自営業者が支払う税金の種類とは?知っておきたい節税方法まで徹底解説
自営業者が支払う税金は4種類!税金を理解して節税対策をしよう
自営業者には、会社員時代とは異なる税金の支払いが発生します。そのため、開業後はどのような税金を納めなければならないのかを把握することが大切です。
自営業の人が納める税金は、所得税・住民税・消費税・個人事業税の4種類です。
それぞれどのような税金なのかを理解し、負担を軽減するために節税対策も講じていきましょう。
今回は、自営業者が支払う税金の種類や節税のポイントを解説します。
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この記事の目次
自営業者が納める税金①所得税・復興特別所得税
自営業でも会社員と同じく、所得税や復興特別所得税を納めなければなりません。まずは、所得税の概要や計算方法、税率をご紹介します。
所得税・復興特別所得税とは?
所得税は、1月1日~12月31日の1年間で獲得した所得(収入から経費を差し引いた金額)に対して発生する税金です。
会社員の場合、所得税は給与から毎月徴収されていて、会社が納めてくれます。一方、自営業の人は毎年個人で納税額を計算し、確定申告で納めなければなりません。
復興特別所得税は、東日本大震災の復興を目的とした財源を確保されるために設けられている税金です。
2013年~2037年まで、所得税とともに申告と納付する必要があります。
所得税には、所得控除制度が存在します。
すべての納税者に適用される基礎控除をはじめ、個人の状況に合わせて配偶者控除・配偶者特別控除。医療費控除など各種所得控除が適用可能です。
控除の適用により所得額が下がるため、所得税の負担を軽減できます。
所得税の計算方法・税率
所得税の税率は5~45%で、課税される所得金額に応じて変動します。累進課税率を採用しているため、所得が多いほど段階的に税率が高くなるのが特徴です。
復興特別所得税は、基準所得税額に対して税率2.1%が乗じられます。
所得税と復興特別所得税とは、以下の計算方法で算出が可能です。
【所得税の計算方法】
収入-必要経費=所得
所得-所得控除=課税所得金額
課税所得金額×税率-税額控除額=基準所得税額
【復興特別所得税の計算方法】
基準所得税額×2.1%=復興特別所得税
基準所得税額を求める際、課税所得額金額に対する税率や控除額は以下の速算表を参考にしてみてください。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円~694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
自営業者が納める税金②住民税
自営業の人が個人で支払う税金には、住民税もあります。住民税の概要と計算方法は以下のとおりです。
住民税とは
住民税は、所得税と同じく所得に対して発生する税金で、都道府県や市区町村に納めます。前年の所得に対して1月1日時点の現住所地で課税されます。
毎年自治体から納付書が届き、4回に分けて支払うのが一般的で、一括前納も可能です。自治体によっては一括前納により割引きを受けられることもあります。
住民税の計算方法
住民税は、所得割と均等割の2つで構成されています。所得割とは、所得額に応じて課税される部分のことです。税率は道府県民税が一律4%、市区町村民税が一律6%です。
計算方法は所得税とほとんど変わらず、以下の計算式で算出できます。
(前年の総所得金額-所得控除額)×税率-税額控除=所得割
均等割は所得に関係なく定額で納税する部分を示します。均等割の税額は、道府県民税が1,500円、市区町村民税が3,500円です。
所得割と均等割を足すことで、住民税を算出できます。
自営業者が納める税金③消費税
自営業で消費税の対象となる売上げが発生する場合、消費税の納税が必要になることがあります。消費税を納税する条件や計算方法は以下のとおりです。
消費税とは
消費税は、商品の販売やサービスの取引きなどに対して発生する間接税です。
商品やサービスが売れた時に、顧客や取引先から代金と一緒に預かった消費税を国に納める必要があります。
