新札対応はいつから準備すべき?事業者が行うべき対策を解説

創業手帳

新札へ対応するための準備は早い段階から進めておこう


2024年7月3日より、新札が発行されます。事業者の方は新札に対応するために、さまざまな準備を進めなければなりません。

新札への対応が遅れてしまうと、販売機会を逸失したり顧客離れにつながったりする恐れがあります。事業者や店舗運営者の方は、新札の発行に伴ってどのような影響があるのか、どのような準備を進める必要があるのか把握しましょう。

こちらの記事では、事業者が新札発行に伴い準備すべきことや新札発行に準備が間に合わなかったときの対応などを解説します。

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新札の発行時期は2024年7月3日から


財務省と日本銀行によると、新札の発行は2024年7月3日に開始される予定です。一万円札・五千円札・千円札のデザインが新しくなります。

新札が発行される理由は、紙幣の偽造を防ぐためです。偽造を防ぐための技術は年々発達しており、新札には安全に使用するための最先端技術が取り入れられています。

偽造された紙幣が出回ると、お金の信用性が低下して貨幣価値の毀損につながります。詐欺被害を受けてしまう人が増える恐れもあるため、新札の発行は貨幣の信頼性を維持するうえで重要です。

また、障害がある方でも紙幣を使いやすくするためのユニバーサルデザインが導入されており、セキュリティ面でも利便性の面でも進化する予定です。

事業者が新札発行に伴い準備すべきこと

事業者の中には、キャッシュレス決済を導入しておらず現金決済も受け入れているところもあるのではないでしょうか。

新札の発行に伴って、事業者は対応を迫られます。具体的に、どのような対応が求められるか解説します。

レジ・自動券売機・自動販売機のシステムをアップデートする

紙幣を自動で読み取るレジ・自動券売機・自動販売機を導入している場合、新札に対応するためのアップデートを行う必要があります。

レジや自動券売機には、紙幣の種別を識別する「紙幣識別機」や「紙幣鑑別機」が搭載されていますが、現行の機械では新札を認識できません。

現行の紙幣にしか対応していない場合、新札を投入すると偽造紙幣と誤認しエラーや故障の原因につながる恐れがあります。修理に伴う手間やコストを削減するためにも、機器のメーカーに連絡して新札対応へのアップデートを依頼しましょう。

新しい機器を導入する場合よりも、既存の機器をアップデートしたほうがコストは安く済むケースが一般的です。そのため、導入しているメーカーにアップデートの対応可否を確認し、早い段階で依頼するとよいでしょう。

レジ・自動券売機・自動販売機のシステムをアップデートする際の想定費用は、2.5万円から15万円程度が相場です。メーカーによって費用は異なるため、早い段階で問い合わせておきましょう。

新紙幣対応のシステムを導入する

新札の発行を機に、現在利用している機器から新しいシステムへ変更する方法があります。長年同じ機器を利用している場合、他社システムへ乗り換えることで利便性の高さを感じられる可能性があります。

高度なセキュリティ対策が施されている新札に対応している機器は、精度の高い紙幣識別が可能です。安全に利用できるだけでなく、導入に伴って運用フォローやアフターサービスも受けられるため、安心して導入できるでしょう。

ただし、現在利用しているシステムをアップデートする場合よりも導入コストが高くなる可能性があります。

新紙幣対応のシステムを導入する際の想定費用は、導入するレジや自動精算機の機器によりますが50万円~450万円程度になると見込まれます。複数の機器を比較検討しつつ、予算との折り合いを付けながら導入を検討してみてください。

キャッシュレス決済のみに移行する

新札の発行に伴って、現金決済を受け入れずキャッシュレス決済のみに移行することも一つの選択肢です。近年はクレジットカードやQRコード、交通系電子マネーなどのキャッシュレス決済を行う人が増えていることから、顧客からも受け入れられてもらえる可能性があります。

キャッシュレス決済のみに移行すると、レジで現金をやり取りする手間が減ります。新札に対応するためのシステムアップデートや機器の入れ替えが不要となるため、コスト面からみてもメリットは大きいでしょう。

店舗に現金を保管する必要が無くなれば、犯罪に遭うリスクを軽減できます。管理の手間やコストが削減できるだけでなく、防犯上の観点からもキャッシュレス決済への完全移行は有益といえるでしょう。

ただし、現金決済を非対応にすると、キャッシュレス決済に対応できない顧客が離れてしまう可能性があります。特に、高齢者から利用される機会が多い店舗においては、顧客がキャッシュレス決済に対応できない可能性が考えられます。

さらに、キャッシュレス決済のシステム手数料や決済手数料が発生する点には注意が必要です。また、電子機器やネットワークに不具合が起こると決済ができなくなるリスクがあります。

キャッシュレス決済のみに移行する際には、顧客の現金決済比率や導入後の手数料などをシミュレーションしましょう。

なお、キャッシュレス決済機器を導入する際にかかる想定費用は5万円~10万円程度が目安になります。決済手数料として、決済手段に応じて決済額の2%~10%が発生する点も押さえておきましょう。

新札対応の準備はいつからすべき?


