メタバースコマースとは?言葉の意味から活用事例まで紹介します。

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メタバースコマースは企業の新しい可能性を広げる


メタバースコマース(メタコマース)は、仮想空間に構築されたバーチャルショップを指す言葉です。
単純に商品のショールームになるだけでなく、店員による接客が受けられたり、イベントに参加できたりと多くの可能性を秘めています。
メタバースコマースにすでに参入している企業の事例も参考にして、自社でどのように活用するかシミュレーションしてみましょう。

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メタバースとコマースとは


メタバースは、雑誌やテレビで聞く機会も増えた言葉です。
しかし、メタバースコマースとはと聞かれてすぐに答えられる人はあまり多くないかもしれません。
ここでは、メタバースとコマースの意味や、どのようなことができるのかを紹介します。

メタバースとは

2021年にFacebook社が社名を「Meta(メタ)」に変えたことが話題となり、メタバースは世界中から注目を浴びました。
メタバースは、超越したといった意味があるmeta(メタ)と、宇宙や世界を意味するuniverse(ユニバース)の造語です。

メタバースの定義にはいろいろありますが、一般的にはインターネット上にある仮想空間や、その空間で提供されているサービスを総称します。

メタバースとVRはどこが違う?

メタバースについて説明する時に、比較として挙がるのがVRです。
なんとなく同じようなものと捉えている人も少なくないかもしれません。

VRとは、仮想現実(Virtual Reality、バーチャル・リアリティ)の略称です。
仮想空間で現実のような体験ができるサービスを指して使われ、VR機器はメタバースに接続する時にも使われています。

しかし、この2つは厳密には違うものです。
メタバースは他者とのコミュニケーションを目的にしていて、一方で、VRはひとりで楽しめるゲームなども含まれています。
同じ技術が使われていても、使われる目的によって違う点を知っておきましょう。

メタバースの要件

メタバースは、普及しつつある言葉です。
そのため、雑誌やテレビのように扱う媒体によってもメタバースの概念が異なる場合があります。
メタバースの定義に挙げられるポイントとして、代表的なものは以下のとおりです。

1.他者とのコミュニケーションが目的である
2.大人数が参加できる
3.アバターを使う
4.参加者が自由に世界を構築する

上記のポイントを見て、特定のゲームをイメージする人もいるかもしれません。

メタバースはゲームとの親和性が高いため、メタバースに該当するゲームもたくさんあり、具体的には『FINAL FANTASY XIV』や『あつまれ どうぶつの森』、『Fortnite』などなどがあります。
ただし、上記に挙げた条件の4番目にある「参加者が自由に世界を構築できる」という要件を満たさないため、メタバースではないという考え方もあります。

一般的なゲームは、敵を倒したりストーリーを進めたりすることが目的で、交流自体はメインの目的ではありません。
そのため、コミュニケーションが取れるとしても、メタバースに該当しないゲームも多数あります。

メタバースに対する定義は、人によって意見が分かれます。
ざっくりというなら、アバターを使って自由にコミュニケーションが取れる仮想空間だとイメージしておけば、基本的には間違っていません。

メタバースについて、詳しくはこちらの記事を>>
ビジネスに革新をもたらすメタバースとは?仕組みや活用事例を徹底解説!

コマースとは

メタバースコマースは、メタバースとEコマースを組み合わせた言葉です。
Eコマースは、「Electric Commerce(エレクトリック・コマース)」の略称で、日本語に直訳すると電子商取引となり、ECと呼ばれることもあります。

電子商取引は、電子的に行われる商取引全般を指して使われ、具体的にはインターネットショッピングやインターネットでのオークション、イートレードのように幅広くを指して使われます。

インターネットショッピングは、この数年で急速に普及が進みました。Eコマースの市場規模は拡大傾向にあり、今後も成長を期待されています。

メタバースコマース(メタコマース)とは


メタバースコマース(メタコマース)は、仮想空間に構築されたバーチャルショップです。
メタバースコマースが生まれる前でも、インターネット上のショップはありました。

今までのインターネットショッピングとメタバースコマースとの大きな違いは、メタバースコマースは仮想空間に3DCGGで作られたショッピングモールやショップがあり、ユーザーはアバターでお店を訪問できる点です。

商品を見て選んだり、ショップ店員のアバターの接客を受けたりと、実店舗を仮想空間に移したようなショッピングを楽しめます。

インターネットショッピングでも買い物はできますが、実際に来店して商品を比較したり、店員の接客を受けたりといったリアルさをともなう体験ではありません。
メタバースコマースであれば、実際の店舗やショールームを訪れたような体験が可能です。

