コーナー 門馬 貴裕|パラレルワーカーを効果的に活用するポイントとは?

創業手帳

「人事が足りないから起業した」パラレルワーカーによる理想的な人事と経営の関係性

コロナ禍でリモートワークが普及したことと相俟って、副業・兼業をする人材(パラレルワーカー)も急増しました。しかしながら、パラレルワーカーを仲間に迎え入れて経営にプラスの効果をもたらすことについては、「難しい」と感じられている事業者の方も多いのではないでしょうか。

人事・採用領域でパラレルワーカーのシェアリングサービスを提供している株式会社コーナーの門馬貴裕氏は、パーソルキャリア(旧インテリジェンス)出身のいわば「人事のプロ」。「日本企業には、人事が足りない」という思いで起業された同氏は、「パラレルワーカーの力をいかに活用するかが、これからの企業の成長の鍵を握る」と述べます。

事業者側がパラレルワーカーをいかに活用すべきか、実際に人事領域でパラレルワーカーを活用することでどのような成果が出せるのかなどについて、創業手帳の大久保が聞きました。

門馬 貴裕(もんま たかひろ)株式会社コーナー代表取締役
新卒で株式会社インテリジェンスに入社。人材紹介部門の法人向けコンサルタントや、ファッション業界向け新規事業責任者として企業の人事戦略、採用支援に一貫して関わりトップコンサルタントとして活躍。また、その後は人材紹介部門にてマネージャーに従事、兼務にて100名超の新入社員研修等も行う。2016年に同社を退職し、株式会社コーナーを創業。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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「人事が足りない」から起業した

大久保:本日は人事・採用領域の人材シェアリングサービスを運営する株式会社コーナーの門馬さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。

門馬:よろしくお願いします。

大久保:門馬さんは新卒でインテリジェンスに入社されたんですよね。

門馬:そうですね。サイバーエージェントの藤田さんが最年少マザーズ上場を果たしたのが自分が高校生の頃で、大学生になると六本木のITベンチャーが何かと話題になっていたりで、起業を意識する学生が増えている時期だったと思います。その時代の波に影響されて、私も「まだ世の中にないけれども、『あったら良いな』と思えるサービスを生み出せるようになりたい」という思いで、様々なビジネスモデルに触れる機会に恵まれるであろう、人材サービスを生業としている、インテリジェンスへの入社を決めました。

私が内定を受諾したときはインテリジェンスの社員規模がたしか数百名程度だったと思うのですが、入社前に学生援護会と統合していたので入社タイミングでは社員数の桁が変わっていたと思います。すごいスピードで成長している時期でしたね。

大久保:なるほど。創業メンバーもいらしたんですか。

門馬:そうですね。入社時の代表は現オープンハウス取締役副社長の鎌田和彦さんだったり、現パーソルキャリア代表の峯尾さんや、パーソルホールディングス副社長の高橋さんなどは比較的近い距離で仕事をさせてもらっていました。

大久保:インテリジェンスではどのようなお仕事をされていたんですか。

門馬:新卒で入社してからずっと法人の中途採用支援事業に関わっていました。マネジメントもやりましたし、規模は小さいものの新規事業を任せてもらったこともあります。支援先の会社の規模も、立ち上げたばかりのベンチャーから、日系大手の重厚長大産業の企業、グローバルに展開している法人の日本支社まで、さまざまでしたね。

インテリジェンスで法人向け支援を続けているうちに、シンプルに「人事が足りない」と思ったんです。

人事の仕事は入り口の採用からオンボーディング、デベロップメント、そして定着から最終的には出口としての退職までつながっていて、経営に最も影響を与えるものだと考えています。そのような重要な業務であるにもかかわらず、どの企業でも人事が不足していました。より正確に言うと、人事の「椅子」、つまりポジションが不足していると思ったんですね。

大久保:一口に「人事」と言っても、業務の幅は広いですからね。

門馬:おっしゃる通りです。

今でこそHRBP(※)みたいな考え方やポジションも定着し当たり前になってきていますが、私が新卒でインテリジェンスに入社した2006年当時は、人事業務がビジネス上に与えるインパクトや重要性について、世の中の人が少なくとも今よりはまだあまり理解していなかったように思います。

でも私が実際に仕事をしていくうちに、支援先の企業の方々が人事領域で困る場面を何度も見てきました。実際は重要であるにもかかわらず、そこまで重要視されていないために、人事の椅子が不足していた。そのために多くの企業が困るべくして困っていた、ということですね。

ここ数年スタートアップ界隈が盛り上がってきています。例えばスタートアップですと、「人事がほしいけど、まだ採用できる資金的余裕がない。1人月まで確保すべきじゃない」というステージにある企業であっても、人事がいたほうがよりビジネスをスピーディーにドライブできる、というケースが多々あります。

