個人事業開始等申告書とは?書き方や提出方法、ペナルティなどを解説
開業届とは異なる個人事業開始等申告書は出していなくてもペナルティはない
個人事業主となった時に開業届が必要なことは多くの人が知っています。では、個人事業開始等申告書については知っているでしょうか。
個人事業開始等申告書は、税務署に提出する開業届と混同されがちですが別物の書類です。
提出期限なども都道府県によって異なり、提出を催促されることがないので提出し忘れがちです。
個人事業開始等申告書を提出しなくても罰則がないため、提出していな人もいるかもしれません。
ここでは個人事業開始等申告書がどういった書類なのか、提出する流れも併せて紹介します。
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この記事の目次
個人事業開始等申告書とは?
自分の名前で事業をおこなって、税金の手続きも自分で行う個人事業主は、開業する時に開業届を提出します。
また、開業届とは別に個人事業開始等申告書も提出します。ここでは個人事業開始等申告書がどういった書類なのかまとめました。
個人事業の開始を都道府県に知らせるための書類
個人事業開始等申告書は、個人事業主として事業をはじめたことをそれぞれの都道府県税事務所に届け出るための書類です。
提出のタイミングは、都道府県ごとに異なります。
例えば、東京都の場合は個人事業を開始した日から15日以内の提出が原則です。大阪の場合は開業日から2カ月以内と、都道府県によってばらつきがあります。
自分が住んでいる場所ではどのように定められているのか調べてみてください。
個人事業開始等申告書に関係している税金は、個人事業税です。個人事業税は地方税(都道府県税)の一種で、事業所得が290万円を超える場合に課されます。
個人で事業をおこなえば、行政サービスを利用するケースもあるでしょう。個人事業税は、行政サービスの利用によって発生した経費の一部を負担する趣旨の税金です。
個人事業開始等申告書を提出しなくても良いケース
個人事業開始等申告書は、提出していなかったケースも散見されます。
提出しなくても不利益がなく、各都道府県事務所が提出するように催促することもありません。
そもそも個人事業開始等申告書を提出しなくても良いケースもあります。
都道府県によって規定は違いますが、東京都の場合は個人事業税の納税義務者が事業開始等の申告義務があるとしています。
つまり、個人事業税の納税義務者でなければ提出は不要です。
個人事業税の納税義務がある法定業種は70種あります。
確定申告の後から業務内容についての質問が送付され、それに回答すると都道府県税事務所が納税義務者であるか判断されます。
個人事業開始等申告書が必要かどうか、所轄の税事務所のホームページを確認してみてください。
個人事業開始等申告書と開業届の違い
個人事業開始等申告書は提出していなくても、開業届は提出しているかもしれません。開業届は、国税である所得税にかかわる書類です。
開業届を提出すると、税務署が事業所得を把握して所得税の計算や納税が必要になります。
以下の表で個人事業開始等申告書と開業届の違いについてまとめました。
提出する書類 | 税金の種類 | 税金 | 書類の提出先 | 提出期限 |
開業届 | 国税 | 所得税 | 税務署 | 個人事業を開始してから1カ月以内 |
個人事業開始等申告書 | 地方税 | 個人事業税 | 都道府県税事務所 | 各都道府県で異なる(東京都の場合は個人事業を開始してから15日以内) |
開業届は、事業を開始した日から1カ月以内に提出するように定められています。一方で個人事業開始等申告書は、地方税である個人事業税にかかわる書類です。
個人事業開始等申告書を提出することによって、都道府県が事業所得を把握します。提出期限は各都道府県によって違うので注意してください。
開業届も個人事業開始等申告書も事業所得を申告するために必要となる書類ですが、所得税と個人事業税は別の税金です。
開業届と個人事業開始等申告書の両方の書類の違いを正しく理解しておいてください。
個人事業開始等申告書の入手方法
個人事業開始等申告書は、各都道府県にある主税局や、県税事務所で手に入ります。また、個人事業開始等申告書はインターネットでダウンロード可能です。
各都道府県のホームページに個人事業開始等申告書の用紙があるほか、記入例や添付書類の一覧も計算されています。
ダウンロードしてから印刷して手書きしても、入力してから印刷してもどちらでも問題ありません。詳しい内容については、それぞれのホームページを参照してください。
個人事業開始等申告書提出期限
個人事業開始等申告書は、各都道府県によって提出期限が違います。提出期限を知りたい場合には、その地方自治体に問い合わせてみてください。
また、インターネットで「都道府県名 事業開始等申告書」といった形で検索すると調べられます。
個人事業開始等申告書の書き方
個人事業開始等申告書は、都道府県、その地方自治体ごとに異なります。ここでは一般的な個人事業開始等申告書についての書き方を紹介します。
事業所の所在地、名称・屋号、事業の種類
事務所(事業所)の所在地の住所や電話番号を記入します。また、事務所の名称や屋号を記載してください。
屋号がない場合には空欄で問題ありません。事業の種類は、サービス業などその事業の内容を記載します。
事業主の住所、氏名、電話番号
事業主の欄には、事業主にかかわる情報を記載します。事業主の氏名や住所、電話番号を記載してください。
事業主の住所と事務所が同じである場合には「同上」と記載します。
開始・廃止・変更等の年月日
「開始・廃止・変更等の年月日」の欄があるので、ここでは開業日を記入します。個人事業主として事業をはじめた年月日を記載してください。
各都道府県で事業開始等申告書を提出する期限は決まっています。開業した日から提出までの期間が遅くならないように計画的に提出しましょう。
事由等
「事由等」の欄は「開始」があるので○で囲みます。個人事業を廃止する時に「廃止」を囲み、その他事由がある時には別途記載が必要です。
申告書の提出日
個人事業開始等申告書を提出する提出日を記載してください。記入した日と実際の提出日の間のズレが1日、2日程度であれば問題はないでしょう。
しかし、記入した日と実際の提出日が大きくずれてしまった場合には、書類を書き直すようにおすすめします。
事業主の氏名、押印
氏名欄が用意されているので、事業主の名前を記載して押印してください。押印は認印で問題ありません。
最後に記載内容に問題がないことを確認して、提出する事務所を記載します。住んでいる都道府県によって事務所名も異なりますので注意が必要です。
東京都の場合には、都税事務所を記入します。
個人事業開始等申告書の提出方法
個人事業開始等申告書を記載したらその地方自治体の事務所に提出します。書類の内容や提出方法について、詳しい内容は事前に都道府県税事務所に問い合わせてください。
ここでは一般的な提出方法を紹介します。
申告書の提出先
記載した個人事業開始等申告書を都道府県事務所や市町村に提出します。提出期限も都道府県によって異なるため、事前に確認しておくようにしてください。
申告書以外に必要な書類
個人事業開始等申告書の提出は、個人事業開始申告書のみ必要です。ただし、事業の種類によって、別途添付書類が求められます。
具体的には、建設業のように許認可が必要な事業では、許認可の証明書や届出書の写しを添付します。
また、手続きを円滑にするには、開業届の控えやマイナンバーを準備しておいてください。
開業届の控えがあることで、開業日や事業の内容を確認できます。また、マイナンバーは個人事業主としての納税番号として使用されます。
税務署での処理がスムーズにするためにも事前にどういった添付書類が必要なのか調べておくようにしてください。
個人事業開始等申告書を提出しなかった場合のペナルティは?
