確定申告をしないとどうなる?リスク・デメリットを解説
個人事業主の確定申告は絶対に必要!しない危険性とペナルティ・対処法
個人事業主やフリーランスにとって確定申告は義務ですが、しなくてもリスクやデメリットがないなら面倒な確定申告はしたくない人もいるかもしれません。
しかし、確定申告をしないと無申告加算税や延滞税が発生するペナルティがあります。ほんの少しの慢心で大きなリスクを負うため、リスクと対処法を知りましょう。
個人事業主やフリーランスは特に注意が必要ですが、中には会社員でも必要な人がいます。ぜひこちらの記事を参考にしてみてください。
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この記事の目次
確定申告をしないとどうなる?ペナルティやデメリット・リスク
真面目に確定申告をしている個人事業主やフリーランスでも、もし確定申告をしないとどうなるか、ふと疑問に思うことがあるかもしれません。
また、確定申告しなくても良いなら、したくないと考えることもあるでしょう。
確定申告は、個人事業主やフリーランスに必要な税申告の方法で、一定の条件を満たす人は絶対に必要です。
また、会社員の場合でも必要となるケースがあります。条件を満たしている場合には、どんな人でも確定申告しないとデメリットが生じる恐れがあるため注意が必要です。
確定申告が必要なのに申告しないでいると、思わぬところから綻びが生じ、バレることが多くあります。
それでは、実際に確定申告をしないとどうなるのか、生じるデメリットやリスクについて知っておきましょう。
確定申告をしないことによるペナルティ
確定申告をしなかった場合に考えられるのは、罰則によって課せられる加算税の数々です。
確定申告をしなかった場合には、本来納税すべきだった金額に加えて、罰金がさらに発生します。罰金の重さは、その状況によって変わります。
悪質な場合には非常に重いペナルティとなることもあるため、軽い気持ちで確定申告を無視してはいけません。
無申告加算税
無申告加算税は、文字通り確定申告の必要がある所得を得ていたにもかかわらず、申告しなかった時に課せられる加算税です。
本来納付しなければいけなかった税額に税率を掛けて算出されます。税率は50万円までは15%、50万円を超える部分は20%です。
無申告加算税は、税務署の指摘を受ける前に自主的に確定申告をした場合、課税額が軽減されることがあります。
軽減される場合の税率は5%です。うっかり忘れていて確定申告の時期を過ぎてしまった場合などは、自分から速やかに申告したほうが支払う金額が抑えられます。
具体的な免税の条件は、確定申告の期限後の1か月以内に自主的に申告している、法廷納期限までに全額納税している、期限後に申告書を提出した日の前日から過去5年間さかのぼっても、無申告加算税または重加算税を課されていないことです。
ちなみに口座振替納付にした場合は、期限後に申告書を提出した日までに全額納付をします。
延滞税
延滞税は、確定申告忘れではなく、確定申告をしたあとに納税の期限を破ってしまった時に課せられる税金です。
法定納期限の翌日から発生し、納付が済むまでの日数分を課せられます。
延滞税の金額は、法定納期限の翌日から2カ月までと、2カ月以降で変わります。
令和3年1月1日以降の延滞税は、2カ月までが年7.3%と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低いほうになり、2カ月を経過したあとは原則として年14.6%と「延滞税特例基準割合+7.3パーセント」のいずれか低いほうです。
このように、長期間延滞すればするほど税率も高くなり、税額も嵩んでいきます。
自己申告で早めに納税すればさらに軽減される可能性もあります。悪質なごまかしや隠ぺいと取られないためにも、早めに申告する必要があります。
重加算税
重加算税は、確定申告をしなかった場合のもっとも重いペナルティです。
確定申告の必要がある所得があるにもかかわらず、無申告であり、その内容が悪質と判断された場合に課せられます。
悪質と認められるケースとしては、帳簿の改ざんや二重帳簿などの隠匿行為があります。
重加算税の税率は、追加本税の35~40%と非常に高い税率で、事の重大さがわかります。
過少申告加算税
確定申告をし納付した税額が本来納税するべき税額より少ない場合、過少申告加算税が課せられます。
しかし自分で納税額が少なかったことに気づき、修正申告をして新たに納税すれば課税されないでしょう。
税務署による調査ののちに修正申告をした、または税務署から納税額の間違いを正された場合、新たな納税額に加えて過少申告加算税がかかってしまいます。
過少申告課税は新たに納税する額の10%ですが、新たな納税額が初めの申告納税額と50万円のどちらか多い方を超えているときは、超えた分の税率が15%となります。
