【店舗付き住宅で開業】新築と中古の比較や押さえておきたいポイントなどを徹底解説

飲食開業手帳

店舗付き住宅での開業には注意すべきポイントもある


店舗付き住宅は、開業したいと考えているもののテナントの家賃を支払えるか不安に感じている方や、ランニングコストが気になっている方におすすめできます。
ただし、メリットが多いように思われがちですが、注意すべきポイントもあります。

そこで今回は、店舗付き住宅のメリットやデメリット、新築物件と中古物件の違い、購入する際に知っておきたいポイントについてまとめました。

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店舗付き住宅のメリット・デメリット


店舗付き住宅には、テナントとは異なるメリットとデメリットがあります。まずは、どのようなメリット・デメリットがあるのかを紹介します。

店舗付き住宅のメリット

メリットには、家賃がかからないことや低金利の住宅ローンを利用できること、税金の優遇が受けられること、貸店舗にできることなどが挙げられます。
それぞれのメリットを詳しく解説します。

店舗を持つための家賃がかからない

家賃は、店舗を経営する上で大きな負担になります。しかし、自宅と店舗が同じ建物であれば、家賃をかけることなく店舗を持てます。
貸店舗を利用する場合、家賃のほかに保証金なども必要になりますが、そのような費用もかかりません。

建築時にローンを組むと返済が必要になりますが、家賃を自宅と店舗の分を支払うよりも安くなるケースが多くあります。
家賃は固定費の中でも大きな割合を占めるので、それを削減できるのは店舗付き住宅ならではのメリットといえます。

金利が低い住宅ローンを組める

利用する金融機関にもよりますが、店舗付き住宅は金利の低い住宅ローンを組める場合があります
「建物の床面積のうち50%以上が住宅」などの条件があるので、前もって確認しておくことをおすすめします。
金利が低いローンを利用できれば返済の負担が抑えられるので、しっかりと調べて利用するメリットは大きいものです。

ただし中には、住宅の部分は住宅ローンを利用し、店舗の部分は事業用ローンを利用するというパターンもあります。
事業用のローンは住宅ローンより金利が高いので、結果的に高くなる可能性があるので要注意です。

税金の優遇が受けられる

税金の優遇が受けられるメリットも享受できます。土地や建物には、都市計画税や固定資産税が課せられるものですが、住宅の敷地は特例措置の対象になります。
敷地のうち200㎡までの部分は、建物が建っていない土地よりも都市計画税が1/3、固定資産税が1/6に軽減される内容です。

店舗付き住宅でも、条件を満たせば税金の優遇を受けられます。市区町村によって条件が異なるので、その地域ではどのような条件になっているのか確認してみてください。

貸店舗にすることも可能

事情があって店を閉めた場合でも、空いた店舗部分を有効活用できます。それが、貸店舗にするという方法です。
店舗部分を貸す場合、同じエリアにあるアパートの家賃相場よりも高く設定できるので貸店舗にするメリットも大きいでしょう。

体力に自信がなくなるまでは自分の店を経営し、引退してからは貸店舗にするのもおすすめの方法です。
店舗部分を無駄にすることなく、家賃収入も得られるので一石二鳥だといえます。
家賃収入を得られれば、老後資金に困ることも少なくなるので、店舗付き住宅を前向きに検討する価値は大いにあります。

店舗付き住宅のデメリット

店舗付き住宅には多くのメリットがありますが、デメリットに感じるものもあります。
主に、売却が難しいことや建築費が高くなること、店舗が空いたままになる場合があることです。これらのデメリットも確認してみてください。

売却が難しい

一般的な一戸建てと比較すると、店舗付き住宅の需要は低くなります。
店舗付き住宅を求める人は多くないので、買い手がなかなか見つからずに悩んでしまうかもしれません。
エリアによっては売却に時間がかかってしまい、予定どおりに動けないこともあります。

しかし、集客性が高いエリアならそのような心配は不要です。競争率の高いエリアで店舗を求める人が多ければ、売却活動はスムーズに進みます。
そのため、店舗付き住宅を建てたり購入したりする場合は、周辺環境をチェックして売却時に問題がなさそうかを吟味するようにしてください。

建築費が高くなる

店舗付き住宅の建築費は、一般的な一戸建てと比べると高くなってしまいます。しかし、工夫次第で建築費を抑えることも可能です。
なぜ高くなってしまうのかというと、トイレや水道、電気などの設備を多く設置する必要があり、工事も複雑になるからです。