個人事業開始等申告書は、うっかり提出を忘れてしまうケースも珍しくありません。提出しなかった場合、何らかのペナルティを受けることはあるのでしょうか。
個人事業開始申告書を提出していない場合について紹介します。
期限までに提出しなくてもペナルティはなし
個人事業開始等申告書は、提出期限までに提出しなくても罰則やペナルティはありません。
もしも、期限を過ぎてしまっていたとしても提出できるので、気が付いた時に速やかに提出するようにしてください。
個人事業税の課税対象の場合納税通知書が届く
開業してから、個人事業開始等申告書の提出しなければならないことに気が付かずそのままにしているケースも決して少なくありません。
しかし、個人事業開始等申告書を提出しなかったとしても、確定申告をすると個人事業主の事業所得の情報は都道府県に伝わります。
そして個人事業税の課税対象になった時には、事業主のもとに納税通知書が届きます。
個人事業開始等申告書を提出していなくても、事業所得が290万円を超えた時には個人事業税を払うことになるので注意してください。
個人事業開始等申告書以外にも開業時に必要な書類・手続き
個人事業主として事業をはじめるには、個人事業開始等申告書以外にも様々な書類の提出が必要です。個人事業開始等申告書と併せて、手続きの準備を進めてください。
どういった手続きが必要なのか紹介します。
開業届
開業届は、正式名称を「個人事業の開廃業等届出書」と呼び、開業や廃業の時に提出する書類です。
開業届も個人事業開始等申告書と同様に提出しないことによるペナルティはありません。
しかし、開業届は事業をはじめた日から1カ月以内に提出するように定められています。
後述する青色申告承認申請書と同じタイミングで出すようにすると手続きがスムーズです。
青色申告承認申請書
個人事業主は、青色申告と白色申告のどちらかの確定申告を選ぶことになります。青色申告承認申請書は、青色申告を選択する時に提出する書類です。
青色申告を選択することによって、青色申告特別控除のように税制上の優遇を受けられます。
青色申告承認申請書の提出期限は、原則として青色申告をしようとする年の3月15日までです。
その年の1月16日以後に新しく事業をはじめた場合には事業を開始した日から2カ月以内が期限です。
配偶者や親族が事業に従事する場合には、支払った給与を必要経費とするために「青色事業専従者給与に関する届出手続」も提出してください。
給与支払事務所等の開設届出
給与支払事務所等の開設届出書は、新たに従業員を雇用して給与を支払う時に税務署に提出する書類です。その事実があった日から1カ月以内に提出しなければいけません。
開業届には従業員に支払う給与に関する項目が設けられているので、開業時には必要ありません。
開業時に給与について記載していなくて、新しく従業員を雇用することになった場合には、この書類を提出します。
所得税の棚卸資産の特別な評価方法の承認申請書
個人事業主が、備品や車両といった固定資産を保有している時には、基本的には定額法で減価償却を計算することになります。
「所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書」は、定額法以外の方法で減価償却したい時に提出する書類です。
計算方法を変えたい年の確定申告の期限までに税務署に提出してください。
業務に必要な許認可・資格
上記では、個人事業主が開業する時に必要な手続きを紹介しています。しかし、業種によっては別に許認可や資格が求められます。
例えば、飲食業では「食品衛生責任者」や「営業許可書」が必要となり、必要な許認可をないままに営業すると罰金などのペナルティを受けることになるのです。
許認可や資格の中には、取得するために講習や試験を受けなければいけないものもあります。
事務所や店舗のオープンがある場合はスケジュールも考えて必要な許認可や資格も取得しておくようにしてください。
まとめ・事業開始時に個人事業開始等申告書も提出しよう
個人事業開始等申告書は、都道府県税事務所に提出する書類です。
提出しなくてもペナルティはなく、個人事業税を納税する必要があれば未提出であったとしても納税通知書が届きます。
個人事業主として開業する時には、ほかにも開業届や青色申告承認申請書を提出しなければいけません。どのような書類が必要になるのか確認して準備しておいてください。
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(編集:創業手帳編集部)