そんな企業に遭遇すると、そのたび「経験豊富な人事をタイミングよく、部分的にアサインできたら」と思っていました。人事が経営に与えるインパクトの大きさを知っていたからですね。

世の中にそんなサービスがあれば使っていたのでしょうけれど、見つからなかったので、「じゃあ、自分でやってみようか」ということで、人事のシェアリングサービスを提供する事業を始めました。

(※)HRBPとは…HRビジネスパートナーの略称。経営者や事業責任者のパートナーとして、人事戦略を立案したり、企業経営に資するような採用・組織構築を行う人事のこと。HRの側面からビジネスを成長させられる人事。いわゆる「戦略人事」に求められる役割のうちの一つでもある。

コーナーが手がける事業の概要

大久保:現在展開されている事業の概要を教えてください。

門馬:端的に言うと、「人事領域のパラレルワーカーの力を借りて法人のお客様の人事を支援するサービス」です。プラットフォーマー的な役回りですね。

大久保:人事領域のパラレルワーカーはどのように集めているのでしょうか。

門馬:Webサイトから登録してもらっています。法人のお客様もWebサイトからお問い合わせいただいていますね。
人事領域に特化しているゆえのメリットもあります。例えば、パラレルワーカーとして登録いただいている方が事業会社の人事責任者だったりすると、その方が今度は法人側のお客様となり、仕事を発注してくれるようなことも多々あります。その逆も然りで、最初は「人事に困っていて…」と相談に来られたお客様が、今度はパラレルワーカーとして登録されたり、というケースもあります。

大久保:それは面白いエピソードですね。どれくらいの規模感のお客様が多いですか。

門馬:バラバラですね。大手企業のほうがその社員数に比例して抱えている課題は多いかもしれません。その分、スコープがピンポイントになることも多いですね。狭い領域の専門性を持っている人事のプロ人材を求められることも多いです。「この課題に詳しい人いますか」という具合にお問い合わせをいただきます。

逆にスタートアップの場合は「人事領域を丸っとお任せしたい」というご要望をいただくケースが比較的多いのが特徴かもしれません。

大久保:サービスの内容はある程度パッケージ化されているのでしょうか。

門馬:いえ、すべてお客様に合わせてフルカスタマイズする形でサービス提供しています。お客様にヒアリングした上で業務要件を定義して、それに合わせたサービスを展開しています。

コーナーの強み

大久保:採用するとなると獲得できない人材も、パラレルワーカーとしてなら獲得できる、ということもありそうですね。

門馬:おっしゃる通りです。例えば、上場が見えてきているお客様から、「メガベンチャーで企業にMVV(※)を浸透させてきた経験があるような人事の人がほしい」と相談されることがあります。そのような経験をした人材を採用するとなると難しいですけど、コーナーにはそんな経験を積んできたパラレルワーカーが実際にいるんですよね。

大久保:なるほど。そういった良質な人事人材を集めるにはどうしたら良いのでしょうか。

門馬:我々の場合は、「先行者利益」という面が大いにありますね。コーナーが人事領域でパラレルワーカーのシェアリングを始めたのがおそらく最初だったので。「どこかがコーナーさんみたいな事業を始めると思ってたけど、意外とこれまではなかったんだよね」と言われることも多いです。

大久保:人事領域に特化しているメリットはほかにもありますか。領域を広げすぎて失敗する起業家の方もいるのであえて聞くのですが。

門馬:コロナ禍でリモートワークが当たり前になった結果、同時にパラレルワークも爆発的に普及しました。パラレルワーカーをうまく活用して企業が成果を出すためのセンターピンが、「人事」の領域なんです。組織の作り方や雇用のあり方、働き方などすべてが変わっていくなかで、重要になるのが人事。社会的に追い風が吹いているという意味では、人事領域に特化していてよかったですね。

経営者や事業責任者の本音として、「チーム構築についてはプロの人事に任せて、自分はビジネス開発に集中したい」と思われている方も多いです。

(※)MVVとは…ミッション、ビジョン、バリューの略称。

「適材適所」が業務委託活用のメリット

大久保:パラレルワーカー、つまり業務委託の方に任せると、「リスクは低いけれども、ハイリターン」みたいなことができますよね。

門馬:おっしゃる通りですね。私達のサービスモデルでは業務委託の方にお支払いする費用は固定費じゃありませんので、投資判断もしやすく、そのためスタートするかどうかの判断も素早くできます。固定費だと判断がどうしても遅くなってしまいますけれど。

大久保:例えばスタートアップが人事の方を社員として採用してしまうと、ステージが変わってきたときに、その人事の方のスキルと合わず、ついていけなくなる、ということはありませんか。

門馬:あると思います。先ほど申し上げましたように、人事の業務領域もケイパビリティも多岐にわたりますから。

我々がとある企業から依頼されて、某大手企業のとある部門を1年でカンパニー化し、その後の1年で株式会社化する、というプロジェクトを実施したことがあります。その際に組成したチームも、時期によって人を入れ替えて、必要なタイミングに必要な人事人材をアサインしていました。合計10人くらいのチームだったのですが、時期によっては3人月くらいに抑えてアサインしたりして。それぞれの人材で、ハイパフォーマンスを発揮できる領域は違いますからね。

