パートナーシップ構築宣言とは。大企業✖中小企業がともに発展するミライへの一歩
パートナーシップ構築宣言でサプライチェーンが連携を!登録方法やメリット、今後の動きまで徹底解説
パートナーシップ構築宣言という取り組みが2020年6月から始まりました。
大企業と中小企業の両方に関係しており、規模の小さい企業でも安心して事業を営んでいける可能性を秘めた取り組みです。
パートナーシップ構築宣言とはどのような制度か理解し、自社の取り組みとして導入を検討してみましょう。
まだ始まったばかりの制度ですが、今後の経営に役立つことがあるかもしれません。パートナーシップ構築宣言登録のメリット・登録方法・今後の動きを紹介します。
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この記事の目次
パートナーシップ構築宣言とは
パートナーシップ構築宣言とはどのような取り組みか、基本的な内容についてまとめました。
パートナーシップ構築宣言は2020年に始まったもので、まだ知らない人も多いかもしれません。
しかし、弱い立場の中小企業が安心して事業を継続できる有意義なものです。
パートナーシップ構築宣言に関心を持ったら、まずは概要や対象、目的などを知っておきましょう。
パートナーシップ構築宣言の概要
パートナーシップ構築宣言は、企業が発注者の立場から行う宣言です。
宣言の主な内容は取引先との共存共栄の取り組みや取引条件のしわ寄せの防止で、企業の代表者の名前で宣言することになっています。
パートナーシップ構築宣言は2020年に、経団連会長・日商会頭・連合会長及び関係大臣で構成される「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」で導入されました。
内閣府・経産省・厚労省・農水省・国交省が関係しています。
パートナーシップ構築とは、発注者である企業と受注者である企業が新たなパートナーシップを築いていくことを指しています。
パートナーシップ構築宣言の対象
パートナーシップ構築宣言の対象となるのは、事業規模の大小にかかわらず発注企業側で、パートナーシップ構築宣言の内容は下請け事業者との取引です。
仕事を発注する側の企業がパートナーシップ構築宣言を行い、下請け企業とその宣言の内容に沿った取引をしていきます。
受注側企業は、特にパートナーシップ構築宣言をする必要がありません。
一般的には、パートナーシップ構築宣言をするのは、規模が大きく事業を営む中で下請け企業に依頼することが多い大企業です。
ただし、受注側も自社で下請けを使っている場合には、下請け企業に向けてパートナーシップ構築宣言をすることができます。
パートナーシップ構築宣言の目的
パートナーシップ構築宣言の目的は、立場の弱い企業が不利益を被ることなく、取引先と良好な関係を築くことです。
宣言の内容に具体的な取引の方法を盛り込み、下請け企業との不利益な取引を避けることを宣言させることで、主に大企業に立場の弱い中小企業などを搾取させない狙いがあります。
パートナーシップ構築宣言で宣言し、重点的に取り組む内容は、まとめると以下の2点です。
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- サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列などを超えた新たな連携
- 親事業者と下請け事業者との望ましい取引慣行の遵守と各企業の取り組みの「見える化」
サプライチェーンとは、商品や製品が消費者まで届くまでの一連の流れを指し、製造から在庫管理、販売、消費などを指します。
こうした流れの中で、下請け企業が大企業と不利益なく取引できる関係を目指すのがパートナーシップ構築宣言です。
この取り組みには、脱・低炭素化やグリーン調達といったグリーン化の取り組み、事業継承支援、IT実装支援なども含まれます。
また、それぞれの企業に正しい取引慣行を守らせ、そうした取り組みを見える化することも宣言の目的のひとつです。
宣言の見える化は、下請け企業だけでなく、親会社にもメリットがあります。
パートナーシップ構築宣言登録のメリット
パートナーシップ構築宣言は、弱い下請け企業を救い、発注企業が世間や取引先と円滑な関係を築く助けとなる取り組みです。
パートナーシップ構築宣言の登録は、どちらの立場にもメリットがあります。
どのようなメリットがあるか、発注企業・下請け企業別にまとめました。
パートナーシップ構築宣言登録のメリット~発注企業側~
パートナーシップ構築宣言は一見、弱い下請け企業を守るためのもののように見えますが、発注側となる大企業にもメリットはあります。
