蛍光灯製造が2027年で廃止!中小企業がやるべきことやLED交換で使える補助金を紹介
2027年の製造廃止までに中小企業はLEDへの切り替えが必須!
照明器具にも様々な種類がありますが、オフィスや工場などでは「蛍光灯」が用いられているという企業も多いです。
しかし、蛍光灯は2027年末をもって製造と輸出入が禁止になることが発表されました。
2023年10月末に開催された「水銀に関する水俣条約」の第5回締約国会議の中で合意されています。
これを受け、2027年の製造廃止までに中小企業はLEDへの切り替えが必要となります。
今回は、2027年末までに中小企業がやるべきことや早めに対策すべき理由、LED電球を選ぶ際のポイントなどをご紹介します。
さらにLED交換で使える補助金制度なども解説しているので、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
2027年で蛍光灯が製造廃止に!中小企業が必ずやるべきこと
2027年で蛍光灯の製造廃止が決定しましたが、それまでに中小企業はどのようなことをやっておくべきなのでしょうか。ここで、事前に必ずやるべきことをご紹介します。
職場の照明が蛍光灯かどうかを確認する
まずは現状を把握するために、オフィスなどで使用している照明器具が蛍光灯かどうかを確認していきます。
既にすべての照明器具がLEDに切り替わっているのであれば、交換をする必要はありません。
しかし、職場の照明が蛍光灯のままだったり、LEDに変更していたと思ったら一部だけ蛍光灯だったりするケースもあります。
このような場合はLEDへ切り替える必要があるため、施工の計画を立てておくことが大切です。
蛍光灯を早めにLEDに切り替える
2027年末で製造廃止や輸出入が禁止されるということもあり、まだ猶予があるためそこまで焦る必要はないだろうと考える方もいます。
しかし、LEDへの切り替えが必要となった場合、電気工事業者に依頼しなくてはなりませんが、猶予ギリギリだと駆け込み需要の影響で電気工事業者が確保できない可能性が高いです。
場合によっては数カ月先まで予約が入っており、すぐの対応は難しいと言われてしまう可能性もあるため、早めに切り替えたほうが安心です。
蛍光灯の製造が廃止される背景
そもそもなぜ蛍光灯は製造が廃止されてしまうのでしょうか。製造廃止の背景として、健康と環境への影響が挙げられます。
蛍光灯には原料として微量の水銀が用いられています。水銀は四大公害病に分類される「水俣病」の原因となった物質です。
水俣病は中毒性の神経疾患であり、運動失調や感覚障害などを引き起こしてしまいます。
また、水銀は水や土壌などを汚染してしまうことから、スイスのジュネーブで実施された「水銀に関する水俣条約」という国際条約により、水銀を含む製品の製造・輸出入が原則禁止されました。
この時点では電球形蛍光灯やコンパクト形蛍光灯などが対象でしたが、2027年末までには直管蛍光灯も製造・輸出入禁止の対象に加わり、一般照明用の蛍光灯はすべて禁止されることになっています。
あくまで製造と輸出入が禁止されるだけで、売買や使用に関しては制限がないため、既存の蛍光灯が寿命を迎えるまで使い続けても問題ありません。
しかし、2028年以降は蛍光灯の入手が困難となるため、早いうちに別の照明器具へと切り替える必要があります。
蛍光灯の廃止による影響は?2027年までに対策すべき理由
蛍光灯が廃止されることで、様々な影響が生じてきます。ここでは、2027年までに対策すべき理由について解説します。
蛍光灯の品不足や値上がりの可能性がある
2027年に廃止されることが決まっていることから、国内の主要メーカーでは続々と生産が終了している状況です。
蛍光灯のみ3社だけが生産している状況ですが、いずれのメーカーも原材料の価格高騰や物流のコスト、電気・ガス代の増加などを理由に値上げを行っています。
まだ廃止になっていなくても値上げを続けているため、廃止直前にはさらなる値上げをする可能性が高いです。
また、そもそも蛍光灯の生産量が減っていることから、今後は品不足に陥る可能性があり、より入手が難しい状況に陥るかもしれません。
LEDが値上がりする可能性がある
蛍光灯から別の照明器具へと切り替える必要がありますが、その切り替え先として候補に挙がってくるのがLEDです。
LEDには水銀が使われていないため、環境負荷が小さいという特徴を持っています。
2024年時点で樹脂や鋼材など原料価格の高騰から、多くのメーカーが値上げに踏み切っていますが、今後はさらにLEDへの切り替え需要からさらなる値上げが行われると予想されます。
早めに切り替え行っておかないと余計にコストがかかる可能性も視野に入れてください。