大久保:「スタートアップと人事」ということでいうと、経営者が気づいていない点で、でも「知っておいたほうがいい」ということはありますか。

門馬スタートアップ経営者の特徴として、全員とは言いませんが、労務関連や安全衛生など、いわば「守り」の業務や環境整備については分かってはいるけど後回しにしがちだったりします。でも、それらの業務も当然ながら重要なので、人事が入ってその辺りの業務を整理しておくと、企業としても安定して成長していけますよね。

大久保:なるほど。スタートアップでは、いわば「守り」の領域である労務などの経験がある人材はなかなかいなさそうです。

門馬:はい。ちょっと論点がズレるかもしれませんが、VC(ベンチャーキャピタル)とも仲良くさせていただいていまして、「スタートアップにはプロの人事が必要だ」という話をよくされています。「プロの人事をスタートアップが採用するのは難しい」ということで、弊社に相談がきたりもしますね。

パラレルワーカー活用のポイント

大久保:「パラレルワーカーを活用しよう」と思っても、組織側にナレッジやノウハウがないと難しいという側面はありませんか。

門馬:おっしゃる通りです。パラレルワーカーを採用する企業の側に、パラレルワーカー活用の際の業務の進め方などのノウハウがないと、せっかくスキルも経験もあるハイレベルなパラレルワーカーをうまく活用できないことも少なくないと考えています。

弊社では受け入れ側の企業様に「どのようにパラレルワーカーを活用すべきなのか」整理してもらうために、弊社社員がパラレルワーカーの採用後の伴走支援も行っています。例えば、30ヶ月以上契約が続いているお客様の定例会議に、弊社社員がずっと参加し続けているなんてこともあります。「パラレルワーカーをうまく活用してもらうための整理ができる」という点が、我々ならではの付加価値であり、最大の強みでもあると思います。

大久保:社員と業務委託の方にうまく業務を切り分けるのは、なかなか難しいところですよね。

門馬:はい。逆に業務委託の方にほとんどすべて任せたほうがうまくいくケースもあります。

手前味噌で恐縮なのですが、私自身が人事の業務委託として働いていたときの例をご紹介します。その会社はメガベンチャーだったのですが、元々中途採用のスコープで参画していた業務委託の私に、最終的には部長決裁権までわたしていただきました。結果的に、1年半で250人ほど採用する結果を残せたんですが、それも社員と業務委託の垣根を壊してくれたその「任せ方」ゆえのものだと思うんです。

その体験から、「社員だから」、「業務委託だから」という考えをなくして、あくまでフラットな頭で考えたほうが事業にポジティブなインパクトを残せる、ということを学ばせていただきました。ある意味では、この事業の原体験みたいなものでしたね。

大久保:ある程度の情報をわたさないと業務委託の方も動きづらい、ということはありますよね。

門馬:そうですね。例えばわかりやすいところで言うと、社内のスケジュールを開示しておかないと業務委託の方が動けずに業務が遅れる、みたいなことが起きますよね。その辺りの線引きは非常に難しいところですが、弊社の伴走支援で整理させていただくことは可能です。

組織をクリエイティブに作りたい

大久保:クラウドソーシング会社が競合になると思いますが、それらの会社との違いは何ですか。

門馬:クラウドソーシングサイトには、あくまで利点としての単発「タスク業務」や「成果物の納品」が多い傾向があると思いますが、我々が依頼を受けるのは長い時間軸で通常社員と変わらないような業務が多いことがまず違いますね。経営にインパクトを与える上流工程のナレッジワークが多いというか、多くしたいと常々考えています。

決してタスク業務を提供することを否定するわけではなく、かつタスクを代行するような業務の取り扱いをしないわけではないものの、競合他社による代替が難しくなるような、「本質的」で難しいプロジェクトが多いプラットフォームであることを常に目指したいと思っています。

大久保:いわゆる「代行会社」ではないということですよね。

門馬:はい。タスクを代行するというよりも、「本質的」な課題を一緒に解決できる人事領域のプロフェッショナルが集うプラットフォームにしていきたいです。

「人事」というのもあくまで「How」の話でしかないと思っていて、本当は「もっと組織をクリエイティブに作れる世の中を作りたい」と考えているんです。そうすれば、日本企業、ひいては日本全体の生産性は、もっと上がっていくのではないでしょうか。

大久保:本日は人事のプロフェッショナル人材のシェアリングプラットフォームを提供するコーナーの門馬さんから専門性の高いお話を聞けました。門馬さん、ありがとうございました。

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(取材協力: 株式会社コーナー代表取締役 門馬 貴裕
(編集: 創業手帳編集部)

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