リスクを抑えた副業から上場へ。レアジョブ代表・加藤氏インタビュー

資金調達手帳
※このインタビュー内容は2016年07月に行われた取材時点のものです。

「欲しい」と「経験」を活かして創業

(2016/06/16更新)

格安のマンツーマンオンライン英会話サービスを中心に、英語を「話せるようになる」サービスを提供するレアジョブ。起業までの経緯や成功のカギとなった創業期の工夫、上場の際の苦労等、代表 加藤氏のインタビューを全3回に渡ってお届けしたい。第一弾となる今回は、起業前から現在に至るまでのお話を伺った。

加藤 智久(かとうともひさ)
1980年生まれ、千葉県出身。一橋大学商学部卒業。外資系戦略コンサルティングファームに勤務後、2007年に株式会社レアジョブを設立。2014年東京証券取引所マザーズ市場上場を果たす。2015年株式会社レアジョブ代表取締役会長に就任。

自分が面白いと思える環境が起業への自然な道だった

ー学生時代から起業を志していたのでしょうか?

加藤:実は私にとって高校はあまり楽しい場ではありませんでした。「自分は何で勉強しているんだろう?」と分からなくなって、勉強をすることができなくなりました。

そうした時に、本を沢山読むようになり、色々と好きな著者ができて、その中の一人が大前研一さんでした。

起業したいという明確な志があったわけではなく、大前さんと会えるところがあるらしいと「一新塾」に辿り着きました。

一新塾に携わるようになり、自分で道を切り拓いて来た人達から刺激をうけ始めました。

自分も「敷かれたレールの上を歩いていくのではなく、自分でレールを敷いていくような人生を歩みたいな」という思いが強くなりました。

ーなるほど。学生時代には何か活動はされていたんですか?

加藤:大学時代は、実際にベンチャー企業で働いていました。

そこで色々な新規事業をやらせてもらって、それがとても楽しいと感じていました。

特にあの頃のベンチャーは”結構変わった人たち”が集まっていて、そういう人たちが、今までに無いサービスを作ってお客さんを喜ばそうとしているというのが、好きだなと思っていました。

結局その会社から上場企業が2社生まれたり、元の会社より大きな利益を出している会社も2社程あります。

当時そのベンチャーにいた人たちは、その後の自分の起業には大きな助けになっています。

ーその時の経験がベンチャーマインドを育てたのでしょうか?

加藤:そうですね。

揉まれたというのもあるのですが、それ以上にある種自分の先を歩いている人の後を追えた、ということが大きいです。

一人や二人、先に歩いている人がいて、歩いたことを知っていると、頑張ってそこを登っていこうと思えます。

いわゆるメンターですね。メンターがいるというのは大きいと思います。

ー起業する人がいる、または起業できる環境のある会社に行くというのも重要ですか?

加藤:自分がいた会社の人たちが、いろいろな分野で起業していたのは知っていました。

私はベンチャーで働いた後、一度大学に戻って2、3年半勉強しましたが、そこでも自分の身の回りの人たちは起業する人が多かったです。

起業するかどうかで悩む人は結構多いと思いますが、私の場合は「どういう風に起業したら上手く行きそうか」という具体的な悩みだけでした。

ですので、周りに起業している人が多い環境にいると、それはすごく自然にできると思います。

ー起業前に戦略コンサルティングファームで働いたことには何か理由がありますか?

加藤:大学を卒業した後は、戦略コンサルティングファームに2年間在籍しました。

理由は、自分はゼロのものを一にすることは得意でしたが、一を百にしていく段階でマネジメントが上手くできずに失敗した経験があったからです。

それを一番学べるところが、私にとっては戦略コンサルティングファームで働くということでした。

目標はあくまで起業でした。一新塾で出会ったメンターである方に、戦略コンサルから起業する場合には、主に2つのケースがあると教えられました。

一つは戦略コンサルを3年以内に辞めて起業するケース。もう一つは戦略コンサルでパートナーまでいってから起業するケース。

私の場合、3年以内に辞めて起業しようという計画でした。

副業から学んでリスクの小さい起業を実現

ー外資系戦略コンサル会社を辞めて起業するまでの経緯を教えてください。

加藤:起業する前に、副業として1年以上同じようなことをやっていました。

最初は中国人との中国語会話、その後フィリピン人とのオンライン英会話を始めてみました。

そこで事業として成功できそうだという感覚は無かったのですが、全くゼロから起業して「さあ、何をやろう?」という形ではなくスタートすることができました。

フィリピン人講師のオンライン英会話は、私が始めた2007年当時は全くメジャーではありませんでした。

ただ唯一、私たちが真っ先にスケールできた理由は、料金プランだと思っています。

副業としてサービスを提供していた時は、30レッスンで幾らというモデルでした。

しかし、起業した時のマネタイズモデルは、毎日使っても使わなくても5000円/月。

パッと見同じようですが、実は全く違います。

このモデルの利点は、毎月お客様から頂く料金は、お客様が辞めない限り続きます。

また、以前のプランは、レッスンを受ける度に「これで何百円」と心が痛むのですが、月額の場合、受けなかったら心が痛むという。

そのお金のもらい方を創業直後に変えたことが、成功した背景だと思います。

でもそれは、創業前に副業としてやっていなかったら、同じ轍を踏んでいたのではないかと思います。

リスクが小さい形で起業することは、副業していたからこそできたと思います。

また、自分が行ける!と思ったタイミングでスタートを切ることもできました。

自分が欲しいモノを形に

ーどこに着目して英会話ビジネスをスタートさせたのですか?

加藤:ひとつは、Skypeです。

遠くにいる相手と目の前にいるように色々と話せて無料ということに可能性を感じ、その分野で何かビジネスがしたいということ。

もうひとつは、フィリピン人。フィリピンの最難関大学であるフィリピン大学の学生たちは、優秀で英語も堪能で戦略コンサルの同僚にいてもおかしくありません。

しかし、そんな人でも「仕事がない」と言っている現状を目の当たりにしました。

その時、この人たちの能力を、インターネットを使って日本に届けたらすごい事ができるのではないかと思ったことです。

ー英語そのものに対する思いはありますか?

加藤:自分自身が外資系戦略コンサルティングファームにいた時、外国人の同僚とやり取りをする際に英語が話せなくて困った経験があります。ですから、自分が欲しいモノを作りました。

私の場合、単に起業しても周りに沢山すごい人たちがいました。

けれども、グローバルとなった瞬間にそれができる起業家が少ないということを、自分がベンチャーにいた時から知っていました。

ですので、自分はそこで勝負するということを決めました。

(取材協力:株式会社レアジョブ/加藤 智久
(編集:創業手帳編集部)

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