蛍光灯の交換・修理ができなくなる
機械の生産が終了することで部品の交換や修理ができなくなることと同様に、蛍光灯でも交換や修理ができなくなることも考えられます。
今後は万が一照明器具に不具合が発生しても、蛍光灯の廃止によって交換・修理を行わない業者も増えてくるでしょう。
蛍光灯の交換や修理を行わない業者が増えることも懸念し、早めに別の照明器具へ切り替えておくと安心です。
蛍光灯からLEDに切り替えるメリット
蛍光灯からLEDに切り替えると、様々なメリットを得られます。ここで、LEDに切り替えるメリットをご紹介します。
ランニングコストを削減できる
LED照明は蛍光灯の約4倍、白熱電球の約40倍は寿命が長いとされています。約40,000時間も持つため、交換作業の頻度も蛍光灯より低いです。
交換頻度が低いということは、それだけ新しいLED照明を購入しなくても良くなるため、ランニングコストの削減にもつながります。
また、LEDは蛍光灯に比べて消費電力が少ないのポイントです。蛍光灯からLEDに切り替えるだけで消費電力は約2分の1まで抑えられます。
発熱量が少ない
LED照明も発熱はするものの、蛍光灯に比べて発熱量が少なく、発火や火傷をするリスクは低くなります。
これは光源が熱をほとんど持っておらず、発光効果も低下しないため発熱量の少ない状態が続くためです。
発熱量が少ないということは部屋の温度にも影響を与えにくくなるため、空調の効きが良くなり、空調機器の節電にも効果が期待できます。
機能性が高い
LED照明には調光・調色機能が備わっているものもあり、部屋の雰囲気に合った調光・調色が可能です。
また、耐衝撃性も高く、通常の蛍光灯であれば落下すると簡単に割れてしまうものの、LED照明なら耐衝撃性によって破損しにくくなっています。
他にも電気のスイッチを入れると点灯するまでにラグがなかったり、紫外線を発していないことで虫が寄り付きにくかったりします。
展示商品などの変色も防ぎ、展示物の保護に活用することも可能です。
LED電球を選ぶ際のポイント
実際にLED電球を取り入れる場合、以下でご紹介するポイントを押さえながらどの電球にするか決めてみてください。
口金のサイズ・種類を確認する
まずは口金のサイズと種類を確認します。口金は照明器具に電球を取り付けるための部分です。口金のサイズと種類は主にE26、E17、E12、E11に分かれます。
主要な照明器具に使われているのはE26、ダウンライトや間接照明などで使われているのがE17で、さらに小型の照明器具に使われるのがE12やE11です。
サイズが分からなくても口金の直径を定規などで測定すれば確認できます。
用途に合わせて電球の形状を選ぶ
次に、用途に合わせて電球の形状を選びます。例えば、これまで電球形の蛍光灯やシリカ電球(白熱電球)を使っていた場合、一般電球タイプのLED電球を選びます。
その他にも小型電球やクリア電球、シャンデリア電球、ボール電球など、各形状の電球が揃っているため、これまで使用していた白熱電球の形状も確認しつつ、同じまたは類似品を探してみてください。
照明器具に合った光の広がり方を選ぶ
どこに使用する照明器具かによって、光の広がり方も確認しておきます。例えば白熱電球と同じように空間全体を照らしたい場合は配光角260°を選びます。
トイレや洗面所など、下方向を明るく照らしたい場合は配光角140°を選んでみてください。
配光角に関しては、各メーカーによってタイプ名称が異なっています。
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- 配光角260°:空間全体を照らすタイプ、全方向タイプ
- 配光角180°:広範囲を照らすタイプ、広配光タイプ
- 配光角140°:下方向を照らすタイプ、下方向タイプ
照明器具の仕様を確認する
安全に使用するためには、照明器具や使用場所に最適なLED電球を選ぶ必要があります。そのためには照明器具の仕様もチェックしておくことも重要です。
例えば調光機能や回路が照明器具側に備わっている場合は、必ず調光器に対応したLED電球を選ぶようにしてください。
また、ダウンライトなど断熱材施工器具や密閉型器具などに使用するLED電球を選ぶ場合も、それぞれ専用のLED電球を選ぶことが大切です。
電球のパッケージには各照明器具に対応しているかどうかが記載されているので、こちらも確認してください。
明るさや光色を確認する
LED電球の明るさは全光束(ルーメン)でパッケージに表記されています。使用している白熱電球と同じルーメンのLED電球を選択してください。
