Re.muse 勝 友美|自分の信念を貫くことが大切な理由(後編)

創業手帳woman
※このインタビュー内容は2017年11月に行われた取材時点のものです。

自分の中で違和感を感じることは絶対にしない


前編では、自身の接客についての考え方や、起業時のエピソードについて語っていただいた株式会社muse代表取締役 勝友美さん。
後編では、人材集めの際に意識した点や、自分自身のミッションを貫く大切さなど、さらに経営者目線でのお話を伺いました。

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勝 友美(かつ ともみ)
株式会社muse代表取締役
アパレルメーカーに入社後、トップセールスとなる。その後、スタイリストとして中国でのポータルサイト新規事業の立ち上げを経験したのち、オーダースーツ業界へ転身。最高峰の技術を習得し、2013年muse style labを大阪・淀屋橋にて創業(現在のRe.muse/レ・ミューズ)。現在は東京と大阪に店舗を構える。2018年より、テーラー業界では日本初となるミラノコレクションへの出場を3度果たしている。
日本初の女性テーラーであり、女性起業家として業界の枠を越えて、経済界始め幅広いメディアに取り上げられている。SNS総フォロワーは50万人を超える。
著書:『営業は「バカ正直」になればすべてうまくいく!』(SBクリエイティブ刊)

採用条件は本当の意味でのミッションの共感

Re.museで製作したオーダースーツ

ー起業した際に、人材はどのように集めましたか?

:起業して1年半くらいは一人で経営していたのですが、さすがに限界を感じていました。求人広告を出すお金も無かったので、ヘッドハンティングで人材を見つけていきましたね。

ー勝さんが人材を採用する際に重要視しているのはどのポイントですか?

一番重要視しているのは、「私たちのミッションに共感してくれているかどうか」です。
「来てください」って言っている手前、こう言うことは失礼かもしれませんが、「言われたから来ました」って言う考えだったら来なくていいと思っています。自分の人生を、ここに来ることでより豊かにすることにつながって、より輝かせるって思ってくれる人じゃないと、一緒に働くことはできないと思います。

ー創業期は猫の手も借りたいくらい忙しい時期だと思います。ミッション重視で人材を選ぶとなると、人材の確保はものすごく難しくなるのではないでしょうか?

:確かに創業期はすごく忙しい時期ですし、自分のことで手一杯になってしまいますから、すぐにでも人手が欲しくなります。
ですが、ミッションに共感してくれる人でなかったら、採用したとしても、どこかで歪みが生じてしまいます。
忙しい時期だからこそ、ミッションをしっかり持って人材を確保するべきだと思います。

私の接客は、カウンセリングに近いと思う

ーお客様との信頼関係を築いていくために、実践していることはなんですか?

:常に全力でお客様と向き合うこと、その人以上にその人のことを想って向き合うことを心がけています。

例えば、スーツ作りを検討しているお客様に対しては、お互いの話をするために2時間くらい時間を取っています。
その際に「この部分をこういう風に変えたら、今よりもっと良いんじゃないか?」という部分が見えてくるときがよくあります。
「自分で気付かなきゃ意味がないから、あえて言わない」という方もいらっしゃいますが、私の場合は気付いたまま放っておくことができない性格なので、すぐに言ってしまうんですね。

例えば、「童顔なのでお客さんからなめられてしまう」という悩みを持った営業マンには「今着ていらっしゃるチェックなどのかわいい柄を選ぶと、かわいらしい雰囲気に拍車をかけてしまい、ますます幼い印象になってしまいます」とお伝えし、適度な光沢のある生地に、ちょっと派手めの華やかな柄が入った生地を提案しました。

「もしかしたら、これを言うと私のことを嫌いになってしまうかもしれない」と思う時もありますが、いつか本人が気付いた時に改善できるスピードも早くなるはずです。前述したように、私の仕事は「相手がなりたい自分になるためのサポートをする」ことです。その考えのもと、相手への愛情を持って、話しているだけなんです。実は特別なことはやっていません。

動物は相手を信頼しているときや敵意がないことを示すためにお腹を見せますよね。私の場合はお互いの話をする時に自分からお腹を見せている感覚です。
貯金がなくなって来た時は「貯金がゼロになっちゃいそうで・・・」ってお客様に話しちゃう時もありましたし(笑)

あとは、お客様だけでなく、自分が行うすべての仕事に気持ちを込めて取り組むようにしています。

気持ちが込もっていないものってすぐわかります。例えば手紙一つ取ってもそうですよね。もちろん服を作っている時もそうです。
お金のためにしている仕事じゃなくて、人のためにしている仕事ですから、一つ一つのことに気持ちを込めて取り組んでいます。

ーお話を伺っていて思ったんですが、スーツのセールスをしている、というよりは、カウンセリングに近いことをやっていらっしゃるんですね。

:そうかもしれません。
多分私はエネルギーが強いから、頼んでもいないのに人の領域まで入っているんだと思います(笑)
そうやって全力でお客様と向き合っていった結果、カウンセリングみたいな接客になっていったかもしれませんね。