確定申告をしないことによるデメリット
確定申告をしないとどうなるか考える際には、罰金としてのペナルティだけでなく、本来受けられたはずの手続きが受けられなくなるリスクも考慮しなければなりません。
必ずしも確定申告はしなければいけないわけではありません。しかし、申告しなくても良いケースでも、申告しないことで不利益を被る恐れはあるため、注意が必要です。
保険料の減免が受けられない
国民健康保険の保険料は所得によって減免が受けられることがあります。特に、個人事業主の事業が赤字だった場合などにはありがたいシステムです。
しかし、確定申告をしないと所得を証明する所得証明書を発行してもらえず、保険料の減免の手続きができません。
収入証明を行う書類がなくなる
確定申告をしないと、収入を証明する書類を作れなくなります。
確定申告は収入が少ない場合、しなくても問題はありませんが、その際には収入証明ができなくなり、無収入と同じように見なされてしまいます。
収入の証明ができなくなると、資金調達もできません。
融資や各種補助金、給付金の申請などには、確定申告書類の提出が求められ、無申告の場合には申込みさえできなくなります。
青色申告できなくなることも
申告忘れで申告期限を守れなかった場合、青色申告者は青色申告の承認を取り消される恐れがあります。
青色申告の承認の取り消しは、2期連続で期限を破った場合です。無収入であったとしても、申告しなくてはいけません。
特別な控除や経費計上のしやすさなど、青色申告には様々な特典があります。
青色申告をしている人は、収入がいくらであっても毎年欠かさず、期限を守って申告することが必要です。
わざと確定申告で不正をした場合
わざと確定申告で不正をした場合には、ペナルティとして追加される税も高くなります。
自主的に申告するなど、その後の誠実な対応でペナルティが軽くなることはありますが、反対に悪質な行為があるとより重いペナルティが課せられます。
場合によっては刑事罰に問われることもあるため、刑罰を甘く見ないようにしましょう。
悪質な場合は刑事罰に
所得を少なく申告したり、売上を隠ぺいしたりするなどの行為は「ほ脱」と呼ばれ、前述のペナルティに加えてさらに刑事罰が科せられることがあります。
これは悪質な納税者の刑事責任を追及するために作られたルールです。
無申告で、なおかつ故意に納税を免れる意思があった場合には、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、または、その両方が課せられます。
また、故意ではなくても、無申告で1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられることもあります。
【ケース別】確定申告しないとどうなる?
個人事業主やフリーランスは原則的に確定申告が必要、会社員でも例外的に確定申告が必要となることがあります。
しかし、その例外的なケースがどのような時なのかがわからなければ、確定申告の必要性を正しく判断できません。
また、原則的に確定申告の必要な個人事業主でも不要なケースもあり、一概に個人事業主だから必要とも言いにくい場合があります。
そこで、個人事業主やフリーランスでも確定申告が必要のないケースや会社員でも必要なケースについてまとめてみました。
副収入がある
会社員をしている人に副収入があった場合、確定申告が必要となる場合があります。
副収入は、副業をして得たものや不動産売買の収入、株やFXなどの投資による収入など、様々なものが該当します。
副収入が経費を引いて20万円を超えた場合には、確定申告が必要です。
個人事業が赤字
個人事業主でも、必ずしも収益が上がって儲けが出るとは限りません。
個人事業で赤字になった場合には、確定申告をしなくてもペナルティなどを受けるリスクはありません。
個人事業主の場合、制度上は事業所得が48万円以下であれば確定申告は不要です。
しかし、個人事業主の確定申告は社会的信用を得るためのものでもあるため、赤字でも確定申告しておいたほうが良いとも考えられます。
また、赤字の際に確定申告をしておくと、減免措置や青色申告では赤字の繰り越しなども利用可能となります。
赤字の場合、確定申告は義務ではなくなりますが、翌年以降のことを考えるとやっておいたほうが良いでしょう。
無職・無収入
会社員だった人が年の途中で退職し、同じ年度内に再就職していない場合など、無職で無収入になった場合も注意が必要です。
年の途中で退職した場合には、勤務していた会社でその年の年末調整ができません。
そのため、退職するまで稼いでいた金額によっては、確定申告が必要となるケースがあります。
確定申告をすると払いすぎた税金が戻ってくる可能性が高く、特に1月、2月頃に退職して無職のままの人は還付額が多い傾向にあります。