メタバースコマースでのショッピングは、ゲームを通じて仮想空間で行動することに慣れた若い世代にとっては自然に受け入れられるでしょう。
メタバースコマースであれば、購買体験は既存のECサイトよりもメタバースコマースのほうが優れていると受け取られる可能性もあります。

メタバースコマース(メタコマース)が社会に与える影響

今では、多くの実店舗を持つ企業がEコマースに参入しています。
さらに、メタバースコマースに可能性を感じる企業も増加傾向にあります。

例えば、コンビニエンスストア大手の「ローソン」は、VRイベント『バーチャルマーケット2021』にバーチャル店舗を初めてオープンしました。
実店舗で販売している商品をバーチャル展示し、オリジナルパッケージのホットスナックを作る体験を提供しました。
さらに、人気のVチューバーが一日店長となり、来店客のアバターコミュニケーションを取ってアイテムを販売するなどがその概要です。
メタバースならではのサービスを提供し、話題を呼びました。

メタバースコマースは、インターネットショッピングの弱点である接客やアピールに力を入れられる、単純な購入に付加価値を与えられる可能性を秘めています。
今後はメーカーや小売りにとどまらず、多様な企業が参入するでしょう。
実店舗やインターネットショップとも違う、新しい売り場として今後も成長が予想されています。

メタバース市場はグローバルで約92兆円の市場になる可能性も

アメリカの大手総合情報サービス会社が提供する「ブルームバーグ・インテリジェンス」のシニアアナリストは、2024年までにメタバース市場がグローバルで8,000億ドル(約92兆4,200億円)に到達する可能性があると示唆しています。
なお、2020年のグローバルなメタバース市場は、約4,787億ドルでした。4年間で大幅な伸びが予想されています。

中でも、オンラインゲームメーカーとゲームハードウエアの主要市場は拡大が予測され、既存タイトルをSNSに近い仮想空間へ対応させていくことで市場拡大が見込めるとれています。

ライブイベントやソーシャル広告も変わる

メタバースコマースがより普及すれば、消費者がオンラインで過ごす時間も長くなっていくでしょう。
よりメタバースへのアクセスが手軽になって、誰もがアバターを持つようになると考えられます。

コンサートやスポーツイベントなどのライブエンターテインメント事業をメタバースに取り入れるなど、ソーシャルメディアでの広告収入はシェア争いが激しくなると予想されています。
企業も仮想空間に方向転換することで、大きな収益機会の獲得や、成長の加速が期待できるかもしれません。

メタバースコマース(メタコマース)のメリット

メタバースコマースは、多くの企業にとってターゲット層の拡大や新しいビジネスチャンスになりえます。
メタバースコマースを導入することで、どのようなメリットがあるのかをまとめました。

新規顧客の獲得

メタバースコマースは、新しい販路を拡大するために有効な手段のひとつです。
世界中の顧客に商品を知ってもらいたいと考えていたとしても、実際にはコストなどの理由で商圏は限られてしまいます。
しかし、メタバースコマースでは商圏にとらわれる必要はありません。

メタバースでいう商圏とは、どのメタバースサービスでショップを開くか、VRイベントに出店するか、それとも、自分でメタバースを構築するかがあり、いずれも自分で選択可能です。

メタバースのバーチャル店舗であれば世界中の人が来店できるため、今まで関わりがなかったような顧客にも商品を認知してもらえます。
メタバースコマースであれば、商品を広く知ってもらいたい、購買層を広げたいといった要望に応えてくれます。

ブランディングに適している

現在のオンラインストアは2次元で構成されたもので、2次元でも画面構成やデザインでブランドの世界観を表現できます。
しかし、仮想空間であれば店舗の空間を設計して実装するため、実店舗同様、もしくはそれ以上にブランドの世界観を表現できるでしょう。

実店舗ではできないような表現やデコレーションもできるので、表現の幅はリアルに近づくか、それを超える場合もありえます。
実店舗では時間や費用がかかりすぎるためできないようなイベントも、仮想空間では可能です。自由度はより高くなり、ブランドの世界観を実現できると予想されます。

コストを抑えられる

バーチャル店舗を構築したり、出店したりするために必要な費用はソフトウェア開発費と利用料だけです。
メタバース空間に出店する場合には、メタバース提供者に利用料を支払うこともあります。

実店舗であれば、新しく出店するために家賃や敷金・礼金、内装費や光熱費などがかかります。さらに、物件を見つけるための人件費や交通費も必要です。
バーチャル店舗であれば、これらの費用は一切かかりません。

バーチャル店舗は、店舗の改装や拡大も手軽です。
仮想空間のデータはコピー&ペーストも可能なので、複数店舗を開店する場合にも初期費用を抑えられます。
低コストで世界中の人々に商品やサービスを案内できる点は、メタバースコマースの大きなメリットです。

