障がい者が活き活きと働ける場所をつくる。社会起業家・神一世子氏が語る「人を活かす意思の伝え方」(インタビュー後編)

飲食開業手帳

人それぞれに合った伝え方が仕事のカギとなる

(2017/08/04更新)

ふとしたきっかけから障がい者スポーツの世界に入り、日本初の障がい者就労支援事業所スポーツカフェ&バーE’s CAFEをオープンさせた神一世子さん。後編では障がい者雇用を通して見えてきた人づくりのポイントなどについてお話を伺いました。

神一世子(じん いよこ)
一般社団法人パラSCエスペランサ代表理事、NPO法人CPサッカー&ライフ エスペランサ理事
CPサッカーなど障がい者スポーツに取り組み、E’s CAFEのほか障がい児通所施設「エスペランサNEXT」などを運営している。

スポーツ×飲食×就労支援

ーこのお店をスポーツバーという形にした狙いについて伺えますか?

:障がいのある人の職場というと結構限られていますよね。普通に事務とかで会社に勤める人もいますけれど、それ以外はお掃除の仕事とか、軽作業だとか、人に見られない黙々とやる作業っていうのが結構多かったりするので、「何か人前に出て明るく元気に働くような場所にしたい」という考えがありました。

それと、ずっとサッカーをやってきたので、よく海外のサッカー場にあるクラブハウスみたいなサッカーの映像が流れていて、そこにみんなが集まってワイワイするような場所を作りたかったというのがあって、スポーツバーという形態にしました。

ーお店を開くときに何が一番大変でしたか?

:やっぱりお金の部分が一番大きかったですね。日本財団の「はたらくNIPPON!計画」の助成プロジェクトに選んでいただいて、あとは融資で立ち上げました。

あと飲食業は私自身もやったことがなかったので、プロの飲食のコンサルに入っていただきました。自分たちがスポーツの世界で思い描くのと、コンサルの方が指摘することのギャップもあって、方向性の調整するのが大変でしたが、良いアドバイスを頂けたと思います。

あとは人ですね。必要とする人材がなかなか集まらなかったですね。

ー確かに、人材はなかなか集めづらいですよね。

今はもう人の問題が一番大変ですね。障がい者就労支援の事業所なので、置く人数には決まりがあります。今は社員が4人で、スタッフとして障がいのある人たちが何人か、というかたちで運営しています。

仕事は「意思の伝え方」がすべて

ー最近は障がい者雇用で上場企業も出ていますし、注目を浴びている事業ですね。

東京オリンピック・パラリンピックがくることで、雇用の仕方が変わってきているのはすごく感じます。今までのような本当に一部分の作業を担ってもらおうというところから、企業の戦力として迎え入れるような、今までとは違う働き方がどんどん出てきたなと思います。

今、飲食業をやってみて思うのは、「障がいのある人たちでもできる」ということです。
もちろん難しいし、判断しなくてはいけない作業もありますけど、仕事の中に単純な作業もいっぱいあるので戦力になります。忙しい時期、時間帯はほんとに人が必要ですので。

ー障がい者を雇用して使う中での苦労はありますか?

:そんなにはないですけど、あえて言うのであれば「伝え方」ですね。
この人には単純に言い方の問題のこともあれば、こっちの人には言い方ではなくて見せてあげる必要がある、といった「人それぞれに合った伝え方」が重要だと思います。

障がい者が活き活きと暮らせる場所を作っていきたい

ー障がい者を採用するときのポイント、育成で気をつけていることを教えていただけますか?

:オープンしたばかりなので、あまり言えることはないですけど、今来てもらっている人を採用する時にポイントにしたのは元気の良さ、積極性といった部分です。

もともといたスタッフは、学生の時にインターンで来ていた人や一緒にボランティア活動をしていた仲間などで、全く知らないところからは採用していませんでした。でもなかなか集まらないですね。スポーツと福祉を両方やっているので「スポーツはやりたいけど福祉には興味ない」とか「福祉には興味あるけどスポーツは苦手です」みたいなパターンが多くて難しいです。

ーこれからは面接で初めて会うという人も増えていきそうですね。

:そうですね。障がいがある人に関しては1回業務をやってもらうので、その時の反応とか、業務ができるかどうか、続けられそうかというところを見たうえで採用するようにしています。

障がいがある人の採用で一般的な採用と違うポイントがあるとすれば、ここで働くことによって、この先もっと生活が伸びそうかどうか、その人にとっていい変化になりそうかということも考えている点かもしれません。

他の所でも十分能力が発揮できる人であれば、逆に言うとうちじゃなくてもいいかな、ということもあるので「うちに来たことですごい変化がありそうだな」というところは結構採用のポイントにしているかもしれません。

ー今後の夢はありますか?

:障がいがある人たちは、どう生活していけばいいのか、周りの人も本人も不安があるので、子供のころから大人までの事業が必要だと思います。

そのために、今後は例えばシェアハウスといった、障がいがある人たちが安心して活き活きと暮らせる場所を作っていきたいなというのがあります。

ー最後にこれから創業する方にひとことメッセージをお願いします。

:私自身の人生も今の事業も、いろんな人に助けてもらって今があります。
その経験から言うと、一人でできることは限られていて、やっぱりいろんな方の知恵や力を借りるのが重要だと思います。
自分でこうやりたいと思ったらやる気につながりますが、一人で抱え込みすぎてもいけません。
いろんな人に関わってもらって、助けていただくことが次につながると思います。

起業家人生はふと見た新聞記事から始まった
スポーツバーで誰もが働ける場所を作る!障がい者雇用を切り開く社会起業家・神一世子氏インタビュー(前編)

(取材協力:一般社団法人パラSCエスペランサ代表理事/神一世子
(編集:創業手帳編集部)

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