イントレプレナーとは?メリット・デメリット、必要なスキルを解説
イントレプレナーをまず知り、イントレプレナーになるためにはどうしたらよいのかをお伝えします。
企業に勤めている方が起業を検討しているなら、イントレプレナーも選択肢の一つです。
起業家にとっても、現在勤めている企業にとってもメリットが多い方法であり、新規ビジネスの立ち上げで起業スキルを試せます。
ただし、イントレプレナーには他の起業方法にはないデメリットもあるため、実際に利用するにあたっては注意も必要かもしれません。
イントレプレナーのメリットとデメリット、あると役立つ必要スキルについて解説します。
メリットデメリット両面から考えて、自分に向いていると感じたらぜひ起業時の選択肢の一つに加えましょう。
イントレプレナーにはどんな力が必要か知っておくことが、成功の鍵です。
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この記事の目次
イントレプレナーとは?
イントレプレナー(Intorepreneur)とは、社内起業家のことを指す言葉です。「アントレプレナー(起業家)」と区別して、このように呼ばれています。
イントレプレナーは、社内にいながらにして起業ができる方法として注目を浴び始めている制度。
まずは、イントレプレナーの基本的な情報から理解しておきましょう。
イントレプレナーとアントレプレナー
イントレプレナーは、アントレプレナーと対になる言葉です。この二つの言葉は、似て非なるものと言えます。
イントレプレナーは、社内に留まり、勤務した状態で起業する人ですが、アントレプレナーは単純な起業家のことを指します。
つまり、アントレプレナーは企業に属することなく、自分だけで会社を設立して事業を行う人のことです。
起業家の選択肢として、アントレプレナーは最初に思いつくものかもしれません。
イントレプレナーのメリットやデメリットも、アントレプレナーと比較して指摘されることが自然と多くなります。
イントレプレナーと出向起業
イントレプレナーは、「出向起業」に少し似ている部分のある起業制度のこと。
企業に勤務し、在籍したまま新しいビジネスを立ち上げるものですが、出向起業は別会社を立ち上げ、出向という形で自分の会社で働きます。
出向では、これまで勤務していた企業と雇用契約は維持するものの、業務上の指揮命令権も給与の支払いも出向先です。
イントレプレナーと似ていますが、出向起業は出向することによってイントレプレナーよりも起業に従事しやすい面があります。
また、イントレプレナー制度を利用して立ち上げたビジネスで出向起業に転向するケースもあります。
イントレプレナーのメリットとは
イントレプレナーには、アントレプレナーにはないメリットがあります。
イントレプレナーは、起業のリスクを減らし、企業に勤めている利点最大限に生かせる制度です。
また、イントレプレナーを育成するのは企業にとっても良い面があります。
起業家のメリット
大きな後ろ盾をもって新規ビジネスを立ち上げる方法が、イントレプレナーです。
アントレプレナーとは異なり、金銭面も安心ですし、情報やノウハウなども充実しています。
事業を成功へと導きやすい環境が整っているため、チャレンジのハードルが下がります。
独立のリスクを減らせる
イントレプレナーは、会社に籍を置きながら起業できる方法です。
アントレプレナーの場合、会社を辞めて起業するため、失敗した時の金銭的な不安が大きくなるかもしれません。
また、完全に独立して会社を立ち上げる場合、一時的に社会的信用も下がる可能性もあります。
しかし、イントレプレナーであれば、継続的に会社員として収入も立場も同様のままで起業が可能となっています。
また、失敗した時にも雇用されたままなので、収入を失うことがありません。経歴にも変化がないため、ローン審査などに影響を及ぼすこともないでしょう。
社会保険なども、継続したままでいられます。
企業の金と人を使える
イントレプレナーとしての新規ビジネスの立ち上げでは、自社のノウハウと人脈もふんだんに活用できます。
独立して起業する場合には、ノウハウも人脈も自分で築いてきたものだけが頼りになるかもしれません。
持っていないリソースは自分で手に入れるか外部に依存、外注などで準備するのが必要となります。
しかし、イントレプレナーであれば、社員として自社の持つノウハウを活用し、会社からの助言や支援を受けられます。
また、同社内から協力者を募ることもできますし、会社の持つ人脈を使っての集客も可能です。
実績を評価される
イントレプレナーとしての新規ビジネスの立ち上げは、社内での実績となり、成功すると高い評価を得られます。
また、失敗した場合でも、チャレンジした行動そのものへの一定の評価は受けられるでしょうし、それを次のチャンスへのステップにも生かせます。
アントレプレナーでは、失敗した場合は多くを失い、下手をすれば借金を抱えて再起も難しいケースもありますが、イントレプレナーであれば失敗も無駄になりません。
