総額5500万円超を集めたプロ直伝!3つの成功事例から掴むクラウドファンディング成功のコツ

創業手帳

人やお金を引き寄せるクラウドファンディングに必要な要素は4つの流れ! 認知・共感・信頼・購入とは

(2020/07/22更新)

新しい資金調達方法として、活用する方が増えているクラウドファンディングですが、誰もが簡単に目標金額を集められるわけではありません。
クラウドファンディングを活用して資金調達やプロジェクトを成功させるためのポイントや、知っておくべき事柄は何でしょうか。

クラウドファンディングは資金調達だけでなく多くのメリットを含んでいると語るのは、自らクラウドファンディング事業を手掛ける森脇氏。
創業手帳が無料開催したセミナーで登壇し、語っていただいた内容が好評だったため、成功事例と共にポイントを押さえながらご紹介します。
 
創業手帳では、起業家に必要な資金調達のポイントをまとめた「資金調達手帳」(無料)を発行しています。ぜひ、あわせてご覧ください。

森脇 暉 株式会社レストレーション 代表取締役
山口県下関市豊北町出身。2013年三井住友銀行入行。故郷の衰退に危機感を覚えたのを機に、2017年10月退職。自身のように日本の地域に思いのある人が全国から集まれる場所を作るべく、「谷上プロジェクト」に参加。同年11月に移住、12月に株式会社レストレーションを設立。以来、数々のクラウドファンディングプロジェクトで成功を収め、総額5500万円超の資金調達で「郷土愛で日本を変える」を実践している。

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クラウドファンディングとは?

クラウドファンディングとは、「クラウド=群集」から「ファンディング=資金調達」することです。プロジェクトを応援してくれる支援者へのお返しを「リターン」と呼びますが、そのリターンの内容で3種類に分類できます。

購入型:物やサービスがリターンとなる
金融型:金利がリターンとなる「融資型」、売上の一部が配当となる「ファンド型」、
    配当とキャピタルゲインが得られる「株式型」がある
寄付型:ふるさと納税など、社会貢献がリターンとなる

イベント的なプロジェクトを立ち上げる「プロジェクト型」と新たに開発する製品の予約販売を受ける「プロダクト型」という分類もできます。

クラウドファンディングによる資金調達の大まかな流れは以下のようになります。
→企画の立案
→企画書を作成
→クラウドファンディングのサイトを選ぶ
→企画を投稿→プラットフォームによる審査
→企画内容の詳細作成→プロジェクトを開始
→リターンの送付

また、クラウドファンディングは資金調達手段としてだけではなく、営業や広告宣伝、予約販売のための有効な手段として、ビジネスを初期段階で加速させる「マーケティングツール」であるという捉え方もできるでしょう。

成功のポイントは「民間主導」と「行政の課題解決」

日本は、出る杭は打たれる風潮や、失敗が許されない減点主義から「挑戦や変化」を起こしにくい社会となっています。その中で「挑戦や変化」を起こすには、個々の信念や熱意とそれに共感して一緒に突き進んでくれる仲間、そして挑戦・変化できる余地のある場所が必要です。

例えば、米国のシリコンバレーは果樹園だった場所に、世界を変えたい熱量の高い民間人が集まることで、今もイノベーションが起こり続けています。
一方、中国では、AlibabaはAliPayという個人の信用情報で偽札問題を解決、WeChatは顔認証で防犯を強化、Mobikeは大気汚染の問題を解決など、民間が政府や行政の課題を解決することによって、イノベーションを起こしています。

