開業するにあたって立地条件は重要? 業種ごとに適した立地条件を解説

創業手帳

新たに開業するとき、業種によって適した立地条件があります。その条件や理由を解説します

立地条件

新たに店舗を開業するとき、立地条件はとても重要な要素となります。立地には、駅前や繁華街、ロードサイドなどの条件がありますが、立地を決める経営者の中には、自宅からの交通の利便性などで決める人もるでしょう。しかし、立地条件は業種ごとに適したものがあり、場所や物件の形状、道路との関係性に加え、利用者の集客ターゲット=商圏など、様々な要素を吟味して店舗を構える必要があります。今回は、店舗を開業する人のために、戦略的な立地条件や精査方法について解説します。

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立地検討で重要な「商圏」は大きく3つに分類される

立地条件を考えるとき、まずは店舗がどのような客層をターゲットにするかを決めます。そして、集客ターゲットの客層を立地的な観点から見て示したものが、商圏です。立地条件を決める際に考えるべき商圏について、3つのタイプを説明します。

一次商圏

ターゲット客層の居住地から徒歩15分圏内にあり、歩いて毎日来店することができる位置が、一次商圏と言われています。一次商圏は、その性質から最寄品商圏とも呼ばれ、駅前や商店街、繁華街など人口が密集している地域を指すものです。一次商圏内に店舗を構えれば、多くの人が店舗を訪れる可能性が高くなります。

二次商圏

ターゲット客層が、車で15分程度かけて訪れることができるエリアが、二次商圏です。その距離感を指して中間品商圏と呼ばれることもあり、ターゲット客層が週に何回か訪れることを想定しています。二次商圏では、ライバル店の立地や道路の位置、川などによるエリアの分断で狭まる場合があるため、立地条件としてはよく吟味する必要があります。

三次商圏

三次商圏は、ターゲット客層が車で40分程度で来店することを想定しており、来店頻度は月に何回かくらいです。毎日や週に数回訪れる必要のない店舗に適した立地であり、取り扱う商品もその性質に準拠していることが多いです。

商圏ごとに適した業種

それぞれの商圏では、集まる客層が異なるため、出店する店舗にもそれぞれに適した業種があります。その業種とは、どのようなものでしょうか。

一次商圏に適した業種

駅前や商店街、繁華街などを指す一次商圏では、気軽に毎日通えることを目的とした業種が向いています。また、商品の単価的にも安くて気軽に利用できることが条件です。例えば、コンビニやファーストフード、スーパーなど、毎日利用できて利便性が高い業種が該当します。

二次商圏に適した業種

二次商圏では、週に何回か必要なものを買いに訪れることを想定しており、日用品や生活必需品の買い置きなどを目的として客が来店します。業種でいえば、ドラッグストアやホームセンター、家電量販店などがそれにあたり、必要に応じて買い物をする業種に適しています。

三次商圏に適した業種

車で出かけても多少遠い場所にある三次商圏では、あまり頻繁には訪れないものの、服飾や雑貨など、たまの買い物に適した店舗がこの立地を選ぶケースがよく見られます。例えば、郊外にある大型ショッピングモールなどがあげられ、取り扱っている商品の単価も高めであることが多いです。

商圏エリアの設定


店舗の立地条件として商圏を分析する場合、下記のような方法が使用されています。

店舗を中心にしたエリア把握

店舗をどのあたりに設置するかを仮定し、地図上で店舗の地点を中心に一定距離の円を描きます。距離をどれくらいにするかは、業種や業態で異なります。人口や交通状況、競合他店の位置に加え、川などによる分断があるか否かなどの条件で円を拡大・縮小させて商圏を特定します。

車を使った場合のエリア把握

仮定した店舗の場所から、車移動を仮定してエリアを特定する方法です。車移動の時間を10分~30分程度の中でいくつかパターンを作り、分析すると良いでしょう。また、道路状況により渋滞などが発生しやすいかどうかも見ておく必要があります。

