不屈の起業家・折口雅博氏。成功する起業家になるための究極の方法とは【前編】

創業手帳

ジュリアナ東京からグッドウィルグループを経て、世界を股にかけるCEOになった折口氏に成功の秘訣をとことん聞いた

商社マン時代にプロデュースした「ジュリアナ東京」は社会現象となり、その後も「ヴェルファーレ」、人材サービス「グッドウィル」、介護サービス「コムスン」と、歴史に残るブランドを次々と展開してきた折口雅博氏。42歳で経団連理事に就任、公的貢献も高く評価され、紺綬褒章が授与されています。

グッドウィルグループは従業員10万人、年商7700億円の巨大企業となりましたが、さらに事業拡大中の2008年に予期せぬ出来事によって会長職を辞任、ここで折口氏は渡米します。

ゼロからのスタートでしたが、ニューヨークの最高級和食レストラン「MEGU」をモスクワ、ドーハ、スイス、インドなどで国際展開。格付け機関AAHSから最高位の6つ星を受賞しブランド価値を最大化してイグジット。

現在はニューヨークと東京に拠点を置くブロードキャピタル・パートナーズのCEOとして、小規模のベンチャーから、さらなる発展を目指す経営者に直接アドバイスやコーチングを行なっています。新刊『アイアンハート 』もベストセラーを記録。
そんな話題の折口氏に創業手帳がビジネス論を聞きました。前編と後編の2回に渡ってお届けします。

折口雅博(おりぐちまさひろ)
ブロードキャピタル・パートナーズ CEO、起業家コーチ 
防衛大学校理工学専攻卒業。日商岩井にて「ジュリアナ東京」をプロデュース。1995年にグッドウィル、続いてコムスンの事業を展開、1999年にグッドウィル・グループ店頭公開時PER200倍で話題をさらう。2004年に東証一部上場、日本経団連理事就任。05年に紺綬褒章、2006年に日本赤十字社社長賞、2007年に厚生労働大臣賞(2度目)。2007年時点、年商7700億円、従業員10万人。2008年、同社を退社し渡米。NYの最高級和食レストラン「MEGU」を国際展開、2012年にイグジット。現在、NYと東京に拠点を持つブロードキャピタル・パートナーズのCEO/起業家インキュベーター。著書に『起業の条件』(経済界/1997)、『折口雅博50の逆説』(東洋経済新報社/2000)、『「プロ経営者」の条件』(徳間書店/2003)、『アイアンハート』(昭文社/2020)がある。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役

大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

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ビジネスの特性ごとにアクセルの踏み方を変化させる

大久保:折口さんは学生時代に柔道や空手などの武道に取り組み、防衛大では実弾訓練をはじめとした生きるか死ぬかの経験をされてきました。そういった点が普通の方とは根性の入り方が違うと感じますが、これらの経験はやはり折口さんのバックボーンになっているのでしょうか。

折口:生きるか死ぬかの経験をしていると、何があっても動じないという根性はすわりますね。昨年『アイアンハート』というタイトルの著書を出しましたが、そこには不屈の精神で、鋼の意志で成功させようと意味を込めました。困難に負けず、どんなに大変なことがあっても絶対に乗り越えていく。

どんなに理不尽な目に遭っても、それをどうこう言っても仕方がないという悟りのようなものでしょうか。逆にそこから何としてでも乗り越えて成功するんだという意思が大事で、そのベースになっている気がします。

大久保:高みを目指すと理不尽なこともあるかと思いますが、折口さんは常に目一杯アクセルを踏んでいらっしゃいますよね。その半分の規模でも十分な成功が得られると思いますが、極限までアクセルを踏んでいるということについてはいかがですか?

折口たとえアクセルを半分に減らしたとしても、リスク的なものはあまり変わらないと思います。アクセルを全開にした時、それに必要な人材もお金もあるからできるのであって、どんなに目一杯踏んでもその辺りが伴わないとできません。半分にしたら当然その分負担はかかりませんが、働く人材は十分にいるので決して無理なことではないんですよね。トップとして何かが2倍忙しくなるかというと、そうではありませんから。

考える時間などは、全開の時のピクチャーで考えるか半分のピクチャーで考えるかというだけなので、時間を作ってやるロードワークが増えているわけではありません。それが増えると無理になってしまいますが、多くの人が関わっているのでできる。ですから、アクセルを踏めるものは踏んでいます。

ただし、踏んでも踏めないもの、例えば全開にアクセルを踏むことで質が落ちてしまうものもありますよね。私が過去に手掛けたビジネスでいうと、ニューヨークで始めた高級レストラン「MEGU」なんかは、1年に1店舗だけ欧米の主要都市に出店するというスタイルでやっていました。MEGUのようなビジネスは、量的拡大の全開ではなく質を求める全開です。より美味しく、よりカッコよく、よりセレブを集めるというように、ビジネスの特性やすべきことに合わせてやっています。

