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2022年1月26日株式会社Onikle 立野温|AIベースの論文検索プラットフォームの事業展開で注目の企業
研究者が論文ライブラリを共有し、研究を効率化するAIベースの論文検索プラットフォームの事業展開で注目なのが、立野温さんが2019年8月に創業した株式会社Onikleです。
皆さんは普段、研究者と言われる方たちが、どのくらいの量の研究資料や論文に目を通しているかご存じでしょうか?
研究分野にもよりますが、自分の研究結果を論文発表する際に参照する1ページ当たりの引用文献数は、多い人で30~60文献という膨大な数になっています(Milojević調査より)。研究者の多くは、毎日1時間から1時間半は論文を読んでいて、中には外国語で書かれた論文を、一日に一論文を読んでいるという方もいるそうです。
現在の科学の進歩は、過去からの多くの研究者たちが日々研究開発を繰り返してきた上に築かれた賜物です。その上にさらなる研究が重ねられ、改良が加えられたり、過去に成し遂げられなかった成果を上げることが出来たり、を繰り返してきました。
歴史を経るにつれ、当然、研究結果や論文の量は増え続け、後進の研究者たちが目を通すべき資料数はますます膨大になっていきます。
しかも研究分野がどんどん細分化されていくと、今着手している自身の研究に必要な文献や資料を探し出すだけでも大変な労力がかかってしまいます。
この「検索」部分は、研究者や科学者にとっての本丸ではないにもかかわらず、毎日何時間もかけて行っている現実があります。さらに言えば、文献の中には有料の資料も含まれており、そのたびに高額なお金を支払って購読しなければならない事態も発生しています。
科学者たちの「検索」部分にかかる労力を軽減し、本来の研究に避ける時間と費用をより多く確保出来るようになれば、科学の発展も世界の進化もより一層良質なものになるのではないでしょうか?
今そんな取り組みに注目が集まっています。
株式会社Onikleの論文検索プラットフォーム事業の特徴は、世界中の研究文献の中からAIが研究者に合わせて最適な論文を抽出してくれたり、研究者同士で論文内容を閲覧・共有し合ってコメントや質問を投げかけ合ったりできる媒体、という点です。
株式会社Onikleの立野温さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。
・このプロダクトの特徴は何ですか?
特徴は3つあります。
弊社が開発した「Chronicle(クロニクル)」は、複数の論文をひとつのテーマにまとめあげた新しいメディアで、研究者はChronicleを通して自らの研究分野を広くパブリックに宣伝したり、逆にプライベートに研究チームとプロジェクトに関する知見を共有することができます。
また、Chronicleがパブリックで公開されている場合は、他の研究者が閲覧することができます。自ら論文を調べずとも、まとまった知見が得られますし、疑問があれば質問をコメントすることで、いつでも議論ができます。
最後に、AIによる論文リコメンデーションです。AIは、研究者がOnikle上で論文を閲覧したり、保存したり、ダウンロードしたというデータをもとに、最適な論文を見つけ出し、提供します。
Onikleは、最終的に研究者の「論文検索」というプロセスを取り除くことを目指しています。
・どういう方にこのサービスを使ってほしいですか?
現在のターゲットは、コンピューターサインティストで、既存のアルゴリズムの改良や新しいアルゴリズムの開発に役立つ情報や新しい手法を求めて、少なくとも週に一度はプレプリントを検索したり読んだりしている方になります。
現在世界に1000万人の研究者がおり、その成果物として年間200万本、つまり1日に数百、数千もの論文が出版されています。コンピューターサイエンスや物理など変化の早い分野では、昨日の論文が今日塗り替えられるということがよくあります。それだけ動きが早くなった科学では、1000万人の研究者に共通した問題が発生しています。それが、論文の検索です。
ただでさえ、毎日おびただしい量の論文が発行されるなか、読むべき論文を探すには、現状は複数のツールを駆使して、自力でキーワードを入れ替えながら、読むに値する論文に出会うまで、数百。数千というタイトルをひたすら目で確認する必要があります。
我々は、研究者が論文検索で必要な全ての機能を統合し、一つのサービスとして提供します。また、ChronicleやリコメンドAIをはじめとして、アナログなキーワード検索をせずとも、自分に最適な論文を探せるような機能を提供しています。
・このサービスの解決する社会課題はなんですか?
科学は数百年間、学術論文誌とともに発展を遂げてきました。かつては、最新かつ信頼性のある研究成果を公表するメディアとして活躍してきた学術論文誌ですが、現代では、インターネットの台頭とともに最新の情報はプレプリントとして即日共有され、信頼性も、査読がそもそも信頼に値する評価方法として適切か、という批判の声が拡大し、むしろ年々値上げされる高額な購読料に注目が集まっています。
我々は、インターネットの台頭が学術論文誌と科学者たちとの密接な関係を壊すとは思っていません。むしろ、インターネットをうまく利用することで、広く世界中からリアルタイムで研究成果を集め、研究を効率化し、成果までを最短距離にしていくことができると考えています。そして、成果は学術論文誌によって権威づけされ、次世代へのアーカイブとして残されていきます。
これからの科学は、フローとしての民主的なインターネット、ストックとしての中央集権的な学術論文誌という2つのプロセスで発展していきます。
我々は、前者のインターネット上でフローを速く、かつ正確にするべく、論文をひとつのテーマにまとめ上げた新しいメディア「Chronicle(クロニクル)」を開発し、コミュニティプラットフォームとして研究者間の科学コミュニケーションを効率化します。
Onikleが普及する社会では、所属機関の予算や、個人資産に関係なく、インタネットへのアクセスさえあれば、世界中の誰もが最新の科学に触れることができますし、第一線の研究者といつでも議論をすることができます。
我々は、人類の知をドライブする世界的なプラットフォームをつくります。
・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?
