を割けるためです。

例えば、人間が3人がかりで行っていた業務を機械が担当できるようになれば、3人分の人出に余裕が生まれます。限られた人材で業務をやりくりしている事業主にとって、生産性を高め、人手不足を解消できるメリットは大きいでしょう。

従業員の労働時間を削減できる

省力化機材を導入すれば、人間が行う作業が減るため労働時間を削減できます。労働時間の削減により、従業員がワークライフバランスを実現しやすくなるでしょう。

長時間労働が常態化していると、従業員の心身の負担が重くなるだけでなく、満足度も下がってしまいます。特に、建設業界や物流業界では2024年4月から残業時間の規制が強化されているため、より労働時間をシビアに管理しなければなりません(いわゆる「2024年問題」)。

労働時間を削減できれば、人件費を抑制できるメリットも期待できます。長時間労働や人件費の負担を軽減したいと考えている事業主は、中小企業省力化投資補助金の活用を検討する余地があります。

賃上げを通じて従業員満足度の向上・人材確保を図れる

中小企業省力化投資補助金の目的の一つに「賃上げ」があります。賃上げを実現すれば、従業員の満足度が向上し、人材離れを防げる効果が見込めるでしょう。

働きやすい職場環境を整備できれば人手を集めやすくなり、人材定着と人材確保を図れるメリットが期待できます。特に、転職が当たり前になりつつある昨今においては、正社員やパートなどの雇用形態に関係なく、魅力的な職場環境を整備する重要性が高まっています。

外部専門家やシステムインテグレータ(SIer)等と連携して導入を進められる(一般型の場合)

一般型の申請においては、「カタログ注文型」のような登録販売事業者による決まったサポートの枠組みはありませんが、必要に応じて外部の認定経営革新等支援機関や専門家から計画策定の支援を受けることが可能です(ただし、事業計画は申請者自身が内容を理解して作成することが大前提となります)。

また、省力化機器(オーダーメイド設備)を導入するにあたっては、外部のシステムインテグレータ(SIer)等と連携して、自社の業務に合わせた専用設計やシステムの構築を進めることになります。

せっかくの設備も使いこなせなければ意味がありませんが、一般型では専門家の技術指導や助言を受けるための「専門家経費」を補助対象に含めることも可能です。専門家と連携しながら、自社の課題解決と生産性向上に直結するシステムを構築・運用できる点は、大きなメリットの一つです。

中小企業省力化投資補助金(一般型)の活用事例

白い帽子とエプロンを着用した作業者。飲食業などで省力化設備を活用する事業者のイメージ
一般型では、単なる既製品の購入ではなく、外部のシステムインテグレータ(SIer)等と連携し、自社の業務プロセスに合わせて専用設計された機械装置やシステム(オーダーメイド設備)を導入することが求められます。実際にどのような活用事例が考えられるか解説します。

飲食業界で自社の注文システムと連動した自動調理・配膳ロボットシステムを構築する

飲食業界で自動調理ロボットや自動配膳ロボットを導入する際、自社独自のモバイルオーダーシステムや厨房のPOSレジとシームレスに連携するシステムを構築することで、キッチンやホールの人手不足を根本から解消できます。

単なるロボットの単体導入にとどまらず、注文から調理、配膳、下膳までのデータ連携を自動化することで、ホールの業務を大幅に削減できます。浮いた人員を接客サービスの向上や新メニュー開発などの高付加価値業務に振り向けることで、生産性と顧客満足度の両立が可能になります。

介護業界でIoTセンサーと連動した介護記録・見守りシステムを導入する

介護業界も、人手不足が顕著な業界です。介護事業者が、各利用者のベッドや居室に設置した各種センサー(見守り、バイタル測定など)と自社の介護記録システムを統合した独自のネットワークを構築することで、人手不足の解消と、従業員の労働時間を抑制するメリットが期待できるでしょう。

夜間巡視の負担軽減や、異常の早期発見が可能になるだけでなく、取得したデータを自動で記録システムに反映させることで、事務作業の工数も大幅に削減できます。結果として、介護士が利用者一人ひとりに対してきめ細かいケアを行えるようになり、質の高い対人サービスを提供できます。

建設業界で自社の工程管理システムと連携した点検ドローン・自律運搬ロボットシステムを構築する

建設業界で点検ドローンや運搬ロボットを導入する際、自社の施工管理データ(BIMデータ等)や工程管理システムと連携させて自律飛行・自律走行を行うシステムを構築することで、建設作業員の負担と労災事故が発生するリスクを軽減できます。

高所や危険な場所の点検を遠隔・自動で行えるほか、現場の進捗状況に応じた資材の自動運搬が可能になります。安全な作業環境を整備できるだけでなく、時間効率を飛躍的に向上させ、いわゆる「2024年問題」に対応するための労働時間短縮効果も見込めます。

物流業界で自社の倉庫管理システム(WMS)に最適化された自動搬送・積み下ろしロボットを導入する

物流業界において、自社の倉庫レイアウトや既存の倉庫管理システム(WMS)に完全に最適化された自動搬送ロボットや積み下ろしロボットのシステムを設計・導入することにより、商品の移動や整理を迅速かつ正確に行えます。従業員の身体的負担の軽減と労働時間の短縮はもちろん、物流センターや倉庫の運用効率が向上するメリットが期待できます。

