中小企業のM&A成功事例9選!イグジットや事業承継で失敗しない秘訣とは

事業承継手帳

中小企業やスタートアップの成長戦略として注目のM&A。事例から成功の秘訣や注意点を解説

日本でも活発になっているM&A。近年はスタートアップがイグジット(出口戦略)としてM&Aを目指すケースや、中小企業が事業承継のためにM&Aを選択するケースなど、さまざまなM&A事例が増えています。

しかし中小企業やスタートアップにとって「M&Aは難しい」というイメージが強いのではないでしょうか。そこで今回は創業手帳が実施した700名以上の起業家インタビューの中から、M&Aで成功する秘訣や注意すべき点などのアドバイスをまとめました。

また創業手帳では、中小企業や個人事業主の方のための「M&Aガイド」を無料でお届けしています。M&Aと聞くとネガティブなイメージになりがちですが、事業を加速化させるためには有効な手段にもなります。また起業したい人についてもおすすめの起業方法のひとつです。是非こちらの「M&Aガイド」を参考に、M&Aについて知って頂ければ幸いです。


M&Aガイド

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

金子半之助 金子 真也

M&Aをするなら成長過程がいい。成長しているからこそ、価値を感じてくれる。

M&Aをするならば、とにかく下がり傾向になる前の、成長過程がいいと思います。なぜなら、成長している会社だからこそ、相手も買う価値を感じてくれるんですよね。

もしかしたら、ハッタリやテクニックで高く売却することもできるかもしれません。でもやはり、「相手がほしいもの」と「こちらが提供できるもの」が、一致していないとダメだと思うんです。それは、会社に残るメンバーたちのためにもなりますから。

金子真也(かねこ しんや)
株式会社うまプロ 代表取締役
1978年生まれ、東京都文京区出身。祖父・父ともに料理人の家庭で育つ。28歳のときに仕出し弁当屋として独立。江戸前天丼を提供する「金子半之助」の創業者として知られる。ラーメン店「つじ田」と合併し設立した「株式会社おいしいプロモーション(現在は、オイシーズ株式会社に社名変更)」を売却。現在は同社のアドバイザーを務める傍ら、「株式会社うまプロ」を設立し共同代表に就任。
金子半之助 金子真也氏についてのインタビュー記事はコチラから>>

金子半之助創業者 金子真也 | 行列が絶えない「粋で豪快」な天丼!海外進出・M&Aのその先とは

クラウドワークス 吉田 浩一郎

M&Aにおいては、個人の意志が明確な方と組みたい

(M&Aの相手に対して)例えば成長の限界を感じている場合、今の事業についてもっと学びたいのか、それとも一旦今の事業をやめたいのか、そういった意志をお聞きします。もっと学びたいならば我々はノウハウを提供しますし、別のビジネスに関心があればそういう体制を整えます。

ですから、やりたいこと・やりたくないことを率直にお話いただける方が、我々としては組みやすいと思います。そうではなく「うちはこういう条件だから」と一方的なスタンスだったり、反対に「何でも言うことを聞きます」みたいなスタンスだったりすると、対話にならないので難しいかなと感じます。

吉田 浩一郎(よしだ こういちろう)
株式会社クラウドワークス代表取締役社長 兼 CEO
東京学芸大学卒業。パイオニアなどを経て、株式会社ドリコム執行役員として東証マザーズ上場を経験。その後独立し、アジアを中心に海外へ事業展開。日本と海外を行き来する中でインターネットを活用した時間と場所にこだわらない働き方に着目し、2011年株式会社クラウドワークスを創業。クラウドソーシングサービスを立ち上げ、日本最大級のプラットフォームに成長させる。
クラウドワークス吉田氏についてのインタビュー記事はコチラから>>

クラウドワークス 吉田浩一郎|働き方が劇的に変わる今、M&Aで新たな時代を一緒に作る仲間を増やしたい

REBORN 皆木 研二

僕がいなくても仕事に支障がないようにしていましたが、M&A後はより意識した

起業後2年半のタイミングで、J:COMさんからオファーをいただき、M&Aを考え始めました。価格交渉においては、ロジックをきちんと組んで妥当性をしっかり見てもらうことが肝心だと思います。先方の事業計画にぴったりハマったというのも大きかったですね。こちらから売り込むとどうしても足元を見られてしまうので、先方にとって「買うことによってシナジーが生まれるから欲しい」という状態が望ましいです。

(M&Aの時点で)社員が15名ほどいました。もともと僕がいなくても仕事に支障がないようにしていましたが、M&Aの後はそれをより意識しましたね。「どのクリエイターの作品がいい」「このクリエイターにはいくらで発注した」などの情報は非常に属人性が高かったため、クリエイターデータベースを作り、過去の実績や依頼した金額、ポートフォリオなどの情報を全部システム化しました。その後はどのメンバーでも発注できるようになり、仕組み化して本当によかったと感じました。

皆木 研二(みなき けんじ)
株式会社REBORN 代表取締役
Deloitteグループに新卒入社。2015年動画広告会社のプルークスを創業し、立ち上げ3年でKDDIグループのJCOMへ売却し、J:COMグループ会社の社長に就任。退任後、Bリーグのライジングゼファー福岡の共同クラブオーナー兼社外取締役として、クラブ運営や地方創生に従事。国内外の飲食業界を中心としたスタートアップ企業へ11社出資。
2021年にREBORNを創業し、日本酒ブランド事業「MINAKI」を運営。
REBORN皆木 研二氏についてのインタビュー記事はコチラから>>

REBORN皆木 研二|自己資金のみで起業し3年でエグジットした起業家の戦略とは?