ただ、スーツを作りにいらっしゃった方に、営業の方法をアドバイスしたり、税理士や不動産屋と組んで仕事をすることを提案し、お客様の人脈から該当する方をご紹介することもあります。

ーそれはスーツ作りの範疇を超えていますね!営業マンにとっては嬉しい驚きですよね。

:たとえお客様から「余計なお世話」「お節介」と思われようとも、Re.museのスーツを着ることで最高の力を発揮し、結果を出して欲しいんです。そのために気づいたことがあれば伝えたいというのが、私の正直な想いです。

仕事の相談はもちろん、人生相談にまで会話が発展することもよくあります。日々そうやってお客様と向き合っていて、人は大きく4つのタイプに分けられることに気づいたんです。

1つ目は、情熱で動くタイプ。私と似ているこのタイプの方には、オーダーメイドスーツ業界にイノベーションを起こしたいという想いや、お客様に最良のスーツを作りたいと思っていることを伝えます。また、お客様の未来についても熱く語り合ううちに、私の想いに共感していただけたお客様がスーツをオーダーすることを決めてくださることが多いです。

2つ目は、冷静で合理的なタイプ。このタイプの方は、スーツを作ることで何が得られるのか、自分にとってどんなメリットがあるのかを冷静に判断しようとしています。このタイプのお客様には、例えばスーツを着たことで自己実現をされた他のお客様の例を挙げたり、私自身の実績を話したりと、スーツを作ることで何がどう変わるのかを伝えます。

3つ目は、どれだけ自分のことを思ってくれるかを重視するタイプです。このタイプの方は、一度信頼すると何から何まで決めて欲しいという人が多いです。人として信頼できることを重視されているので、スーツがいかに高品質かというプレゼンテーションをしたところであまり意味がありません。ですから、私という人間がどんな人間かを伝え、興味をもってもらい、信頼してもらうことに気を配ります。

4つ目は、決断力はあるけれど、自己主張は控えめなタイプ。自分にとって必要かどうかを判断したら決断も早いこのタイプの方には、スーツの価格はもちろんですが、Re.museのスーツの特徴、これまでのお客様の成功談なども含めて、情報を正しく伝えるのが効果的です。

私の接客、販売における「正直にお客様に接する」というスタンスは変わりませんが、タイプによって求められるものが多少異なるので、お客様のタイプをある程度把握して、タイプごとに対応を変えたり、微妙にアレンジしながらお客様と話すようにしています。

自分の心に違和感があることは絶対にしない

店内の様子。スーツだけでなく、店舗の空間づくりにもこだわっている

ー事業を行っていく上で、大切にしている信念はありますか?

自分の中で違和感を感じることは絶対にしない、ということです。

例えば、白い絵の具を溶かした水面に黒を一滴落としたところで、その事実を知らない人が見れば、水面は白に見えます。ですが、入れた本人はわかりますよね。
「ちょっとくらいごまかしても大丈夫だろう」と楽な方向に逃げたくなる時もあるかもしれませんが、こういう行為を繰り返していくと、自分自身を許せなくなります。

売上や社員に対してもそうです。「これは自分の真意じゃないけど、売上を稼ぐためにやるか」ということはしません。

以前、ある企業から「ウチまでスーツを採寸しに来てくれたら、たくさん着数が取れるから、売上が上がるよ」と言われたことがありました。創業期でお金がなかった時でしたから、すごく魅力的な話でした。

ですが、その時自分に尋ねてみました。「自分が本当にやりたい仕事ができるのか?」と。お金が入ってくるかもしれませんが、この問いに関しての自分の答えは「NO」でした。

自分の信念から逸れたところに成果が見えると、それでも信念を貫くことは本当に大変です。「ここでお金を手に入れることができたとしても、未来の自分と目の前のお客様は笑って過ごしているのかな?」と考えた時に、そういう未来がくるとは思えなかったら、「NO」と強く言える勇気があるかどうか、が大事ですね。

ー経営をしていく上では、ジレンマになる部分ですよね。

:そうだと思います。
ですが、そういうことを受け入れてしまうと自分自身のことを嫌いになってしまうし、何よりも私のミッションに共感してくれたお客様や社員にも申し訳が立たないですよね。

自分を磨くために1分1秒を大切に

ー最後に、これから起業する方へメッセージをお願いします。

:創業期って、何事もがむしゃらに頑張ることができる時期だと思います。
例えば、30歳で起業したとして、60歳までの間に働いている日数が何日あるのか、を考えてみてください。そして、それが見えて来たら、「自分は目の前の人に想いを伝えることができるのは何日あるのか」がわかって来ます。

そうすると「自分はもっとこうなりたいのに、そんなに時間が残っていない」ということに気付きます。残された1分1秒に全力で向き合っていかないと何かを生み出すことはできません。
カレンダーに「この日までにやっておかなければならないこと」をどんどん書いて、なりたい自分に少しでも近づけるようにしていかなければならないと思います。

自分には時間が残っていない、ということを自覚して、何をやらなければいけないのかを考えて、突き進んでいってください。

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(取材協力:株式会社muse/勝友美)
(編集:創業手帳編集部)

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