勘定科目「棚卸資産(在庫)」の管理の仕方。3つのポイントを押さえよう!
木村さきの【新米社長のための会計講座】
(2017/2/21更新)
とある大手企業の経理部に勤める木村さきが、起業したての父親に、“知らなきゃヤバい”会計のイロハを教える本シリーズ。今回は、勘定科目「棚卸資産(在庫)」の管理の仕方についてレクチャーします。
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【登場人物】
木村さき(26)
上場企業の経理部に勤務するかたわら、公認会計士を目指して専門学校に通うOL。大学で現代会計のゼミに所属したことをきっかけに、会計の世界にのめり込む。
パパ(55)
出向してきた上司と反りが合わず、長年勤めた県庁を勢いで退職してしまい、妻の父親が経営する会社のサポートを受けて起業。アイデアには富んでいるが、考えるより先に行動するタイプで、なかなか会社経営を軌道に乗せられずにいる。
さき
ただいまー
パパ
おかえり……って、なんだ、さきか。
さき
なんだはないでしょ。たまには手料理でも作ってあげようと思って寄ったのに。キッチン借りるよー。
パパ
1ヶ月も海外旅行だなんて、ママだけズルイよな。
さき
えっ、なによコレ!? 卵が1個、2個……20個もあるじゃない!
パパ
特売で安かったから、まとめ買いしたんだよ。
さき
パパ一人で、こんなに食べきれるわけないでしょ。いくら安かったからって、腐らせて捨てちゃうんじゃ意味ないじゃない。
パパ
おかしいな、もっと減ってるかと思ってたのに……。
さき
こんな調子なら、会社の棚卸資産の方も、どうせちゃんと管理できてないんでしょうね。
パパ
棚卸資産って、在庫のことだろ。何するんだよ、管理って。
さき
在庫管理には、重要なポイントが3つあるのよ。まず1つ目は、今何がどれだけあるのかすぐにわかること。冷蔵庫の中に卵がいくつ残ってるのか知らないなんて、管理できてるとは言えないでしょ。
パパ
まあ、確かに。
さき
そのためには、毎日きちんと受払を記録することが大切なの。そうすれば、どの商品が何個残っていて、単価はいくらだって、帳簿を見ればすぐにわかるでしょ。
パパ
そうだな。
さき
2つ目のポイントは、実地棚卸ね。ほら、もうすぐ決算だから、みんなで在庫が実際にどれだけあるのか数えるでしょ。
パパ
でも、受払記録があれば、実際に数えなくても、帳簿を見ればいいんじゃないのか。実地棚卸ってめんどくさいんだよ。
さき
ダメよ。受払の記録を間違えちゃうこともあるでしょ。それに、万が一盗難とか不正な横流しなんかがあった場合、実際に数えてみないことには発見できないんだから。
パパ
だから、みんな決算で実地棚卸をやるのか。
さき
それに、売上原価は『期首の在庫+当期の仕入-期末の在庫』よね。つまり、期末の在庫が正確じゃないと、売上原価も正しく計算されないのよ。
パパ
ということは、実地棚卸は、会社の利益を正確に計算するためにも必要なんだな。
さき
その通り。在庫は、“帳簿に載っているものが本当にあること”と“あるもの全部が帳簿に載っていること”が大切なのよ。
パパ
で、3つ目のポイントは?
さき
それは、在庫の量が適正水準かどうか、ということね。多すぎても、少なすぎてもダメ。卵の例で言うと、明らかにパパ一人で20個は多すぎるじゃない。かと言って、一つもないと、食べたいときに困っちゃうでしょ。
パパ
でも、会社の在庫の場合は、腐らない物もあるんじゃないのか。
さき
在庫というのは、お金を払って仕入れて、それを売ってお金にするまでの途中の状態でしょ。つまり、在庫は、寝ているお金というわけ。だから、在庫が多すぎるというのは、会社の資金繰りを圧迫することにもなるのよ。
パパ
なるほど。会社の資金を効率的に回しながら、欠品による機会損失も防ぐという意味で、在庫の量は適正水準じゃないといけないんだな。でも、適正水準って難しくないか?
さき
そうね。ただ、在庫の場合も、回転期間は参考になるのよ。
パパ
回転期間と言えば、売掛金の話の時も出てきたな。
さき
在庫の場合は、
回転期間(月)= 棚卸資産残高 / 年間売上原価÷12
という計算式になるの。これは、何ヶ月分の在庫を抱えているのか、言い換えれば、仕入れてから売上げるまで、平均何ヶ月かかるのか、ということを表しているの。
回転期間(月)= 棚卸資産残高 / 年間売上原価÷12
という計算式になるの。これは、何ヶ月分の在庫を抱えているのか、言い換えれば、仕入れてから売上げるまで、平均何ヶ月かかるのか、ということを表しているの。
パパ
じゃあ、売掛金と同じように、前期と当期の回転期間を比べてみればいいんだな。
さき
回転期間が長くなっている場合は、もしかすると不良在庫が溜まっているシグナルかもしれないものね。あと、同業他社と比較してみるのもいいわよ。
パパ
商品別に回転期間を出すことによって、売れ筋の商品を把握するということにも使えるんじゃないのか。
さき
さすが、パパ。飲み込みが早いわ。
パパ
なんだか、パパのことを褒めるさきは気味が悪いな。
さき
あら。キミが悪いのなら、卵を腐らせちゃうパパにはピッタリじゃないかしら。
(監修:監査法人A&Aパートナーズ)
(編集:創業手帳編集部)
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