オーナーズ 作田 隆吉

M&Aをどう活かしていけるのか、専門家を交えて腹おちするまで考えておくことが大切

やはり組織として機能している会社は安心されます。極端な話「社長は週に1、2回しか出てこないんですよ」などと聞くと、組織として回っていると判断できますよね。逆に社長が非常に頑張って働いてプレイングマネージャーのロールを果たしていますといった会社は、譲りにくいと思います。マニュアル化するなり、人材を育てるなりして、社長の手から仕事を離していく、依存度を下げることが重要です。

また、事業売却のタイミングは、ご自身の病気や怪我などでいきなりやってくることがあります。そんな場合、まったく準備ができていないとやはり不利です。自社の場合M&Aを今後にどう活かしていけるのか専門家を交えてディスカッションし、腹おちするまで考えておくことです。

自社のだいたいの価格感は知っておいてもいいと思います。具体的に売却の予定がなくても現在値を知っていれば、目標の〇〇円で売却するためにはなにをすべきか、さしあたり次の3年のアクションが見えてきます。こういった準備ができている会社は、いざという時にもスムーズですし、高評価を得やすいです。

作田 隆吉(さくた りゅうきち)
オーナーズ株式会社 代表取締役
慶應義塾大学経済学部在学中の2005年、旧公認会計士二次試験に合格。現、EY新日本有限責任監査法人に入社。上場・未上場会社の監査業務を中心に従事。2011年、現、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。
2013年のデロイト ニューヨークオフィスでの勤務を経て、2015年からはデロイト ロンドンオフィス勤務。Advisory Corporate Finance チームのディレクターとして、日本企業の欧州M&A案件を多数支援。2019年からは東京オフィスにて、スタートアップ・ファイナンス・アドバイザリー事業を統括。2021年に当社を創業。公認会計士。
オーナーズ 作田隆吉氏についてのインタビュー記事はコチラから>>

オーナーズ 作田隆吉|投資銀行仕込みのプロフェッショナルなM&Aで中小企業を支援

みんコレ 野田 北斗

M&Aは相場があるようでないため、複数の企業と話して相場を知っておきたい

いくらが妥当なのかなど相場感がよく分からなかったですね。意外とM&Aは相場があるようでないため、複数の企業と話して相場を知るのが良いと思います。

会員属性などの本当にコアな情報やノウハウについては、最後の最後まで明かしませんでした。情報を漏らさないというNDA契約を結んだとしても、やはり重要な情報を知られてしまうのは危険です。不成立もあり得るので、情報をどの段階で開示するのかに注意しましょう。

自分がやってきた事業が評価されて満足のいく金額で買収されたことによって、運営の負担や心配が無くなったのは良かったと思います。でも、一番良かったと感じるのは経験と絆を得られたことですね。

野田 北斗(のだほくと)
株式会社みんコレ 創設者
アメリカ・ボストン生まれ、吉祥寺育ち。環境問題に関心を抱き東北大学理学部に進むも、自身の理想と周囲の考えの相違を感じる。進路模索の末に山梨大学医学部に進学し、自身の受験期に医師国家試験の当日解答集計サービス「みんコレ!」を考案し、運営をスタート。2017年に(株)みんコレを立ち上げ、精神科医として活躍しながらサービス向上に努めていたが、2021年に事業譲渡。現在は2度目の起業を考えている。

SmartHR 芹澤 雅人

事業承継を受ける2代目は、先代をリスペクトしつつ自分のテイストを入れるべき

SmartHRの創業者は起業家で、ゼロイチを得意とする方です。そのため、グループ会社の立ち上げに専念しています。事業承継をする時にも大きな問題はありませんでした。

元々の創業者をライバル視して「あの人を超えなければいけない」といったマインドを持ってしまうと、上手くいかないことが多いとある経営者の方がおっしゃっていました。

逆に(創業者への)リスペクトを持って、何を考えて会社を立ち上げ、運営していたのか、といったことを考えて再現しつつ、その上で自分のテイストを入れることで、アップデートすると上手くいくようです。

芹澤 雅人(せりざわ まさと)
株式会社SmartHR 代表取締役CEO
2016年、SmartHR入社。2017年にVPoEに就任、開発業務のほか、エンジニアチームのビルディングとマネジメントを担当する。2019年以降、CTOとしてプロダクト開発・運用に関わるチーム全体の最適化やビジネスサイドとの要望調整も担う。2020年取締役に就任。その後、D&I推進管掌役員を兼任し、ポリシーの制定や委員会組成、研修等を通じSmartHRにおけるD&Iの推進に尽力する。2022年1月より現職。
SmartHR芹澤 雅人氏についてのインタビュー記事はコチラから>>