日本でイノベーションを起こすには、シリコンバレーのドライな民間主導型と、中国の行政の課題解決型のハイブリッドを意識するのがポイントとなります。

大枠のイメージが湧いたところで、ここからは森脇氏が実際に手がけてきたより身近で具体的な事例を紹介していきます。

クラウドファンディング成功事例①地域密着型の貢献で町が活性化


「谷上プロジェクト」
集まった金額:2674万8000円
ポイント:行政からの強力な支援

チャットワーク創業者の山本敏行氏を発起人として行った、神戸市の「谷上(たにがみ)」という町の活性化プロジェクト。

神戸市は、高評価な衣食住に対しビジネスでは苦戦しており、近年、人口は福岡市に抜かれ若年層の流出も止まらない状況です。神戸市の2020スローガン「若者に選ばれる町、誰もが活躍する町」がそれを表しています。このプロジェクトではそうした神戸市が抱える課題解決もストーリーに組み込むことで、中国の例のように行政から強力な支援を得られました。

谷上はほとんど知名度のない町ですが、ロケーションは、新幹線が停車する新神戸駅までひと駅、繁華街の三ノ宮駅までふた駅。さらに南には神戸空港があり、そこからシャトルで関西国際空港へも便利です。
関西で通常重視される、阪神間の「横の動線」でなく「縦の動線」で見ると集客ポテンシャルが感じられ、「日本一アクセスの良い田舎」として打ち出すこととしました。

プロジェクトの活動としては、谷上駅直結のビル内の、ファストフード店が撤退した場所をコミュニティ拠点とするべく、森脇氏自身が移住して登記を行うところから始まりました。そこから地域と信頼関係を築きながら、行政や鉄道会社と連携し、県内外から人を呼び込んでファン形成をしていったのです。

クラウドファンディングのプロジェクトは「出る杭を伸ばす!挑戦と変化を巻き起こすコミュニティを谷上に!」として立ち上げられ、2018年3月1日に開催したキックオフイベントには、兵庫県知事や神戸市長も来場。
また、以前から興味ある人に現地を案内する「谷上ツアー」や、皆でアイデアを出し合う「谷上ディスカッション」など、全国各地で講演会などを行ってきたため、キックオフ時点ですでに活況を呈していました。

最終的に、募集終了の5月1日には寄付総額2674万8000円と、当時の兵庫県最高支援金額を更新する成功を収めました。
この資金でコラボレーションスペース「.me(ドットミー)」を開設。メディアにも取り上げられ、クラウドファンディングがマーケティングや広報ツールとしても機能した好例となりました。

クラウドファンディング成功事例②夢のあるストーリー設定に基づく、空き家リノベーション


「島戸ゲストタウンプロジェクト」
集まった金額:1030万6000円
ポイント:地元で信頼の厚い発起人によるムーヴメントの醸成

プロジェクトの舞台は、森脇氏の出身地である下関。ここで「イルカが選んだ奇跡の海 第1号ゲストハウス 絶景『角島(つのしま)』が望める空き家をリノベーション」というクラウドファンディングを立ち上げました。角島自体はすでに年間100万人が訪れる観光地でしたが、宿泊施設がないために日帰りとなることや、夏のマリンスポーツ以外の収益事業がないことが課題でした。
そこで、角島を望む島戸地域に70軒ほどある空き家をリノベーションして、ゲストタウンの創出を目指しました。
これにより、観光客は泊りがけで角島周辺の自然を楽しむことができ、地域には新たな収益事業の可能性が生まれます。
行政がかかえる空き家問題の解決にもつながります。実際、この地域の活性化を公約としていた下関市長に協力をいただき、ふるさと納税型クラウドファンディングとして展開しました。そうして1030万6000円を集め、現在はゲストハウスもできて喜ばれています。

成功のポイントは、地元のビーチクリーン活動を推進して、絶大な信頼を得られていたNPO法人代表に発起人を務めてもらったことです。さらに、地元出身者である森脇氏が県内外で営業活動や広報活動をしてチームアップしたことで、行政をも巻き込む旋風が起きたのです。
また、リターンとして、ゲストハウスの宿泊券とマリンスポーツの体験券という、現地の魅力を味わってもらえるものを設定。下関の人たちをターゲットとして、地域で地元を盛り上げるムードを醸成したこともポイントでした。

