2024年に相続税・贈与税関連の法律が改正!2023年度税制改正大綱で変わること

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令和6年1月1日より相続税・贈与税が改正!改正された3つのポイントを解説


令和5年度に税制改正が行われ、令和6年1月1日より施行されました。
税制改正大綱と呼ばれるこの税制改正が行われたことで、相続時精算課税制度・暦年課税の相続税加算期間・一括贈与の非課税期間などが変更になっています。

今回は、令和6年1月1日より改正される相続税・贈与税で改正されるポイントを3つご紹介します。
大きく変更になるポイントが知りたい方や、今後の相続・贈与への影響が知りたい方などは、ぜひ参考にしてみてください。

生前贈与について詳しく知りたい方は、以下も参考にしてみてください。

生前贈与について、詳しくはこちらの記事を>>
生前贈与は早めに考えておこう!やり方や注意点を解説します

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贈与税と相続税について


まずは、贈与税と相続税の違いを理解しいきます。贈与税は、個人から財産が贈与された場合に発生する税金をいいます。相続税は相続して財産を得た場合に発生する税金です。
税率と、どのタイミングで財産を受け取るかがこの2つの大きな違いです。
贈与税は生前に、相続税は亡くなった個人の財産を受け継いだ場合に、受け取った財産に税金がかかります。

最近では、相続税の課税から逃れるために生前に財産を取得するケースが増えています。
税率は贈与税のほうが高くなっていますが、現在の税制上は少額の財産を複数回繰り返せば、結果的に同額の財産を受け取っても税の負担を軽減できるのが特徴です。
税金の課税方法には様々なものがありますが、課税金額が高くなるほど税額が上がる仕組みの累進課税もあります。

累進課税について詳しく知りたい方は、以下も参考にしてみてください。

累進課税について、詳しくはこちらの記事を>>
累進課税のしくみを理解しよう。計算の仕方や節税方法とは?

改正ポイント1.相続時精算課税制度に基礎控除が新設され減税に


改正ポイントとしてまず挙げられるのが、相続時精算課税制度への基礎控除の新設です。
相続時精算課税制度は、贈与税・相続税における課税方式のひとつであり、納税者が選択できる制度です。

これまで、相続時精算課税制度を活用すれば2,500万円までなら特別控除額にかかる贈与税が非課税とされていました。
しかし、贈与者が亡くなった場合、非課税となっていた贈与分の財産も相続税が課税される仕組みとなっていました。
また、2,500万円を超える場合は、超えた分だけ贈与税を納める必要があります。
金額を超えていて贈与税を納税した分に関しては、贈与者が亡くなった場合に相続税の合計金額から控除されますが、税金を軽減できる制度ではありません。

今回の改正では、そのような相続時精算課税制度に基礎控除が新設されました。

改正によって年間110万円の基礎控除が追加

相続時精算課税制度は、令和5年度の税制改正によって年間110万円の基礎控除が新設されることになります。
2024年1月1日から、相続時精算課税制度を活用する場合には、年間110万円以内の財産取得に関しては贈与税・相続税ともに納税する必要がなくなりました。

これまでは納めるべき贈与税の申告義務もありましたが、年間110万円以内なら申告も不要です。贈与者が亡くなった場合も同様で、贈与税も相続税もかかりません。
基礎控除の目的は、少額の贈与でも申告が必要とされていたものを、申告不要で活用しやすくするためではないかといわれています。

改正後の相続時精算課税制度を活用するメリット

2024年1月1日以降に相続時精算課税制度を活用するメリットは3つです。ここでは、改正後に相続時精算課税制度を活用するメリットをご紹介します。

贈与税がかからなくなる

まずは、贈与税がかからなくなるという点です。これまでの相続時精算課税制度では、累計で2,500万円までの特別控除に限り贈与税がかからない仕組みとなっていました。
しかし、特別控除とは別の年間110万円までの基礎控除新設となったことで、特別控除を含める必要もなくなっています。

年間110万円以内の財産取得であれば、累計2,500万円の特別控除を含めることもなく、贈与税がかからなくなります。
非課税枠に累積する必要がないという点は、納税者の負担軽減につながるでしょう。

非課税枠は別に設定されるので、財産贈与の予定がある方は事前に確認してみてください。

相続税を節税できる

贈与税と同じく、相続税に関しても納税の必要がなくなります。
これまでの相続時精算課税制度では、贈与者が亡くなった場合、受け取った財産すべてを相続財産として加算し、相続税を算出していました。
しかし、2024年1月1日からは受け取った財産が年間110万円までであれば相続財産として加算せずに済みます。