1つ言えることは、意味もないのにビビって成長できるのにさせないとか、ほどほどにするということはありません。ただし、急ブレーキを踏んで急旋回できる技術は持っていると思います。そういった能力を自分でコントロールしながらやっているので、辻褄が合っていると思っています。

大久保:事業を急拡大している時は著書に書ききれないほどの判断の連続だったと思いますが、状況を見てコントロールするという引き出しが重要ということでしょうか。

折口:併せてですね。大きなビジョンを持って戦略的に攻めていく。それはできる限りの猛スピードでいくわけですが、併せてブレーキをかけたり急旋回できる能力も持ち併せた上で、どこまでスピードを上げていくか。その両方ですね。

成功に導く「センターピン理論」

大久保:折口さんは以前から、成功するための理論として「センターピン理論」を提唱されています。事業の成功はボウリングでストライクを取るようなもので、そのために必要不可欠なのがセンターピンを倒すことだと。

事業におけるセンターピンは「本質」「最重要ポイント」「絶対条件」だそうですが、折口さんがこれまで携わってきたレストランと介護サービスではセンターピンが違うのでしょうか。

折口:違いますね。レストランにおけるセンターピンは「すごく美味しい」ということ。これは絶対に外せないことなので、私はすべてのメニューをチェックしていました。店で出す料理の味は「美味しい」「すごく美味しい」「最高」ぐらいで、普通というのはあり得ません。絶対に「美味しい」以上しかあってはいけないので、1品でも普通の味だったらそこでもうダメなんですね。

介護におけるセンターピンは「居心地の良さ」です。ですから、まず明るい笑顔、挨拶、感謝の気持ちといったメンタル面から入ります。そのための理念の共有は徹底的にやっていて、当時は「コムスンの誓い」という理念をみんなで唱和していました。
唱和したことを潜在意識の中に入れて、潜在意識を理念で満杯にする。満杯にすると、口から理念が溢れ出てそれが行動になります。これを徹底的に実践しました。

まずは10人を徹底的にマネジメント。それができれば組織は揺るがない


大久保:創業期を抜けた起業家の中にはマネジメントで苦労している方も多いと思いますが、折口さんは著書の中で「10人を徹底的にマネジメントすれば、10万人の組織も揺るがない」と書かれています。マネジメントにおけるポイントを教えてください。

折口:マネジメントにおいては、最初に来るハードルであり、それをクリアするとその後の拡大もスムーズにいくとても大事なキーポイントがあります。それは何かというと、人を介してマネジメントするということ。

『アイアンハート』の中で「経営者がまず自分の目が届く10人を徹底的にマネジメントする」と書きましたが、例えば私が10人見れば問題は起きません。それが20人に増えてもおそらくできるでしょう。ところがそれが100人に増えたら、間違いなく破綻しますよね。そうなると段階を経ないと難しいので、経営者本人が10人を見て、その10人がさらに10人ずつ部下を見る。そうすることで、100人をマネジメントすることができます。

この時に重要なのが、経営者の下に続く経営陣や役員が、いかに自分と同じ気持ちで同じ判断力を持ち、それを部下に共有しながら指導できるかということ。ここを育てれば、人を介して人ができます。それを2レイヤー、3レイヤーと重ねていけばマネジメントは成功します。ですが、これができていない経営者が多いですね。

従業員数50人以下の会社の社長がこのマネジメントを実践できていなかったら、結局のところ社長対従業員全員になってしまいます。

たとえ部長という肩書きがある人材がいたとしても、何から何まで社長が見ていたら組織は大きくなれません。採用面接であれば、社長がどこまで人事に権限を与えることができるかどうか。これは社長の性格にもよりますが、私は性格を超えて技術だと考えています。ですから、ぜひこの技を身につけてうまく克服していただきたいと思います。

大久保:学べばできるということですね。

折口:そうですね。著書にも答えはたくさん書いていますが、まずは理念を共有する。社長が持っている志や理念に基づき、「会社はこんな理念を持ってこういう哲学でビジネスを広げるんだ」ということをまず浸透させます。浸透させると、社長の下にいる中間の人たちが判断の基準にできるのでやりやすいんです。

基本のポリシーが分かっていない従業員をマネージすると、ただ単にコントロールするだけになってしまいます。いつ出社したのか、どれだけ売上を上げたのかといったことは、機械でもできてしまう。

人間はそういうものではないですし、それでモチベーションが上がるわけでもない。その人が本当は何が好きかということを見抜くこともできません。ですから、理念を共有した上で、経営陣なり部長の下の従業員が何が好きなのか、何だったら成果が出るのかを見ていく必要があります。

「長所を伸ばせ、短所は無視しろ」と著書に書きましたが、これも技術です。時間が少しでも余っているからといって営業の人に経理の手伝いをさせたら仕事が嫌になってしまうでしょうし、逆に数字が好きだけど人前で話をするのは苦手という人にテレアポをやらせたら嫌になってしまうわけです。

