企業で使えるトヨタ式・超仕事術  豊田エンジニアリング・山田社長×創業手帳

創業手帳

世界最強のモノづくり会社のノウハウを起業に活かす

(2018/01/10更新)

日本の企業の中で、依然として世界トップクラスの利益を上げ続ける「トヨタ自動車」。

日本が生んだ最強の競争力を持つ企業が生み出した改善の手法が、トヨタ生産方式(以下、トヨタ式改善)、海外では「ToyotaWay」として知られています。あらゆる企業の新人研修でもトヨタ式改善を取り入れるほど、広く浸透しています。
「トヨタ式改善」と聞くと「工場での業務でしか利用できないのでは?」と思われる方もいるかもしれません。ですが、実はトヨタ式改善は、工場だけでなく、様々な企業で応用できます。今回は、トヨタ式改善の総本山、豊田エンジニアリング株式会社 代表取締役社長の山田 敏博 氏にご協力いただき、トヨタ式改善を「今の日本のベンチャー企業が使うには?」をテーマにお話を伺いました。

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改善指導した人が、次に会ったら社長になっていた!

ー大久保:まずは、山田社長の経歴について教えていただけますか?

山田:もちろんです。私はトヨタ自動車に55歳まで勤めた後、個人で事務所を立ち上げ、海外の工場で改善指導をする仕事をしていました。

その時期に、ある改善指導の現場で豊田エンジニアリングの堀切会長と一緒に仕事をする機会がありました。その縁で豊田エンジニアリングに入り、現在に至ります。

弊社はトヨタを定年退職したOBが多い影響で、年齢が高い人が多いんです。55歳というのは若い方で、逆に良かったのかもしれません。

ー大久保:自分は新卒で入社した企業でトヨタ式改善に出会い、そこで「社内の業務改善や、営業だと代理店の研修などもできるように」と教え込まれました。
その後、IT業界に転職して、トヨタ式改善が非常に役立ちました。創業手帳でも改善報告を毎朝していますが、大元はトヨタ式改善の影響を受けており、非常に有効だと思います。

海外でも通用する優れた問題解決手法ですが、今は少し下火になっているのは残念です。自分がIT業界にいた時も、周りの人にそういう考え方はあまりなく、ムダだらけに見えました。

問題を実務的に解決する手法を学んでいると非常に役立ちますので、改善の考え方が新しい産業に応用されると良いですね。

山田:確かに、そうなると良いですね。

実は今、日本より海外のほうが、一生懸命トヨタ式改善を学んでいます。
例えば、弊社が改善のお手伝いをしているロシアの企業がありました。その時担当していた部長が、次に会った時にはその成果が評価されて、なんと社長に抜擢されていました。改善の指導をしたら、3日かかっていた業務が1時間で終わる、なんていうこともありました。

これは極端な例ですが、問題解決ができるということは色々なことに応用できますし、「問題を解決できる人が偉くなる」という事にもなります。世界中で、いろいろな仕事に使えます。

改善のコツは、「全員で改善のサイクルを回すこと」です。どんなに頭がいい人が揃っていても、改善の実務的、体系的なノウハウが無いと問題が解決できないケースが多くあります。

このような業務改善系の手法は様々なものがありますが、トヨタ式改善は現場での知見を踏まえて磨き続けています。非常に実践的だと思いますよ。

業務を分けることが改善の第一歩

ー大久保:「トヨタ式改善」と聞くと、「工場の業務でしか利用できないのでは?」と考えてしまう方が多いかもしれません。ですが、トヨタ式改善に触れてきた私から見ると、用語やニュアンスを少し変えるだけで、様々な企業に応用できると思っています。

今回の企画では、「そのトヨタ式改善を、日本のスタートアップが応用するにはどのように利用すればいいか?」をお伺いしたいと思っていました。

山田:なるほど。もちろん、トヨタ式改善の考え方は、工場以外の分野でも使えますよ。自分も起業した際にこの考え方を利用していました。

では、ベンチャー企業がどのようにトヨタ式改善を応用するかというと、まず、「仕事の種類を分ける」作業をしましょう。具体的には下記のように分けると良いでしょう。

  • 儲かる仕事とそれ以外を分ける
  • メイン業務と付帯業務を分ける

例えば、当然のことですけど、起業したらどこかでお金を稼がないといけませんよね。
お金を稼がないと生活できないのはもちろん、投資を受けるために欲しい会社の価値を上げることができません。

そのため、お金を稼ぐことを改めて考える場合は、お金になりやすい仕事とそうでない仕事を分けましょう。単純な作業ですが、お金になる仕事にリソースを集中配分することによって、効率を上げていくことができます。

仕事をしていると、ムダなことをやってしまいがちです。特に起業した時だと余裕がありませんから、尚更です。
お金になる仕事に集中する。これが第一です。

それと同時に、「7つのムダ」を排除していくことを考えていきましょう。

「7つのムダ」
  • 加工のムダ
  • 在庫のムダ
  • 造りすぎのムダ
  • 手待ちのムダ
  • 動作のムダ
  • 運搬のムダ
  • 不良・手直しのムダ