貸店舗にする場合なら、オーナーが内装をしないスケルトン状態にすると、建築費がそこまで高くなりません。
最初から貸店舗として運用する予定があるのであれば、スケルトン状態で施工してもらうとコストを抑えられるので検討してみてください。

店舗が空いたままになる可能性がある

店舗付き住宅の店舗部分を貸す場合、すぐに借り手が見つかるとは限らず、貸した場合も、ずっと借り続けてくれるという保証もありません。
空室になってしまうと家賃収入はゼロになるので、後悔する場合もあります。

業態によって必要な設備も異なるので、どのような職業の人に利用してもらいたいかという点を明確にすることが重要です。
ノウハウも必要になるので、アパート経営などと比べると適応が難しいと考えられます。
万が一、借り手がいなくても問題ないローンの返済計画を立てなければいけないことも念頭に置いておくことが大切です。

店舗付き住宅の新築物件と中古物件の違いについて


店舗付き住宅の新築物件と中古物件には、それぞれに異なる特徴やメリット・デメリットがあります。
店舗付き住宅は新築で建てるケースが多いようですが、コスト面などを加味して中古物件を検討するケースもあります。以下に、それぞれの特徴などを比較してまとめました。

新築物件を建てる場合

新築物件の場合は、土地を購入してから建て始めます。
打ち合わせから引渡しまでに時間がかかってしまうだけではなく、中古物件よりもコストがかかってしまう点がデメリットに挙げられます。

しかし、新築なら建てるエリアのニーズに合わせた建物や、自身の要望を反映させた建物を実現できるといったメリットを享受できるのは大きな魅力です。
店舗の運営がしっかりとできるという前提になりますが、収入源があるのでローンの返済もスムーズに進む可能性が高くなります。

中古物件の選ぶ場合

中古物件は、新築物件と比べると購入費用を抑えられます。業態によってはすぐに店舗の運営をスタートできるので、収入面も早い段階から安定する可能性があります。
購入時のコストを抑えられるなどのメリットがあるので、資金計画にゆとりを持たせることも可能です。

しかし、中古物件は、間取りやデザインなどを大幅に変えることは難しいものです。
時代や地域のニーズに合わないデザインだと集客が難しくなる恐れがあるので、デメリットだと感じるかもしれません。

店舗付き住宅の購入費用はどのくらい?


店舗付き住宅を購入する場合、一般的な一戸建てよりもコストがかかります。具体的にどのくらいの費用が気になる人もいるのではないでしょうか。
続いては、店舗付き住宅の購入費用を新築の場合と中古の場合に分けてご紹介します。

新築物件の場合

飲食店用の店舗を新築で建てる場合だと、50坪の広さだと2,200~2,300万円が相場となっています。
戸建て住宅は住居として使われるので設備に大きな違いはありませんが、店舗付き住宅は業種によって必要な設備が異なります。
その違いによって建築費用に差が生まれるので、相場はあくまでも目安として考えておいてください。

アパレルショップなどの販売系であれば、ディスプレイ用の棚やハンガーラックがあれば営業できるので、大がかりな設備はなくても問題ありません。
しかし、美容院や飲食店などは設備投資がかなり必要になるため、予算に応じた店舗付き住宅を提案してもらうことがポイントになります。

中古物件の場合

中古物件を購入する場合、物件費用のほかに諸費用がかかります。
諸費用は、仲介手数料・登記費用・住宅ローン抵当権設定登費用・売買契約書の印紙代・固定資産税などです。
諸費用の目安は、中古の一戸建てだと物件価格の6~9%が目安です。

例えば、物件価格が3,000万円なら諸費用を含めた3,300万円弱がかかり、2,000万円なら2,200万円弱がかかると考えられます。
仲介手数料などは依頼先によって異なり、コストを抑えられる場合もあるので、事前リサーチが重要です。

店舗付き住宅を購入する際の6つのポイント


店舗付き住宅の購入を検討していて、失敗したくないと思っているなら、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
最後に、後悔しない買い物をするために知っておきたい6つのポイントをご紹介します。

1.新築なら実績が多いハウスメーカーを選ぶ

店舗付き住宅は、一般的な一戸建てとは違うので実績が豊富なハウスメーカーを選ぶようにしてください。
業態によって異なる店舗設計が必要になりますが、初めてだと言葉で説明されてもイメージが湧きにくいものです。
そのため、これまでに同じ業態の店舗付き住宅を設計・施工した際の図面を見せてもらうことをおすすめします。