競合他店とのシェアを比較

近くに競合他店がある場合、その店舗の面積や買い物に行く時間と距離を割り出し、自分の店舗と比べてターゲット客が訪れやすいかどうかを見ます。ハフモデルと呼ばれる考え方では、売り場面積(魅力度)が広いと多少遠くても足を運びやすいという傾向を前提に、集客率を割り出します。

点・面・線の3点から分析

店舗に適した立地条件を分析し商圏を割り出すために、点・面・線の3つを使う方法もあります。点とは店舗の位置を指し、どのような立地であればより店を認識しやすいかなどの条件で、適した立地を探します。次に面は、その周辺地域です。このエリア内における住民の数に加え、最寄りの駅の利用者数なども分析要素に含みます。最後の線は、店舗に訪れるまでのルートであり、どのような交通手段を使うか、徒歩や車がどのような流れで動いているかといった要素から、店舗を訪れやすいかどうかを見ます。

この3つの要素において、点では店舗の見えやすさや入りやすさ、面ではターゲットとする客層が訪れる場所であるか、線では人や車の流れを見て気軽に立ち寄れるかどうかなどを分析します。そして、これらの立地条件をすべてクリアできる場所が、店舗設立に適した場所といえるでしょう。

駅前?ロードサイド?エリアの特徴から考える

店舗に対する集客を、より確実なものとするために、それぞれのエリアの特徴を掴んで立地を決めるのもひとつの方法です。では、主なエリアごとの特徴を見ていきましょう。

駅前

駅前は、当然ながら電車を利用する人が集まるエリアであり、特に通勤や通学などでの利用者が多いです。そして、日常的に利用している駅の周辺は、利用者の生活の一部となっていると考えられます。そのため、気軽に立ち寄れてちょっとした買い物ができる店舗が強いのです。また、小腹が空いたときにすぐに食べられる飲食店なども、駅前エリアにあると利用者を惹きつけやすいでしょう。店舗で取り扱っている商品自体の単価が安くても、集客数と回転率がよいことで、確実で増減の少ない売上げを保つことができます。

繁華街

繁華街は、駅から少し歩くだけでたどり着ける便利なエリアであり、特に休日には買い物や食事に訪れる人が増加します。休日の買い物客をターゲットにするなら、例えばアパレルや美容院など流行を先取った店舗や、買い物の合間に休憩できる飲食店などを設置すると集客が見込めるでしょう。また、買い物に来た客についで買いを促すような雑貨店や小型のドラッグストアなども適しています。その他、繁華街内でまだ出店していない業種の出店にチャレンジできるエリアでもあります。

オフィス街・学生街

ビジネスマンが往来するオフィス街や、学生が多く集う学生街は、ターゲット層がかなりはっきりしています。そのため、例えばオフィス街であれば、ランチを安い値段で食べられる定食屋、また仕事帰りに1杯飲んで帰るための居酒屋などを出店すれば強いです。さらに、接待などに利用できる高級料亭なども集客が見込めるでしょう。一方、学生街では単価の安い飲食店全般において需要が高いと考えられます。その他、日用品や食料品を購入できるスーパーやコンビニは、学生の集客が期待できます。

ロードサイド

主要道路沿い(ロードサイド)には、大型の商品や多数の品揃えを誇るホームセンターやディスカウントショップを構えると、売り場面積も確保できるだけではなく、動線的にも車で訪れやすいため有効です。これらの店舗で買い物をするときは、手で持てない大きさや量の商品を買い求めることが予想されるため、車で来店する客をターゲットにするのが適しています。また、飲食店の中では家族連れが車で訪れるファミレスも、ロードサイドでは狙い目といえます。

ロードサイドへの開業は特に慎重に

ロードサイドに店舗を出店する場合、特に慎重に立地条件を吟味する必要があります。以下では、ロードサイド出店で見極めるべきポイントをあげていきます。

主要道路を走る客層

店の前を通る主要道路を利用する客層については、しっかりと分析しなければなりません。そのエリア近辺に住んでいる住民か、都心部から郊外の自宅に帰る人なのか、また一般車両よりもトラックなどが往来する産業道路なのかによって、集客が見込めるかどうかが変わってきます。小売店や飲食店などをロードサイドに出店する場合は、主要道路を通る客層は地元住民であることが望ましいでしょう。産業道路であれば、サービスエリアのような役割を持つ店舗が向いています。