ただし、消費税免税事業者であれば納税義務は発生しません。納税義務があるかどうかは、以下いずれかのパターンに該当しているかどうかで判断できます。
1.2年前の課税売上高が1,000万円以上
2.2年前の課税売上高は1,000万円以下であるものの、消費税課税事業者になるために税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出している
3.1と2に当てはまらないが、1年前の1月1日~6月30日までの期間の課税売上高が1,000万円以上
基本的に課税事業者に該当するのは事業規模が大きな事業者となるので、開業したばかりで売上げが少ない段階では免税事業者に当てはまることがほとんどです。
消費税の計算方法・税率
消費税は、課税売上げにかかる消費税額から課税仕入れにかかった消費税を差し引くことで算出できます。
課税売上げにかかる消費税とは、顧客や取引先から預かった消費税額のことです。
課税仕入れは、商品や原材料の仕入れや建物・機械といった事業用資産の購入などで支払った消費税額を指します。
預かっている消費税額を計算するのは比較的簡単です。
しかし、消費税は、交通費・通信費・固定資産など様々な経費に含まれているため、支払った消費税額を求めるのは容易なことではありません。
そのため、中小企業では特例で以下の簡易的な方法で計算することが可能です。
課税売上げにかかる消費税額-(課税売上げにかかる消費税額×みなし仕入れ率)=納付する消費税額
計算に使う「みなし仕入れ税率」は、事業区分によって異なります。
事業区分 | みなし仕入れ税率 | 該当する事業 |
---|---|---|
第1種事業 | 90% | 卸売業 |
第2種事業 | 80% | 小売業 |
第3種事業 | 70% | 飲食料品の譲渡に関わる事業を除いた農業・林業・漁業、鉱業、建設業、製造小売業を含む製造業、電気業、ガス業、熱供給業・水道業など |
第4種事業 | 60% | 飲食店業などその他 |
第5種事業 | 50% | 運輸・通信業、金融・保険業、サービス業 |
第6種事業 | 40% | 不動産業 |
自営業者が納める税金④個人事業税
特定の事業で一定の所得を超える場合、個人事業税の支払いが発生します。個人事業税の概要と税率は以下のとおりです。
個人事業税とは
個人事業税は、事業を行う上で利用する公共サービスに対して発生する税金です。地方税の一種なので、納付先は都道府県になります。
個人事業税は、自営業を行う人の所得が290万円以上となると納めなければなりません。
確定申告を行うと自治体から納付書が届き、8月と11月の2回に分けて支払います。
なお、個人事業税はすべての自営業者に納税義務があるわけではなく、納税対象は法定業種に限られています。
法定業種別の税率
個人事業税の税率は、事業区分によって異なります。法定業種の種類と区分ごとの税率は以下のとおりです。
事業区分 | 税率 | 該当する事業 |
---|---|---|
第1種事業 (37業種) |
5% | 物品販売業・保険業・金銭貸付業・物品貸付業・不動産貸付業 製造業・電気供給業・土石採取業・電気通信事業・運送業 運送取扱業・船舶定係場業・倉庫業・駐車場業・請負業・印刷業 出版業・写真業・席貸業・旅館業・料理店業・飲食店業・周旋業 代理業・仲立業・問屋業・両替業・公衆浴場業(むし風呂など) 演劇興行業・遊技場業・遊覧所業・商品取引業・不動産売買業 広告業・興信所業・案内業・冠婚葬祭業 |
第2種事業 (3業種) |
4% | 畜産業・水産業・薪炭製造業 |
第3種事業 (30業種) |
5% | 医業・歯科医業・薬剤師業・獣医業・弁護士業・司法書士業 行政書士業・公証人業・弁理士業・税理士業・公認会計士業 計理士業・社会保険労務士業・コンサルタント業・設計監督者業 不動産鑑定業・デザイン業・諸芸師匠業・理容業・美容業 クリーニング業・公衆浴場業(銭湯)・歯科衛生士業 歯科技工士業・測量士業・土地家屋調査士業・海事代理士業・印刷製版業 |
3% | あんま・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復 その他の医業に類する事業、装蹄師業 |
自営業者が行うべき節税方法は?