どのような店舗を開くかによって、必要な設備や使用する建材も変わってきます。
豊富な実績に基づいた的確なアドバイスにより、自分では気が付けなかったような見落としを指摘してもらったり、どうしてそうすべきなのかという具体的な説明をしてもらえたりするかもしれません。

2.営業担当者の言いなりにならない

店舗付き住宅に関する知識がないと、どうしてもハウスメーカーの営業担当者の言うことがすべて正しいと信じてしまいがちです。
基本的に間違ったことを言っていないと考えられますが、知識不足を逆手にとって、住んでからのデメリットが大きい提案や、コストがかかる提案をする悪徳業者もいます。

例えば、店舗付き住宅なのに一般的な一戸建てと同じように扱えるとしてローンの申請を促すケースもあるので要注意です。
虚偽の申請だとバレてしまうと契約違反だとみなされます。
そうなると、ローンの一括返済を求められることになるので、言いなりにならず、知識を付けて正しく判断できるよう努めてください。

3.敷地の用途地域をあらかじめ確認しておく

建築基準法によって、地域ごとに土地の利用方法を定める用途地域が決められています。用途地域で認められた種類の建物しか建てられないことになっています。
また、店舗の場合は床面積の上限が定められている場合もあるので、敷地の用途地域はあらかじめ確認しておいてください。

店舗付き住宅を建てられるのは、第1種低層住居専用地域または第2種低層住居専用地域に分類されている土地です。
建てようと思っている土地はどの用途地域に分類されているのかは、市区町村役場にある都市計画図やインターネットで調べられます。

4.水回りはいくつ設置するか吟味する

業態にもよりますが、住居部分とは別にトイレやキッチンなどの水回りを設置しなければいけない場合もあります。
予算を抑えるために居住部分だけに水回りを設置するパターンもありますが、自宅のトイレを使われると不便に感じる場合があるので、別々に設置するようおすすめします。

特に、飲食店の場合はトイレを別に設置するケースが多いようです。小売店よりも長居したり、子連れで訪れたりする場合もあるためです。
自宅のトイレだけでは足りないことも考えられるので、店舗への設置も検討してみてください。

共有で使うのであれば、店舗から近い場所に設置するのも良いでしょう。そうすることで、プライベートな空間を侵害されずに済みます。

5.相見積もりを取る

似たような条件の店舗付き住宅でも、依頼するハウスメーカーや建築会社によって建築費用や受けられるサービス、得意とするデザインなどが異なります。
重機の手配をしてくれたり、ほかが真似できないような大胆なデザインや間取りにできたりするなどの特徴を持つハウスメーカーや建築会社もあります。

ひとつの会社から建築プランを提出してもらっただけでは、良し悪しの判断は難しいものです。
複数から相見積もりを取ることにより、相場はどのくらいか、内容に問題はないか、などを判断する指標になります。

正式に依頼するまでの期間であれば、複数の業者に見積もりを出してもらっても問題はありません。
見積もり自体も費用がかからないので、後悔しないためにも出してもらうことをおすすめします。

6.住宅ローンが使えない場合がある

店舗付き住宅の建築費用は、3,000万円以上かかるケースが大半を占めます。そのため、ローンを組むのが一般的です。
ローンには住宅用と事業用が合って、金利は住宅用のほうが安くなっています。

ここで注意したい点があります。
それは、住宅部分が全体の1/2以上を占める場合は住宅ローンですべての費用をカバーできますが、店舗部分が全体の1/2以上を占める場合は部分別にローンを使い分けなければいけないということです。

たった0.1%の違いで返済しなければいけない総額が数十万円単位で変わってしまいます。
できるだけコストを抑えるなら、すべて住宅ローンでカバーできるような物件を建てるようにしてください。
ハウスメーカーや建築会社にもその旨を伝えておくと、適した提案をしてくれるでしょう。

まとめ

店舗付き住宅は、店舗と住宅が同じ建物内にあるので家賃を二重で支払わずに済みます。店舗付き住宅ならローンの返済だけで済むのでメリットは大きいものです。

ただし、メリットだけではなく、売却が難しい、建築費が高くなるなどのデメリットもあります。
自分の求める条件を明確にするだけでなく、知識をつけること、実績のあるメーカーから複数見積もりを取ることも大切です。

創業手帳では、店舗の開業に関する情報も数多く発信しています。店舗開業に関するノウハウや知識を身に付けたい方も、ぜひご覧ください。

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(編集:創業手帳編集部)

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