秀逸なビジネスモデルでも資金繰りで破綻!防ぐためにやるべき事とは

資金調達手帳

元銀行員が資金繰りがうまくいくポイントについて解説。3つの資金調達の違いについても紹介

(2020/09/02更新)

起業を志す方々は、それぞれの専門性や卓越したアイディアによって、社会を変えたい!という強い思いを持たれているのではないでしょうか。
誰の役にも立たない事業やサービスは世の中の支持を受けられず、撤退を余儀なくされますが、世の中のニーズに合った事業や社会をより良くするサービスは、世の中に受け入れられ、社会を変えることができるかもしれません。

そんな情熱を持った起業家は、どうしてもビジネスモデルをブラッシュアップすることに目が行きがちです。一方、ビジネスモデルと同じくらい重要な「おカネ」のことが二の次になってしまうことも、残念ながら珍しくありません。

そこで、元銀行員で現在はCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)で経営管理を行っている斎藤氏に、「資金調達の方法」や「資金計画」「資本政策」など資金繰りの基本的な考え方についてお聞きしました。

創業手帳では、経営に必要な資金の種類や融資の受け方などがわかる「資金調達手帳」を発行しています。キャッシュフローの重視など実際に役立つ情報を掲載しています。資料請求をしていただくと無料でお手元に届きます。

取材にご協力いただいた元銀行員の斎藤氏
大学卒業後、メガバンク、コンサルティングファーム等を経て事業会社の経営管理部門の責任者を務める傍ら、CVC運営会社の投資担当役員としてベンチャー企業投資に従事。ファイナンス、経営管理、経営企画がキャリアの中心。早稲田大学大学院修了(MBA)。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください。

資金繰りのポイントは「どのぐらいの資金を、どうやって調達するか」

起業間もないころは、家計から捻出して準備した資金や、親族からの支援などで、一定期間やりくりできる現金は手元にあるかもしれません。しかし、個人で捻出した起業資金は、ビジネスという大きなフィールドと対峙した瞬間に、諸々の出費ですぐに枯渇してしまうこともありえます。

いくら秀逸なビジネスモデルでも、おカネがなければその準備すらすることはできません。したがって、起業前後に考えるべきは、そのビジネスモデルを展開するのに「どのくらいの資金が当面必要」で、「どうやってその資金を調達するか」ということです。

起業直後から仕入れもせずにお金がどんどん入ってくるビジネスなど存在しないので、当面の資金繰り計画を立て、そして外部から調達することを考えるのは、ごく自然なことです。

「借り入れ調達」と「資本調達」の違い、分かりますか? 資金調達法3つ

まずは資金調達の方法からみていきましょう。資金の調達方法は大きく分けて3つあります。

1. 金融機関から融資を受ける「借り入れ調達」

最初に考えられるのは金融機関から融資を受ける「借り入れ調達」です。
創業融資の種類や申請の方法などについては創業手帳に詳しく書かれているので、そちらを参考にしてください。

ここで注目したいのは、金融機関からの借り入れは会計上、「負債」または「他人資本」と呼ばれるということです。

他人資本は自分のお金ではありませんので、返さなくてはなりません。返済の方法はケースバイケースですが、短いものでは1年程度。長いものでも10年程度の期間で借り入れた「元金」に、「利息」をつけて返済しなくてはなりません。

2. 資本金を積み増しする「資本調達」

2つ目に考えられるのは「資本調達」です。
株式会社を設立した際、設立時に拠出されたお金は「資本金」として決算書に計上されているかと思います。

この資本金を積み増すのが「資本調達」です。
積み増す資金を拠出するのは既存の起業家個人や親族等の出資者でもいいですし、まったくの他人である第三者でも構いません。

この第三者は、知人や友人といった起業家本人と縁の深い人もいれば、エンジェル投資家と呼ばれる創業間もない企業に資金を拠出する富裕層や、ベンチャーキャピタル(VC)と呼ばれる将来の株式上場(IPO)時に上昇した株価での売却を目的とするプロの投資家など、さまざまなケースがあります。

「資本調達」によって調達された資本金は「自己資本」であり、先ほどの「借り入れ調達」とは違って返す必要はありません。

返す必要がないなら「資本調達」のほうがずっといい、と思う方もいるかもしれませんが、ちょっと待ってください。

出資した人から見ると、資本金への出資はリスクが高いのです。融資の場合と比べてみましょう

資本金への出資と融資 リスクの違い

資本金への出資 融資
  • 出資先に利益が出なければ配当がないことが多く、投資期間中のリターンが予測できない
  • 出資先が倒産や解散した場合は、株は紙切れ同然になる可能性がある
  • 融資先が倒産や解散しても、融資した分は決められた金利をつけて約束通りに返される前提としている
  • このように、資本金への出資はハイリスクを背負って投資をしていると言えます。そのため、資本金への出資者は「株主」として、経営に口出しをしたり、意にそぐわない経営者には退出を迫ったりと、「口うるさく」経営に関与してきます。
    それに対し、「借り入れ調達」の貸し手は、約束通り返済していれば経営に口を出してくることはほとんどありません。

    3. クラウドファンディングなどの新手法

    最後に考えられる資金調達の方法は、クラウドファンディング等の近年新たに出現した資金調達方法です。

    詳しくは創業手帳の他の記事にも書かれているので、そちらを参考にしていただきたいですが、クラウドファンディングには購入型や寄付型、投資型があり、購入型は販売の予約としての側面が強く、寄付型は出資へのリターンがない社会問題解決型のプロジェクトに利用されることが多いと思われます。