相続する財産が多くない場合、相続税を納める可能性は少なくなります。
贈与者が亡くなった時に保有していた財産が、生前に受け取った贈与財産と合計しても基礎控除以内なら相続税を納める必要はありません。

事業承継税制の利用後も贈与しやすくなった

会社や個人事業主などの後継者が一定の資産を取得する際には、贈与税や相続税といった納税を猶予できる事業承継税制を活用するケースがあります。
会社の場合は法人版、個人事業主の場合は個人版を活用しますが、いずれであっても贈与税や相続税の猶予を受けた場合に、相続時精算課税制度を活用すれば特別控除(2,500万円)を使い切ってしまう可能性があります。

仮に特別控除を使い切ってしまった場合、その後は贈与税が課されたり相続財産として加算されたりすることになり、贈与自体がしにくくなっていました。
しかし、改正後は特別控除を使い切ったとしても、年間110万円の基礎控除を活用すれば贈与しやすくなります。

相続時精算課税制度を活用する際の注意点

メリットの多い相続時精算課税制度ですが、活用する際には注意しなければならないことがあります。ここでは、実際に活用する際の注意点2つをご紹介します。

制度を活用すると暦年課税に戻せない

1度相続時精算課税制度を活用すると、その後に暦年課税に戻すことはできなくなります。
暦年課税は贈与税の課税方式のひとつであり、年間で贈与された財産の合計額によって税金が課される仕組みです。
暦年課税では、すでに年間110万円の基礎控除額が設けられており、相続時精算課税制度とは違い、贈与者や財産を受け取る側の受贈者などの制限もありません。

こうしたメリットから暦年課税を選択している人も多いですが、相続時精算課税制度を活用して届け出を提出した場合は、再度暦年課税制度を使うことはできないので注意してください。

相続税が高くなるケースもある

相続時精算課税制度を活用する場合でも、年間110万円を超える財産を取得した場合には相続税が発生します。
生前贈与と相続財産を合算した金額が基礎控除額を上回った場合も同様です。

生前贈与の場合、小規模宅地等の特例が認められないため、土地で相続時精算課税制度を活用すると納税額が高くなる可能性もあります。
小規模宅地等の特例は、被相続人が亡くなった際に、使っていた宅地の相続税評価額を最大80%減らすことのできる制度です。
受け取った財産の額や種類、内容などによっては、相続税が高くなるケースもあるかもしれません。

改正ポイント2.相続税加算期間が死亡前3年から7年以内に変更され増税に


改正ポイントの2つ目は、暦年課税制度の相続税加算期間の変更です。
前述したように、暦年課税制度は贈与税の課税方式のひとつで、相続時精算課税制度を選択しなかった場合に適用されます。
暦年課税制度では、1月1日~12月31日までの年間の贈与額を合計し、贈与税額を算出します。
相続時精算課税制度で新たに設けられる基礎控除に関しては、暦年課税制度ではすでに施行されており、申告も110万円を超えなければ行う必要がありません。

また、相続時精算課税制度では贈与者や受贈者に制限がありますが、暦年課税制度では明確な制限が設けられておらず、活用しやすいことが魅力となっています。
ここでは、変更ポイントやお得になる人などについて解説します。

暦年贈与による生前贈与の加算対象期間等の見直し

令和5年度の税制改正で、暦年課税を活用した暦年贈与による生前贈与加算対象期間等の見直しとなり、3年前から7年前へと延長されることになりました。
これまで暦年課税制度では死亡日以前3年間に財産を受け取った場合、相続の際に相続財産に持ち戻すよう定められていました。

しかし、改正後は3年前から7年前に延長されるため、たとえ年間110万円以下の基礎控除範囲だったとしても、相続税加算期間なら相続税の対象になります。

暦年贈与によってお得になるのはどのような人?

続いて、暦年贈与によってどのような人がお得になるのか、解説していきます。お得になるのは、以下の4つのケースです。

相続が開始されるまで3~7年以上ある

税制改正によって、2024年1月1日以降の暦年贈与の生前贈与加算の加算期間が3年から7年に延長されました。
7年まで延長されたことで、贈与者の年齢が若く、相続が開始されるまでに3年~7年以上あるという場合は暦年贈与を活用しやすいでしょう。

暦年課税制度を活用すると、贈与者は毎年少額を贈与していくため、全財産を渡そうとすると時間がかかってしまいます。
高齢だったり病を抱えていたりする場合は、暦年贈与をはじめてもすぐに亡くなってしまう可能性もあり、暦年贈与の意味がなくなります。

