リクルート 山本 智永|「商うを、自由に。」を掲げ、Air ビジネスツールズで事業を営む方々に寄り添う

創業手帳

「Airペイ QR」が海外の決済ブランド8種を追加!訪日外国人の需要高まりを受けて

昨今、新型コロナウイルス感染症による渡航者の規制も緩和され、ようやくコロナ前の水準までインバウント需要が回復しつつあります。

ただ、コロナ前と違う様子も見受けられます。アジアだけでなく欧米の観光客の増加、モノの消費だけでなく体験を求める「コト消費」の高まり。さらに、これまで訪日外国人が訪れることのなかった地方でも、インバウント需要が増えています。

これらのインバウンド対策のため、株式会社リクルートでは提供している「Airペイ QR」に、新たに海外QRコード決済を8ブランド追加しました。これにより、イタリアやモンゴル、マカオのQRコード決済にも対応できるようになっています。

そこで今回は、「Airペイ」のプロダクト担当者 山本さんに、インバウンド需要やQRコード決済の現状・課題などをお伺いしました。

山本 智永(やまもと ともなが)
株式会社リクルート プロダクト統括本部 SaaS プロダクトマネジメント室
決済プロダクトマネジメント ユニット 部長
『Airペイ』『Airペイ QR』プロダクト担当者
インターネットサービス企業などで事業立ち上げやグロースを経験後、2018年にリクルート入社。入社時より決済事業を担当し、2021年4月より現職。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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創業間もない方に選んでもらっている「Airレジ」「Airペイ」


大久保:山本さんは、転職でリクルートに入社されたんですよね。

山本:そうですね、僕は2018年3月にリクルートに転職しました。その前は、インターネットサービス企業やスタートアップ企業など4社で働いた経験があります。

「Airペイ」は2015年11月にスタートしたサービスですが、僕が入社したのはテレビCMも打つ前でした。加盟店の開拓など、まだ「Airペイ」の事業規模が小さかった頃から携わっています。

大久保:「Airペイ」とセットで導入されていることが多いのが「Airレジ」ですよね。「Airペイ」と「Airレジ」、それぞれについて教えていただけますか。

山本:「Airレジ」はPOSレジの会計アプリ、「Airペイ」はクレジットカードや電子マネーの決済ができるアプリです。「Airペイ」には「Airペイ QR」という、QRコード決済ができるアプリもあります。

どちらのサービスも主にSMBと言われる中小規模の方々をメインターゲットにしています。創業間もない方々にもよくご利用いただいていますね。ただ、大手の皆さんにもご利用いただいております。

大久保:それぞれどれくらいの利用者がいるのでしょうか。

山本:アカウント数で言いますと、2023年9月の末時点で「Airレジ」のアカウント数は78.9万、「Airペイ」のアカウント数は43.0万です。

大久保:コロナ禍で飲食店が減って60万件くらいになっていますので、シェアはかなり高いですね。

山本:「Airレジ」は基本的には無料のサービスなので、2013年11月にスタートしてから長くご利用いただいているお客様が多いですね。

大久保:「Airペイ」の決済手数料3.24%も安いですよね。

山本:そうですね、Web上で公開されている料率でいうと最安水準の料率です。

大久保:それ以外にも「Airペイ」の特徴をお伺いできますか?

山本:導入したお客様に喜んでいただいている特徴としては、大きく3点あります。

1つ目は、対応決済ブランドが68種(2023年11月末時点)と多い点です。主要クレジットカード決済、交通系電子マネーのほか、「iD」「QUICPay」の決済、Apple Payでの決済にも対応しています。

2つ目は、固定費・振込手数料が無料な点です。例えば振込手数料についてですが、決済ソリューションは基本的には売上を預かったあとに口座にお返しする流れになりますが、そのお返しするときの振込手数料を我々が負担しています。

3つ目は、「AirレジとAirペイはセットで導入することが多い」とおっしゃっていただいたように、我々のプロダクトを1つ利用してもらうと、他の多くのプロダクトにも対応できる点です。複数のプロダクトを組み合わせることで、より業務の効率化を進めてもらえます。

転売禁止で需要が高まっている「コト消費」

大久保:業種・業態でいうと、いわゆる店舗系、飲食や宿泊、美容などでのご利用が多いのでしょうか?

山本:そうですね。飲食業界が大きな割合を占めています。あとは小売りや、我々が「ホットペッパービューティー」を提供していますので、美容のお客様の導入も多いです。

大久保:決済サービスをご提供されてると世の中の消費の動きもわかると思うのですが、コロナ禍と比べていかがでしょうか?

山本:コロナ前の水準に戻ってきていますね。また、現金とキャッシュレスを比べると、キャッシュ比率がどんどん上がってきています。

直近では中国の団体旅行の解禁がありましたけれど、今年に入って訪日外国人の方の来日がさらに増えているため、そちらの影響が大きいと考えています。

大久保:インバウンド事業や訪日外国人向けのサービスを開業しようとお考えの方にはチャンスですね。

山本:おっしゃる通りです。あとは、インバウンドのお金の流れを見ていると、よくニュースでも言われてる「コト消費」が実感できます。

例えば、QRコード決済は、コロナ前までは百貨店や小売などの大手の需要が高かったんです。

でも、2019年に中国の制度改正で転売が禁止になったことや、日本に何度も訪れるリピーター客が増えたことで、各種アクティビティや美容室の利用など体験型の「コト消費」に決済が利用されている傾向があります。

大久保:コト消費は、単価が高そうなイメージがありますがいかがでしょうか?