宣言する側は書類作成や手続きなども必要ですが、いろいろな面で役立つ可能性があるため、登録を検討してみましょう。
対外的なイメージアップを図れる
パートナーシップ構築宣言は、取引先や一般消費者などに良いイメージを与えます。
下請け会社に不利益のない取引を守る取り組みは、宣言の決まりとして「見える化」されており、宣言をした発注企業は取引先はもちろん、下請け企業と正しい取引をするホワイト企業であると広く認識される可能性があります。
具体的な見える化の方法は、公式ポータルサイトへの掲載・公表とパートナーシップ構築宣言のロゴマークの使用です。
元請け企業を持つ中小企業は、公式ポータルサイトを閲覧して自社の取引先をその中から探すこともできます。
また、ロゴマークは名刺などに記載して、日ごろの営業活動などでPR可能です。
企業体質の改善ができる
パートナーシップ構築宣言をきっかけにして、企業が自社の体質を振り返ることで企業体質の改善につながることもあります。
近年多くの企業が取り組んでいるSDGsの目標の実践も可能です。健康と福祉、働きがいと経済成長など、複数の分野で実践できます。
長い歴史を持った大企業などでは、なかなか自社の体質改善は難しいかもしれません。
しかし、パートナーシップ構築宣言の検討を始めることで、これまでの認識を改められる可能性が出てきます。
自社がパートナーシップ構築宣言にふさわしいのか、宣言するためにはどのような改革が必要か検討することで、より働きやすく社会的にクリーンだと認められる企業を目指すのも良いでしょう。
古い慣習や長年のルールを見直し、これからの社会に適応できる企業を目指せます。
下請け企業と円満な関係を築ける
パートナーシップ構築宣言の大きなメリットのひとつが、下請け企業との円満な関係の構築です。
パートナーシップ構築宣言では、発注企業が代表者の名前で、クリーンで平等な取引方針を宣言します。
そうすることで、下請け企業は安心して取引できるようになり、より深い信頼関係も築けるようになります。
不平等な内容の取引を一方的に押し付けられる関係では、下請け企業の不満も募り、経営も不安定になるかもしれません。
優秀な下請け企業とより長く安定的に取引を続けるためには、平等な取引を基本とし、円満な関係を築くことが大切です。
補助金申請で加点される
パートナーシップ構築宣言には金銭的なメリットもあります。一部の補助金制度では、登録した企業が申請の際に加点措置を受けられることになっています。
2022年1月時点で、パートナーシップ構築宣言で加点措置を受けられる補助金は以下の通りです。
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- 事業再構築補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(新特別枠含む一般型・グローバル展開型)
- 産業・業務部門における高効率ヒートポンプ導入促進事業
- ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金
- 先進的省エネルギー投資促進支援事業
補助金のためにパートナーシップ構築宣言を目指すのはその目的や意義に反しますが、登録のご褒美として活用できる企業は積極的に活用してください。
パートナーシップ構築宣言登録のメリット~受注企業側~
パートナーシップ構築宣言は、取引先が登録することで受注企業にもメリットがあり、発注企業側との関係は改善され、経営状態などにも良い影響を与える可能性があります。
経営状況が景気や疫病などの影響を受けにくくなる
発注企業がパートナーシップ構築宣言をすると、受注企業は無理な取引を持ち掛けられることがなくなり、経営状況が安定しやすくなります。
景気の悪い時でも下請け企業にばかりしわ寄せが行くことを防げます。
下請け企業は、景気や疫病などの影響で経営状況が変化しやすいものです。
その理由は、発注企業が景気の変化や疫病の流行などによる弊害を下請け企業への発注で緩和しようとするためです。
景気が悪くなると、下請け企業へ不合理な減額、支払遅延などが起こりやすくなります。
しかし、パートナーシップ構築宣言の内容には登録した企業による一方的な価格決定はできないことが記載されています。
そのため、宣言した企業では自社の都合に合わせた価格変更などはできません。
従業員に良い就労環境を提供できる(雇用促進も)
取引相手がパートナーシップ構築宣言をすることで、適切なコスト負担を伴わない短納期発注や急な仕様変更もされなくなります。
従業員にも急な労働時間の変更などを強いることがなくなり、良い就労環境を提供できるようになるでしょう。