また、光の色も商品の種類によって異なります。光の色は電球のような温かみのある光を放つ「電球色」、温かみと明るさが両立した「温白色」、ナチュラルな光の「昼白色」、クールな雰囲気になる「昼光色」があります。
オフィスに使用するなら、目が疲れにくく作業効率も高めてくれる「昼光色」や、一般的なオフィスにも採用されており集中力を維持する効果が期待できる「昼白色」がおすすめです。
蛍光灯からLEDへの交換に使える補助金・助成金制度
蛍光灯からLEDに切り替えるためには、購入コストだけでなく照明器具の施工費用などもかかります。
コストをかける余裕があまりない場合は、補助金・助成金制度を活用するのがおすすめです。
補助金・助成金制度は国だけでなく、都道府県や市区町村でも実施しているところがあるため、自治体のホームページも確認してみましょう。
省エネ設備への更新支援(省エネ補助金)
省エネ補助金は、国内で事業を営む法人と個人事業主を対象に、省エネ設備や機器の更新費用の一部を支援してもらえる補助金です。
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- Ⅰ:工場・事業場型
- Ⅱ:電化・脱炭素燃転型
- Ⅲ:設備単位型
- Ⅳ:エネルギー需要最適化型
このうちⅢの対象機器には、制御機能付きLED照明器具が含まれています。
ただし、2024年7月1日で2次公募の受付が終了しており、予算を超える申請があったとして3次公募を実施する予定はないとの通知がありました。
それでも省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金(Ⅰ,Ⅱ,Ⅳ)は4次公募を実施しており、Ⅳのエネルギー管理支援サービスの活用でLED交換が利用できる可能性もあります。
【(Ⅲ)設備単位型】
補助対象経費 | 設備費 |
補助率 | 1/3以内 |
補助金限度額 | 上限:1億円/事業全体 下限:30万円/事業全体 |
【(Ⅳ)エネルギー需要最適化型】
補助対象経費 | 設計費、設備費、施工費 |
補助率 | 中小企業者等:1/2以内 大企業、その他:1/3以内 |
補助金限度額 | 上限:1億円/事業全体 下限:100万円/事業全体 ※複数年度事業の1事業あたりの上限額は1億円 |
既存建築物省エネ化推進事業
既存建築物省エネ化推進事業は、国土交通省が実施している省エネ改修工事に対して行われる支援です。
建物の省エネ改修やバリアフリー改修、さらにLED照明を含んだ高効率設備への改修が対象となります。
令和6年度の公募は5月29日までで既に終了していますが、次年度も公募が行われる可能性があります。
以下でご紹介するのは令和6年度の公募情報です。公募に参加する際は必ず最新の情報を確認するようにしてください。
補助対象経費 | 省エネ改修工事の費用 エネルギー使用量の計測などに要する費用 バリアフリー改修工事の費用(省エネ改修と併せて行う場合に限る) 省エネ性能の表示に要する費用 |
補助率 | 1/3(改修工事を実施する建築主などに対して国が費用の1/3を支援) |
補助金限度額 | 1件5,000万円(設備改修にかかる補助限度額は2,500万円まで) ※バリアフリー改修の場合、当該改修にかかる補助額2,500万円または省エネ改修にかかる補助額を限度に加算 |
LED照明節電促進助成金(東京都)
LED照明節電促進助成金は、東京都内で製造業を営む中小企業者や中小企業団体を対象に、LED照明器具やデマンド監視装置などを設置する際に必要な経費の一部を助成する制度です。
令和6年度の申請スケジュールでは現在第2回まで受付が終了しており、第3回が令和7年1月8日~1月15日に開催される予定です。
申請するためには、ネットクラブ会員への登録が必要であり、さらにJグランツによる電子申請によって申請書類を提出します。持参や郵送などには対応していないので、注意してください。
助成対象経費 | 以下節電対策設備(付帯設備含む)の購入・設置にかかる経費 ・LED照明器具(既存の照明器具と交換する場合のみ) ・デマンド監視装置 ・進相コンデンサ ・インバータ |
助成率 | 助成対象経費の1/2以内 |
助成金限度額 | 1,500万円(申請下限額30万円) |
まとめ・中小企業は蛍光灯が廃止する前に対応しよう
蛍光灯は2027年末までに製造と輸出入の禁止が発表されますが、2027年にギリギリで対策を講じても余計に交換費用がかかったり、電気工事業者の予約が取れず数カ月待たなければならなかったりする可能性があります。
こうした事態に備え、まだLED照明への交換が済んでいない中小企業は、早めの対策が必要です。
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(編集:創業手帳編集部)