贈与したい人が多い

暦年贈与は、子どもが多い人のように贈与したい人がたくさんいる場合にも適しています。
暦年贈与では財産を取得する側の受贈者を基準にして110万円を計算する制度のため、短期間であっても多額の贈与が可能となるのです。
暦年課税制度を活用する場合は、贈与したい人が多ければ多いほど多額の財産を贈与できるほか、合計した贈与額が同じでも、贈与税が課される心配もありません。

例えば、3,300万円の財産をひと人にすべて贈与した場合、多くの贈与税が課されます。しかし、3人に年間110万円ずつ贈与すれば、10年ですべて贈与できますが、贈与税はかかりません。

現預金を相続させたい

暦年贈与では、現預金を相続させたい人に適しています。厳密にいえば、暦年課税制度では贈与財産の種類の制限がないため、不動産や自動車なども適用されます。
しかし、このような財産を年間110万円ずつ贈与するのは手間や費用がかかるため、現預金を贈与するよりも難しいです。

現預金であれば贈与額の調整もしやすく、贈与する相手が複数であっても送金するだけで完了するため手間もかかりません。
預貯金が高額で、贈与する相手にかかる相続税に不安がある場合は暦年贈与が適しています。

相続税の基礎控除より贈与財産・相続財産の合計が少ない

相続税の基礎控除よりも贈与財産や相続財産の合計額が少ない場合も、暦年贈与が適しています。基本的に、相続税の課税対象となるのは基礎控除を差し引いた価額です。
そのため、暦年贈与する財産と相続財産の合計が相続税の基礎控除より上回ってしまえば、相続税が加算されることになります。

課税対象額を計算式で表すと、以下のようになります。
課税対象額=亡くなった人の財産の総額-亡くなった人の借金・負債額-基礎控除額

相続税の基礎控除よりも、贈与財産や相続財産の合計額が少なければ課税対象にはならないので、受贈者は税負担なく受け取ることができるでしょう。

改正ポイント3.教育や結婚・子育て資金における一括贈与の非課税期間が延長


改正ポイント3つ目は、教育や結婚・子育て資金などの一括贈与に関する非課税期間が延長となったことです。
教育や結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度は、教育資金の一括贈与は1,500万円、両親や祖父母などから結婚や子育ての資金として一括で贈与された金額については1,000万円が非課税になる制度となります。

ただし、教育や結婚・子育てのいずれに置いても適用期間が設けられていました。
非課税期間が終了すれば、教育資金でも結婚・子育て資金でも、一括贈与額に応じて贈与税が発生してしまいます。
しかし、今回の改正によって非課税期間が延長になったため、子どもや孫の贈与税負担を軽減できます。

教育資金は2026年、結婚・子育て資金は2025年まで延長

教育や結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度では、教育資金は3年延長され2026年まで、結婚・子育て資金は2年延長され2025年までとなりました。
改正前であれば、2023年3月末には適用期限が終了する予定でした。
しかし、それぞれ延長されたことで、2024年1月1日以降も非課税対象者が大幅に増えるでしょう。

教育資金の場合、専用の口座を開設し、金融機関に教育資金非課税申告書を提出すれば非課税措置の適用となります。
結婚・子育て資金の場合も、専用の口座を開設して金融機関に結婚・子育て資金非課税申告書を提出すれば非課税措置適用となります。

住宅取得等資金の非課税期間は2023年12月31日まで

非課税対象となるものについては、住宅取得等資金も例外ではありません。
これまでは、住宅取得等資金の一括贈与の非課税制度も非課税期間が設けられており、期間中は最大1,000万円までは贈与税がかからない状態となっていました。

ただ、住宅取得等資金の非課税期間に関しては、教育や結婚・子育て資金における一括贈与と同じように令和5年後の税制改正による非課税期間の延長は行われていません。
適用期限は2023年12月31日までとなり、2024年1月1日以降は1,000万円以上の住宅取得等資金援助を受けた場合に贈与税が課せられることになります。

まとめ・相続税・贈与税改正に向けた対策を

2024年1月1日から税制改正が施行されますが、場合によっては相続税や贈与税の負担が増える可能性もあります。
子どもや孫への財産贈与を考えている方は、相続時精算課税制度と暦年課税制度のどちらが適しているのかよく考え、改正前に贈与したり専門家してから贈与したりといったことも検討してください。

創業手帳(冊子版)では、相続税や贈与税に関する内容も多く掲載しています。財産を贈与したい、税金対策をしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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