また、景気に左右されずに経営を安定させられるため、従業員の雇用も計画的に進められるようになります。
発注企業と対等な関係を築ける
パートナーシップ構築宣言をした企業は、下請け企業を大切にする企業です。
パートナーシップ構築宣言を登録した企業であれば、価格の決定や納期、知的財産などの扱いについても対等に話し合うことができ、対等な関係を築けます。
大企業の中には、立場の強さを利用して知的財産やノウハウの無償提供、型の管理費用の負担などを下請け企業に強いる企業もあるようです。
しかし、パートナーシップ構築宣言ではそういった取引上の立場を利用した関係の強要はしないことになっています。
パートナーシップ構築宣言の登録方法
パートナーシップ構築宣言に参加する企業は、手順に沿って公式ポータルサイトで登録する必要があります。
特に難しい手続きではないため、専門家に外注する必要はありません。自社で登録する際には、以下の手順で手続きしてみてください。
1. ひな形をダウンロード
まずは、「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトから宣言書のひな形をダウンロードします。
記載見本や記載要領などもあるため、すべての書類をダウンロードして、見本などを参考にしながら作成してください。
ひな形は随時更新されるため、作成したまま長く提出しないと最新データでなくなっていることもあります。
2.内容を吟味して宣言書を作成
パートナーシップ構築宣言の宣言書は、ダウンロードしたひな形を活用することで簡単に作成でき、必須項目などを漏らさずに盛り込めます。
詳しい記載の仕方は記載要領に書かれているため、そちらも参考にしてください。
パートナーシップ構築宣言の内容には、必須の項目と任意の項目、定型部分と個別記載部分があります。
任意項目や個別記載部分については、自社の事業や取引内容に当てはまる項目を選んで作成します。
3.宣言書をアップロード
作成した宣言書は、PDFでアップロードします。
アップロードは、ひな形などをダウンロードしたポータルサイトの同ページの「登録」ボタンから可能です。
企業名や法人番号などの企業情報を入力し、ページ内の指示に従ってファイルをアップロードしてください。
4.宣言が履行
パートナーシップ構築宣言の宣言書を提出した後は、企業が宣言の内容に基づいて行動するのみです。
宣言企業はポータルサイトに掲載され、ロゴマークを使えるようになります。
ただし、宣言後も宣言が履行されていないと認められた場合には、振興基準に基づいて主務大臣から指導や助言が行われ、宣言の掲載が取りやめになることがあります。
宣言して終わりではなく、その後も誠実に下請け企業との関係作りに励むことが大切です。
パートナーシップ構築宣言登録の今後の動き
パートナーシップ構築宣言の取り組みは、まだ始まったばかりです。今後も正しく取り組みが実施されるように、様々な対策が期待されます。
登録による補助金など優遇の充実が期待
現時点では、補助金などの優遇措置は限られた一部のものだけですが、今後、パートナーシップ構築宣言の取り組みが成熟していく中で、さらに優遇措置の内容も充実していく可能性があります。
この取り組みはまだ始まったばかりなので、今後も企業の利用しやすさやメリットの充実は期待できます。
Gメンも増員される予定
パートナーシップ構築宣言は、登録して終わりの取り組みではありません。むしろ、登録してからのほうが、適正な取り組みがきちんと行われているか見られます。
現時点でもチェックは行われていますが、今後はさらに、下請け取引の適正化のために、Gメンの増員が行われる予定です。
2021年12月6日に召集された臨時国会でも、所信表明演説で岸田総理大臣が「下請けGメン倍増による下請け取引の適正化」を表明していました。
これによって、下請け取引の監督体制は強化され、宣言企業の適正な取引は進んでいくと考えられます。
不当な買いたたきがないか調査も実施予定
今後は、パートナーシップ構築宣言に反する不当な買いたたきに関する調査も行われる予定です。
下請け企業に対する発注企業の買いたたきがあった場合、悪質なものについては企業名の公表もあると言われています。
まとめ
パートナーシップ構築宣言は、大企業に多い発注企業と中小に多い下請け企業の関係を適正にするための宣言です。
企業間のクリーンな取引を進め、中小企業の経営やそこに勤める労働者の待遇改善も期待でき、SDGsの目標の実行にもつながります。
補助金の優遇措置など、メリットは発注側にも受注側にも多いものです。
今後は宣言企業も増えていくことが予想されます。世間の注目度も高いため、時代に乗り遅れないように登録を検討してみましょう。
(編集:創業手帳編集部)