クラウドファンディング成功事例③鉄道ファン待望のイベントを演出


「道路を走る高速鉄道車両見学プロジェクト」
集まった金額:604万円
ポイント:特定のファン層に向けた地域活性型発信

目の付け所がポイントだった鉄道の陸送イベント。
山口県の下松(くだまつ)は鉄道産業の町で、車両を英国に輸出しています。通常は夜間に行う陸送を町のPRのために日中にイベントとして企画。そのイベントをクラウドファンディングによる資金で実施しました。
「鉄道ファン必見! 最後の英国高速鉄道車両イベントを成功させたい」と銘打ったプロジェクトは、2019年7月1日に募集を終え、604万円の支援金を集めています。

ポイントは、プロジェクトのターゲットを鉄道ファンにしたことです。リターンとしてここでしか買えない撮影券やグッズを設定したのは好評でした。
さらに、特設ブースからの観覧・撮影ができるコースや、先頭車両製造時に使われる打ち出し板金の技術で作った記念プレートをつけたコースは即日完売。
このように特定のファン層に向けた発信も、たいへん有効です。

クラウドファンディングを成功させるポイント

クラウドファンディングでは、認知→共感→信頼→購入という流れが大事です。
これらの流れを作るためには、以下で述べる取り組みがとても大切です。

【認知】事前ににぎわいを見せる工夫で、認知を促進ー必要な3つのポイント

まず「認知」において必須なのは事前準備です。支援者数と支援金額の盛り上がりがなければ、そもそも目を留めてもらえません。では、認知のためには何をすればいいのでしょうか。3つのポイントがあります。

ポイント1:形式目標を設定する

事前ににぎわいを作るためには、反響が見込める金額の「形式目標」を設定することが重要です。
実際に集めたい金額が1000万円だからといって目標金額を1000万円にすると、開始まもなく200万円を集めても達成率は20%にしかならず、閑散と見えてしまいます。そうならないためにも、早期に目標達成の可能性が感じられるレベルに金額設定するようにしましょう。

ポイント2:事前段階でコミュニティを形成しておく

事前段階からコミュニティ形成を図るなどして支援者を集め、にぎわいのベースを作っておくことが大切です。
「谷上プロジェクト」では事前に行った「谷上ツアー」や「谷上ブレスト」により、チャット上で約1000人のコミュニティができていた状態で、クラウドファンディングを開始させました。「島戸ゲストタウンプロジェクト」では、発起人を中心に形成されていたビーチクリーン活動のコミュニティの協力で、初速を作っています。

ポイント3:支援単価の高い「法人」を巻き込む

クラウドファンディングにおいて個人1人当たりの支援平均単価は大体7000円なので、1万PVで集まる金額は50万円程度となります。そのため、支援単価の高い「法人」を巻き込む工夫が必要です
「島戸ゲストタウンプロジェクト」では、約半分を大口の法人から集めました。この支援が会社の価値向上につながる、地域貢献になるといったプレゼンテーションがカギとなります。最初からスポンサーとして名を連ねてもらうようなプロジェクト設計もよいでしょう。

【共感】イメージが湧くストーリー作りで心をつかむ

プロジェクトの存在が認知されたら次に必要になるのが「共感」です。共感を得るためにはストーリーづくりが重要となります。プロジェクトの目指す未来へのイメージを伝えることで、それに賛同する人たちが集まり共感の輪が広がっていきます。
そのためにも、巻き込みたいターゲット層により具体的にプロジェクト内容をイメージしてもらえるようなストーリー作りを大切にしましょう。

【信頼】プロジェクトを動かすチームで勝ち取る信頼

プロジェクト内容を理解し、共感してくれた人たちに信頼してファンになってもらうためには、誰がどういう思いでやっているのかを熱意をもって伝えていくことが大切です。プロジェクトチームの信念や熱意を地道に伝えていくことで、人と人とのつながりが生まれ信頼へとつながります。
そのためにも、信頼でき、影響力の感じられるチーム作りを目指しましょう。発起人の応援者、その町の業界関係者、自治体、町の外で広報や営業をする人、制作する人、ディレクターなど、チームの輪が欠かせません。