企業側のメリット
イントレプレナーとして起業家を育てるのは、企業側にも大きなメリットがあります。
チャンスを与え、社内に新しいエネルギーを生み出し、会社の発展にも良い効果をもたらします。
企業は、大きな企業であればあるほど、大企業気質が根付きやすいものです。
変わらなければいけないと考えながらも、新しい制度や行動を社員に促せない企業は多いかもしれません。
しかし、イントレプレナー制度を取り入れると、既存の風土を一新し、変わりやすい社会情勢に対抗できる優秀な社員を生き生きと育てられるでしょう。
社員のモチベーションアップ
イントレプレナー制度の導入は、社員のモチベーションを向上し、生き生きと働く風土を育てます。
また、優秀な社員を手放さず、起業家としての力を試すチャンスを与えられます。
上昇志向のある優秀な人材が独立を目指し、退職してしまうリスクを抑えるためにもイントレプレナー制度は有効です。
社員は企業の中に在籍し、安定した環境の中でのびのびとやりがいある仕事に打ち込めるため、ポテンシャルも十分に発揮できるかもしれません。
幹部候補が育つ
イントレプレナー制度を企業が導入するメリットは、幹部候補の育成も挙げられます。
イントレプレナー制度では、優秀な社員を手放さないだけでなく、さらにチャンスを与えて育てられます。
大企業では、若いやる気のある社員が発言や責任ある仕事をするチャンスもなかなか手に入れられないことがあります。
しかし、イントレプレナー制度があれば、若く柔軟な社員の早期育成が可能です。
また、起業するためにリーダーシップや社内での調整力なども育ち、将来の幹部候補としての成長が期待できます。
また、新規ビジネスを発掘するために、時流を読む力を持つ人材を発掘できるかもしれません。
イントレプレナーのデメリットとは
イントレプレナー制度は、社員と企業の双方にメリットが多いですが、社内で起業する立場上、いくつか大変な点もあります。
起業を目指す人も企業側も、デメリットを理解した上で制度を活用したほうが納得した運用ができるかもしれません。
起業家のデメリット
起業家側としては、社内での自由のなさが主なデメリットの原因となります。
アントレプレナーのような自由さはなく、時間や事業内容などに制約がある点が主に影響を及ぼしそうです。
意思決定に時間がかかる
イントレプレナー制度は、あくまでも会社の中でビジネスを立ち上げるもの。
そのため、何かを決定する際にも会社の意思を反映させることが必要です。
意思決定には社内稟議にかけたり制度の担当部署を通したりと、段階を踏まなければならず、時間がかかることが予想されます。
大きな企業であればあるほど、社内稟議の多さや保守的な幹部の説得などに時間がかかることが多くなるでしょう。
スタートアップ時はスピードが重要なケースもあるため、何かを選択・決定するたびに時間を取られるのは大きなデメリットになるかもしれません。
使える時間が少ない
イントレプレナーは、基本的には本来の業務のかたわらで新規ビジネスの立ち上げを行います。
そのため、本来の業務に手を取られると、十分に新規ビジネスの立ち上げに時間を使えないことも多いもの。
立ち上げに時間を確保したい場合には、社内調整と周りの協力が欠かせません。
また、必要な時間を確保しても、現実的には本業の業務に手を取られ、立ち上げに集中しにくい場合もあります。
企業側のデメリット
イントレプレナー制度には企業にもデメリットとなることがあります。
まず基本的に失敗するかもしれない事業へ、人材や資金を投入することがネックになるかもしれません。
企業によってはイントレプレナー制度のデメリットに目を向け、実現が難しいケースもあります。
社内ソースを割かれる
イントレプレナー制度では、新規ビジネスを立ち上げようとする人材を会社が支えていきます。その事業は事前に十分審査されますが、それでも成否は分かりません。
イントレプレナー制度を導入するのは、成功するか分からない事業に対して人材や資金などの社内ソースを割くアクションでもあります。
新ビジネスが失敗した時には、企業の損失になります。
社員の幹部や指導者としての資質を見るための出資ではありますが、人材や資金の無駄とも捉えられるかもしれません。
起業にむけた制度や社内風土を作る必要がある
イントレプレナー制度を導入するにあたっては、制度を整備し、社内に起業家を育てる風土作りも必要です。
初めての取り組みであれば、制度作りには試行錯誤が必要で、制度を作る段階でも時間や人材を取られるでしょう。
そのため、二の足を踏む企業もあります。
また、幹部に古い考えの持ち主が多い場合には、制度も浸透しにくく、若手が手を上げにくくなってしまうものです。
いざ制度を利用し始めても、稟議方法に手間や時間がかかりすぎたり、反対にあって進まなかったりと、ビジネスが頓挫しやすくなる可能性もあります。
イントレプレナーに必要な力とは