SmartHR 芹澤 雅人|成長を加速させるSmartHRの二代目社長が考える「事業承継」成功の秘訣とは

ピースユー 藤瀬 公耀

過去の施策やお客様の反応を全て創業者に聞き、完全に理解することを意識した

(事業を引き継ぐ時、従来のファンが離れないように)今使っていただいているお客様を大事にする、喜んでくれることをする、ということを大前提にしました。

M&A後も、ピースユーを創業された方にはアドバイザーとして協力していただいているんです。そこで、過去の施策や以前のお客様の反応について、すべて創業者にお聞きしました。ユーザーの方々が何を喜んでくれるのか、これを完全に理解することを意識しましたね。

変えようと思えばたくさん変えられるところはあるのですが、作り手の論理をお客様に押し付けることは絶対しないように意識しています。

藤瀬 公耀(ふじせ こうよう)
合同会社ピースユー 代表社員 職務執行者
佐賀県出身。京都大学法学部卒業後、大手人材系企業でマーケティング職として従事。その後国内コンサルティングファームへ転職し、新規事業の立ち上げや事業責任者を経験する。2022年に、ECコンサルを手掛ける株式会社いつもへ参画。ライブコマースアプリを運営するピースユー社のM&Aに携わり、現在はいつも社の子会社となった合同会社ピースユーの代表を務める。

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ピースユー 藤瀬 公耀|新たな販売チャネルとして注目されるライブコマース。ECとの決定的な違いとは

吉開のかまぼこ 林田 茉優

事業承継でコンセプトを再定義、価格や卸先を変更した結果ファンが増えた

(先代から事業承継するにあたり)コンセプトの再定義に伴い、価格や卸先を変更したんです。従来は「無添加」を謳う他のかまぼこ屋と比べて、非常に安い価格で販売していました。でも、完全無添加にこだわると、安売りをしていては経営が続けられないという課題がありました。

ただ単に1本当たりの値段を高くするだけでは、絶対に以前と比べられてしまうので、贈答用メインに切り替え、オンラインショップもUI(ユーザーインターフェイス)を見やすくしてお客様の導線を整理しました。

ただ、私が一方的に変えればいいというわけではないので、先代と何度も考え方を摺り合わせ、マーケットを変える重要性を理解していただくことは大変でした。

今回のリブランディングによって、完全無添加であることへの共感の高い、熱狂的ファンになってくださるお客様が増えました。どこに卸すのか、うちのこだわりは何なのか、逆に絶対しないことは何なのかをきちんと言葉と行動で示すことで、お客様との結びつきの強さが変わるんだと実感しました。

林田 茉優(はやしだ まゆ)
株式会社吉開のかまぼこ 代表取締役社長
2020年福岡大学経済学部卒業。学生時代に中小企業の後継者未定問題に興味を持ち、福岡の老舗蒲鉾屋「吉開のかまぼこ」の復活に向けた支援活動を始める。卒業後、日本の技術・伝統を次世代へ繋ぐためCON株式会社を設立。一般財団法人日本的M&A推進財団の本部メンバーにジョイン。2022年12月に3年間支援を続けた株式会社吉開のかまぼこの代表取締役社長に就任。日本の後継者難解決のモデルを目指す。

門間箪笥店 門間 一泰

スムーズな事業承継には、時間をかけることと実務を掌握することが大事

当時は箪笥店の経営も、今のような海外の売上もありませんでしたから、このまま潰れてしまう可能性もありました。家族の間の話し合いの中で、承継することになり、承継を見据えて、前職のリクルートを辞めて門間箪笥店に入社しました。

入社後に肩書は専務となりました。専務のポジションだと会社の色々な動きや実務が見えます。会社の業務フローや製造プロセス、取引先等を把握していきました。必要に応じて実権を移していき、5年かけて全ての実権を移管しました。やはり時間をかけること、実務を掌握することが大事です。

門間 一泰(もんま かずひろ)
株式会社門間箪笥店 代表取締役
宮城県仙台市生まれ。2001年 早稲田大学商学部卒後、株式会社リクルート入社。人材領域営業部門に配属され、新規開拓の日々を送る。新規事業開発室に異動後、営業所の立ち上げや部下のマネジメントを行う。部署異動後、販売促進のコンサルティングを担当し、営業成績優秀者及び企画優秀者表彰を多数獲得。2011年 株式会社門間箪笥店入社。2018年 代表取締役に就任。

まとめ

ネガティブなイメージの強かったM&Aですが、今では事業成長につなげるなど、ポジティブなM&A事例が増えています。中小企業やスタートアップにおいて、M&Aは経営戦略のひとつと言えるでしょう。

ただしM&Aを実現した方々の声を聴くと、成功するには相手選びや組織作りなどしっかりした準備が必要なことがわかります。今すぐM&Aの予定がなくとも、情報を集めておきたいところです。


M&Aガイド

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(編集:創業手帳編集部)

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