【購入】支援者ニーズをふまえたリターン設計で購入を誘う

ファンになった人たちに実際に支援してもらう「購入」。購入したいと思わせ、実行に移すためには、そこでしか買えないものやそこでしかできない経験など、魅力的なリターンを設定する必要があります。
例えば、熱狂的なファンがいる業界分野をターゲットにするなど。「鉄道車両見学プロジェクト」は鉄道ファンにアピールした成功例ですが、ゲームなども特定のファン層が形成されており、ファンの世界観をふまえて展開したり、オリジナルグッズをリターンとすることで、一気に集客が見込めます。

リターンについては、事前の根回しも欠かせません。大口の法人向けには、支援しやすいリターンをあらかじめヒアリングして用意するのも一つです。個人向け・法人向けとも相手のニーズをしっかりととらえながらリターン設計を行いましょう。

プロジェクト進行段階ごとにすべきこと

クラウドファンディング立ち上げの事前段階から、募集期間終了後までの間にその時々に応じてやっておかなかればならないことがあります。
準備期間・実施期間中・終了後の3段階に分けてポイントを押さえておきましょう。

準備期間~アクティブユーザーをイメージしてプロジェクトを構成

準備期間には、どのクラウドファンディングサイトを使うかプラットフォームごとの特徴をふまえて選びます。支援者は、アクティブユーザーである関東圏・関西圏の20代後半から40代、主に男性をイメージするとよいでしょう。
ターゲットが想定できたらそれにそれに合わせて、リターンを設定します。
ページの制作では、発起人とプロジェクトへの信頼が可視化できるようにを意識します。

実施期間中~必ずある中だるみ期に、ファンを増やす活動を

実施期間中について知っておくべきは、中だるみ期があるということです。クラウドファンディングでは最初と最後の1週間に支援が固まりやすく、その間の期間にはあまり変動は起こりません。しかし、そこでファンを増やす努力をしておくことでラストスパートが大きく変わります。
ライブ発信や講演会、日々のSNS投稿、個別営業を準備段階から設計して、絶え間なく実践していきましょう。

100万円以上の支援達成者は、100名以上の方から支援を獲得しており、期間中に40投稿以上行っているというデータもあります。発起人やプロジェクトメンバーの紹介や進捗報告を丁寧に行っている人の方が達成しやすいといえます。

終了後~プランの継続を意識して、お返しをしっかり届ける

終了後には支援者にリターンを返すわけですが、クレームなど起こらないよう真摯に丁寧に行う必要があります。1回きりのお祭りで終わらせないよう、その後に継続的にやりたいことを実現し続けていくためにも、最初にビジネスモデルをしっかりと構築し、その営業・広報手段として最大限クラウドファンディングを活かしましょう。

まとめ

いかがですか。高額のクラウドファンディングを成功させられるイメージが湧いたでしょうか。

今、コロナ渦に立ち向かうクラウドファンディングが多く立ち上がっています。もともと日本でクラウドファンディングが広がったのは、東日本大震災後の復興支援機運がきっかけであり、日本人らしい助け合いのカルチャーに合った手段ですから、今まさにやるべきといえるでしょう。
また、コロナ渦への対策としてビジネスモデルや業態の転換を図るためにクラウドファンディングを活用し、前向きな新しいチャレンジを行うというのも世の風潮が後押ししてくれるのではないでしょうか。
厳しい状況は続きますが、新しいチャレンジをするチャンスと捉え、クラウドファンディングをうまく利用しながら前進していきましょう。

創業手帳が発行する「資金調達手帳」(無料)でも、クラウドファンディングを成功させるためのコツを紹介しています。公的融資や補助金・助成金などの基本情報とあわせ、ぜひ参考にしてみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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