以前、あるバイクメーカーの設計部の改善指導をしたときは、オフィスの壁を全て取り払って、昨日、今日、明日やることを管理できるようにしました。徹底的にムダを排除していった結果、設計期間が半分になりました。

トヨタ式改善では、価値を生む仕事と、事務や調整などの付帯業務を分けて測定します。
起業すると、時間や業務で何をやっているかわからなくなってしまうことが多いかもしれません。そんな時は、自分がこなしている業務の時間を測定してみると良いですね。

トヨタ式forスタートアップ
  • まず分ける!測定する。
  • 壁を取り払ってしまおう。
  • 昨日、今日、明日やることを管理しよう。

山田:ちなみに、分けておきたいことがもう一つあります。それは、「基礎となる部分」と「状況に応じて変える部分」、つまり、一部をプラットフォーム化するということです。

例えば、車を製造する場合、車台は同じでも、その上に乗せる部分を変えて、違う種類の車を製造することがあります。サービス業などに関しても同じです。問い合わせ対応や書類のひな形作成など、フォーマット化できるものを探してみましょう。

トヨタ式forスタートアップ
  • 標準のプラットフォームを作ると品質が上がりコストが下がる。
  • 同じ土台で、違う商品が作れると売上を上げ、費用は少なく済むので利益が上がりやすい。
  • プラットフォーム化できるところを探そう。

食堂の経営で考えてみる


山田:理屈で考えようとすると、難しくてよくわからなくなってしまいます。ですが、「食堂」で例えてみると、わかりやすいですよ。
「食堂」は、料理を企画して、モノを作って、運んで、というので経営の縮図です。ベンチャー企業でもこの考え方が役立つでしょう。

一品料理で勝負するのも大事ですが、お客様のニーズを拾わないと売り上げは伸びません。とは言っても、料理の種類を増やしてみると、在庫が増えて、ムダができてしまう恐れがあります。そういう時には、料理によって食材を共有してみましょう。すると、そこまでムダは増えません。

※シックス・シグマに代表される品質管理方法は「品質から考えていく」のに対して、トヨタ式改善では「原価から考えていく」というところに違いがあります。
原価を割りだして、考えていくことが競争力のある商品を作ることにつながるからです。

車作りだけでなく、食堂でも同じことですね。
このムダを一つずつ取り除いていくことによって、経営がスリムになっていきます。

※シックス・シグマ:1980年代にモトローラによって開発された、品質管理のためのフレームワーク。業務プロセスを改善し、製品やサービスの品質のばらつきを抑えることを目的としている。

創造性と効率は矛盾しない

ー大久保:ムダを省いていく考え方を実行に移す場合、創造性が犠牲になると考える人が出てくることがあるかもしれません。その点については、どう思われますか?

山田:確かに、そういう考え方を持っている人もいらっしゃるかもしれませんね。
ですが、結局ムダな時間はムダでしかありませんし、その時間を無くせば、創造的な仕事に充てられます。

ムダな仕事に追われていたら、時間もお金も生まれません。そのため、効率化を図ることは創造性を高めるためにも重要なことです。

トヨタ式forスタートアップ
  • ムダを無くして、時間とお金を作り、創造的なことに回そう

「働き方改革」のためにやるべきことは?

ー大久保:今、政府が打ち出している「働き方改革」が話題になっています。短時間で仕事を終わらせようとすることは良いですが、それよりも先に作業を効率化するシステムを考えないといけないと思っています。

山田:その通りです。仕事を短時間で終わらせるには、効率化させるシステムを考えないといけません。そして、効率化を図るには、作業標準を決めることと、仕事の見積もりを作ることが有効です。

日本の事務系の仕事では、作業標準が無いところが多いです。作業標準を決めることで、「ここまでに仕事を終わらせる」といった基準ができます。すると、それを元に「それぞれの仕事をどのように終わらせるか」という見積もりもできます。あとは、この2つのムダなところを探して、時間を短縮していくのです。

トヨタ式forスタートアップ「働き方改革編」
  • 仕事の見積もりは正しいか?
  • 作業標準を決めよう
  • 作業標準を良くしていこう

ちなみに、「どの部分を改善すればいいのか」考える場合、「現物」と「現場」を基準に考えることをオススメします。色眼鏡をつけずに、今の状況をありのままで捉えることが必要だということですね。

起業家は「自分の人生を創る」気持ちで頑張って欲しい

ー大久保:では、最後に起業家に向けてメッセージをお願いします。

山田:自分はトヨタ自動車に勤めたあと、退職して起業しました。
起業したときには思ったことは、「6ヶ月をめどに、ちゃんと利益が出る体制にしなきゃいけない。早くお金とチャンスがあるところに行かなければならない」ということでした。その気持ちでずっと仕事をしてきました。

日本というのは、非常にシステム化された国だと思います。ですが、そのなかで起業家は「自分を試したい」、「自分なりの人生を送りたい」と思うわけです。起業する人には、自分の人生を自分で作るという気持ちを持って欲しいと思います。

(取材協力:豊田エンジニアリング株式会社/山田敏博
(編集:創業手帳編集部)

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