    投資型は先に書いた「資本調達」を、クラウドファンディングという仕組みを使って小口に資金を集める方法と思っていただければよいと思います。

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    資金計画を立て、「いつ」「いくら」必要なのかを明確にする

    資金調達の3つの方法をご説明しましたが、じつはその前に必ずしなくてはならないことがあります。
    綿密な資金計画の策定です。
    売上や利益といった事業計画を念入りに策定されている起業家は多いですが、事業計画から派生した資金計画も同じぐらいきちんと立てる必要があります。

    資金計画づくりのポイント

    資金計画策定のポイントは、次の2点を予測することです。

    • 事業計画を達成するために「いつ」「いくら」の投資支出が必要か?
    • 事業計画を達成するためには投資が必要です。その投資がいつ、いくら必要なのかを考えます。

    • 人件費や家賃などの【販管費】と呼ばれる支出が「いつ」「いくら」かかるのか?
    • 販管費とは、「販売及び一般管理費」のことで、販売にかかる費用と業務管理にかかる費用など、材料原価以外の費用を指します。
      販管費に含まれる人件費や家賃、水道光熱費など、事業運営にかかわる諸々の支出も、可能な限り詳細に見積もります。

    資金繰り表を作って資金ショートを見つける

    資金繰り表は、月次レベルでざっくりと作られている方も多いですが、月中の資金増減などを考えると、効率的な資金運営をするためには週次ベースで作成するほうが効果的です。

    資金調達を加味しない計算で、主に収入、支出を想定していると、おのずと資金ショートすることもあり得ます。
    その資金ショート額こそが、資金調達すべき必要な金額と言えます。

    現段階で「今後どれくらいの間の資金ショートを補っておくのか」を考えることが、資金計画の肝となります。

    資金繰り表作成での注意点

    資金繰りとは「お財布(=キャッシュ)」の出入りの予測のことで、いくら入金があり、いくら出金があるのか? を見積もることです。
    例えば仕入れであれば発注した日と支払いする日は異なります。
    販売であれば、売れた日と売上げを入金する日が異なります。

    損益計算書(P/L)だけを見ていると一見利益がでていて、「お金に余裕がある」状況に見えていても、支払日と入金日を確認して、実際のキャッシュ残高の予測をしておかないと、思わぬ資金ショートを起こす可能性がでてきます。

    また、資金繰りと損益計算書の関係で気を付けなくてはならないのは減価償却費です。
    例えば自動車を購入した場合、全額キャッシュで支払うと一気に支出が増加し、資金繰り上大きなマイナスとなります。
    ただし、損益計算書では3年の定額法で減価償却を行うのであれば、毎月の費用計上は購入した金額の36分の1となり、損益計算書上の利益には大きく影響しません。

    従って、損益計算書は大枠での経営成績の指標としてしっかりと確認しつつも、足元の入出金予測を資金繰りで行うという、両にらみの運営が肝要といえます。

    意味合いの違う双方の将来予測をしっかりと立てることが必要です。

    資本調達を選ぶなら重要となる「資本政策」とは?

    どのぐらいの額の資金調達をするかが明確になったら、先ほどの3つの資金調達の方法を検討するステップに進むわけですが、「資本調達」を選ぶ場合には、特に注意すべきことがあります。

    それは資本政策と呼ばれる、事業計画を達成するための資金調達及び株主構成計画です。

    すでに、資本調達は自己資本となり返済の必要性がない反面、出資者である株主は経営に「口うるさく」関与してくることをご説明しました。

    なぜ株主である出資者は口うるさく経営に口出しできるのかというと、それはその会社の持ち分を保有する所有者の1人だからです。
    「資本調達」は自社の持ち分を第三者に譲渡することで資金を調達する方法です。
    つまり、資本調達すればするほど所有者の数が増えると同時に、第三者の株保有割合が増していきます。

    誰からの資本も受け入れずにいれば、会社は創業者1人のモノです。

    例えば取締役を選任する株主総会の普通決議は50%超の賛成を得なければ会社提案を可決することができませんし、合併や事業譲渡といったより重要な議案に必要とされる特別決議は、66%超の賛成を得なければ可決することができなくなります。

    したがって、「資本調達」を検討する際には、「会社の意思決定をどの程度まで起業家自身ができるようにしておくのか」という点をしっかりと考えておかないと、将来的に自分の会社のコントロールができない状況になりえるのです。

    事業計画を達成するための資金調達及び株主構成計画を検討し、慎重に進める必要があります。

    【まとめ】ビジネスモデルと同じぐらい重要な資金計画

    ビジネスモデルの浸透には、開発や広告宣伝といった先行投資も必要です。
    また、相応に余裕のある運転資金も手元に置いておかないと、常に資金ショートのプレッシャーにさいなまれて本来のビジネスに注力することはできません。

    したがって、3つの主な資金調達方法のメリット・デメリットをしっかりと理解し、綿密に計画された資金計画にあてはめて実践することで、秀逸なビジネスモデルをブラッシュアップし、世の中にその是非を問うことができるようになります。

    事業成長のためにも、資金繰りが破綻してしまうという最悪のシナリオを避けるためにも、資金計画の策定と実践をおろそかにせず、しっかりと取り組むようにしてください。

    いかがでしたか。起業の際の資金計画を考えるヒントにしていただければ幸いです。創業手帳では、この他にも資金の調達方法や創業フェーズに必要な情報を掲載している「創業手帳冊子版」を発行しています。お取り寄せは無料ですので併せてご覧ください。

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    (編集:創業手帳編集部)

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