個人事業主が納める税金の種類と計算方法

資金調達手帳

個人事業主の主な税金は4つ!節税しながら正しく納税するには


個人事業主やフリーランスになると、税金の申告や納税など、自分でやるべきことが増えます。
個人事業主やフリーランスとして独立起業を目指す際には、納めるべき税金の種類や計算方法、節税の方法などをあらかじめ知っておきましょう。
個人で起業するとやるべきことが多くなりますが、正しい納税方法や節税の工夫も行っていくことが大切です。

個人事業主が納める税金の種類と計算方法について解説します。
状況によって税金の種類が多くなることもありますが、主に押さえておきたいのは4種類の税金についてです。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

個人事業主にかかる税金の種類と概要


個人事業主やフリーランスには、会社員とは違った税金の支払いが必要となります。
また、会社員のように会社が代わりに計算や納税をしてくれることもないため、自分がどのような税金を支払うのか理解しましょう

主に知っておきたい税金には、所得税と住民税、消費税と事業税があります。所得税と住民税については会社員でも支払いますが、納税の方法は同じではありません。
また、それ以外にも事業に関連する様々な税金がかかる場合があります。
個々の事業経営の状況によって関係ないものもあるため、自分に必要なものはどれか把握してください。

事業主貸

事業主貸は、会社員や法人の税金にはなく、個人事業主ならではの仕訳方法です。
事業主貸は「事業主に(プライベートなお金として)事業のお金を貸す」という意味で、事業資金から事業主のプライベートな資金へ移動させる際などに使います。
また、事業資金から事業主個人に対して支払い義務が発生する税金を納税(出金)した際に事業主貸を使用します。

法人の場合には、個人と法人のお金は厳格に分けられ、社長であっても個人のために会社の事業資金を使うことは許されません。
しかし、個人事業主は事業の経費にしなければ、事業主貸を使うことでプライベート資金に移動可能です。

所得税

個人事業主の事業主貸となるのは所得税です。所得税は、所得に応じて課税される税金で、収入から経費や所得控除を引いた課税所得によって金額が変わります。

所得税は、個人事業主の事業所得をはじめ、不動産所得・給与所得・譲渡所得などにかかる国税です。
申告納税制度となっており、1年間の納税額を自分で申告して納税する税金です。個人事業主が事業で稼いだお金ですが、税金は個人に対してかかります。

個人事業主が事業所得の所得税を納めるには、確定申告を行います。
その年1年間の課税所得を計算し、翌年の2月中頃から3月中頃までに税務署に自分で申告、納税することが必要です。

住民税

住民税も所得税と同様に、事業主貸として納税します。
住民税の金額は自分で計算する必要はなく、所得税の確定申告をすると自動で自分の市区町村から納付書が送付される仕組みです。
住民税も、個人事業主が稼いだ事業所得によって納付額が変わります。

住民税の納付のタイミングは年4回で、前年の所得に対して課せられた金額を6月、8月、10月、1月の4期に分けて納めます。
所得金額によっては所得税の確定申告が必要ないこともありますが、所得税と住民税の課税基準は異なるため、所得税の確定申告をしなかった場合には住民税の申告が必要です。

事業主貸について詳しくはこちらから>>
個人事業主必見!事業主貸の概要と確定申告時のポイント

租税公課

租税公課は、法人でも個人でも、事業を行っている人に課せられる税金で、事業主貸とは違って個人事業の経費にできます。
租税公課は、国や地方に収めるべき税金である「租税」と公共団体へ納めるべき会費などである「公課」の2つの意味を持つ言葉です。

個人事業主が知っておくべき主な租税公課には、消費税と個人事業税があります。
どちらも個人事業主やフリーランスに必ず発生するものではありませんが、事業以外ではかからない税金として知っておきたいものです。

消費税

消費税は、一定以上の売上になったら納める必要が出てくる税金です。個人事業主の場合も、自分で申告して支払う義務があります。
消費税は、商品の購入やサービスの提供を受けた際に、価格に対して一定のパーセンテージで支払う税金です。
プライベートでも買い物の際などにお店に支払っているなじみ深い税金ですが、事業では消費者から消費税を預かり、納めることになります。

消費税を納める義務が生じるのは、前々年度の消費税対象となる売上が1,000万円を超えた時です。
つまり、事業を始めた初年度とその翌年は、前々年度の売上自体がないため、消費税の対象とはなりません。
基本的に、消費税を気にしなければいけないのは、3事業年度目以降です。

