日本初のリモート・ユーザテスト「ユーザテストExpress」の仕掛け人!ポップインサイト池田社長インタビュー
誰でもわかる課題発見ツールはある違和感から生まれた
(2017/06/26更新)
インターネット端末や閲覧メディアが多様化した現代。自社サイトの改善をしようにも、ユーザーがどのようなものを求めているかわからないと悩んでいる方は多いのではないでしょうか?
そこで役立つのが、実際にユーザーに使用してもらい、行動や発語を観察して自社サイトの課題や改善点を見つける「ユーザテスト」です。
従来のユーザテストはテストルームに来てもらってインタビューするのが一般的ですが、今回のインタビュイーである池田 朋弘 氏が代表取締役を務める「株式会社ポップインサイト」は、なんと日本で初めてユーザが自宅で一人で行う「リモート・ユーザテスト」を開発。従来の常識を覆すような発想はどこから来たのでしょうか?今回はその理由を紐解くために、サービスの詳細や創業のきっかけを伺ってきました。
この記事の目次
自社サイトの弱点が低予算・短時間でわかる「リモート・ユーザテスト」
「ユーザテストExpress」というWebマーケティング改善のためのASPサービスを主力で提供しています。
ウェブサイトやアプリの課題を定性的に把握する「リモート・ユーザテスト」というサービスで、いろいろな人の自宅に録画用カメラ・環境を配置しておき、ウェブサイトやアプリを利用している様子を録画してもらい、その利用動画の中から、課題や改善余地を見つけるものです。
アメリカでは同種サービスが2007年頃からあり、Facebookやebayなどの大手は軒並み使っている人気サービスでしたが、日本ではありませんでした。これを日本ではじめてスタートしたのが「ユーザテストExpress」です。
これまでの「ユーザテスト」は、会議室などに人を呼んでくる方法が一般的でしたが、「時間がかかる」「外注コストが高い」「社内でやるには大変」「地域が限定される」といった課題がありました。
ですが、ユーザテストExpressはユーザが自宅でできるため、場所や日程の調整が不要です。さらに1回数千円という格安のコストで、一定の品質のユーザテストがすぐにできるようになりました。
また、動画で利用シーンが見れることで、ウェブサイトやアプリの分析にノウハウがない人でも、直感的に課題が分かります。
ウェブサイトやアプリへの集客がある程度軌道に乗っている方は、今後の方針を見極めるために定期的に行い、改善仮説を見極めた方が良いかと思います。
保険代理店サイトの資料請求数10倍、不動産ポータルサイトの申込数1.5倍、クリニックサイトの無料体験申込数3倍超などの事例が多数あります。
ユーザテストは価値がある。なのに行われていない違和感
最初は大学のサークル活動の関係で知り合った嶺井さんに誘われて、「もっとネクスト」という会社のCEOを務めました。
当時、プログラミング等は全く知らなかったが、メンバー内で相対的に興味があったため、独学で勉強し、中小企業向けのCMSを構築しました。
結果的には1年程度(在学中)に比較.comに売却することになりましたが、初めてのビジネスとしてとても良い経験になりました。
その後、ビービットというWebマーケのコンサルをする会社に入社し、そのコンサルティングプロセスである「ユーザ行動観察」という手法が非常に興味深く、成果に繋がることを体感しました。
このサービスをより手軽に広めるサービスとして、海外にはRemote Usability Testingというサービスがあったが、国内にはなかったため、最初は副業としてスタートしました。副業ではありましたが、すぐに一定のニーズがあることが分かり、売上も多少なりとも出てきたため、2013年1月に「ポップインサイト」を起業。個人的にはまだ副業ベースを継続する案もあったが、28歳というタイミングもあり一念発起した形です。
さらに、ポップインサイトでは、「リモートユーザテスト」というリサーチサービスを展開しており、サービスのためにモニタをネットで集める座組・経験を得ていました。この座組を「リサーチ」でなく「ワーク」に置き換えるとクラウドソーシングと同じ座組になり、市場が非常に伸びていたこともあり、2015年に別会社として「MIKATA」を創業しました。
前職の経験から、ユーザテストが非常に価値がある(気付きが得られる)ものであることを自分自身の体験として痛感していました。
それにもかかわらず現状のビジネスシーンではコスト・手間の問題でほとんど行われていないことが勿体無いなと感じたためです。
起業時には2歳の子供がいたため、やはり現実的な収入面の不安はありました。