道路のカーブについて

主要道路では、大きなカーブがある場所が存在します。このカーブについては、外側か内側のどちらに出店するかによって、集客が大きく変わる可能性があります。最も出店に適しているのは、進行方向の右側に曲がるカーブの道で、運転者から見て左にある立地です。この位置であれば、カーブを曲がるまでの間に店舗がよく見え、入店する確率が上がるります。逆に、このカーブで右側にある店舗は、運転者から見えにくく通り過ぎてしまう可能性が高いため、避けるのが無難です。

駐車場への入りやすさ

車が行き来するロードサイドの店舗には、駐車場の設置が必須です。しかし、ただ単に駐車場を構えただけでは、集客を取り逃がす可能性もあるのです。もちろん、駐車台数を多く設定するに越したことはありませんが、その駐車場に入りやすいか否かは、大きなポイントとなるでしょう。駐車場の入口の幅は、5~6m程度確保することが一般的です。これくらいの幅があれば、車がスムーズに駐車場に入れます。さらに駐車場自体にも広さがあれば、車を停めやすいため立ち寄るのにも便利です。

業種別に立地条件を考える

こちらでは、新規開業で特に人気が高い業種をいくつか例にあげ、各業種で立地条件を設定する際の注意点を紹介します。

カフェや定食屋などを開くなら

しっかりした食事を気軽に食べられる定食屋などの飲食店は、まずターゲットとする客層を決めることから始めます。例えば、地元住民やその地域に帰宅するビジネスマンなどを狙うなら、駅から住宅街に続く道を外すとなかなか人を集めることができないかもしれません。駅から住宅街までの動線をつかみ、その動線沿いに出店するのがポイントです。また、学生やランチタイムに訪れるビジネスマンをターゲットにする場合、校内や社内に食堂があるところでは思ったように集客が伸びないため、事前にリサーチしておくことが大切です。

居酒屋を開くなら

居酒屋のターゲット層は多彩であり、駅を利用する人が立ち寄りやすい繁華街や仕事帰りのビジネスマンに向けたオフィス街などが有効です。ただし、注意すべき点は客が帰宅するときに、駅に向かう動線上にあるか否かです。酒を飲んだ客は、帰りにできるだけ手間をかけないようにまっすぐ駅に向かおうとします。そのため、繁華街やオフィス街から駅に向かう動線から離れた場所にある居酒屋には、人が寄り付きにくいです。

小売店を開くなら

小売店にもいろいろありますが、例えば日常的な買い物をするスーパーは、店がどこにあるのかがわかりやすく、視界を遮るものが何もない立地が好条件です。また、入口もできるだけ広く取れる立地の方が、客を受け入れやすくなります。アパレルや雑貨などの小売店は、繁華街に路面店を出しても良いですが、より高い集客性を見込むのであれば、同業の店をワンフロアにまとめているファッションビルのテナントに入ると、商品を見て回る客を集めるのに効果的です。

美容院やネイルサロンを開くなら

美容院に関しても、ターゲット層は様々にあります。流行を押さえたい若者向けなら繁華街が向いていますし、地元密着型を目指すなら商店街などがおすすめです。また、仕事帰りに立ち寄りたいOLなどに向けては、オフィス街に出店するのも良いでしょう。注意すべきことは、ターゲット層をどこに定めるのかをきちんと決めておくことです。また、美容院は狭いスペースでも開業が可能であるため、ビルの2階以上や地下に店舗を構えることも多いです。その際には、看板をわかりやすい位置に立てることや、階段やエレベーターの位置がすぐにわかるような場所にすることが求められます。