創業時、メンバーは大学2、3年だったため、オンラインで経営や資金調達についての情報は調べながらなんとかできていたものの、ビジネス経験が乏しかったことは、さまざまな意思決定に時間をかけてしまうという点で非常に大変でした。
しかし、逆を返せば、適切なタイミングで適切な人に相談をしたり、情報提供をお願いすることで、解決できる問題も多かったです。
そんな経緯もあり、先輩起業家や投資家の方々、自治体の方、大学の産学連携本部、JETROなど本当にさまざまな方々にサポートをいただきながらここまできました。
我々も、グローバルを初期から目指す日本の起業家や、日本ベースで起業する外国人起業家、そして日本以外でもスタートアップマイナー国でグローバルでやっていきたいという起業家たちの一員として、これから同じ志をもった起業家にはできる限りのサポートをしたいと思っています。
・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?
目線は高く、ユニコーンを最低条件として、一兆円、十兆円規模の企業を目指していきます。そのためには、科学史を正しく理解し、この市場の先人と競合するのではなく、協業していく必要があります。つまり、サービスの開発だけでなく、対話を通した協調的な市場形成が不可欠になります。具体的には、現代科学に即したかたちで科学コミュニケーションを推進する組織を組成することなどが含まれます。
また、今のOnikleはまだまだ知名度の低いサービスですが、数年以内にはグローバルで最も利用される研究者コミュニティプラットフォームとして、マーケットリーダーとなる未来を目指しています。そのころにはノーベル賞受賞者や、各国のトップ大学教授陣が実際にアクティブに利用するプラットフォームになっていることでしょう。
我々の捉える社会課題や、ソリューションにご共感いただける方は、ぜひ一緒に大きな夢を実現しましょう。
・今の課題はなんですか?
製品の課題としては、顧客へのメッセージの最適化があります。
本サービスは、業界内でも新しい着眼点で開発された製品ですので、初期のターゲットユーザーには、我々の製品を無理なく理解し、ニーズに気づいていただく必要があります。
それを実現するためには、ターゲットが普段の生活で実際に使用している単語に合わせたり、周辺サービスの固有名詞を意図的に入れ込むことが必要になります。これらはつまるところ、顧客理解を深めるということに尽きるかと思います。従って、ターゲットとの対話が現状の重要課題であります。
また、今後サービスが進化するのに合わせて、顧客理解のプロセスは都度必要になってきますので、顧客との対話様式自体を改善していくことも重要です。
会社の戦略上は、海外展開が課題になっています。
日本人創業者かつ日本ベースで、グローバルなサービスを開発し、世界と戦っていくことは簡単ではありません。我々の試みは常に市場の先人に監視されており、ひとたびビジネスモデルが確立されてしまえば、より大きな資本で畳み掛けてくることでしょう。
したがって、早い段階で海外投資家とのネットワークを作り上げ、一歩早い資本投下を行うことで、ユーザーの囲い込みと市場地位の形成を行っていくことが必要です。現在、OnikleはJETROがTechstarsとおこなうGlobal Bootcampに参加し、海外投資家への足がかりを作っています。
・読者にメッセージをお願いします。
Onikleは、実は弊社の最初のプロダクトではありません。
弊社は、CTOの鹿間の経験をもとに、研究機関向けのソフトウェア受託開発企業として設立されました。
しかし、研究界が持つ課題を解決するためには、応急処置的なソリューションではなく、根本的な解決策が求められると結論づけ、論文検索にテーマを絞ったことがきっかけです。しかも、最初に開発したプロダクトから細かく見れば少なくとも10回は小さなピボットを繰り返して今のかたちになっています。
市場が既に存在する状態で、ベターなソリューションで競争していくのも起業家ですが、我々は、未だかつて誰も解決し得なかった問題かつ、社会的・経済的インパクトが大きなものにのみフォーカスしています。それこそが、スタートアップの特権だと信じているからです。
いままでに誰も成し遂げたことがないことは、暗中模索することに等しく、道中はとても厳しく、辛いことも多いですが、素晴らしいメンバーを持つチームであれば、どんな道でも乗り越えられると信じています。
会社名 | 株式会社Onikle(オニクル) |
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代表者名 | 立野温 |
創業年 | 2019年8月 |
資本金 | 1000万円 |
社員数 | 6名 |
事業内容 | 研究者が論文ライブラリを共有し、研究を効率化するAIベースの論文検索プラットフォームOnikleの開発・提供 |
サービス名 | Onikle – the platform built for today’s world of science |
所在地 | 茨城県つくば市東新井13−2 関友ビル 403 |
カテゴリ | 有望企業 |
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関連タグ | EdTech Onikle ラボテック 研究者コミュニティ 立野温 筑波大発ベンチャー 論文メディア |
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