山本:コロナ前と比較して高くなっていますね。中国の方々に限って言えば、今日本に来ている個人旅行の方々は富裕層が多いことも理由に挙げられると思います。

QR決済とクレジットカード決済の違い


大久保:今回「Airペイ QR」では、インバウンド対応のため新サービスを追加したんですよね。

山本:そうですね。Alipayが提供する「Alipay+」が日本国内で新たに8ブランドに対応した11月15日に合わせて、我々のサービスでもその8ブランド追加の対応をしました。Alipayの日本国内ローンチと同日に対応した点が、1つ大きなポイントだと考えています。

大久保:8ブランド追加によって、変わった点を教えてください。

山本:中国、タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、韓国など元々対応していた国に加えて、イタリア、モンゴル、マカオにも対応したところですね。

2023年11月15日(水)より利用可能となった8ブランド

大久保:アジア以外のインバウンド対応もしたわけですね。

山本:今は、いわゆるゴールデンルートと言われる場所以外の地方にも足を運ぶ外国人が増えています。ですから今までは自分と関係がないと考えていた事業者さんにも、十分インバウンドのチャンスが広がってきているんです。

そうしたときに、訪れた外国人が現地の通貨を日本円にすることなく、手元のモバイルで決済できるようにすることは、加盟店さんにもプラスになると思います。

大久保:手元のモバイル決済がそのまま使えるのは、外国の方にとってはかなり便利ですよね。

山本:先日Airペイを導入いただいている箱根のお店に伺ったときにも、中国の方だけでなく欧米の方も多くてびっくりしました。そして、その方々が「この決済が使えるの?」と、自国の決済が使えることに驚かれている声も少なからずお聞きしましたね。

特にAlipayはクーポンもよく発行されているのですが、そちらもそのまま使ってもらうこともできますから、日本の店舗側にもかなりメリットがありますよ。

大久保:Alipayのコストで発行されたカスタマー向けのクーポンを、日本でも利用できるということですか?

山本:その通りです。海外のQRコード決済事業者が発行したクーポンの恩恵を、日本の店舗が受けることができるんです。

Air ビジネスツールズは業務支援を軸に16プロダクト展開


大久保:Airシリーズには、「Airペイ」「Airレジ」以外にもいろいろなサービスがあるんですよね。

山本:そうですね。Airと冠がついた「Air ビジネスツールズ」というサービスは、全部で16種類あります。これら全てのサービスは、「業務・経営支援サービス」と社内では呼んでいます。つまり、お客様の工数削減を目的に作っているんです。

ビジョンには、「商うを、自由に。」を大きく掲げています。「事業を取り巻くわずらわしさを減らす」ことをミッションにプロダクトを展開してきました。

ですから、「Airペイ」「Airレジ」だけではなく、「Air ビジネスツールズ」を使っていただくことによって、どんどん業務の効率化を進めてもらいたい、そこを促進していきたいというのが、我々の一番の願いですね。

大久保:「Airペイ」「Airレジ」以外にはどんなサービスがあるのでしょうか?

山本:例えば、予約管理アプリとして「Airリザーブ」があります。インターネット環境があれば、電話予約、ネット予約、直接予約を一元管理することができるサービスです。

注文を取るサービスも新しく出ています。「Airレジ オーダー」のセルフオーダーというサービスは、お役様にQRコードを読み込んでいただき、自身のスマホから注文をしてもらうものなのですが、今後どんどん普及してくると思いますね。

大久保:注文を取る従業員を減らせると、人件費もかなり削減できますよね。

山本:人件費が減らせるのはもちろん、注文と同時にキッチンモニターにも反映されるようになるので、料理を提供できるスピードも速くなるんです。

提供スピードが上がることによって、回転率も上がりますし、「もう1つ注文しようかな」と考えるお客様も増えて単価も上がります。

さらに「Airレジ オーダー」という仕組みを利用していただくと、そのままお会計もしてもらえるんです。

大久保:お客様にとってもお店側にとっても、かなり手間が省けるようになりますね。

山本:そしてこれらのサービスを使うことで、「どれくらいお店に予約が入って、実際には何がオーダーされて、いくらの会計があって、スタッフ人数は何名だった」といった一連の収支がデータで見えるようになります。

そのデータを使って経営アシスタントをしてくれる「Airメイト」というサービスも提供しています。これが、例えば「このメニューは全然出ていないから停止させた方がいい」などの経営改善の穴もはじき出すんです。

大久保:飲食店の皆さんは忙しい方が多いので、毎日Excelで収支管理をするのは大変ですもんね。しかも、データで可視化されると、客観的に経営状況が確認できますからありがたいと思います。

山本:店舗の売り上げやキャッシュの状況をアプリで管理できる、しかも「Airレジ」や「Airペイ」と同じように無料で使えるというのは喜んでいただくことが多いですね。

このようにさまざまなツールがありますから、少しでも悩みがある経営者さんは、「Air ビジネスツールズ」をのぞいてもらえれば、何かしら引っかかるものがあると思います。

大久保:他にも面白いサービスはありますか?