立地を決める時の注意点

より集客を見込める立地条件を設定するには、いくつかのポイントを押さえておくとスムーズです。以下では、そのポイントについてあげていきます。

外観にとらわれすぎない

出店できる物件を探す時、特に居抜き物件を見ている場合には、どうしても外観に目が行きがちです。しかし、外観はリフォームでいくらでも変えることができますが、立地条件は簡単に変えられるものではありません。そのため、物件を見るときは外観についてはいったん置いておき、ターゲット層を集めやすいか、視認性が高いか、入りやすい場所かといった立地条件を優先することが大切です。

動線とそれを分断する要素を洗い出す

客の生活圏内から店舗までの動線は、とても重要です。地域住民や駅の利用者が家に帰るまでの動線に店舗があれば、強い集客が期待できるでしょう。そして、さらに重要なのは、動線を分断する要素があるか否かです。大きな川や産業道路、敷地の広い施設など、動線を遮ってしまう要素があると、店舗が商圏内にあったとしても動線を確保するのが難しくなります。また、ロードサイドに出店する場合、主要道路に中央分離帯があると、片側車線の通行車しか獲得できないことになります。その結果、商圏を狭めてしまい、期待したような集客が得られないことにもなりかねません。

人気エリアにこだわりすぎない

多くの人が集まり繁華街として盛況している人気エリアでは、出店すればすぐに客足を向けられるイメージがあります。もちろん、そのエリアを訪れる客層にターゲットを絞れば良いのですが、エリアの特徴として商業店舗ばかりが密集して、地元住民やオフィスが少ないといった側面もあります。これは、日常的な生活エリアではないことを指しており、安定した集客が見込めないと見ることもできます。さらに、人気の繁華街では当然ながら競合店も多く、勝ち残るには厳しい戦況に立たされる可能性もあるでしょう。

客からよく見える場所を選ぶ

これまで説明してきたように、店舗が客の動線からよく見えるかどうかは、店舗を認識してもらう上で大切なポイントのひとつです。何気なく歩いたり車を運転したりして、ふと目にした店舗に立ち寄ることは、その店舗に高い視認性がないと実現しません。可能であれば、店舗から50~80m程度離れた場所からはっきりと見える立地が良いでしょう。

入りやすい立地を意識する

店舗や駐車場の入口の幅が広いと、人はその店舗に入るための抵抗感を覚えず立ち寄るハードルが下がります。そのため、入口の幅を十分に取ることができ、さらに客の動線に面しているなどといった立地条件を備えていれば有効です。逆に、入り組んだ場所にあったり入口が狭くわかりにくかったりする立地では、商圏をしっかり押さえていたとしても思ったような集客につながらないでしょう

条件に合う立地が見つからないときの対策

これまで、立地条件が店舗開業に重要な位置を占めると説明してきました。しかし、予算の関係や希望する立地に空きがないなどの理由で、それぞれの業種や商圏に見合わない立地に開業せざるを得ないこともあるでしょう。そのような場合にも、講じるべき策はあります。例えば、SNSやWebを駆使してこまめに宣伝を行い、地元以外のファンをつけることなどが代表的な打開策です。特にSNSは、経営者の人となりのファンになることから店舗に興味を持ってもらえる可能性があります。

そして、飲食業に関しては大手グルメサイトがひしめき合っており、店舗を探している人の目にも留まることも期待できます。また、資金に余裕があれば特徴的な広告を出して、顧客に印象づけるのも方法のひとつです。もし不利な立地条件で開業することになった時は、様々な方法で店舗をアピールしていきましょう。

まとめ

店舗を開業するとき、外観や内装などは何度でも変えることができますが、立地は簡単には変えられません。業種ごとや集客アップに適した立地がそれぞれに存在しており、立地条件を設定することは、安定した経営だけではなく今後の事業拡大にもつながる重要な要素です。自分の店舗に適した立地を探すためには、もちろん商圏や客の動線、視認性などの要素を分析することが大切です。そして、こうした各種分析や調査を自ら行うのが難しい時は、マーケティングやコンサルティングを専門的に行っている業者に依頼してみてはいかがでしょうか。

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(編集:創業手帳編集部)

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