ただし、売上高1,000万円というのもハードルが高いため、小規模な事業を営むことが多い個人事業主やフリーランスでは、消費税を気にする人は少ないでしょう。
手広く事業を展開する予定の方は、3年目を意識しておくことが必要です。

消費税納税の対象となる場合には、「消費税及び地方消費税の確定申告書」を提出しなければいけません。

個人事業税

個人事業税は、個人事業主が納税する必要のある税金ですが、事業税の対象とならないこともあります。
事業税は地方税のひとつで、事業の種類によって納税の義務の有無が決まっています。

事業税を収める必要のある法定業種は全部で70種類で、該当しない個人事業主はいくら稼いでいても納税の必要はありません。
また、事業税の該当となっても、年間一律290万円の事業主控除があるため、年間の事業所得が290万円を超えない場合には事業税は0円です。

個人事業主に関係のある、その他の税金

個人事業主に関係のある税金は、上記4つだけではありません。ほかにもその事業主の状況や事業内容によって該当する人がいる税金もあります。

・固定資産税
固定資産税は、建物や土地などの固定資産にかかる税金です。事業で家屋や土地を使用している場合には、経費にできることがあります。
ただし、個人事業主で経費として参入できるのは、実際に事業に使っている割合だけです。
家事按分してプライベート利用とビジネス利用の割合を決め、税金額をその割合で割って事業用だけを経費にし、残りは事業主貸になります。

・不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物を取得した際にかかる税金です。購入した家屋や土地を事業に使う場合、固定資産税と同様に家事按分して事業に利用する分だけを経費にできます。

・自動車税
自動車税は、自動車を保有している人にかかる税金です。事業に自動車を使用する場合のみ、その割合に応じて経費にできます。

・登録免許税
登録免許税は、不動産登記にかかる税金です。事業に使用する部分のみ経費になります。

・印紙税
事業で使用する契約書類などに使う印紙代は、経費として全額参入できます。

・会費や組合費
事業に関する会費や組合費も経費になります。

上記のように、事業とプライベートで使うものは事業分のみ、事業で発生する税金は全額経費にすることが可能です。
事業内容によって使わないものもありますが、頭の片隅に入れておくと役立つかもしれません。

税額の算出方法


個人事業主の主な税金の算出方法を紹介します。
税額の計算は課税する側がやってくれるものもありますが、計算式を知っていたほうが提示された税額に不信感を抱かないで済みそうです。

所得税(事業所得)

事業所得の所得税を計算するには、1年間の総収入金額と必要経費の総額と控除をまとめる必要があります。
必要経費は商品仕入れから交通費、通信費や消耗品費など、事業に関係するものをすべて計上しましょう。
また、控除できるものには、生命保険料や社会保険料、配偶者控除や扶養控除などがあります。

収入から経費を引いたものを所得、所得から控除をしたものが課税所得です。課税所得を使った所得税の計算式は以下のようになります。

(課税所得金額×税率)-税額控除=納税額

所得税の税率は、累進課税という基準で決まっており、所得が多くなればなるほど多くの税金が発生する仕組みです。

住民税

住民税は確定申告をしていれば、自分で税額計算する必要のない税金です。住民税の計算式は以下のようになります。

所得割額+均等割額=納税額

所得割額とは、前年の所得額で計算されるもので、均等割額は定められた額で一律に課税されるものです。
所得割額はほとんどの地域で税率が10%、内訳は都道府県税4%と市区町村民税6%となっています。
また、均等割額は東京都23区の場合で5,000円ですが、異なる地域もあります。

個人事業税

個人事業税は、都道府県ごとに課税対象業種が決められており、税率も地域や事業内容によって違います。事業税の計算式は以下の通りです。

(収入金額-必要経費-専従者給与-290万円)×税率=納税額

専従者給与とは、配偶者などの家族従業員に支払った給与です。また、290万円は事業主控除です。事業主控除は一律で金額が決まっています

消費税

消費税は、基本的に商品売買の際に利用客から預かった消費税から支払った消費税を引いた差額を納付します。

個人事業主の税金を節税する方法


個人事業主の税金には収入(所得・売上)に応じて支払わなくて良いもの、少なくて済むものが多いものです。
つまり、所得や売上を減らすことで節税できるということでもあります。