バーチャル商品を販売できる

メタバース市場が盛り上がることによって、アバターの洋服やアイテムなどのバーチャル商品の需要も高まると予想されます。
メタバースコマースでは、リアルの商品だけでなくバーチャル商品も販売可能です。
例えば、実際に販売している洋服のデザインをバーチャル商品として販売するといった手法もあります。
つまり、ひとつの商品からリアルとバーチャル両方の製品を生み出せます。

バーチャル商品は、製造コストが抑えられる点もメリットです。
リアルの商品ではないので、生産工場も必要なく、商品が欠品したり、逆に製造しすぎて売れ残ってしまったりする心配もありません。
バーチャル商品を販売して、取り扱う商品の幅を広げることで、より多くの顧客に利用してもらえるようになるでしょう。

メタバースコマース(メタコマース)の事例3選


メタバースコマース(メタコマース)は、実際にバーチャルストアや店舗型のECサイトで使われるようになっています。
どのような事例があるのかを、実際の例を挙げて説明します。

そらのうえショッピングモール

「そらのうえショッピングモール」は、「株式会社タカラトミー」や「株式会社サンリオ」などが出店するバーチャルショッピングモールです。
人気キャラクターのショップやイベントスペースが併設された商業施設です。

スマートフォンやタブレット、PCからアバターを使って、キャラクターショップや専門店を自由に歩き回れるようになっています。
それぞれのバーチャルショップでは、インターネットショッピングやイベントの参加が可能です。

バーチャルショップの商品は、ECサイトに移動して購入します。
ほか、大小のイベントホールやアミューズメント施設もあり、バーチャルコンサートなどのイベントも開催されています。

FOREVER 21×Roblox

ファストファッションメーカー大手の「FOREVER 21」は、ゲームプラットフォーム・メタバースの「Roblox(ロブロックス)」上にオープンしています。

名前は「Forever 21 Shop City」で、ユーザーがショップのオーナーとなり、自分だけの店舗を経営するゲームです。

自分の気に入ったラックや家具を購入し、デコレーションしたり音楽をかけたりして自分の理想のショップを作り上げて運営します。
店舗でアイテムを売買することも可能で、実店舗で新しいコレクションが発表されるとと同時にゲーム内でも追加されるなど、リアルとゲームとの相互性がある仕組みです。

ビームス

すでに多くのファンを抱えるような店がメタバースに出店すれば、新規流入も増加して顧客開拓できます。
大手アパレルブランドの「ビームス」は、2021年にメタバースで「ビームス 原宿店」のメタバース店舗を期間限定でオープンしました。

「ビームス」はこれまでもバーチャルマーケットに出店しており、基本的にはバーチャルであっても「ビームス」の店舗として、リアル店舗のイメージをしっかりと踏襲した店舗を構築しています。

その一方で、遊びの要素としてバーチャル銭湯を提供したり、映画とコラボしたりとメタバースにならではの工夫もしています。
「ビームス」のバーチャル店舗は、ボットやAIではなくリアルのスタッフが接客を担当している点が大きな特徴です。
アバターの接客は高く評価され、リアルのコミュニケーションや接客技術はバーチャルでも通用することがわかります。

メタバースコマース(メタコマース)事業を始める前に考えておくこと


メタバースコマース(メタコマース)は、多くのメリットがあり、実際に活用が進んでいます。

とはいえ、メリットだけではなくデメリットも当然あり、例えば、なりすましなどの不正が起きる恐れもあります。
個人情報の流出や機密情報の漏えい、不正な購入に対してどのように対策するかを検討した上で参入する必要があります。

さらに、商品の探しやすさ、手軽さからは従来のECサイトのほうが優れているとの指摘もあり、メタバースコマースにするから人気が出るわけではありません。
メタバースコマースは目新しさがあるため、最初はそれだけで集客できることもあるかもしれませんが、いつまでも長続きしないでしょう。

メタバースコマースに参入する時には、仮想空間と組み合わせることでどのような付加価値が生まれるのか、自社の魅力を引き出す施策ができるかどうかも考えてください。
自社に最適な販売方法をシミュレーションしてから、プラットフォームやサービスを選ぶようにおすすめします。

まとめ

メタバースコマース(メタコマース)には大手の企業も参入しており、これからの成長が期待できる分野です。
メタバースコマースであれば、低コストでも世界中の人にショップの魅力を伝えられます。

しかし、メタバースコマースである以外の魅力がなければ、いずれ飽きられてしまいます。
メタバースコマースを導入する時には、専用の企画立案やアイテムを検討し、顧客に付加価値を与えられるようなバーチャルショップを目指しましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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