勤続年数が長いと退職金を受け取るケースがあり、この場合も確定申告をした方が還付金を期待できます。
退職金は勤めた会社で税金を差し引いたあとの額を渡すことが通常のため、改めて確定申告する必要はありません。しかし年度内に控除しきれなかった額があれば、受け取った退職所得と相殺することもできます。
退職と同時に専業主婦(専業主夫)になった場合も同様で、それまでの収入額によっては確定申告が必要です。
また、さらにこの場合には、タイミングによっては控除の申請などで配偶者も確定申告しなければいけないことがあります。
確定申告しないと税務署にバレる?わかってしまう理由
確定申告しないとどうなるか、疑問に思っている人の中には「バレなければ大丈夫」と考えて危ない橋を渡ろうとする人もいるかもしれません。
しかし、確定申告をしないと、様々な理由から税務署にわかってしまうことが多いのです。
ここでは、「バレなければ大丈夫」と考えることの倫理的な問題はともかく、バレるリスクについて考えてみます。意外と身近なところで足元をすくわれることもあるようです。
税務署が取引先の支払調書を確認
確定申告をしていないことがバレる原因としては、まず、取引先の支払調書が挙げられます。
個人事業主やフリーランスが外注で仕事を受けると、支払調書を発行してもらうことがあります。支払調書は報酬や料金などを支払った企業・個人事業主などが発行する書類で、支払った相手の氏名・住所・支払い金額・源泉徴収税額が載っています。
この支払調書は、個人事業主側が確定申告の際に使うだけでなく、取引先も税務署に提出するものです。
税務署は提出された支払調書をもとに、報酬を受け取った個人事業主を知ることができます。
一定以上の報酬を受け取っているにもかかわらず、その個人事業主が確定申告をしていなければ、すぐにチェックされてしまうでしょう。
確定申告の必要がある人は、必ず申告をしましょう。正確な収入金額と源泉徴収税額は支払調書を見ればわかるので、確定申告書へ記入できます。支払調書は確定申告の際に提出不要の書類ですが、1年分保管しておき確定申告に使うと計算の手間をはぶけて便利です。
税務署の税務調査
税務署の行っている税務調査でも、確定申告していないことがバレることがあります。
税務調査とは、税務署の調査官が納税者の税務申告が正しく行われているかを調べる調査です。
自分自身が調査の対象にならなければ安心だと思えますが、取引先に調査が入った時もバレるリスクは高くなります。
取引先がどこに仕事を依頼していたかチェックされると、仮に自分が申告していないのに収入があったことがすぐにバレます。
銀行口座の情報でわかる
無申告の疑いがある人の口座を、税務署は必要な範囲で調査ができます。いわゆる税務調査と呼ばれる行為で、第三者である銀行が管理する口座の動きはごまかしがききにくく、無申告を発見しやすい情報です。
納税者側に税務署が銀行へ調査していると知らされずに動くため、本人の知らないうちに調べられていることがあります。
一般取引資料せんからわかる
一般取引資料せんとは、税務署が事業者に対して「売上、仕入れ、費用及びリベート等に関する資料」を提出するよう文書を送付する場合があり、このときに作成して提出する資料をさします。
一般取引資料せんの提出を求められたからといって、無申告の疑いがあるわけではなく、あくまで適正かつ公平な課税のために行っています。しかし、無申告の状態で提出すると税務署にバレる可能性があります。
国税庁の無申告取り締まり調査
国税庁でも、経済や社会の変化に応じて無申告の調査を行うことがあります。
国税庁の無申告取り締まり調査では、その年によっては個人事業主やフリーランスに焦点を当てることもあるため、いつ調査が入ってバレるかわかりません。
知人のタレコミ
意外にも思える理由ですが、知人のタレコミによって確定申告をしていないことがバレることもあります。
「人の口に戸は立てられぬ」とも言うため、ズルをして得しようとしている人を良く思わない人は多いものです。
確定申告の期限が過ぎてしまった場合の対処法
確定申告の期限が過ぎてしまったら、できるだけペナルティが重くならないように正しく素早く行動することが必要です。
期限が過ぎたからといって、諦めて投げやりになってはいけません。誰しもうっかりミスはあるもので、重要なのはそこから適切に行動してカバーすることです。
やむを得ない理由がある場合は期限延長宣言を申請する
たとえば、災害にあって申告書を作成できる状況にない、新型コロナウイルス感染症にかかり期限内の提出が難しいなどやむを得ない理由で申告が遅れる場合は、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出し、申告期限の延長を受けましょう。
理由が解決した日から2か月以内までを個別指定して期限延長できます。
