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2022年5月6日株式会社VEQTA 俵文利|ペットヘルスケアの事業開発が注目の企業
ペットヘルスケアの事業展開で注目されているのが、俵文利さんが2014年8月に創業した株式会社VEQTAです。
現在、1800万頭以上の犬・猫がペットとして家族と共に暮らしています(2020年一般社団法人 ペットフード協会調べより)。
ペットの存在は、私たちに癒し効果や安心感、生きがいなどを与えてくれます。それによって飼い主の生活や情緒が安定したり、自身の健康増進への意欲が湧いたり、更には病気発症率を低下させたりするという研究結果さえも発表されています。
逆にペットが病気になったりいなくなることで、飼い主がその喪失感から心身の健康を崩してしまうことさえある、非常に大切な存在なのです。
大切な家族の一員でもあるペットの健康寿命を伸ばすためには、人と同じように健康診断や、年齢・体の状態に合わせた食餌摂取が大事です。
現在、ペットが病院にかかる理由の多くが「皮膚炎」「下痢」の症状です。これは食物アレルギーやストレス負荷の高い生活環境も大きな要因となっています。こうした症状の改善には、人間と同じように、個体ごとの特徴を見極め、それぞれに適した食餌や生活環境を整えて、 ‶腸内環境” を健全に保つことが大変需要と言われています。
しかし多くの場合、ペット個体の現状や特徴を明確に把握しないまま、市販されているペットフードの中からペットの種類や年齢や好みに合わせて適当に見繕い与えていたり、安易に抗生物質などの薬物療法で症状を押さえたり緩和したりする方法を選んでいるケースがほとんどではないでしょうか。こうした安易な選択が大切なペットの健康や命を脅かしたり、腸内環境を破壊しているかもしれないのにです。
現在、ペットの破棄問題も大きな社会課題の一つとして問題視されています。破棄理由は様々ですが、中には『ペットが病気になり面倒が見られなくなった』『先天性疾患の為ペットとして販売が出来ない』というものも少なくはありません。つまり、人間都合で病気や先天性疾患を生み出している可能性が高いにもかかわらず、そういう状況が発生した際には自分たちの責任を放棄して、かけがえのない命を簡単に捨てるという行為に走ってしまっているのです。
こうした不幸な犬や猫を増やさず、人とペットとが良い関係性を築き、互いにQOLを高め合える為に、「検査」「啓蒙」「開発」3つのアプローチから奮闘しているある起業家に注目が集まっています。
株式会社VEQTAの俵文利さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。
・このプロダクトの特徴は何ですか?
コミュニケーション能力のない動物の体調、未病を、便や尿・涙などの排泄物を活用し、犬や猫が重篤化する前の病気になる前の状況把握であったり、腸内の状態に応じたサプリメントの提供を行っています。
特に犬は飼い主との腸内環境に相通ずるところがあり、飼い主の健康状態の鏡写しになるケースも見えてきます。
遺伝子疾患検査は、主にブリーダー様に活用いただいていますが、我々が創業当時から考えた狙いとしては単に検査だけでなく、検査で陽性としてはじかれた生体の行き所の導線つくりや、陽性を作らせない繁殖のセミナーを、国内外では稀有な繁殖・遺伝学の権威である当社獣医師がブリーダー・獣医師向けにセミナーを行っています。
・どのような方にこのサービスを使って欲しいですか?
遺伝病のない世界を作るために ブリーダーへの教育、ペットを向かい入れた飼い主に、遺伝検査のシステムを活用して欲しいです。
また、獣医系大学において遺伝病について詳しく教える先生方が国内ではいないため獣医師の方々が遺伝病についての理解が日本では十分ではありません。
そのため、遺伝病を作らせない、治すこともできる遺伝病もあることを、獣医師にも啓蒙していっています。
また、国内外と百花繚乱あるペットフードですが、IT系会社が動物医療を正確に理解せぬままネット販売することが多くなっています。
人間の食べ物も体調に応じての献立があるように、より人間に近い犬や猫が、それぞれの年齢や体調に応じたペットフードの必要性を理解して欲しいと切に願います。
同時に、飼い主自身の健康管理への重要性を、ペットヘルスケアを通じてご理解いただき、より一層ご自分の健康管理に意識を向けて頂きたいと思います。(将来はヒトとペットの検査から献立つくりまでのサービスを考えています)。
・このサービスが解決する社会課題はなんですか?