山本:直近でいうと、「Airペイ」を利用している方々のお金を軸に、資金調達支援もスタートしました。「Airキャッシュ」というサービスです。

事業規模が小さかったり創業間もなかったりすると、銀行や信金などではお金を借りることが難しい場合もありますよね。それでも経営をしていると、「キャッシュフローが厳しいから、ちょっとだけ借りたい」ということは出てくるのではないでしょうか。

そんなときに「Airペイ」を利用しているお客様であれば、1ボタン2ボタンで資金調達支援を受けられるのが、「Airキャッシュ」になります。

大久保:銀行ですと、借りるまでに時間もかかりますからね。

山本:我々にとってはすでに取引のあるお客様なので、支援がしやすいんですよね。

「事業を取り巻くわずらわしさの削減」を優先


大久保:山本さんは、リクルートに入社される前スタートアップも経験されたということですが、リクルートにはどんな特徴があると感じますか?

山本:そうですね。言うまでもないかもしれませんが、やはりリソースが豊富なことが大きな特徴だと思いますね。

大久保:リソースというと例えば?

山本:いろいろありますが、まずは人ですよね。数もそうなんですけど、質でいうとまず皆プロアクティブです。スタートアップのときにお会いしていた起業家の方々に「元リクルート」が多い理由を入社して実感しました。

そして言わずもがな、資金やデータですね。特に後者は多数の事業を運営している我が社ならではの強みかと思います。

最後は顧客接点ですよね。例えば、ホットペッパー等他サービスをご利用いただいているクライアントからニーズを直接お伺いし、「Air ビジネスツールズ」をご提案差し上げられます。

これらが、事業をグロースさせる点で圧倒的な強みになっていると思いますね。

大久保:リクルートの方は、スタートアップ向きな思考の方が多いのでしょうか?

山本:そうかもしれないですね。さらに一度退職された後に戻って来られる方々も多いですよ。外で学んできたことを生かしてもらうために「戻ってくるのも歓迎」という社風かと思います。

大久保:豊富な資金がある点も、新規事業をスタートさせる面では大きな強みですよね。

山本:おっしゃる通りです。そのお陰で、例えば「Airペイ」は振込手数料や固定費を無料にすることができ、事業者の皆様にとって利用しやすい商品性が実現できているかと思います。

大久保:それはリクルートさんにしかできないかもしれませんね。

山本:「Airレジ」でも「Airペイ」でも、「なぜ無料なんですか?」「どうマネタイズされてるんですか?」とよく質問されるのですが、この会社の規模があるからできているのだと感じます。

大久保:そういう意味で言いますと、ユーザーさんは使った方がお得ですね。

山本:おっしゃる通りですね。「Air ビジネスツールズ」は本当に「お客様の事業を取り巻くわずらわしさを減らしたい」という想いで提供していますので、お悩みがある方には、とにかく一度のぞいていただけたら嬉しく思いますね。

大久保写真大久保の感想

今後円安の中で訪日外国人の需要取り込みはチャンスだ。

日本でもキャッシュレスは次第に浸透してきたように思えるが、実は日本はキャッシュレス化の比率では世界最下位クラスだ。(なぜか日本とドイツがダントツのキャッシュレス普及率で万年最下位争いをしている。両国とも真面目な国民性で現金信仰という共通点があるせいだろうか)なのでキャッシュレス化の必要性がピンとこない人も多いかもしれない。)

特に中国・韓国などアジア圏はほぼキャッシュレスが当たり前になっている。銀聯やアリペイのような決済を入れる重要性は日本人が思っているより高いのだ。Airペイはかなりの普及率を持っているので、こうした決済のプラットフォーム事業者が海外決済を充実させていくのはインバウンドで需要を取り込んでいく、日本に来た外国人の印象など日本にとって良いことだし、事業者にとっても無料ないし安く使えるのはありがたい。

デジタル化・キャッシュレスが進むと労力の削減や効率化にもつながってくる。特に利益が出る商品・足をひっぱている商品の洗い出しは経営を改善する際に即効性があるのでおすすめの方法だが、その際にデータがデジタル化されているかどうかは重要なポイントだ。こうした安価なデジタルツールは攻めと守りの両面で鍵になってくるだろう。

創業手帳では新たに毎月5000人もの起業家が会員登録しているが、飲食系は増加傾向だ。店舗系のビジネスはコロナの反動と円安で、二重にチャンスといえる。こうした安価で良質なデジタルツールの活用は成功の重要な鍵になってくるだろう。

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(取材協力: 株式会社リクルート プロダクト統括本部 SaaS プロダクトマネジメント室 決済プロダクトマネジメント ユニット 部長 『Airペイ』『Airペイ QR』プロダクト担当者 山本 智永
(編集: 創業手帳編集部)

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