もし納税者や任せている税理士などが新型コロナウイルス感染症の影響で期限内の申告が難しい場合は、個別指定での期限延長が認められています。基本的には期限内の確定申告がのぞましく安心なため、早めに申告しましょう。
申告忘れに気づいたらできるだけ早く申告する
確定申告を忘れていた場合には、できるだけ早く自主的に申告することが必要です。申告が遅れれば遅れるほど、延滞税もかかります。
法律は故意にやった人には厳しいですが、うっかりしたミスで、しかもそれを自分から正そうとする人には寛容です。
期限が過ぎても自主的に申告をすれば、ペナルティも軽減される可能性があります。
時効で納税から逃れることはほぼ不可能
納税ミスや申告漏れにも時効はあります。悪質な申告漏れでも申告期限の翌日から7年で時効が成立します。
しかし、納税を免れて時効まで乗り切るのは現実的に不可能です。時効までの期間は督促状が税務署から届いた時点で中断され、再び一から時効期間が開始されます。
また、督促に応じなければ、税務署も差押えなどの手段を取る場合もあります。そのため、実質的に時効成立まで逃れることはできないでしょう。
還付申告について
源泉徴収された所得税が本来納める税額より多い場合や、受けられる控除を申告し忘れて所得税を多く納めてしまった場合は、還付申告を行うと納めすぎた所得税の還付が受けられます。
還付申告の期間は確定申告の期間とは異なり、その年の翌年1月1日~5年間提出できます。
申告可能期間を過ぎても課されるペナルティはありませんが、納めすぎた税金を還付されない点がデメリットです。
個人事業主で所得が確定申告不要の額であっても源泉徴収去れている場合、還付申告を行えば多く納めた税金が戻ってくるので、以下の事例がその年に起きていれば還付申告をしましょう。
以下の場合では、還付申告をすることをおすすめします。
-
- 個人事業主になった時期が年の途中で、前の会社で年末調整を受けなかった
- 自宅として一戸建てを購入し住宅ローンを組んだところ、控除の対象といわれた
- 自宅の戸建て住宅に一般省エネ改修工事をした
- 会社員もしており、業務に関連する資格取得のために自費で学校へ通った
- ふるさと納税や特定の寄付をした
- 支払った医療費が多額だった
- 火事・水害・盗難などにあい、資産に損害を受けた
- 申告分離課税を選んだ上場株式等の配当所得等の金額から、上場株式等にかかる譲渡損失の金額を控除した
確定申告をする際の注意点
売上が1,000万円を超えていた場合は消費税も
確定申告は所得税の申告を指しますが、個人事業主やフリーランスの中には消費税の申告が必要となる人もいます。
売上金額が年間1,000万円を超えている場合には、所得税だけでなく消費税の申告も必要です。
消費税の申告は翌年の3月末までで、期限を過ぎても申告しなかった場合には所得税の確定申告と同様にリスクが生じます。
消費税の申告の必要の有無は、基準期間の課税売上が基準で決まるものです。
基準期間は、個人事業主やフリーランスの場合には前々年の1年間、法人の場合には事業年度単位で前々年度に当たります。
つまり、前々年の課税売上が1,000万円を超えていた場合には、確定申告のほかに消費税の申告についても押さえておきましょう。
経費計上できる項目とできない項目がある
所得税の計算に必要な所得額は売上げから必要経費を差し引いて計算するため、売上げを作るためにかかった経費をもれなく計上すると所得額が減り、その結果税負担が軽くなります。
その支出が経費かどうかの判断基準は、事業に関連があるかどうかです。
自宅の賃貸マンションの一部を事務所にしている場合は、事業用の使用割合を考えて按分します。
家賃だけでなく水道光熱費や通信費なども、事業用とプライベート用の割合を計算し計上可能です。
税金は原則経費になりませんが、税込処理をした消費税や個人事業税は経費となります。
確定申告をしない場合は住民税を申告する
専業で個人事業主をする場合、所得が48万円以下であれば所得税の確定申告はしなくてもかまいません。
しかし確定申告がなければその年の所得に関する情報がなく市町村は税務署から情報を得られないため、住民税の申告は必要です。
所得0円の場合を除き必ず住民税は課税されるので、忘れずに申告しましょう。
確定申告しないのはNG!必ず実施しよう
確定申告が必要な人が、申告しないとペナルティの罰金が発生することもあり、刑事罰の対象となることもあります。
個人事業主やフリーランスはもちろん、会社員の人も、確定申告が必要な所得があった年には、必ず申告を行いましょう。
個人事業主やフリーランスの確定申告は、資金調達や健全な経営のためにも大切なことです。
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(編集:創業手帳編集部)