人間が行うとヒューマンエラーが起こってしまうリスクがありますが、データと連動したロボットシステムを構築することで、誤出荷や損傷のリスクを最小限に抑えられます。さらに、24時間体制での運用が可能となり、ECサイトの普及に伴う多様な出荷ニーズにも年中無休で対応できる強力な物流基盤が完成します。

中小企業省力化投資補助金(一般型)の申請フロー

一般型の申請から補助金受領、その後の報告までの基本的なフローは以下の通りです。特に、採択後に行う「交付申請」と「交付決定」のプロセスは非常に重要であり、交付決定前に契約や発注(事前着手)を行った経費は一切補助対象外となるため注意が必要です。

申請フロー
  • 事前準備:「GビズIDプライムアカウント」の取得、システムインテグレータ(SIer)等との連携によるオーダーメイド設備等の検討、事業計画の策定
  • 応募申請:電子申請システムを通じた申請
  • 審査・採択(補助金交付候補者の決定):外部有識者等による書面審査および口頭審査
  • 交付申請・交付決定:採択後、詳細な経費の見積書等を提出し、事務局の審査を経て交付決定を受けます。(※交付決定日以降に発注・契約等の事業着手が可能になります)
  • 補助事業の実施:交付決定日から17か月以内(かつ採択発表日から19か月以内の日)に、契約・発注、納品、検収、支払い、実績報告書の提出までを完了させます。
  • 事業実績報告・確定検査:事業完了後、期限内に実績報告書を提出し、事務局等による検査(現地調査等)を受けます。
  • 補助金の請求・支払い:確定した補助金額を請求し、精算払いを受けます。
  • 事業実施効果報告:事業計画1年目終了後の最初の4月から5年間、毎年所定の期限内に効果報告を行います。

申請にあたり、時間のかかる「GビズIDプライムアカウント」の取得や、詳細な事業計画の策定が必要です。そのため、公式サイトで最新情報をこまめに確認し、余裕を持った準備を進めておくことをお勧めします。

中小企業省力化投資補助金のよくある質問

製品の選び方や他補助金との併用など、申請前に多い疑問をまとめて解説します。

Q:中小企業省力化投資補助金の申請はいつまでですか?

類型により異なります。

カタログ注文型は随時受付で、公募要領では2027年3月末頃までとされています。一般型は公募回ごとに締切があり、一般型の第8回は、2026年10月16日(金)17:00が申請締切です。

Q:どのような事業者が対象になりますか?

人手不足の状態にある中小企業・小規模事業者等で、個人事業主も含まれます。

資本金または常勤従業員数が中小企業基本法の基準以下なら該当します。ただし、みなし大企業や送検処分を受けた事業者は対象外で、一般型は従業員0人でも申請できません。

Q:一般型とカタログ注文型のどちらを選ぶべきですか?

カタログに自社の課題を解決できる製品がある場合はカタログ注文型、自社専用の設備やシステム構築が必要な場合は一般型を検討しましょう。一般型では賃上げ要件がある点にも注意が必要です。

Q:最低利用期間はありますか?

導入方法(購入か賃貸借か)によってルールが異なります。

購入して機器を導入した場合、いずれの類型でも法定耐用年数(処分制限期間)が経過するまでは、目的外使用や転売などの財産処分が制限されます。制限期間内に処分を行う場合は事前の承認が必要となり、補助金の返納が必要となります。

一方、「カタログ注文型」において賃貸借契約(借用)により導入する場合は、1年未満で解約すると交付決定の取消(補助金返還)の対象となるため注意してください。

Q:製品の追加申請(リピート申請)は可能ですか?

「カタログ注文型」の場合、条件を満たせば可能です。

2026年3月の制度改定より、累計補助上限額の範囲内であれば複数回申請できるようになりました。ただし、前回導入した製品の省力化効果を報告・承認を受けることに加え、所定の「事業場内最低賃金の引き上げ」要件を満たす必要があります。
※「一般型」においては、応募申請時点で事務局からの補助金支払が完了していない事業者は申請できません。

Q:他の補助金と併用できますか?

同じ補助対象経費について、国などの他の補助金と重複して補助を受けることは原則できません。 過去にものづくり補助金、事業再構築補助金、新事業進出補助金などの交付決定を受けている場合、類型や交付決定の時期・回数によっては対象外となることがあります。

また、カタログ注文型では、デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)とテーマや事業内容が同一・類似する場合も対象外です。申請前に最新の公募要領を確認してください。

なお、省力化投資補助金のカタログ注文型と一般型は、同じ補助対象経費には併用は不可ですが、別の経費であれば併用可能です。申請前に各類型の最新の公募要領を確認してください。

Q:省力化補助金は、アルバイトなどの人件費削減(省人化)を目的とした設備導入でも活用できますか?

はい、活用できます。セルフレジや自動受付機などの導入により、業務効率化や省人化につながる設備であれば対象になります。

ただし、本補助金は「深刻な人手不足の解消」が目的です。申請の際は、単なるコスト削減ではなく「限られた人員でいかに生産性を向上させるか」という視点で必要性を説明することが重要です。

出典:中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募)」中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(カタログ注文型)公募要領」

まとめ:中小企業省力化投資補助金を活用して人手不足の解消と賃上げを図ろう

中小企業省力化投資補助金は、省力化投資を促進して中小企業の付加価値額や生産性向上を図る制度です。活用すれば、生産性向上だけでなく従業員の労働時間の短縮や賃上げも実現できるでしょう。

人材確保や低い生産性に悩んでいる事業主の方は、活用を検討してみてください。

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(編集:創業手帳編集部)