イントレプレナー制度を利用して新規ビジネスを立ち上げるには、持っていた方がいい能力があります。
以下のようなスキルを持っている人は、イントレプレナーとして活動しやすく、向いているかもしれません。
企業に在籍しながら起業を目指す人は、まず自分が必要なスキルを携えているかチェックしてみましょう。
新たな市場を見出す能力
イントレプレナーとして活躍するためには、これから伸びそうな新しい市場を見つけ出す能力が欠かせません。
イントレプレナーとして事業を興すには、これから参入するに値する魅力があり、なおかつ自社との親和性のある内容を選択するのが必要です。
俯瞰して物事を冷静に見極め、ブルーオーシャンの中から自社に恩恵をもたらすビジネスを見出します。
また、見つけた糸口からどのように展開していくか、具体的な構想を練るスキルも重要です。
アイデアから実際のプロジェクトへと具現化し、企業側に認められるような説得力のあるものを作らなくてはいけません。
社内政治力
イントレプレナーとしてよりスムーズに事業を立ち上げていくためには、稟議を通すための調整力、政治力も必要でしょう。
独立して一人で進めるアントレプレナーとは違い、イントレプレナーは企業の後ろ盾がある分、制約も受けます。
何かを決定するためには会社からの承認が必要です。
そのため、イントレプレナーには社内でうまく立ち回り、スムーズに承認を得る手腕が求められます。
新規事業は当然のことながら、実績がないため、大きな企業で承認を得るのは大変かもしれません。
しかし、意思決定のキーマンへの根回しやプレゼンの能力に長けていると、突破口を開きやすくなります。
アントレプレナーのような起業方法とは全く違ったスキルですが、社内起業には避けられないものです。
強い精神力
イントレプレナーとして起業し、成功を掴むためには、強靭な精神力も必要です。
企業の中で新規ビジネスを立ち上げるためには、幹部からの反対や時間の制約など、様々な困難が待ち受けています。
また、計画がうまく進むとは限りません。そのため、大変な時や計画が上手く行かない時にもひるまず、落ち込まずに突き進める気持ちの強さが求められます。
新規事業を計画し、社内のイントレプレナーの制度に申し込む段階では、多くの人が前向きで明るい気持ちを持つもの。
しかし、実際に進行する場面では多くの挫折やトラブルが待ち受けています。それでもなお、継続的に事業を育て、抵抗勢力にも負けずに進むことが必要なのです。
リーダーシップ
イントレプレナーとして成功するためには、リーダーシップも大切です。また、イントレプレナーとして立ち回ると、リーダーシップ力も培えるかもしれません。
社内起業は一人ではなくチームで事業を進めます。協力者がいれば、スタートアップの作業の多さも乗り越えやすくなりますし、スキルを持ち寄ることもできます。
そのためには、協力者を一つにまとめ、同じ方向を向いて歩むためのリーダーシップが求められます。
また、協力者を増やす人望や議論を活発にする雰囲気作りが出来ることも大切なスキルと言えるでしょう。
イントレプレナーになるには
イントレプレナーになるには、以下のような方法があります。
社内に制度が整っていれば問題ありませんが、制度がない場合でも道は切り開けるかもしれません。
自社の状況とタイミングを見ながら、イントレプレナーとしての活躍の場を手に入れましょう。
社内コンテストに参加する
規模の大きな企業では、社内起業、社内ベンチャーなどの制度を発足し、自社の優秀な社員を育てる取り組みが始まっています。
社内のビジネスコンテストに参加してアイデアを認められれば、社内起業はスムーズに進むかもしれません。
中小企業の中にも新部門設立のタイミングで、募集をかける可能性もあります。
上司・社長に直談判する
企業内に既存の制度がない場合でも、上司や社長に直談判をすると、社内起業の道を得られる可能性はあります。
その際には、説得するためのプレゼン資料や上司や社長を動かすだけの熱意が必要です。
規模の小さい企業なら直談判の相手を社長にしてもかまいませんが、上司の顔を潰さないような配慮をしなければなりません
社内起業では部署内や上司の協力と応援が欠かせません。調和を乱さないよう、気を配りながら交渉を行ってください。
まとめ
イントレプレナー制度は、社内で働きながら、リスクを抑えて起業できる方法です。
起業家としての手腕も試せますし、イントレプレナーとして活躍すると社内評価も上がるでしょう。
企業側にもメリットが多く、大企業を筆頭に制度導入に踏み切る企業も増えているようです。
ただし、イントレプレナーは社内のリソースを使える反面、動きにくさなどのデメリットもあります。
ゆくゆくは独立を考えているという人は、独立や出向起業と比較してどちらが良いか検討するのが大切です。
創業手帳(冊子版)は、資金調達や事業計画など起業前後に必要な情報を掲載しています。起業間もない時期のサポートにぜひお役立てください。
(編集:創業手帳編集部)