ベンチャーの中には、役員報酬を数万円と抑えて延命するようなケースもあると思いますが、個人的には「家族がいる状態でフロー収入が少なすぎるのは健全でない」という思いがあったので、最低限家族が暮らせるだけの役員報酬を設定した上で、「1年以内に単月黒字にならなかったらやめる」というルールを作ってチャレンジしました。
結果的には半年程度で達成できましたが、最初は不安も大きかったです。副業という助走期間を経ていなかったら、売上が立つまでにもっと時間がかかっていたと思うので、助走があることはとてもよかったです。
創業から2年程度は、元々の堅実な性格もあり、ガチガチに手堅い経営を続けていたが、3年目になると「周りは数億と調達している中でこんなに零細企業で続けても意味がない。もっと勝負をしなければ!」という焦りが出てしまい、インターン等も含めて20人ぐらいに一気に人を増やしましたが、売上がなかなかついてこず、大赤字になってしまった時期もありました。
早いタイミングで気付き、徹底的なスリムダウンを図ることで生き延びることができましたが、一歩間違えたら倒産していた可能性が高かったと思います。大きく思い悩むことは少ないですが、この時期だけは多少眠れない日がありました。コストカットに伴い、迷惑をかけざるを得なかった方も少なからずいるので、誤った判断は自分だけでなく周りにも迷惑をかけることを痛感しました。
自分たちが考えたサービスや企画・提案が、社会に受け入れられてるという状態は、基本的には日々嬉しく、達成感は日々感じています。
達成感については、さらなる成長に向けて「まだまだやらねば」というハングリー精神を持たなければという意識と、とは言え思い詰めすぎても疲れるので「去年に比べれば圧倒的に(会社も自分も)成長してるな」という「足るを知る」という意識の2面があり、うまいバランスをとって進めていくのが重要と感じています。
創業時・創業初期の1年間は完全に友人や知り合いづてです。
友人や知り合いづてということもあり、働き方の相談にも柔軟に対応していたところ、一人が「中国で仕事したい」と言い出して、リモートワーク的な働き方を会社として取り入れざるをえない状態になりました。ですが、続けているうちに、リモートワークをベースとした働き方が自然な体制になっていきました。その結果、リモートワークの認知が広がり、全国にいる優秀な人から直接応募が入るようになり、現状は自社応募が採用の中心になっています。なので、求人サイトなどの媒体はあまり使っていません。
共同創業者と自己資金で集めました。
創業2年目には、不測の事態に備えて金融機関3行ほどで数千万ほど借入を行いました。前述の通り、2015年に危機的な状態になった時があったので、このタイミングで借入していたことは、後から振り返ると2つの意味でよかったと思います。
1つは単純に「手元キャッシュ」がつきなかったこと、もう1つは「借入をしているので、下手すると大きな借金を追ってしまい、家族が困る」という背水の陣があったことです。そのため、非情な判断・行動を取ることができました。借入がなかったら、単に手元資金がつきただけなので、ズルズルとマズイ状態を続けていた可能性があったかもしれません。
「公明正大」であることで、信頼が作られていく
「公明正大」であることを意識しています。
社長・CEOは、会社における役割にすぎないとはいえ、一緒に働く社員・仲間の人生に対して少なからず影響を及ぼす存在です。
そのため、選り好みしたり、私利を優先するような行動は取るべきではないと考えています。そのような行動を続けていくことで、信頼のベースが作られ、各自の成長・事業の成長が実現できると思っています。
ポップインサイトは、「ユーザ視点を間近に」というミッションを達成すべく、「ユーザを知りたい」「顧客のことをもっと分かりたい」と思う企業にとっての第一想起に入るような存在に成長していきたいと思っております。
また、東証一部上場のメンバーズのグループ会社として迎えてもらったので、グループ内における「標準装備」として、ユーザリサーチ力をコアに確固たる圧倒的な付加価値を出せる存在に成長していきたいですね。
組織としては「サファリパーク型」の組織を目指しています。営業会社のような「鶏小屋」でもなく、また職務や部署によって仕切られる「動物園」でもなく、様々なバックグラウンドをもつ「多様性」のある人たちが、個々人を尊重しあいながら「共生」するとともに、「高い付加価値」を出せる組織でありたいです。
自分の力で事業を立ち上げる・成長させるのは、大きな責任感やプレッシャーはもちろん伴うが、やり甲斐も達成感も桁違いに大きいです。
起業された方はそれを体感していただきたいと思っています。
(監修:株式会社ポップインサイト 代表取締役社長 池田朋弘(いけだともひろ))
(編集:創業手帳編集部)