主には以下の点について課題解決へと導いていきます。
・犬、猫の健全な繁殖システムを作り上げることと、それによる犬猫の廃棄撲滅
・ブリーダーのリテラシーの向上(現在、ブリーダーの公的資格化に向けて動き始めています)
・ヒトと同じで、ペットの高齢化に対応した食の提供や医療費の抑制
・学術に裏付けされた健全なペットフードの選択による犬・猫および飼い主のQOL向上
・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?
ニッチなサービスであることに加え、経営層が55歳以上になり、資金調達に苦慮しました。
創業時よりサポートいただいているリバネス様を筆頭に、私たちの熱量を評価して下さったVCが後ろ盾となり、研究サポートを含め人員参画援助等もして頂いています。
ある時には、心無いブリーダーから検査結果改竄(かいざん)を要求されたこともあります。そうした要求に対しては毅然として対応し、データを触ることは一切しませんでした。自分たちのミッション・ビジョンに反してまで、目先の損得勘定だけで、一度でも間違った行動を取ってしまうと、社会的信用は一気に崩れ落ち、事業は衰退します。何のためにこの事業を展開しているのかを常に意識し、ある意味、取引先(お客様)を選択することも肝要です。
・今後どういう会社、サービスにしていきたいですか?
人とペットとの健康相関とりにデータを集め、高齢化をテーマにした、飼い主と高齢ペットの相関サービスを目指しています。
それをブランドとして確立し、海外でも事業拡大を目指していきます(主に販促)。
・今の課題はなんですか?
事業拡大に向けて、専門知識のある獣医師、バイオハッカーが不足していることです。
また、広告宣伝費にさらなる資金が必要です。
・読者へのメッセージをお願いします。
パナソニックという大きな組織の中で海外での工場立ち上げに始まり、新規事業のテーマ創出からBtoBの顧客開拓、開発から生産、販売のワンストップでの重責を担わせていただく貴重な経験をさせていただきました。
新規事業は、大きな組織が望む短期での成果には達せず、折角のチャンスを成熟できないまま、「大きな果実」として実ることはありませんでした。
しかし、失敗しても、ゼロからの事業創出や尖った人材たちとチームつくりを行うことは、体の中で一種麻薬化されたことで、大きな組織でルーチンの業務や管理業務では満足できず、中国駐在の任期が終わると同時に、思い切って30年間勤めたパナソニックを退職し、専門外であったのですが、ゲノムを中心としたペット医療に眼を向けたベンチャーを立ち上げました。
目的は壮大な野望でしたが、最終は臓器移植前に亡くなった息子のように、臓器待ちでなくなる小児への代替え臓器になるマイクロミニブタでの代替え臓器化です。
しかし、日本では実現性は薄いことは重々理解しており、基本技術を日本で作ると同時に、日本では、創薬の開発時の動物実験の海外流出による創薬開発遅れ、動物虐待、乱繁殖などの課題に対して社会的な意義と事業を両立できればと考えてスタートしました。
私の専門である、品質工学・分析技術を活用し、同時に意識レベルの高い獣医師を仲間に巻き込み、遺伝病の課題に始まり、ペットフードの透明性を高め、日本をペット先進国にする、日本と中国できっちりとしたペットヘルス事業を10年間で成熟させることです。
コロナの状況で、活動がこの2年制限され、事業としての収益面でずいぶんと苦労が堪えず、資金面で参画いただいています株主の方々には期待を裏切る状況が続いています。
ただ、国内でのペット生体流通での仕組みの意識改革、腸内フローラとフードとの相関等、徐々に鏡張りになり変革も進みつつあります。
今年が正念場として、国内外での活動がより加速化を行っていきます。
前を向いて踏み出すことにより、様々な事象が明らかになります、
会社名 | 株式会社VEQTA |
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代表者名 | 俵文利 |
従業員 | 8名 |
創業年 | 2014年8月1日 |
資本金 | 10600万円 |
事業内容 | ペットヘルスケア及び開発受託 |
サービス名 | ペットのDNA検査及び検査に基づいた獣医師カウンセリング |
所在地 | 〒541-0041 大阪府大阪市中央区北浜北浜宗田ビル |
代表者プロフィール | 松下電器産業株式会社入社、実装技術開発に始まり新規事業を担当。 在職中 経済産業省国家プロ参画。新規事業担当GM。 自身の子息が先天性心臓疾患でなくなったことから、遺伝疾患の研究に始まり、MMP(マイクロミニ豚)活用した代替臓器の研究を目的にパナソニックチャイナ駐在後 、14年7月パナソニック株式会社を退社。 同年8月愛媛大学発ベンチャー「VEQTA」を創設。 現在も定期にパナソニックで技術開発講師を務める。 |
カテゴリ | 有望企業 |
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関連タグ | VEQTA ペットヘルス ヘルスケア 俵文利 |
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