新札発行に向けた準備は、できるだけ早い段階から始めるべきです。システムを新しくする場合でも新しい機器を導入する場合でも、業者は忙しくなるため希望のスケジュール通りに対応できない恐れがあります。

具体的には、現在利用しているレジや自動券売機などが新札に対応できるか、メーカーに問い合わせましょう。あわせて、キャッシュレス決済の導入や拡充についても検討することをおすすめします。

なお、新しいシステムや機器を導入した際には、従業員に使い方を教える必要があります。新札が発行されてから対応を始めると、新札に対応できない期間が長期化し、顧客が離れてしまう要因になりかねません。

具体的には、以下のようなリストを作成して計画的に準備を進めましょう。

  • レジや自動券売機のシステムを新札対応にアップデートできるか確認する
  • 現在利用しているメーカー以外によいシステムがあれば導入を検討する
  • キャッシュレス決済を導入する
  • 従業員に新しい機器の使い方をレクチャーする
  • 新しい機器やシステムを導入したときのコストをシミュレーションする
  • 継続的に発生するランニングコストをシミュレーションする

新札の発行は決定事項ですから、事業者は計画的に対応を進める必要があります。メーカーとの調整やコスト管理などを行い、新札への対応を進めましょう。

新札発行に準備が間に合わなかったときの対応

新札への対応を迫られているのは、すべての事業者に共通しています。場合によっては、業者がなかなか手配できず新札への対応が間に合わないこともあるでしょう。

以下で、新札発行に準備が間に合わなかったときの具体的な対応を解説します。

新札が使えない旨を掲示する

新札発行に対応が間に合わなかった場合、顧客に対して新札が使えない旨を掲示しましょう。新札に対応していないことを理解してもらわないと、顧客が困ってしまいます。

店頭やレジ付近など、顧客の目に留まりやすい場所に「現在、当店では新紙幣での取り扱いを準備中です。ご不便をおかけしますが、旧紙幣でのお支払いにご協力ください。」「当店は○月○日より新紙幣でのお支払いが可能となる予定です。それまでの間は、旧紙幣または電子マネー等をご利用ください。」などと掲示するとよいでしょう。

顧客の理解を得るためには、新札に対応できない理由を丁寧に説明することが大切です。新札に対応できるようになる具体的な日を伝えれば、顧客に納得してもらえる可能性が高まります。

従業員へ丁寧な対応をすることを徹底させる

新札の導入に伴って、現場では一定の混乱が発生することが見込まれます。従業員も「質問されたらどのように対応すればよいのか」と不安を感じているかもしれません。

顧客の理解を得るためには、従業員がわかりやすく丁寧に説明する必要があります。事業主や店舗責任者は、従業員に対して顧客への伝え方や新札の導入予定日に関する指導を行い、顧客からの質問に適切に答えられるように備えましょう。

また、顧客の中には新札の発行に伴ってキャッシュレス決済の利用を始める人がいるかもしれません。キャッシュレス決済に慣れていない顧客をサポートするためにも、キャッシュレス決済の方法について、わかりやすく説明できるように指導を徹底する必要があります。

必要に応じて、スマホの操作方法を教えたりスムーズに通信するためにWi-Fi環境を整備するなど、柔軟な対応が求められるケースも想定すべきでしょう。

旧札で対応する

新札が発行されたあとも、旧札は引き続き利用できます。新札が発行されたばかりのころは十分に流通していないことが考えられるため、旧札を保有している人も多いでしょう。

旧札も新札と同じ価値を持つことから、旧札を受け取っても何ら問題ありません。また、お釣りを渡すときも旧札で問題ないため、急いで新札を調達する必要はありません。

もし新札が発行されるタイミングに準備が間に合わなかったとしても、旧札で問題なく対応できる点は押さえておきましょう。

決済手段の選択肢を増やす

決済手段の選択肢を増やすことも検討しましょう。現金決済やクレジットカード決済に加えて、QRコードや交通系電子マネーの決算機能を導入すれば、顧客の獲得につながる可能性があります。

新札発行にシステムの準備が間に合わなかったとしても、決済手段の選択肢を増やせば顧客の利便性は損なわれません。具体的に決済手段の選択肢を増やす方法として、以下が考えられます。

  • 加盟するクレジットカードの国際ブランドを増やす
  • iDやQuickPayなどの非接触型決済に対応する
  • PayPay、LINEPay、d払いなどのQRコード決済に対応する
  • 交通系電子マネーに対応する
  • nanaco、WAON、楽天Edyなどの流通系電子マネーに対応する

なお、NIRA総合研究開発機構のキャッシュレス決済実態調査2023(速報)によると、個人の消費支出額におけるキャッシュレス決済比率は70.6%でした。

支払時に利用したい手段として得られた回答で多かったのはクレジットカードが40%で最も多く、現金は19%でした。決済手段の選択肢を増やせば、顧客の満足度や利便性の向上が期待できるといえるでしょう。

ただし、決済手段の選択肢を増やすとコスト負担が重くなります。導入コストや手数料負担などを考慮し、自社の状況に合った決済手段を導入しましょう。

新札対応の準備を進めて機会損失を防ごう

2024年7月から新札が発行され、事業者や店舗運営者は対応を迫られます。現金決済の時は目視で確認できますが、レジや自動券売機ではシステムをアップデートしなければなりません。

すべての事業者が新札への対応を迫られることから、メーカーのシステムアップデートや新しい機器の導入をスムーズに行えない可能性があります。顧客離れを防ぐためにも、できるだけ早い段階から新札へ対応する準備を進めるとよいでしょう。

創業手帳は「新一万円札の顔」となる渋沢栄一氏の玄孫(やしゃご)に当たるの、渋澤 健 氏へのインタビューを過去に実施しています。また他にも有名起業家や経営者など総勢500名以上を今までインタビューしてきています。「創業手帳人気インタビュー」では、その中でも厳選されたインタビュー記事を掲載。無料でご覧いただけますので、是非こちらもお読みください。

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(編集:創業手帳編集部)

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