もちろん不正はできませんが、経費計上や控除によって所得や売上を調整できるので、正しい節税方法を知っておきましょう。

青色申告する

青色申告は、個人事業主の確定申告方法のひとつです。青色申告することで、白色申告では得られなかった節税効果が得られます。

青色申告で可能となるのは、青色申告特別控除と家族の給与の経費計上、赤字の繰越しなどです。
こうした青色申告のメリットは青色申告者なら誰でも利用でき、節税に生かせます。

青色申告特別控除は、最大65万円の控除です。また、事業主が生計を同じくする家族に支払った給与は経費にできるため、所得金額を減らせます。
赤字の繰越しでは、赤字の出た年から最長3年まで赤字を次の年の所得から控除できます。

青色申告について詳しくはこちらから>>
個青色申告承認申請書はどう扱う?提出期限やメリット、正しい書き方などを解説

経費計上・家事按分を正しくする

個人事業主の税金を抑えるには、正しく家事按分し、事業に使ったものは細かく経費計上することも大切です。
自宅兼事務所やマイカーの事業での併用など、事業主がプライベートで購入や賃貸したものも事業用で使った際には詳しく按分しましょう。
水道光熱費なども忘れてはいけません。

また、細かい買い物でも、事業用に買った分は必ずレシートや領収書を保管しておき、経費にしてください。

家事按分について詳しくはこちらから>>
家事按分とは?個人事業主が覚えておきたい按分の意味や計算方法、税法上の扱いを解説

税金の免除についても把握しておく

個人事業主が節税するなら、税金の免除についても理解しておくことが必要です。個人事業主が税金を免除されるケースには以下のようなものがあります。
前述の内容も含めてまとめました。

【所得税・住民税免除のケース】
  • 青色申告者かつ過去3年間に赤字が出ていた場合
  • 所得控除が所得金額を上回っている場合
  • 個人事業主としての事業だけを営み、赤字が発生した場合

 

【事業税免除のケース】
  • 事業税を納める必要のない業種の場合
  • 事業の所得が290万円以下の場合
  • 事業所得が事業主控除(290万円)よりも下回った場合
  • 過去3年間に赤字が出ていた場合
【消費税免除のケース】
  • 消費税の免税事業者
  • 売上の消費税より経費の消費税が多い場合

消費税の免税業者とは、以下の2つの条件を満たす者を指します。

  • 前々年度の課税売上高が1,000万円以下
  • 前年の1月1日から6月30日までの課税売上高または給与などの支払額の合計額が1,000万円以下

小規模共済に加入する

小規模共済は、個人事業主の退職金代わりになる資金を積み立てる共済制度です。毎月掛け金を積み立てていきますが、その掛け金は全額控除できます。

最終的には共済金として受け取れるため、毎年節税しながら貯蓄、運用しているのと同じようなものです。
また、受け取る際も一括の場合には退職所得として、分割の場合には雑所得扱いとして税制メリットを得られます。

納税期限に遅れない

最低限のルールを守ることも節税の一歩です。納税にはそれぞれに期限があり、期限に遅れると延滞税などが発生します。
正しく納めていれば掛からない余計な税金なので、無駄を防ぐためにも納期限は守りましょう。

まとめ

個人事業主が納める税金は、租税公課と事業主貸に分けられます。
租税公課と事業主貸では、課せられる対象は違いますが、個人事業主の場合には最終的な出どころは同じです。

申告方法や売上・所得金額によって支払うべき税金の種類や金額は変わります。それに基づき、申告方法を変える、免税となる条件を生かすなどで節税も可能です。
支払うべきものは支払い、節約できるところは節約し、正しい納税と事業の安定を目指しましょう。

創業手帳の冊子版(無料)は、税金や節税についてなど起業後に必要な情報を掲載しています。起業間もない時期のサポートにぜひお役立てください。
さらに、創業手帳から「令和3年分 初めてでも分かる確定申告ガイド」が発刊されました。
確定申告に役立つ情報を盛り込み、全体の流れと令和3年分の申請のポイントをしっかり押さえておくことができます。
こちらも無料でご送付いたしますのでぜひご覧ください。
関連記事
個人事業主が使える給付金の種類を紹介
確定申告のやり方は?手続きすべき人の条件や申告方法などについて解説

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す
今すぐ
申し込む
【無料】