ITの時代だからこそ徹底的にリアルで繋がれ。第一勧信 新田信行理事長が語る「成功するために必要な3つの資質」(インタビュー後編)

創業手帳

繋がることができれば、自ずと個性ができてくる

(2017/10/24更新)

前編では、未来志向の金融を目指したら金融界のブルーオーシャンを進んでいた、と語る第一勧業信用組合 新田信行理事長。後編では、理事長就任からわずか4年で業績をV字回復に導いた経営のポイントや、金融機関の視点からの創業者へのアドバイスを伺います。

本文を読む

新田 信行(にった のぶゆき) プロフィール
1956年千葉県出身、一橋大学法学部卒。1981年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。みずほ銀行常務執行役員を経て、2013年第一勧業信用組合理事長に就任。2016年黄綬褒章受章。

白紙の状態から始まった大躍進

ー理事長に就任されてまずは支店を回って職員やお客様とお話しされたそうですけれど、その中でみずほ銀行時代から温めていたプランと現場の話が組み合わさっていった感じでしょうか?

新田:実は、「変な先入観を持ってはいけない」と思って、白紙状態から始めました。
まず始めたのがインプット。僕にとってのインプットとは、自分の目で現場を見て感じることです。

特に「人」については意識しました。お客様でも部下でも、僕は人と対面したときの感じた「肌感覚」を含めて、自分の五感すべてを使って現状を把握するように努めていました。

すると、職員の閉塞感や悩み、あるいはお客様の不満がわかってきました。

職員は「担保がないと融資しちゃいけないんですか?」あるいは「年金お願いします、預金お願いしますばかり言っていて、こんなのでお客様の役に立てるんですか?」と言っていましたし、お客様のところに行けば「セールスばっかりでうるさい。それよりうちの会社のこと知っているのか?」あるいは町内会に行けば「町の祭りにも出てこない」という意見をいただきました。それらを一つずつ地道に向き合って、解決していったのが最初のステップでした。

正直言うと、最初から「このようにやろう」と思って第一勧信に来たわけではありませんでした。とにかく、現場を回って、今何が起きているのか?を追求したら、欠けている部分や、やらなきゃいけない部分がどんどん見えてきた、と言うことですね。

インターネットの時代だからこそ、リアルの繋がりが必要

新田:そこからは、ひたすら現場を回ってお客様と直に会い、他の信用組合との連携を強めていきました。

第一勧信は組合員4万人のコミュニティを持っています。次に他の信用組合と組むとそこもコミュニティを持っているわけです。今は20の信用組合と組んでいて、組合員数は50万人を超えています。昔は自転車でチラシを配っていましたが、今ならSNSで、その50万人に情報を一斉送信できます。しかもこの50万人はリアルでも繋がっているので、全員の顔が見えます。

僕はこの4年間人対人で一人ひとりと繋がってきました。そうすると友達の友達が友達になります。この人と人との連鎖が信用供与の源泉であって、コミュニティバンクってそもそもそういうものだったんじゃないかと思っています。

ーインターネットの時代だからこそリアルな価値が出ているところですね。

新田:ネットと対面のハイブリッド型コミュニティって言っていますが、対面から入ったほうがリスクは少ないんです。ネットも使いますが、リアルを徹底的におさえるっていうのが、僕らのやり方です。

僕らは博打を打つことはできません。組合員の大事なお金を預かって、よくわからない投資で失敗してしまっては、善管注意義務を果たしていません。
それよりも、起業する若者に会って、自分の目で確かめて「これはいいな」と思ったら貸し出したり、ファンドで出資する方が世の中のためになります。仮にこれで失敗したとしても、前者と違って、「彼はああいう人で、こういうところを頑張っていた」と、ちゃんと理由を説明できると思うんです。

経営者に必要な「3つの資質」

ー第一勧信の大躍進には、徹底的に現場主義を貫いてきた背景があったんですね。そのような道のりを経た理事長に伺いたいのですが、日頃の経営で大切だと考えているポイントはどんなところでしょうか?

