スポーツバーで誰もが働ける場所を作る!障がい者雇用を切り開く社会起業家・神一世子氏インタビュー(前編)

飲食開業手帳

起業家人生はふと見た新聞記事から始まった

(2017/08/01更新)

日本初の障がい者就労支援事業所として運営するスポーツカフェ&バーE’s CAFEをオープンさせた、一般社団法人パラSCエスペランサ代表理事 神一世子さんにインタビューを敢行!
前後編に分けてお送りする本インタビュー、前編では、オープンしたばかりの新事業に賭ける思いと、障がい者雇用に取り組む中で見えてきた、起業や人づくりのポイントなどについてお伺いしました。

神一世子(じん いよこ)
一般社団法人パラSCエスペランサ代表理事、NPO法人CPサッカー&ライフ エスペランサ理事
CPサッカーなど障がい者スポーツに取り組み、E’s CAFEのほか障がい児通所施設「エスペランサNEXT」などを運営している。

一般市場で勝負できるお店を目指す

ー初めに経営されているスポーツカフェ&バー「E’s CAFE」について教えてください。

:「E’s CAFE」は、フットサルコートに隣接する、障がい者就労で運営するスポーツカフェ&バーです。
フットサルコートを運営する会社には、これまで大会開催に協力してもらったりしてつながりがあり、コートがあるフロアの一角をお借りして、オープンしました。

ーお店は軌道に乗ってきましたか?

:まだまだこれからですね。工事が思うように進まず、オープン日が直前まで確定できなかったこともあって、告知や宣伝があまりできないままオープン日をむかえました。オープンから2か月経って、ようやく近隣の人にちょっと知られてきたかなというところですね。

ーお店のつくりとしては大画面でサッカー中継などが見られる、いわゆるスポーツバーですね。メニューはどんな感じですか?

:メニューとしては、もちろん普通のスポーツバー的なものもありますけど、フットサルコートに併設しているし、働く人も私たちもスポーツが好きな人が多いので、ヘルシーでアスリート向けというのをテーマに、メニューを考えています。

ー内装にも結構お金が掛かっていますね。

:かかりました。もともとは自分たちの身の丈に合ったというか、小さいところから始めようと思っていたんですが、立ち上げをサポートしていただいた日本財団”はたらくNIPPON!計画”は「障がい者の施設だからといっても、一般の市場で勝負できるようなコンセプトでしっかりしたものを作りましょう」っていうのが根底にあるので、かなりしっかりお金をかけてつくりました。

ーフットサルしたあとのビールとか良さそうです。オフィスが閉まっていても屋上は使えますよね。

:使えます。ですが、ここは障がい者就労支援の事業所なので、今は届出で22時までしかできないんです。営業時間を伸ばしたいと思っていますけれど、自由に変更はできません。

オープン前は、東京都側も許可を出すのにかなり慎重でした。夜の営業やお酒を出す飲食店ということの前例があまりなかったからです。「営業時間、障がい者が働くには夜遅すぎませんか?」とか、「帰りが遅くなる時の対応はどうするんですか?」とか。そういうやりとりがあったうえで22時の閉店時間となりました。それもあって夜が苦戦しています。

ー確かに、お酒を出す店で22時閉店は早めですね。

:はい。本当は23時まで営業したいところです。フットサルコートを利用している人たちは19時~21時とか20時~22時とかで利用しているので、そうすると終わって「1杯飲もうかな?」と思うと閉まっていますから、そこはやっぱり開けておきたいなということはありますね。

東京オリンピック・パラリンピックに向けて障がい者スポーツの発信もしていきたいと思っているので、障がい者のスポーツの話をしたりとか、そういう団体に使っていただいたりとか。そういうところでも広めていきたいなと思っています。

新聞記事から始まった起業家人生

ー神さんがこのお店をオープンするに至ったきっかけをお伺いできますか?

:もともと、障がい者のサッカーの中でも脳性まひの人がやるCPサッカーというのをサポートする活動をしてきました。

障がいのある人のスポーツというと、週末楽しむ場所はボランティアやNPOの活動で作られてきましたが、日常的に楽しむ場所というのはなかなか無いんですね。健常者のサッカースクールはいっぱいあっても障がい者は入れないとか。働く場所もやっぱり限られたところがあるので、日頃からスポーツをする場所と働く場所を作りたいという思いがありました。

それで、まずはスポーツをする場所として放課後の教室を川崎に作りました。そのときに、日本財団の「はたらくNIPPON!計画」に出会って、今までやってきたサッカーとか障がい者スポーツを柱にした飲食店が面白いのではないかとアイディアをいただいたのがきっかけです。

ー障がい者関連の仕事をやろうと思ったのはなぜですか?

:以前は普通の会社員で、障がい者との関わりはまったくありませんでした。サッカーも自分がプレーヤーだったことは無いです。たまたま自分がやっていたボランティアの関係ですごくサッカーに興味を持ったときに、新聞で「障がい者サッカーのボランティア募集」という記事を見かけて、始めたのがきっかけでした。

そこでサッカーのできる場所や働く場所など、いろんな課題があるんだ、と思うなかで、それを自分が解決していきたいという思いが日に日に強くなっていきました。なので、特にずっと福祉をやってきたわけではないですね。

24時間365日、仕事のことだけを考えている時期が来る

ー会社員のころはどのような生活をされていたんですか?

:最後は障がい者の特例子会社に勤めましたが、それはこの活動をボランティアで始めてから興味をもって転職して入りました。その前は金融関係の会社にいて、一般事務をしていました。

当時はもう「9時~5時で働いてアフター5が命!」みたいな。そういう生活から今は24時間仕事なんだか趣味なんだかわからないっていう生活に変わりましたね。

ーお客様からお金をもらうから趣味とは言えないものの、自分の思い描いたものを作れるという意味ではサラリーマンと違う良さもありますね。

:そうですね、区切りはない感じです。人によってはプライベートと切り分ける方がいると思いますけど、私はもう24時間365日、だいたい関連していることで動いています。

ー起業家とはいえプライベートは分けて頭を切り替えたほうがいいのか、四六時中考えたほうがいいのか、どちらがいいでしょうか?

:若いスタッフにも言っていますけれど、「今日は休日です!」とか、「仕事終わりました!」っていうのではなくて、何かを作り出す時には絶対どこかで四六時中考えているような時期がないと、形にできないのではないかと思います。軌道に乗ってきたらまた変わると思いますけど、最初のほうは必ずそういう時期が絶対あるよ、という話はいつもしていますね。

ー男性でも女性でも経営の厳しさは変わらないと思いますが、女性が起業することに何か特有の難しさみたいなものは感じますか?

:好きなことをのらりくらりとやっているので、あまり感じないですね。強いて言うなら、まわりに男の人が多いのでオジサン化しているような気がするところでしょうか(笑)。

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(取材協力:一般社団法人パラSCエスペランサ代表理事/神一世子
(編集:創業手帳編集部)

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