自営業を始めると様々な税金が発生する上に、金額も大きくなりがちです。そのため、しっかり節税対策を行い、負担を軽減していくことが大切です。
ここからは、自営業が行うべき節税方法についてご紹介します。
事業にかかった支出を経費に計上する
事業を行う中で発生した支出をしっかり経費に計上することで、所得税の削減につながり、税金も減らすことが可能です。
自営業の人が支払う税金の中でも、特に負担がかかるものは所得税です。所得税は所得が多くなるほど税率が高くなるため、所得を減らすことで節税につながります。
事業では、様々な支出を経費にすることが可能です。
例えば、広告宣伝費・旅行交通費・取引先との接待交際費・店舗や事務所の家賃・従業員の給料賃金や福利厚生費など事業に関するものであれば、経費と認められます。
また、自宅の一部を店舗や事務所として使っている場合、家賃・水道光熱費・通信費などの支出は、仕事に使った分を按分することで経費に計上できます。
ほかにも、個人事業税・消費税・固定資産税・自動車税・不動産所得税・登録免許税・印紙税など事業に関わる税金も経費として扱えるものです。
青色申告で確定申告を行う
確定申告には、白色申告と青色申告の2種類があります。青色申告では最大65万円の特別控除を利用できるので、所得税を大幅に減らすことが可能です。
青色申告の場合、帳簿の記帳方法が複式簿記であること、最大65万円の控除を受けるには電子申告または電子帳簿保存を行わなければならないなどの条件があります。
簡易簿記で申告できる白色申告より複雑な部分はありますが、節税メリットは大きいので確定申告は青色申告をおすすめします。
また、青色申告では青色事業専従者給与や純損失の繰越しができることもメリットです。
青色事業専従者給与は、家族経営で家族に支払った給与を経費に計上できる制度で、所得から経費として差し引けるようになります。
また、年間の所得を集計して赤字だった場合、最長3年間繰越しが可能です。純損失が発生した翌年以降3年間は赤字の計上が可能なため、所得額を少なくできます。
小規模共済や経営セーフティ共済に加入する
小規模共済は、経営者や個人事業主などのための退職金を積み立てられる制度です。
積み立てた共済金は退職や廃業時に、一括・分割・一括と分割の併用のいずれかの方法を選んで受け取れます。また、掛金の全額が所得控除の対象となるため、節税に有効です。
経営セーフティ共済は、取引先の倒産時に貸付けを受けて連鎖倒産を防げる制度です。掛金の全額を必要経費にできるため、こちらも節税効果があります。
なお、経営セーフティ共済を解約する時点で掛金を12カ月以上支払っていれば、総支払額の8割以上が返還されます。
40カ月以上支払っている場合は、掛金の全額が戻ってくる仕組みです。
固定資産の購入費用は定率法で減価償却する
事業を行うために建築物・機械・装置などの固定資産を購入した場合、原則その購入費用は減価償却します。
減価償却とは、固定資産の取得時に支払った費用を資産ごとの使用可能期間にわたって、分割で必要経費に計上する制度です。
減価償却の計算方法には、毎年一定額を経費にしていく「定額法」と毎年一定の割合を経費にする「定率法」の2種類があります。
節税を優先するのであれば、購入した年に経費にできる金額を大きくできる定率法がおすすめです。
定率法を選ぶ際は、事前に税務署に「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を提出してください。
税金以外に自営業者が支払う費用
自営業を営んでいる場合、税金以外にも個人で支払わなければならない費用があります。それは、健康保険と国民年金の2つです。
健康保険
自営業を営む場合、基本的には国民健康保険に加入します。
厚生年金では納める保険料の半分を会社が負担してくれますが、国民健康保険の場合は個人ですべて納付しなければなりません。
そのため、今までより保険料の支払いの負担は大きくなってしまいます。
しかし、自営業主ならば国民健康保険以外の健康保険に加入するという選択肢もあります。前職が会社員であれば、その時代の健康保険組合の任意継続が可能です。
保険料はすべて自分で支払わなければなりませんが、国民健康保険よりも保険料を安く抑えられる可能性があります。
ほかにも、業界に特化した国民健康保険組合・団体・協会に加入する方法があります。
保険料が一律となっていることが多いため、所得の影響を受けにくいことがメリットです。
国民年金
自営業の人は国民年金に入り、保険料を支払っていく必要もあります。
保険料は毎年度見直しがされており、2022年度(2022年4月~2023年3月まで)は月額16,590円でした。
国民年金は厚生年金より年金額が少ないため、将来に不安に感じるかもしれません。その場合は、付加年金または国民年金基金を利用することで年金額を増やせます。
付加年金は毎月支払う保険料に月400円を上乗せすることで、年金額を増やせる制度です。一方、国民年金基金は毎月一定額で支払う掛金に応じて年金額を増やせる制度です。
ほかにも、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入して将来受け取る年金を増やせます。
iDeCoは掛金を支払い、自ら選んだ商品を運用することで公的年金にプラスして私的年金を受け取れる制度です。
掛金や受け取った年金などに対して、所得控除が適用されるメリットがあります。ただし、元本割れのリスクもあるので注意してください。
まとめ
自営業の収入は青天井です。しかし、納めなければならない税金が多く、所得によって税額が高くなる場合があるので注意が必要です。
節税の方法としては、支出を経費で計上したり、確定申告は青色申告で行ったりするほか、共済への加入や固定資産税の購入費用を定率法で減価償却するなどがあります。
税金の負担を大きくしないためにも、節税対策をしっかり行いながら自営業を続けていきましょう。
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(編集:創業手帳編集部)