新田:僕が考える経営者にとって必要な資質は3つあります。

1つ目は「無いものを見つける力」です。
雇用される立場の人には元々課題があります。受験勉強みたいに、問題が先にあるんです。むしろ、問題を作ったり、問題に気付く力というものが、経営者には一番必要です。

これはビジネスモデルを作るときにも、ブルーオーシャンを見つける力になります。社内のことで言えば、社内でできてないことは何なのかを見つけるのが経営者の仕事です。

2つ目は「決断力×実行力」です。僕は「失敗したらすぐに変えれば良い」と思って、決めたらすぐ行動に移します。

経営者は評論家でも学者でもありません。現場を見て、現状を把握して、決断して行動。それの連続であって、現場主義でいることがとても大切です。

3つ目は「つながる力」、いわば「人としての魅力」です。
1人ではこの複雑な時代を生きていけませんし、事業も1人じゃできません。経営者は人間対人間の信頼関係でつながる力が必要ですね。

僕は部下に「この理事長と一緒に仕事したい」と思ってもらわないと経営できないんです。お客様に対しても同じで、「第一勧信の新田と仕事しよう」、「お金を借りるなら第一勧信の新田から借りよう」と思ってもらわないといけません。

この3つは、僕自身でも意識してやっています。

連携すると、個性を様々なところで発揮できる


新田:先ほどお話しした「つながる力」ですが、これがあると様々なところで個性を発揮できます。

第一勧信では、どの取り組みも必ず誰かと組んでやっています。連携先は全部で30ぐらいありますが、誰とつながって、誰と一緒にやっていくのか、そこに付加価値が必ず生まれます。僕たちは、そういう積み重ねをしているだけであって、飛び抜けたオリジナリティとかびっくりするようなことをやっているわけでは無いんです。

ーまったく新しいものでなくても、みんながやってないからこそ価値が出るっていうことですね。

新田:僕らのサービスはお金を融資したり預かることではなくて、その会社を伸ばしたり、つなぐこと、あるいはまちづくりに貢献することです。つまり、お金を作ることではなくて、企業やサービスを通して世の中がよくなり、組合員が幸せになることが目的です。それが僕らの仕事の本質なので、もっと磨きをかけたいと思っています。

これからは自分の個性を活かす時代になる

ー最後に、起業家に向けてメッセージをいただけますか?

新田:まずは「事業は自分本位じゃなくてお客様の立場になって考える」ということですね。

「こういう技術を持っている」とか、「こういうことをやりたい」っていうのは、所詮自分本位な考えです。まず世の中から求められていることは何なのか?それに対する顧客はどういう人たちなのか?を考えるべきですね。

次に、地に足をつけて、つながっていく力を養ってほしい、ということですね。
僕らは「目利き力」と言ってお客様の立場から人や物を見る力を磨いています。やっぱり特色があって僕らが勧めたいとか買いたいと思うものは伸びますよね。

最後はやっぱり「個性を出しなさい」です。つながる中で個性は絶対出せます。魅力的な人も周りにたくさんいるので、今はものすごくチャンスがあると思います。

事業はヒト・モノ・カネっていいますけど、経営者と部下も含めて素晴らしい組織で、生み出されるモノとかサービスが素晴らしければ、カネは僕らが提供すればいいんです。

僕らは社会に対する付加価値、貢献、人の幸せになるようなサービスを提供する志のある人たちに一生懸命お金を回して、僕らのツール、人脈、ノウハウ、あらゆるものを提供していきます。

僕らより優れている金融機関はたくさんあります。ですが、一人でも多く創業する皆さんにとって「第一勧信と組んでほんとに良かった」あるいは「新田のところって、やっぱり捨てがたいよね」と思ってもらえるものを作れると良いな、と思っています。

事業を見て貸すのが本当の金融
創業支援で第一歓信が大変身&大躍進!その秘密とは?新田信行 理事長に直撃取材(インタビュー前編)

(取材協力:第一勧業信用組合理事長/新田信行)
(編集:創業手帳編集部)

この記事に関連するタグ

この記事に関連する記事

創業手帳

創業時に役立つツール特集

カテゴリーから記事を探す