それからあとは成果主義。上司は部下の数字を管理すると共に、その過程を見て「その人がどのような考えでそうしたか」を把握するわけです。

それと人間性。例えば、周りを巻き込んでうまくコミュニケーションを取って盛り上げていける人は、上のポジションにいけますよね。要するに、中間の人がその下の人をどうやって引き上げるか。そういう目を持たせることも大事だと思います。CEOが一般社員の能力まで全部見ていたら、キリがなくなってしまいますから。

満足度を上げるには対面での会話が必要

大久保:世の中はコロナの影響でリモートワークになってきて、昔ほど対面で話をしなくなってきています。特に若い人は、昔ほど密な人間関係が嫌だという人が増えているような気がしますが、この変化についてはどうお考えですか?

折口:コロナ後もリモートが残るのは、広い意味でIT系の会社ではないでしょうか。特にITだけで完結する仕事ですね。ですがその他の事業は、コロナが落ち着いたらまた以前のように集まるようになると思います。

対面で話すとやはり情報伝達が早いですよね。その場の雰囲気も読みながらやるという意味で、対面会議は大切だと思います。コロナによって変わったことは、会議によってはオンラインでもいいという選択肢ができたこと。ただし、みんなが集まる場、気持ちが伝わる場というのはこれからもまだ残るでしょうね。

逆に、気持ちを伝えてどうこうということが必要ない業種は、これからもオンラインでいくのではないでしょうか。アメリカのTwitter社は永久にオンラインでやると言っていますね。みんなで集まって感情的になってしまう方が仕事がスムーズに進まない場合もあるかもしれない。一方で、同じIT系でも、Amazonはどんどん集まると言っています。顧客の満足度を上げるための会議は集まる必要があると思います。

それからもう1つ、密な人間関係を嫌って群れたがらなくなってきたという話。確かに終業後に飲み会に行く回数などは減ってきていますが、コミュニケーションを取るということ自体は昔と変わらずみんな好きで、取り方の形が変化しているだけだと思います。

SNSがこれだけ発達して、自分のことを人に知られたいがためにFacebookに書き込んだりTwitterで発信したり、これはSNSを通したコミュニケーションですよね。企業の進行管理をスラックやグループLINEでやっている会社も多いですが、これも同じことです。実際に集まってコミュニケーションを取るわけではないけれど、ネットを通して集まる。

本質的にみんなが集まるということは変わっていないので、そういう中での人間性を持った判断というのは、ネット経由でもできると思います。

グッドウィルは副業ビジネスの先駆け


大久保:世の中の流れで言うと、最近副業が増えてきましたよね。中には見識が広がるものもあるかもしれませんが、副業ブームについてはどう思いますか?

折口:選択肢としていいと思います。結局のところ、自分の会社でもっと稼ぎたくても、その人が付加価値を出して稼ぐネタがないわけです。

残業禁止をはじめとした労働管理強化の法律、それから企業側も残業代を出したくないという背景もありますが、現実問題として、残業代をもらってその人の収入が増えるほど働いても、それだけの付加価値を出せるかというとそうではありません。

それよりは、1日2、3時間を他の会社で使った方がアウトプットが大きいということは大いにあり得ます。この場合、人を取る力がない企業にはウィンウィンなんですよね。秘密情報を漏らさないようにする等ルールは必要ですが、柔軟性の高い働き方としていいのではないでしょうか。

もともとグッドウィルも、好きな時に好きなところで働けるという柔軟性が受けたんです。学生が授業のない時にさっと働いたり、ビジネスマンが土日に引越しの手伝いをしたり。お金がもらえる上に体も動かせるわけです。残業禁止の会社であっても、グッドウィルの仕事をやったからといって咎められるような人はいませんでした。本業とは全然関係ないことですからね。

例えば、サラリーマンでもアパート経営をして不動産収入を得ている人はたくさんいて、それに対しては何も言われないですよね。単なる資産形成ですから。投資信託だって、お金を得るので副業と言えないこともない。グッドウィルもそういう範囲に入っていたと思うんです。

次第に専業でやる人が増えてきたものの、もともと副業でやっていた人ばかりです。主婦が昼間の空いた時間に飲食店の手伝いに行くとか。ですから私たちは随分早い段階から副業支援をしていて、それが今大きくアナウンスされているだけだとだと思います。

大久保:副業ということの捉え方が変わってきているんですね。
ここまでありがとうございました。後編で折口さんならではの視点についてさらにお話をお聞きしたいと思います。

後編(近日公開予定)につづく

創業手帳株式会社は、最前線で活躍している起業家にインタビューを行っています。新しい知見のつまった「創業手帳」を起業にぜひお役立てください。
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(取材協力: ブロードキャピタル・パートナーズ株式会社 CEO 折口雅博
(編集: 創業手帳編集部)

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